『The Nines』次世代パークで魅せる日本人ライダー(前編)

「The Nines」。毎回そのクリエイティブなアイテムが、ライダー、フォトグラファー、フィルマーら参加者のイマジネーションを刺激し、素晴らしい技と画を残している。日本勢の活躍が目立った今年のThe Ninesの舞台裏を藤森由香がレポートする。前編では、イベントが生まれた経緯や今年のレイアウトコンセプトについて、代表のNico Zacek(ニコ・ザセック)にインタビュー。

Photo:The Nines
Text: 藤森由香


Nico Zacek(ニコ・ザセック)を筆頭に彼の親友の8人のフリースキーヤーを集めて、彼らのスキル向上を目的としたセッションから始まったこのイベント。これまでの数年間、The Ninesはパーク制作やスキー・スノーボードのフリースタイルにおけるレベルの限界を押し上げることを目指してきた。

開催から14年目の “The Nines” 。今回の特設パークはスイスのCrans Montana(クラン・モンタナ)で4月4日から9日の5日間に渡って開催された。

このイベントは普段のスロープスタイルの大会とは異なり、勝負というシリアスな大会の印象はなく、冒頭でも述べた通り基本的に技術の向上や撮影に重きを置いている。

今回私はHeavy hitter(ヘヴィ・ヒッター)達と一緒に滑る機会を与えてもらい、The Ninesの裏側に迫ってきました。

The Nines代表Nico zacek

 

「僕は元々プロスキーヤーでたくさんの大きな大会に出場してきた。大会ではいつも移動して、公開練習して、本番を迎えて、パーティーして、また移動して、、、という流れの繰り返しで、そういうスポーツの意義にどことなく不満を感じていたんだ。

あるとき自分のスポンサーからプロジェクトを開催する機会を与えられ、大会を開催することになった。全ライダーが各々のフィルマーやフォトグラファーを連れてきてフッテージを残したり、普通のコンテストのように最終的に誰かが勝ちというのではなく、その賞金を誰が獲得する代わりにコース作りに当て、楽しんだり一緒に上達できる意義があるものを作りたかったんだ。それが2008年のこと。14年経った今もなお、同じコンセプトで続けている。

The Ninesでのスペシャルレシピはベストなコースを作ること。そして、世界の凄いライダー、フィルマーやフォトグラファー達を招待すること。プロの集まりなんだけど、ここでは子供たちが公園で遊んでいるかのように彼らが夢中で楽しめる環境を提供したいんだ」

The Nines2022のコースのコンセプトやセットアップはどのように思い浮かんだのか

「今回作ったコースのコンセプトの全てはFuturistic bowls。
未来っぽいボウル。未来のコースがどんな風になっていくのかを想像して、テイクオフなどをボウル形にしたり、新たなアイデアや技を出せるように全部を丸いシェイプにしてみた。

でも “球(丸いシェイプ)” だけではなくて、みんながトライできる普通のジャンプのセットアップをやっぱりひとつは入れておきたかった。

そしてジャンプとは別に二つの特別なセクションを作った。その一つが腕時計の形をモチーフにしたDown wall スパイラルループ。これはスキーヤーのNicolas Vuignier(ニコラス・ヴォンニエ)が僕にアイデアを起こさせてくれた。もう一つはOver virt sphier kicker。マッシュルームみたいな形のものだ」

「遊び方は無限。オリンピックなどの大会とは違ったことにライダーたちに挑戦してもらうのが目的だった。

コースのアイデアはいつもチームの努力の賜物だが、基本的にはたくさんのライダーと話をしながら作っている。ジャンプの設計に関しては、Clemens Millauer(クレメンス・ミラウアー)やAnna Gasser(アンナ・ガッサー)、 Mathilde Gremaud(マチルド・グレモー、Ski)にも良い意見やアイデアをもらったよ。たくさんのライダーのアイデアをもとにアングルや角度などを変更したり、議論して最終的にデザイナーを加えて全部を繋げてセットアップを完成させた」


クリエイティブなパークをどう楽しむかに拘った浜田海斗

「スタイルを出して自由に滑って評価してくれる場が好き。変わったコースを滑る方が自分の癖が出せる」

そう語り、Futuristicなコースで沸かせたのが浜田海人だ。海人の自由で独創性に満ちた滑りは人目を引く。記憶にも新しい2022年北京五輪のスロープスタイルでの海人の滑りを見てファンになった人も多いのではないだろうか。そんな海人が去年に続き2度目の出場でどんな滑りを見せてくれるのか、私もとても楽しみにしていた。彼は高回転も得意としているが、あえてここでは回転数には拘らないところがまたかっこいい。

「想像を超えてきたセットアップで、どんな滑りをするか最初に見たときはイメージが湧かなかった。実際滑ってみると去年のコースより好きなセットですごく楽しめたし、みんなのバイブスが高くてモチベーションに繋がりました。特にDown wallのセットでやりたいイメージが湧いてきて、それを形にできたのはよかったですね」(海人)

スタイルを入れたフロントサイドシャッフル720
壁を使ってのEuro carve

後編>> 北京五輪でも話題になった岩渕麗楽、アップカマー荻原大翔らがThe Ninesにどう挑んだのか

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