今シーズン、記録的な雪不足に悩まされている日本。この状況の中で最高の雪を当てるためには、正確な天候の予測や、現地のタイムリーな情報、そして今までの経験で培ってきた雪の匂いをキャッチする嗅覚が必要になる。
1月上旬。北海道を除く本州で豊富な雪がある場所はどこか。言わずと知れた世界的トップライダーの布施 忠がサーチした場所が青森・八甲田だった。
Text: Gaisu
Photo: Koeji Taro
布施 忠がシーズン序盤の滑り込みに選んだ場所
2003年に海外の名門フィルムプロダクションが手掛けるムービーのトリを飾るなど、日本人として初めて世界に認められたスノーボーダーのパイオニア、布施 忠。今年でライダー活動23周年を迎え、42歳という年齢を全く感じさせないそのスキルとライディングスタイルは、今もなお進化し続けている。
そんな忠と、フィルマー兼ディレクションを務める越路太郎氏から成るLIFESTYLE PRODUCTION(以下LSP)。スノーボーディングをライフスタイルとして捉え、ライダーたちが雪山と向き合うリアルな生き様を表現し続けているムービープロダクションだ。昨秋彼らは、2年越しのプロジェクトとして『BOONDOCKING』というムービーをリリースした。新たな仲間とともに日本で未開拓の斜面をスノーモービルで開拓し、今まで見たこともないスポットで数多くのフッテージを残し、スノーボーダーたちを魅了する作品となった。
2020年1月上旬。近年稀に見る記録的な暖冬に見舞われた日本。シーズン序盤のこの時期、忠はLSPの本格的な撮影に向けた足慣らしとして、本州最北端を目指していた。その目的地は「八甲田」。11月から北海道で滑り込みを始め、徐々に自分のベストコンディションへと近づけて行く行程の最終の仕上げとしてこの山を滑り込むことにした。
本州の中でもなるべく北へ、そして標高も高いエリアに標準を当てベストな雪を求めたこの旅。ちょうど低気圧が抜けるタイミングが重なり、最高の雪が忠を待ち受けてくれた。雪化粧したツリーの雪道をJeepで駆け抜け、八甲田へとたどり着いた。
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10年ぶりの八甲田。雪はある場所にある
前日から降った雪が30センチほど積もった八甲田での初日。この場所を忠が滑るのは約10年ぶりとなる。この日は、あいにく点検作業でロープウェイが終日運休となったため、稼動していたリフトに数本乗り、山のコンディションをチェックすることになった。積雪はあるものの気温は少し高く、標高の低いエリアの雪は決して八甲田本来の上質なパウダーとはいえない。すると忠はすぐさまJeep®を走らせ標高を上げたロードサイドのスポットをチェックしていく。
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車窓から雪の付き方による風の向きや地形を眺め、遊べるスポットを見つけるとフォトグラファーとともにハイクアップ。ちょうどいいサイズのピロー(岩の上に溜まった枕のような雪)へ向かいドロップすると、忠らしいスタイル全開のメソッドで宙を舞った。
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「今日は山のコンディションもある程度分かったし、ロープウェイが動く明日を狙おう。きっともっと良くなると思う」。
忠が明日に集中して撮影しようと判断すると、一行は旅の疲れを癒すべく、今夜の宿泊先である、八甲田の湯治場として有名な「酸ヶ湯温泉」へ向かい、明日の撮影に向けコンディションを整えた。
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八甲田を滑りたおした1日
翌朝、通常厳冬期は晴天率が悪く吹雪による視界不良などハードなコンディションが多い八甲田だが、この日は視界が抜けていた。山頂付近まで見渡すことができるパーフェクトコンディションだ。朝8:00にはロープウェイ乗り場でスタンバイし、9:00発の1便目でロープウェー山頂公園駅のある田茂萢岳山頂へ向かった。
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木々に雪と氷が吹き付けられて成長するスノーモンスターと呼ばれる樹氷がいたるところにあり、幻想的な空間が広がっている。山頂からは岩木山や、津軽半島、下北両半島を眺めることができ視界も良好だ。現地の情報では例年の1/3程度の積雪だと聞いていたが、上部はブッシュもほとんど隠れ、新雪も30センチほどと、ディープすぎない十分なパウダーコンディション。
忠は地形図を眺めながら持ち前の経験と嗅覚を活かし遊べる地形やジャンプラインを探す。
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八甲田の山頂からは、メインのオフピステコースが2本あり、5キロにも及ぶロングライディングが楽しめる。また「八甲田ルール」を理解した上で「自己責任」によるバックカントリーでのライディングも可能だ。ただし、厳しい自然と広大なフィールドには遭難など山岳事故の危険があるため、山岳ガイドやこの山を熟知したローカルと滑ることをおすすめしたい。
山の特徴は、山頂付近から滑り出しの序盤に最大30°くらいの斜度があり滑りごたえも十分。その後は緩斜面のツリーランが続き、気持ちよくクルージングできる。「八甲田はパウダー中上級者が楽しめる地形」と忠が話していたのが印象的だった。
午後15:00頃。ロープウェイの6回券を全て使い切り最後の1本を滑り終えると充実した1日が終了した。昼飯時を除き、朝から夕方まで八甲田を滑りたおした。
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暖冬と言われている今シーズンだが、雪はあるところにはある。天候のアンテナを張り、滑れる場所を探すことで最高の雪を当てることができるのだ。この八甲田でのパウダーが物語るように、そのことを忠の動きを近くで感じることで分からせてくれた。
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ここからは、布施 忠のショートインタビュー。
『SNOWBOARDING IS MY LIFESTYLE.』
忠が考えるスノーボーダーズマインドに迫る。
楽しいから辛いことも頑張れる
プロライダーとして20年以上活躍していますが、ライダーを続けるモチベーションはどういうところにありますか?
スポンサーからのサポートの部分は大きいです。今までの自分を認めてもらって、しっかりしたサポート体制をとってくれることで自分たちがやりたいこともできるようになるし、もっと活躍できるフィールドが広がってくる。他には、俺たち(LSP)は映像作品を作り続けたい。その作品作りにゴールはないんですよね。たぶん永遠にゴールという満足はしないと思うんです。だからそれをやり続けたいというのがモチベーションに繋がってますね。
ゴールがないからこそ楽しい?
そうですね。自分を表現するのにゴールはないと思います。ゴールはスノーボードをやめる時ですかね。
ゴールがないと思うのは何故ですか?
歳とともにどっかで… 多分いろんなもの、ライディングだったりが変わっていくと思うんですよね。そこで自分の考え方も変わっていく。今はジャンプしたいっていうのは気持ち的にありますけど、歳をとってできなくなったら違うやり方になっていくんだと思うんです。だから変化しながら続いていく。
続けていくために努力していることはありますか?
シーズンスタート時はいつも絶対体が辛いんですよね。滑り込んで足がパンパンになって筋肉痛になったり、わざと体を痛めつけて。それをシーズン開始直後にガンガンやって体を作って、本格的な撮影に入るみたいな感じです。俺の中で、滑りながら体を作っている状態が結構辛いですね。でもこれをシーズン序盤にやらないと自分の体が仕上がって撮影に対応できる体にならないんですよ。
筋トレみたいなものですか?辛いけど、やっていけば自分の力になる、みたいな。
辛いけど楽しいんですよ。楽しいっていうのが最初に付く言葉ですね。だから大変なことも辛いことも頑張れるんです。
普段の撮影ではスノーモービルで山の奥地まで行き滑っているわけですが、今回のように、ロープウェイを使って普通のゲレンデコースを滑るのも大事だと思いますか?
大事だと思います。ゲレンデでは「ジャンプできないかな」っていつも考えながら滑ってます(笑)。遊べる地形をいつも探して、その中で飛ぶ。どこに行っても自分の中では練習なんですよね。ジャンプをする練習。常に滑っていないと本番に活きないですから。あとはゲレンデでも楽なところは滑らないですかね。あえて滑りづらいとこに行きます。まあ、ストイックなんでしょうね。
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自然の中で遊ぶスノーボーディングですが、恐怖を感じることはありますか?
もちろん、いつでもあります。でもトライしてみて失敗してもいいから、と思ってやってます。あとは、人前で何か見せるときも「別に失敗してもいいや、関係ねえ!」って思ってます(笑)。失敗したら恥ずかしいとか、変なところ見せられないって思う気持ちは、俺は今はないですから。
恐怖を感じる時はどうやってメンタルをコントロールしているんですか?
自分の滑るラインでジャンプするときは覚悟を決めて飛ぶ感じですかね。最初からランディング(着地)までをしっかり見てコントロールする。恐怖でビビったりしたら(体が)引けたりしちゃうから、しっかり全部を見る。メンタル的には、やるって決めたらやる。もうそれだけです。
失敗を考えないってことですよね?成功することだけを考る。
それは、ゲレンデを滑ることと繋がってるんですよ。滑り込むと自信がつくから。そこまで俺は自信があるって自分に言い聞かせて。「できるから絶対」って。
自分のライフスタイル全てが繫れば楽しいですよね
ズバリ、忠にとってスノーボードとは?
スノーボードは自分のライフスタイルですかね。人生そのもの。それしかできない、っていうのはあります。スノーボードが自然のサイクルでつながっていく感じですかね。「雪降って来たな、じゃ行こうか」って。いつもの習慣っていうか、毎日やるものみたいなイメージです。
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LSPは『ライフスタイルプロダクション』という意味ですよね。今年はムービーの中でもっとスノーボーダーのライフスタイルを表現したいと言ってましたが、どんな部分を表現したいですか?
どっちかというとオフの部分です。スノーボード以外でのその人が何をしているか。自分の人生の中でスノーボードやスケート、サーフィン、釣りだとか、他にもハマってるものがみんな各々あって、そういう部分を映像の中に入れていきたい。スノーボード以外にも「この人の生き方かっこいい」とか「面白い」っていうところを伝えていきたいと思ってます。
撮影では機動力もすごく大事ですよね。今回のトリップではJeep Wrangler Unlimited Sahara 2.0ℓターボに乗りましたが、乗り心地はどうでしたか?
めっちゃくちゃいい車だと思いますよ。2000ccなのにパワフルで運転の心地良さも機動力もしっかりあって。内装もいい感じだし、俺はこれくらいのサイズ感の車がちょうどいいと思うんですよね。それに、フロントシートヒーターとハンドルヒーターが暖かいのも快適だったし、手動でも切り替え可能な4WDも使いやすかったです。
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Jeepのコンセプトに「人生はどこへいくかではない。どう楽しむかだ」というメッセージがあるんですが、その言葉をどう思いますか?
楽しむことが大事だと思います。全てはそこだと思いますね。ちょっとしたことでも楽しむことが俺はすごくいいことだと思います。ゲレンデでも楽しんで、それが撮影という本番に活きて、撮影も楽しむ。スノーボーディングを楽しむっていう全部が繋がったらいいですよね。車も山もスノーボードのライフスタイルだから、朝起きて、車に乗って、いい音聞いて、山に行って。全てが繫れば楽しいですよね。
ジープ ラングラー アンリミテッド サハラ(Jeep WRANGLER UNLIMITED SAHARA 2.0ℓターボ)
https://www.jeep-japan.com/wrangler-jl.html
【主要緒元】
全長:4,870mm/全幅:1,895m/全高:1,845mm/エンジン:直列4気筒 DOHCターボ/総排気量:1,995cc/右ハンドル/乗車定員:5名/無鉛レギュラーガソリン/最高出力(kW/rpm):200(272ps)/5,250(ECE)/最大トルク(N・m/rpm):400(40.8kg・m)/3,000(ECE)/駆動方式:後2輪・4輪駆動・オンデマンド方式4輪駆動(選択式)/全国メーカー希望小売価格:¥5,900,000 (税抜価格 ¥5,363,636) 2020年1月24日現在
グラナイトクリスタルメタリックC/C
商品に関するお問い合わせ
ジープフリーコール 0120-712-812(9:00~21:00、無休)
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フルタイム4×4システム
電子制御のセンターデフを搭載し、手動でレンジの切り替えが可能。クルーズ用の「2H」、雪道や砂利道などの未舗装路に有効な「4H」、悪路や岩登り時などに対応した最大の駆動力を発生するローギアードの「4L」といったパートタイム4×4に加え、自動的に前後輪に駆動を配分する「4H AUTO」モードを搭載
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ヒーター付きのハンドル。この機能があれば冬のドライブも快適
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スノーボードトリップにおけるロングドライブも、このクルーズコントロール機能が搭載されているおかげで快適
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天候やオーナーの好みに合わせて運転席と助手席を別々に温めてくれて、さらに3段階の温度調節が可能なフロントシートヒーター。この旅でも非常に好評だった
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世界一過酷と呼ばれる独自の性能試験をパスしたモデルに与えられる称号「Trail Rated®」。ハードなアクティブシーンでの使用でも、このバッジがWRANGLER UNLIMITED SAHARAの走破性を証明する
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リアシートを倒すと、約2,000ℓの広大なカーゴルームが出現。メンズのスノーボードも寝かせて収納でき、ブーツや小物類、BCギアを入れても余裕のある荷室空間だ。さっと荷物を出し入れできるため、クイックに移動したい時もその機動力を感じられるだろう。床下には小物入れもあり
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20年間に渡ってプロ活動を続ける、国内外を問わず多くのファンを持つ人気ライダー。ムービーシーンで世界への扉を開いた日本のパイオニアでもある。現在もLIFESTYLE PROJECTで撮影を続け、日本の新たな斜面をスノーモービルで開拓。1977年10月8日生まれの42歳。山形県出身、現在は兵庫県在住。