今シーズン、北海道・ルスツリゾートの「フリーダムパーク」がアップデートし、目的やレベルにあった異なるコンセプトのスノーパークを展開。そのフィーリングを確かめるべく、オリジナリティ溢れるライディングスタイルを持つ大久保 勇利がルスツを訪れ丸1日ゲレンデとパークを滑り倒してもらった。彼が好むルスツのコースとは?そして、こだわりのキッカーと新たなコンセプトとは一体なんなのだろうか?
Photo: Neil Hartmann & Jimmie Okayama
Edit: Gaisu
大久保 勇利が好きなルスツのルーティン
今回、ルスツリゾートをナビゲートしてくれたのは、平昌オリンピック出場などコンテストシーンで活躍後、現在は中井孝治による北海道セッションムービー『PURE JAM』や、國母和宏が立ち上げた『INK MOVIE』、日本トップジバーが集結する『DIRTY PIMP』など、数々の名だたるムービーに出演し、その実力とオリジナリティ溢れる滑りで脚光を浴びる大久保 勇利(以下、勇利)。北海道・札幌をベースに、雪や波が良い場所を巡りながら様々なフィールドを滑りまくるヨコノリストだ。車にはスノーボードにサーフボード、スケートボードと、いくつもの遊び道具を詰め込み、若干21歳という若さで多くの経験を積んでいる勇利は、今シーズン、ルスツ・テイネ・サホロ・中山峠の共有シーズン券を初めて買ったようで、今まさにルスツの地形を調査中だという。
「今シーズン、ルスツを滑ったのは5、6回くらいです。基本は札幌から近いテイネで滑ることが多いけど、ルスツ方面が降ったタイミングは狙いに行きます。ここは山がでかいから、隙間を見つければパウダーが必ずどこかにあるし、人がいてもあまり気にならない感じで滑れるんです」
勇利が言うように、ルスツリゾートはホテル側にあるウエストMt.、道路を挟んだ対岸のイーストMt.、Mt.イゾラの3箇所のエリアに分かれ、4基のゴンドラと14基のリフトが設置されている。総滑走距離は42kmと、1日では滑りきれない37コースを誇るのだ。
では、勇利流のルスツを滑るルーティンはどんなラインなのだろうか。
「イゾラの方に良く行きますね。ヘブンリーキャニオンに行ったり、イゾラからイースト側へ落とすAコースとBコースの間にある沢もよく滑ります。基本的には沢を滑ることが多いかも。あとは、その上部にある未圧雪のシュガーも好きですね。その日のコンディション次第で気持ち良さそうなところを狙うみたいな感じです。グルーミングバーンを見てヤベーってなったら、そのコースを滑ってから他へ行くこともあるし、いきなりパウダーゾーンへ行ったりもするので、時と場合によるのかなって」
勇利のライディングスタイルは、コンテスト映像やムービー、編集部に届く写真などを見てもちろん知ってたいたが、実際に生で見る滑りは想像を超えるフリーライディング技術の巧みさに驚かされた。沢地形やゲレンデサイドのバンクでも常に乗れてる滑りを魅せる勇利。続けて、ゲレンデのどんな地形が好みなのかを尋ねてみた。
「やっぱり沢地形は両端が壁になってて当てられるから好きですね。ゲレンデを滑っててバンクがあったら行きたくなっちゃう。その中でサイドヒットがあったら飛んで、バンクがあったら当て込むみたいな。毎日『どこがいいかなー』って、面白そうな地形を探りながら滑ってる感じです。ツリー(自己責任エリア)も好きだしパークがあれば入るし、オールラウンドに滑るのが好きなんです」
大久保 勇利が実際に飛んで感じたルスツのフリーダムパーク
今シーズンのルスツはパークにも力を注いでいる。ウエストMt.にはコース脇の林にナチュラルログを使ったジャンプ台やレールを設置した非圧雪斜面・上級者向けの「サイドカントリーパーク」を展開。そして、イーストMt.にはルスツのメインパークとなる「フリーダムパーク」を展開し、ここは初級者向けのイージーレーンと、中上級者のエキスパートレーンを設けている。さらに今期は地形を活かしながらトップトゥボトムを流して遊ぶバンクレーンも新たに併設するという。
この撮影では上部のバンクが間に合わなかったが、上級キッカーの法面とパーク中部には綺麗なバンクが用意されていた。ここ数年はナチュラルジャンプでスタイルを魅せてきた勇利。フリースタイルパークを流すのは今シーズン初だと話していたが、そこは流石のフリースタイラー。余裕のあるスタイリッシュな360と720をフロント&バックサイドと繰り出し、しっかり魅せてくれた。世界中のスノーパークを滑ってきた勇利は、この「フリーダムパーク」を滑ったフィーリングをこう話した。
「めっちゃ面白かったです。ジャンプも気持ち良かったし、キッカーの飛びやすさもいい感じでした。ジャンプはリップの抜けで結構決まってきますからリップの形はかなり大事なんですよね。ランディングももちろん大事だけど、それ以前の飛び出しがちゃんとできなかったら技も決めれないですから。その点、このパークのリップはバッチリでした。それに流れも良かったですね。ジャンプを2発やって、そのまま下のバンクに入れるっていう。キッカー横の法面もちゃんとバンクになってるのが良かったです。俺、色んな壁っていうか、地形遊びやフリーランが好きだから、結構流れを大事にしてて。そういうのも交えたパークなのがいいですね。今後左のバンクが伸びていくらしいので楽しみです」
フリーダムパークのこだわり
ルスツの「フリーダムパーク」をデザインするのは、冬はルスツのパークプロデュースやゲレンデの圧雪業務に携わり、札幌キングスの運営もしている山本元貴さん(HOKKAIDO BASE)。元々、勇利とも繋がりがあり、もちろん彼の滑りは間近で見てきたが、今回の撮影で彼の上手さをあらためて感じたようだ。
「やっぱりパークの滑りは上手いですね。札幌キングスにもちょくちょく来てて普段から滑りは見てるんですけど、雪上で見る彼のジャンプは別格でした」
ルスツのパークデザインに携わり今シーズンで8年目となる山本さん。あらためて「フリーダムパーク」のコンセプトを聞いた。
「スキー場と相談しながら、上級者はもちろん初中級者も滑れてルスツのカービングなどターンが好きな年配のお客さんも楽しめる要素を融合させてレイアウトしました。上級レーンは上のキッカーが12m、下が13mくらいで、今後雪の積雪状況次第でもう少し大きくしていこうと考えてます。初心者レーンは、現状上が5m、下が2mくらいのキッカーとレールを2本設置しています。雪が増えたらBOXを2発くらい設置しようと思ってます。後は、ビックキッカー横の上部にもレールを設置したり、春に向けて徐々にアイテムを増やしていく予定です」
勇利が太鼓判を押す「フリーダムパーク」。山本さんのこだわりポイントはどんな部分にあるのだろうか。
「キッカーの土台をしっかり大きく盛るのと、リップは優しくといいますか、結構こだわって飛びやすいように作っています。僕は札幌キングスも運営していて1年中リップをいじっていますので、その辺はこだわってやろうと思ってるんです。バンクレーンは、もう少し積雪が増えたら今年はプラットホームを作って上から下まで流せるバンクコースにしたいと思ってるんです。そのあたりは、圧雪チームと相談し協力してもらいながらやっていこうと思っています。実際にバンクが綺麗になっていくと、そういう地形が好きなお客さんが帰りに寄ってくれるんですよね」
ルスツの魅力のひとつに、幅広いコースの極上グルーミングバーンがある。ダウンチルをはじめ多くの滑り手がここで日々己のターンに磨きをかけ向きあっている。そして勇利も好きだと言う地形が豊富なのも特徴だろう。それらの特徴を融合しながら生粋のフリースタイラーも十分満足するセクションが備わっている「フリーダムパーク」。今後も北海道のパークシーンをリードしていく存在になることに期待したい。
大久保 勇利インスタグラム(@yuriokubo727)
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