ボランティア活動記録。スノーボードが好き、長野が好きな人が繋がることで生まれた一体感

10月12日に上陸した台風19号では各地で深刻な被害があり、未だ復旧の目処が立たない地域も多いようです。千曲川の氾濫により大きな被害を受けた長野では、オフトレ施設「長野BRUSH.」の方々が音頭をとり、その呼びかけに即座に応えたスノーボーダーの有志の方々が集まり、自発的に復旧のボランティア活動を始めていました。このボランティアに参加し、現場の状況と空気感を伝えたいと、長野出身のスノーボーダーでありセパレートスノーボードnicoライダーでもある寺島直人氏が連絡をくれました。実際に参加し、復興作業と復興状況を体験した寺島氏によるボランティア活動記録。

スノーボードというキーワードで繋がった人たちが発揮する行動力と団結力

台風19号による河川氾濫で災害を受けた長野県に災害ボランティア活動に行ってきました。今回、ボランティアの拠点にさせてもらったのは長野県の北部、小布施町にあるスノーボードのオフトレ施設「長野ブラッシュ」です。当施設自体も被害を受けているにも関わらず、復旧を後回しにして他のもっと被害が大きかった箇所の復興作業をするために台風の翌日から動いているそうです。なので、台風が過ぎて一週間たった今も、施設内は殆ど手付かずです。

長野ブラッシュ自体の復旧はまだ手付かず…。もっと被害の大きい場所を優先してボランティア活動を行なっています

(参考URL:https://www.facebook.com/naganobrush/

10月19日朝8時、集合時間になりブラッシュには20名ほどのボランティアが集まりました。ここで、当活動を取りまとめている高橋伸幸さん(長野ブラッシュの運営元である株式会社ジェム代表取締役社長)、作業内容や注意事項を教えて貰い、その後いくつかの班に分かれて活動がスタートしました。

この日集まった有志はおよそ20人。防水や防塵対策万全で集まっています

私が向かったのは、ブラッシュから数分離れたところにある一般宅。こちらで床下に溜まった泥の撤去作業を手伝いました。「ボランティアとはいえ、いきなり知らない人の家に一輪車を押して入り込むんて非常識じゃないか?」と内心動揺しましたが家の中に入った瞬間にその不安は消えました。目の前の悲惨な光景に驚いたからです。とても1週間前まで人が住んでいたとは思えないほど変わり果てた光景でした。既に家財は外に運び出された後で家の中が閑散としていたのもありますが、窓は割れたままで、部屋じゅうが泥で汚れ、床下には所々水溜りができていました。台風当時、千曲川の水は1階の天井近くまで浸水したそうです。壁に付いた泥の線を見ると、どれほどの猛威だったのかがわかります。

窓は外れたまま。ほとんどの家財は運び出されているのでガランとした印象です
床板も剥がれ、床下には大量の泥が溜まっています。この泥をかき出すのが今日の作業

そんな状況で、家主の方々が床下の泥を外に掻き出していました。私たちは一言挨拶をして、すぐに作業に入りました。が、角スコップで泥をすくおうにも、砂利や石が多すぎて上手く泥がすくえません。慣れない土堀り作業に加え、知らない人の中でどんな風に立ち回ったらいいのか分からなくて困惑していたら「これで砂利を避けてからすくうと楽だよ!」と言って、家主の方が笑顔でクワを貸してくれました。更に「どこから来たの?遥々ありがとね、無理しないでね」と優しく声を掛けてくださり、その時にフッと肩の力が抜けました。

家主の方々も一緒に作業を進めます
泥の中に混ざっている大量の石や砂利で作業が思うようにはかどりません

少しづつ作業に慣れてきたところで休憩の号令がかかり一休み。休憩の時も皆で集まり笑顔で話をしました。この時に知ったのですが、この家で作業しているボランティア5、6人の中だけでも滋賀、新潟など、みんな遠くから来ていることを知りました(因みに僕は東京からです)。

その後も作業(合間に休憩)を続け、家の中、庭、車庫等から沢山の泥を出しました。最初は口数が少なかった僕らですが、家主の方が優しく接してくれたおかげで段々慣れてくると「どこのスキー場が好きか」など会話も増えてきました。みんな長野ブラッシュの呼びかけで集まったメンバーなので、スノーボードが好き、長野が好き、という共通点を持った自然な一体感がその空間にはあった気がします。

午後から雨が降ってきてしまったので、この日の作業は少し早めに終わりました。終わってみると丁度良い感じの疲労感でした。完全に力仕事でしたが、自分のペースで作業することができて休憩も多いので、女性でもできると思います。

様々なスノーボーダーが行動を起こしている

この日は別部隊で有名なライダー陣も撤去作業をされていました。

「兵頭 龍さん(YONEX)、鶴田真到さん(NOVEMBER)、笹木翔太さん(FANATIC)、田中隆太さん(FANATIC)、内田利法さん(MOSS)、吉田 “キャシャーン” 安亨さん(NOVEMBER)」

最後に家主の方とご挨拶。今日一日の作業では見た目の変化はほとんど無く、正直自分としては、微力過ぎてほとんど力になれてないな…と思っていたんですが、それでも「ありがとうございます」と言っていただき、それだけで来て良かったなと思いました。

<街の様子>

長い目線で、前向きにボランでティアを続けるのが大事

正直、僕みたいなボランティアのド素人が被災地へ一人で行って何ができるんだろうと思っていました。実は、東京から向かう途中に何回か引き返そうかと迷いました。でも、思い切って来てみて良かったです。現地に行けば助けを求めている人は必ずいて、その人達のもとに行き、自分にできる範疇のことをすればいいんだということがわかりました。

実際に現地で一日作業をして感じたことは「まだまだまだまだ、やることは山積だ」ということです。あと数日とか短いスパンで終わるレベルではありませんでした。この状況をもと通りにするまでに必要なのは、 “何か大きい一手” ではなく “ひとりひとりの小さな協力” だと思います。小さな協力を繋ぎ合わせて、一つの街を作り直す力になっていくのだと。だから僕はこれからも時間を作ってボランティアに行くつもりです。

そして、少しですが、楽しむ気持ちを持ってボランティア活動を続けていきたいです。ナーバスな気持ちだけでボランティアをしてもきっと継続しないし、広まっていかないんじゃないかなと思います。「楽しむ」というと不謹慎かもしれませんが、先述したように現地の方は笑顔で接してくださるので、それに対して笑顔で接するのは悪いことではなく、笑顔で接するからこそ被災された方に寄り添うことができるんだと僕は思います。なので、これからボランティアに行かれる方には是非、前向きな気持ちで現地入りして欲しいと思います。道具やスキルなんて持っていなくても、最低限の装備だけして向かえば大丈夫です。

今回、このような経験をさせてくださった長野ブラッシュの高橋伸幸さん

高橋伸幸さん

そして今日も現場で活動されている兵頭龍さん、他のスタッフの皆さん

兵頭 龍さん

自らのことを顧みず、復興に向けて一心に活動される姿に心打たれました本当にありがとうございました。

もし長野へボランティアに行かれる際は、以下の情報を参考にしてみてください。
長野ブラッシュhttps://www.facebook.com/naganobrush

長野県のHPにも広域情報が掲載されています。
https://www.city.nagano.nagano.jp/soshiki/fukushiseisaku/439343.html

※なるべく現地への直接の連絡は避けて、自分で情報をお探しください。また、移動は公共交通機関をお勧めします。

また、長野ブラッシュでは募金活動も開始されました。復興活動を長期間継続させる為の募金です。
来てくださるボランティアの方々への支援や運搬車両の購入、自粛ムードで困っている近隣の飲食店等に寄付されます。
下記の口座へ直接募金可能です。
可能な限りで構いませんので是非ご協力お願い致します。

八十二銀行
252小布施支店
普239930
ナガノブラッシュサイガイシエン

最後に、このたびの台風19号によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆様に心よりお悔やみ申し上げます。
また、被災された方々に謹んでお見舞い申し上げますとともに、一刻も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

(取材、文、写真:寺島直人氏)

※家屋の写真掲載については、家主の方の許可を得ています