<第1回>環境破壊をストップ、様々なスノーボードアイテムの生産も自然環境へ大きな影響を与えている
スノーボードショップやアウトドアショップなどで、あなたは「bluesign®︎」という言葉を目にしたり、聞いたことはありますか? 気づいていた方もいるかと思いますが、何を意味するかを意識していなかったという人もいるかも知れません。
産業が著しく進化していく中で、今世界はご存知のように地球温暖化という大きな環境問題を抱えています。近年では一定期間続く異常な熱波による気温上昇、集中豪雨、豪雪、温暖化による小雪など我々に身近な問題として、深刻な問題に直結しています。それはこのまま放置していいものではなく、我々が改善の道を選択しなければ、さらに状況は悪化するばかり。それほど切迫した問題になっているのです。
様々な生産活動において、より効率よく、製品の性能を引き上げるためには化学物質が多く使用され、工場ではマシンが稼働し、様々な加工、作業がおこなわれます。我々がスノーボードで使用するボードをはじめハードギアはもちろんのこと、ウエアを中心とした繊維製品においても当然のことながら様々な化学物質の使用、加工を経て、完成します。
スノーボードの生産工場では、森林管理のもとで伐採された木材の選別、リサイクル素材の使用、使用する化学物質の有害物質の排除、工場で排出する温室効果ガスの削減など、環境に配慮した工場での生産、管理をはじめているメーカーも増えてきています。メーカーによりその進度の違いはあるものの、スノーボードというスポーツを楽しむことは自然環境と密接に関わることであるからこそ、我々は真っ先にそこに真剣に向き合う必要があるわけです。
ボードをはじめとしたハードグッズ関係については、環境問題への影響を強く感じやすいものです。しかしながら、繊維製品も環境問題に大きな関わりがあります。特に有害な化学製品の使用が問題になっていることを多くの人は意識していないのではないでしょうか?
現在、世界中で使用されている化学品の25%は、直接、あるいは間接的に繊維業界で使用されていて、それらを使用した製品の生産量も年々増加しています。温室効果ガスの排出が増えたり、有害な化学物質への危険、水質汚染などの問題も深刻化してきていて、そこに対して様々な規制をかけ、改善していこうという働きかけが求められているのです。
ここでは我々がスノーボードで使用するバッグやウエアなどソフトグッズにおいて、環境問題とそれを改善に導く「bluesign®︎認証」について、みなさんにお伝えしていきたいと思います。
スノーボードアイテム生産においても、
改善すべきものがあるという現実
「PFAS」という有害物質の話を聞いたことがあるでしょうか? 近年、日本の各地でこの有害物質の流出の問題がニュースでも報じられるようになりました。自然界で分解しにくく、水などに蓄積し、発がん性もある物質として、国際条約で廃絶や使用制限がはかられている化学物質です。PFASとは4730種を超える有機フッ素化合物の総称。欧州では規制はさらに強化されてきていて、日本国内でもPFASについてはその有害性の調査、水質監視がさらに厳しくなってきています。
実はこのPFASは我々にも関係する物質なのです。PFASは耐水性、耐脂性、防汚性などに優れた特性を持つため、コーティング剤、界面活性剤、 表面処理剤など様々な用途に使用されてきました。ウエアやバックなどの防水性能を高めるために使用される化学コーティング材には、このPFASに分類される有機フッ素化合物が、これまで使われてきたのです。
もちろん、スノーボードウエア、あるいは雪上で活躍するバックパックなどのバッグ類は雪上で濡れないための防水性は必要不可欠です。防水加工が施されず、すぐ内部まで水分が染み込んでしまうようなアイテムは使い物にはなりません。機能的に優れたウエアやバックを当たり前のように使ってきた我々は、その問題をしっかり知っておく必要があるのです。
改善方法を見出すための難しさ
では、改善するにはどうすべきなのでしょう? スノーボードメーカーは、製品に使用する素材の製作を繊維工場に委託し、さらに繊維工場で繊維の加工に使われるコーティング剤、さらにその原料はすべて別の工場で生産されています。どこかの過程で有害性のある物質が製造に必要な素材に関与したり、生産される工場から有害物質を排出している状況があれば、最終的に私たちが使用する製品は有害物質を含んでいたり、環境破壊を止めるためのアクションには繋がらないことになります。
有害物質を排除するためには、製品の製造から我々の手元へ供給されるまでの過程を辿り、すべて有害性がなく、環境にも配慮した生産が行われていることを確認することができなければなりません。しかし、それは簡単なことではありません。製品をパッと見ただけでは、その製品が安全であるかどうかを判断するとは難しいですよね。どんな化学薬品が使われていたり、どんな工場で作られているかはわからないわけです。
それを示してくれるのが「bluesign®︎認証」、その名がプリントされたタグが付けられた製品なのです。
次回は「bluesign®︎」とは、どんな基準において、何を管理し、認証しているのか? について解き明かしていきましょう。