上田ユキエと水上真里、プロスノーボーダーの女ふたり旅。大好評の本連載企画は、彼女たちが日本のしっぽり渋い雪山を探し求め、食や温泉を重視した大人の旅である。
今年、彼女たちが選んだ旅先は、近年密かに注目を集めている東北エリア。前回箕輪スキー場を訪れ、グッドコンディションを当てたふたりは、次なる目的地である福島県・鷲倉温泉を目指した。
Text: Yukie Ueda
Special Thanks: K2 SNOWBOARDING、Gnu snowboarding
求める日本がここにあった
福島県・鷲倉温泉旅館。ここは冬季閉鎖になる道路の先に位置し、冬はスノーモービルのフィールドとなっている。雪深い特別な地に踏み入り、遊ばせてもらうことになった。
今回お世話になる後藤淳志くんはこの旅館の若旦那とスノーモービルのプロというふたつの顔を持つ。普段の穏やかな物腰からは想像出来ないが、スノーモービルに跨ると暴れん坊になる。到底同一人物だとは思えないそのギャップが何とも面白い。
浴衣で囲炉裏。湧き出す秘湯。極上の雪が降り積もった斜面に、源泉の湯気がもくもくと吹き上がっている。まさにこの情景、私が思い浮かべる日本の雪山の理想の姿である。
寝起きの温泉は体も気持ちも目覚めさせてくれるから大好きだ。滑る前に温泉にゆっくりと浸かり、窓の外に広がる真っ白な雪山を眺めた。そこにはモービルの跡が見えた。
かぼちゃを馬車に。大人になるって悪くない
鷲倉温泉での目玉はスノーモービルだった。スノーモービルで裏山を登り、スノーボードで滑り降りるという計画だ。最新のスノーモービルが4台用意されていた。私たちの分も、ひとり一台だ。真里も私もスノーモービル経験者だが、久しぶりに凄くドキドキする。恐々と跨いだスノーモービルの運転は、たまらなく爽快だった。エンジンの付いている乗り物でないと感じられない走り出す瞬間のパワーとスピード感。私は豪快な真里の運転に煽られながら、必死で風を切った。
私たちは腕と体全体を使ってスノーモービルを操り、どうにか山の頂上へ到達した。
スキー場とは違い、人の手の入っていない裏山。木々の間には手つかずの新雪が降り積もっていた。雪は軽くて柔らかくて、木々の隙間から太陽の光が注いでいた。おそらく地面から充分な積雪があるから深く踏み込んでも全くストレスを感じない。そしてそこにはまるで木たちが少しよけて通り道を作ってくれているような一本スーッと遠くまで見渡せるラインがいくつもあった。
木々の中を雪と遊びながら駆け抜けると、モービルが通れる林道が出てきて、そこで待ってくれているモービルの後ろにタンデムで乗り、また頂上へと登ることを何度も繰り返した。
「私このライン行く!」「私あっちのライン探してくる!」「ここは二人で行こうか」。私たちは宝探しをする少女のように、「私たちだけのライン」を探し続けた。
何と贅沢な大人の遊びなのだろうか。まるでおとぎ話でかぼちゃが馬車に変わった魔法のようだ。子どもの頃駆け回っていた足がエンジンのついたモービルになり、ダンボールやソリが機能性を持ったスノーボードへと変わったのだ。大人になるって悪くない。
見よう見まねで転びながらガムシャラにスノーボードで突っ込んできた私たちは、あの頃より自由に板を操れるようになり、優雅で美しい姿になれているのかな。
迫力満点の淳志くんのモービルライディングを見て大人の女たちはキャーキャーと黄色い声で叫んだ。この旅館で生まれ育った彼にとってここは、「本当の裏山」なのである。こんな広い山の中で育ったら、それはスノーモービルという道具で駆け抜けないと気軽にあっちこち行けないな~と変に感心させられた。
スノーモービルが連れて行ってくれた世界。そこには人工的なスキー場やテーマパークにはない面白さと、素晴らしい福島の景色が広がっていた。
スノーモービルとスノーボードで雪山を走り回った後は、またゆっくりと秘湯に浸かる。雪に囲まれた露天風呂もまた最高なロケーションだった。ここのお湯は冷えた体を芯から温めてくれ、ついでにツヤツヤと私たちを若返らせてくれた。
福島のホストたちのおもてなしは抜かりなく、疲れた私たちに福島で有名などら焼きやさんのイチゴとホイップクリーム入りどら焼きを買ってくれた。めちゃくちゃ美味しかった。さすが女を喜ばせる術を知っている(笑)。
スノーモービルのプロとして活躍するあつしくんに、スノーモービルガイドとして裏鷲倉温泉を案内してもらったら刺激的な経験になることは間違いない。
また平さんは箕輪のバックカントリーやサイドカントリーも開拓してきた人物でもある。箕輪の地形に対する太陽の動きと雪質の変化を熟知している彼にガイド(ホスト?)してもらったら最高な経験ができるはずだ。今後チャンネルガイドとしてオールシーズン楽しめるツアーを企画しているそうなので、興味のある方はお楽しみに。
撮影協力・ガイドお問い合わせ: 有限会社MT
東北・女ふたり旅 〜福島・鷲倉温泉モービル&スノーボード編〜 MOVIE
鷲倉温泉でのモービルセッションを終えたふたりの旅は次なる目的地「松島」へ。
続く。
次回は1週間後に「〜宮城・松島観光編〜」をUPします。 お楽しみに!
上田ユキエと水上真里の女ふたり旅、前回(Vol.1)の福島・箕輪編はこちら
★PROFILE
上田ユキエ(右)
1973年1月22日生まれ。カナダウィスラーでスノーボードを始め23年、ハーフパイプやビッグエアーなどの競技を経てバックカントリーの魅力にはまる。現在はアメリカに移住し5歳の息子を育てながら自らのプロ活動を続ける傍ら、キッズと母親のプロジェクト(LILKIDS&MAMA)や日本の若手をアメリカで経験させるキャンプ(CALI LIFE CAMP)などを運営している。
SPONSOR: K2 SNOWBOARDING, Billabong, MORISPO SPAZIO, NEFF, RONIN, ZOOT, CORAZON SHIBUYA, LALALATV
水上真里(左)
1976年7月17日生まれ。高校の交換留学生として行ったNEW ZEALANDでスノーボードと出会う。パイプ、ストリートレール、スロープスタイルを経て、現在はバックカントリーを中心に滑る。怪我で数年間滑れなくなったことをきっかけに都内や雪山でスノーボーダー達が楽しめるパーティー(PARTY BUNNYS)やイベント(SHREDDING GIRLS)を開催している。
SPONSOR: GNU, NORTHWAVE, DRAKE, WESTBEACH, SPY, BLACKDIAMOND, SBN FREERUN, SHREDDING GIRLS, PARTY BUNNYSイベント, 赤羽ファースト歯科