「CALI TO JAPAN TRIP」 EPISODE 6 – 東北 福島の旅。

Photo: Wataru Okamoto

今シーズンは福島を拠点に日本の雪山を滑り倒した上田ユキエファミリー。「CALI TO JAPAN TRIP」最終回でご紹介するリゾートは、宝の山と呼ばれる磐梯山の南と北側に広がる星野リゾート アルツ磐梯・猫魔スキー場にフォーカスを当てる。
Text: Yukie Ueda
Special Thanks: 星野リゾート アルツ磐梯星野リゾート 猫魔スキー場

※本企画は、上田ユキエの息子・虎之介(トラ)が、日本各地を訪れ、滑りながらそのエリアやリゾート施設の魅力を英語で海外の人へ伝えるとういうエンターテイメントコンテンツをYouTubeチャンネルTORA BURGERで配信。SBN FREERUNの連載記事では、その動画とコラボして上田ユキエ目線で各地の旅の記録を残していく。

磐梯山の表と裏

自然豊かな景色と温泉に恵まれた、宝の山と呼ばれる磐梯山。南斜面にはアルツ磐梯、北斜面には猫魔スキー場がある。アルツ磐梯の眼下に広がる美しい猪苗代湖や猫魔から望む神秘的な桧原湖や五色沼の湖沼群は、磐梯山の水蒸気爆発によって出来たそうだ。
初めて訪れた時ゲレンデから見えるこの湖の美しい景色に感動した。北米のようなダイナミックな景色ではないが、情緒ある奥深い景色が心に深く響く。

美しい磐梯山と猪苗代湖
猪苗代湖へ向かって滑っていく

磐梯山の南側は表磐梯、北側は裏磐梯と呼ばれ、それぞれのゲレンデには違う特性がある。アルツ磐梯には陽当たりの良い南面に明るく広いコースが、裏磐梯の猫魔スキー場は北斜面に降り積もる雪質の良さと降雪量がそれぞれの魅力だ。

背景にブナの木、日本の情景が溢れる猫魔
陽のあたる広いバーンの多いアルツ磐梯

磐梯山の反対側に位置するふたつのスキー場は車で移動すると1時間ほどの距離だが、山頂の徒歩ルートを歩くと15分ほどで繋がっている。
表と裏、その性格の違う両面のゲレンデを星野リゾートが経営していることにも面白さが秘められているのかもしれない。

アルツ磐梯側の徒歩ルート入り口にて

パウダー好きが集まる猫魔スキー場

シーズン始め、猫魔に滑りに行くとさっそくパウダーが降り積もっていた。北斜面に降り積もる雪は冷えていて、程よく湿度を持った軽い雪に踏み込んだ瞬間私の体にシーズンインのスイッチが押されたようだった。

シーズン初めの猫魔パウダーは私の体を目覚めさせてくれた
夫も吠えながら日本のパウダーを浴びる

斜度のある広いバーンは圧雪のカービングも降り積もったパウダーもスピード感を持って滑走できる。幅の広い中斜面のデビルコースや自然な沢地形のあるフォレストコース、急斜面のあるディープコースと、滑り手を満足させてくれるバリエーションあるコースが揃っている。シーズン始めから常設されているパークもまた私たちを楽しませてくれた。

星野リゾートに限らず今シーズン足を運ばせていただいた幾つかのリゾートで感じたのだが、リゾートがSNSで配信してくれる山の情報は親切でフレンドリーで雪山へ向かう私たちの気持ちを更に上げてくれた。その中でも猫魔の発信する情報は滑り手の気持ちに寄り添ったきめ細かいもので、天気予報で気温や風速を見るだけでは得られない情報が詰まっていた。
「雪バカ」というフレーズを掲げている猫魔。そこには「雪遊びを愛するすべての人へ」という思いが込められているのだと感じる。

雪バカがここにもひとり

アルツ磐梯というアミューズメントパーク

星野リゾート アルツ磐梯は南東北最大級のスキーリゾートというだけあって、メイン、バレー、山頂、樹氷と4つのエリアに分かれ、キャットのコースを合わせるとコースの数は22にもなる。そのほとんどのエリアから磐梯山を眺め猪苗代湖を見下ろしながら滑ることができるのだ。

アルツ磐梯頂上からの絶景
大きな猪苗代湖に飛び込んでいくように滑る

ゲレンデ目の前の星野リゾート 磐梯山温泉ホテルは雪景色を見に来るだけの人が訪れても満足できるアクティビティが充実していてリゾートの価値を存分に感じることができた。温泉に浮かんだ数々のりんご、伝統工芸の絵付け体験ができるスペース、ロビーには沢山の赤べこならぬ白いべこがツリーにぶら下がっており、会津の伝統を感じながらリラックスすることができる。

ホテルロビーに飾られた白いべこが可愛いかった
自分で好きな色を塗り絵付けができる、会津てわっさ
赤べこに日本刀。アメリカから来た少年にも最高に魅力的なアイテムだ

中でも一番私たちが気に入ったのは、数種類の茶葉からブレンドしてオリジナルのお茶を作る「薬研(やげん)こしぇる茶」というコーナーだ。茶葉を薬研という道具で砕いて蒸らす作業が9歳の息子にも面白いようで、滞在中は毎日トラがお茶を淹れてくれた。それは最高に美味しかった。

自分で選んだ茶葉をブレンドして砕く
息子の淹れてくれるお茶は最高に美味い!

今回滞在したお部屋は会津モダンスイートという名の通り和風モダンな広い空間で、雪山と絶妙にマッチしていた。

窓の外に真っ白なゲレンデが広がるモダンなお部屋

小上がりには広い和風のソファーと会津塗のちゃぶ台が設置されており、会津木綿で作られた可愛いクッションに寄りかかりながら雪景色を眺める。バーカウンターには日本酒セラーがあり、その中には最適な温度に冷えた3種類の日本酒が用意されていた。スノーリゾートにいながら、和の素晴らしさを感じられるなんて素晴らし過ぎる。

会津の伝統を感じられるリビングルーム
雪景色を眺めながらいただく地元の日本酒
2階には落ち着いたベッドルーム

アルツ磐梯では流せるパークとステップアップパークという整備された2種類のパークを楽しむことができた。流せるパークは長いコースの中にジャンプやジブだけでなくバンクやロールが設置されており、飛ぶなり当て込むなり自由な遊び方で滑れるのが魅力的だ。ステップアップパークには初中級者用のアイテムから上級者まで夢中になれるサイズまであるので、トップライダー達もよく滑っていた。

流せるパークに出現したクオーターパイプ
(岡本)ワタルとセッション

滑った後の体を癒してくれるのは温泉とリラックスできるお部屋だけではない。ホテルの食事には地元の美味しい食材がふんだんに使用され、伝統料理を初めとした食事やサービスは質が高かった。

シェフがその場で作ってくれるお料理は最高

豪華なホテルビュッフェに負けないくらい、ゲレ食の美味しさもたまらなかった。私がハマったのは人気の塩カツ丼。トラはカレーライスにどハマりしていた。

お子様カレーではなくちょっと辛いカレーに初めて美味しさを感じたようだ

その土地の雪とともに伝統を感じることは、スノーボードの旅に何倍もの価値を加えてくれるのだ。

スキーインアウトできるって最高に快適!

盛り上がる春パーク

3月になると猫魔スキー場に春パーク「猫魔ステップアップパーク」が出現した。アルツ磐梯も猫魔もパークに通っていると顔見知りが増え、リフトの上からは歓声が聞こえてくる。そんな雰囲気がとても好きだった。
聞くと猪苗代町にこもってアルツ磐梯と猫魔を滑るスノーボーダー達がいて、日本のスノーボード文化でもある「こもる」という雰囲気が懐かしくて嬉しくなった。

氷が張っていた湖はみるみるうちに溶け始め、雪に覆われていた景色は色とりどりの世界に変わっていった。特に雪解けの早い今年の春はシーズンが短かったが、私たちは移り変わる雪質と地形を存分に楽しむことができた。

45歳の夫も張り切って飛んでいた猫魔のキッカー Photo: Wataru Okamoto
リフトから歓声が聞こえてくるこの環境が最高! Photo: Wataru Okamoto

福島を拠点に日本の雪山を滑る

日本移住で福島を拠点にした私たちのシーズン。安達太良連峰から磐梯山までがホームゲレンデだった。
岳温泉から土湯トンネルを抜けると天気が変わった。20分のドライブで別世界を感じる箕輪スキー場では極上なシャンパンパウダーを味わい、土湯温泉の奥地鷲倉温泉ではスノーモービルやキッカーを作って飛ぶこともできた。更に西へ向かって車を走らせると真っ白に雪化粧した磐梯山が現れる。家事の合間に滑りに行くのは岳温泉から10分ほどのあだたら高原スキー場だ。星座の名が着けれらたリフトに揺られ、百名山である安達太良山に刻まれた朝の綺麗な圧雪バーンを何度も滑った。

福島にも魅力的な山と雪と温かい生活があることを知った。
スノーボーダーである限り、私たちの旅は続いていく。
日本という島国にはまだまだ魅力溢れる雪山が沢山あるから。

家族で最後まで楽しんだ猫魔
また来るよ!東北

 

TORA BURGER #20 HOSHINO RESORT ALTS BANDAI @FUKUSHIMA 星野リゾートアルツ磐梯

TORA BURGER#23 SPRING PARK @NEKOMA 星野リゾート猫魔の春パーク!

TORA BURGER#14 ALTS BANDAI SKI RESORT アルツ磐梯スキー場

TORA BURGER#5 NEKOMA SKI RESORT@Fukushima Japan 星野リゾート猫魔スキー場

CALI TO JAPAN TRIP」過去の記事
EPISODE 1 – 北海道旭川の旅。はこちら
EPISODE 2 – 岩手夏油の旅。はこちら
EPISODE 3 – 北海道ニセコの旅。はこちら
EPISODE 4 – 北海道ルスツの旅。はこちら
EPISODE 5 – 東北 安比の旅。はこちら

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★PROFILE
上田ユキエ
プロスノーボーダー歴27年。ハーフパイプとビッグエアーの選手としてプロ戦やワールドカップを転戦し、ムービー制作やスノーボードブランド立ち上げなど日本のガールズシーンを盛り上げたのち、結婚を機にアメリカカリフォルニア州へ移住。マンモスマウンテンに拠点を移し日本とアメリカでスノーボード活動を続けて来たが、今回家族ごと1年間の日本移住を果たす。
SPONSOR: K2 SNOWBOARDING, BILLABONG, UN, RONIN EYEWEAR, HAYASHI WAX

ORION 虎之介
2011年4月5日生まれ9歳。カリフォルニア生まれの日系アメリカ人3世バイリンガル。スノーボードとスケートボードが大好き。USASA全米スノーボード選手権2019 7Under部門総合3位。
SPONSOR: K2 SNOWBOARDING, BILLABONG, VONZIPPER, UN. RONIN EYEWEAR, ETNIES, HAYASHI WAX, MAMMOTH TRAMPOLINE CLUB