キャンバー、ロッカー、ハイブリッド、エッジ形状、チップのシェイプ、コア材、補強材……。挙げればキリがないほどの要素を組み合わせて完成する一本のボード。圧倒的なスキルがあれば、たった一本であらゆる斜面を自由自在に滑り、スタイリッシュなトリックをメイクすることもできるだろう。だが、もしも上達を狙っているライディングスタイルがあるならば、今の時代、それに適した相棒を探すのが近道だ。ここではトリック編とターン編に分けて、「板さばき術上達促進ボード」を取り上げる。
ALL Photo: ONOZUKA AKIRA
目指すゴールと現状の自分を把握する
今回はトリック編……と、トリックという言葉でひとまとめにしたけれど、ハーフパイプでのダブルコークからグラトリでのバターまで、その種類やレベルは様々だ。だが、大きく、いや強引に分けると、飛びたいのか、地を這いたいのか、の2つに分類することができるだろう。もちろん飛ぶと言っても、ハーフパイプ、キッカー、フラットバーン、ナチュラルヒット……と、シチュエーションもこれまた多種多様だ。
では、どんなボードを選べばトリックの上達が早まるのか。それは、まずは自分がどんなトリックを覚えたいのか、具体的に何を上手くなりたいのか、そして現時点での自分のレベルを正しく把握することが重要になってくる。詳細なチェックリストを完成させるくらいまで、それらを明確化させたほうがいい。これまでショップで見栄を張ったがために、自分のレベル以上のボードを手にし、扱いづらくて困ったという人は要注意。最良の相棒を選ぶならば、まずは自分に正直にあるべきなのだ。変なプライドは上達を邪魔する、と覚えておこう。
一般的には、ジャンプではボードの反発力を活かしやすいキャンバー、ジビングではアイテムにエッジが引っ掛かりにくいロッカーがベターと言われている。これは間違いじゃない。けれど、さらに細かく分析する必要がある。例えば、ジャンプでも目標レベルが5mキッカーでの360なのか、15mキッカーでの1080なのかでも変わってくるし、そもそもジャンプだけに特化してもいいのか、それともパーク全体を流したいのか……でも選ぶべきボードは違ってくる。これはグラトリも然り。ジャンプ系のトリックをリズミカルに繰り出したいのか、ロデオアンディのような一発の大技を狙いたいのか、といった具合だ。ただ、何よりも先決したいのは、繰り返しになるが、自分の目指すゴールを明確にすることである。
また、トリックに興味はあるが足腰や脚力に自信がないという人は、ある程度はフレックスがソフトなモデルを選ぶことをオススメしたい。フレックスがやわらかいボードは、トーションもやわらかいことが多いので、自分でボードを扱うスキルを身につけやすいからだ。これらを踏まえて、それぞれのライディングスタイルに適したボードを探ってみよう。
★ジャンプの上達を目指すなら
まず、パークでもパイプでもグラトリでも、ジャンプが上手くなりたい人は、キャンバー構造が組み込まれたモデルをセレクトしよう。キャンバーのおかげでハイスピードでアプローチしてもボードがブレにくく、キャンバーのしなりを活かして高く飛ぶことができるからだ。さらに着地の際に安定感が増す、ということも付け加えておこう。ロッカーボードだと後傾で着地するとテールがテロ~ンとマクられやすいけれど、キャンバーであればボードのしなりが着地の衝撃を吸収してくれたり、多少のリカバリーがしやすくなるのだ。次に考慮するべきはシチュエーション。グラトリやサイズの小さなパークキッカーでのジャンプであれば、そこまで高速スピードのアプローチを必要としないため、フレックスがやわらかめのキャンバーボードがオススメだ。ボードセンターはソフトだが、バインディングの外側から補強材で少し硬く設定されていると、さらにベター。また、キャンバー要素が入っているならばハイブリッドボードもセレクト対象に入れてもいいだろう。ただし、高速域でのアプローチが必要なビッグジャンプになると、クイックな反応を可能にしてくれ、さらに着地での安定性を高めてくれるようにフレックスは少し硬めを選ぼう。ハーフパイプならばスピードが欠かせないのでフルキャンバーで硬め、ボトムターンのキレ味も考えるとウエスト幅も細めのモデルがオススメだ。ここからは、ジャンプの上達を目指すためのボードを紹介。
PIC UP!
眞空雪板等
TEPPEN
真のエアを手に入れられるTEPPEN。ラインナップの中でも最軽量を誇り、フルキャンバー構造を採用したTEPPENは、ジャンプに特化したモデルと断言してもいいだろう。なぜなら、キャンバーがもたらす力強い反発力に加えて、ハイスピードでのアプローチやパイプでのボトムランも安定度が抜群にいいのだから。>さらに詳しい記事はコチラへ
★Size: 141、152、154、156cm
★Price: ¥65,000
ALLIAN
PRISM
ライダーから絶大な支持を得てきたモデル。厳選ウッドコアとX-CARBONが、ミディアムフレックスながらノーズとテールに反発力をもたらし、快適な操作性を可能にする。NANO CARBON 999をソールに採用したことで滑走能力もさらにアップ。ブラックベースのINVISIBLEには158cmが存在する。
★Size: 150, 152, 155cm
★Price: ¥75,000
BURTON
CUSTOM
ポップ感と正確性に優れたパワフルなキャンバーが、鋭いエッジコントロールを可能に。反発力と強度のアップ、そしてウエイト削減のために、コアの特定エリアには強くて軽いウッドを使用。軽量で扱いやすく、ジャンプで的確なレスポンスを引き出してくれる。平昌五輪ではショーン・ホワイトと平野歩夢が愛用していた。
★Size: 150, 154, 154W, 156, 158, 158W, 162, 162W, 166W, 170Wcm
★Price: ¥82,000
NITRO
BEAST
ボードセンターのコアを薄くしてトーションを使いやすくした、スタンダードなキャンバーのツインチップボード。ボードセンターからノーズとテールに向けてはコアを厚くし、上手く弾けば最高のオーリーパワーを発揮してくれる。さらにカーボンをボード中央に内蔵しているのでレスポンスもクイック。
★Size: 151, 155, 158cm
★Price: ¥98,000
YONEX
PARKAHOLIC
ミディアムフレックスの高い操作性に加え、カーボンによる高反発性がハイエアを完全サポートしてくれる。ほどよくワイドなウエストとSTOMP-TECH JIB構造が、ランディング時の衝撃を和らげつつ安定性も約束。意のままに動く高いコントロール性を誇るボードで、パークライディングを満喫しよう。
★Size: 148, 151, 154cm
★Price: ¥77,000
★グラトリ&ジビングの上達を目指すなら
グラトリ&ジビングを安心して行うためにも、より軽快な動きを可能にするためにも、ボードの取り回しのよさとアイテムや雪面への引っ掛かり感がセレクトするときのキーポイントとなる。グラトリにしろジビングにしろ、超高速アプローチが必要というわけではないので、フレックスはソフト、レングスは短めのほうがボード自体を扱いやすくなる。ただし、アイテムへのエッジの引っ掛かりを軽減するべく、フラットボードかロッカーボードをチョイスした場合は、あまりにもソフトボードだと安定感が損なわれるので注意したいところ。また、グラトリでジャンプ系のトリックを多く繰り出したいのであれば、ボードの反発を活かせるキャンバー要素が組み込まれたモデルが◎。例えば、ボードセンターはキャンバーだが、両足から外がロッカーになっているハイブリッド形状などが、これに当てはまる。バターやドライブといったクイックな板さばきを重視したいのであれば、取り回しのいいロッカーがオススメだ。スケートボードが得意な人であれば、ベタ底感覚で乗れるフラットボードもアリ。ただ、ロッカーのズルズル感が苦手な人は、超ソフトフレックスのキャンバーというのも悪くない。いずれにせよ、ソフトフレックスとショートレングスをベースになっていることに変わりはない。以下はグラトリ&ジビングの上達を手助けしてくれるボードを紹介。
DC
MEGA
チームライダーたちの度重なるテストを経てリリースされたMEGA。スケートボードをコンセプトにしたロック&ロードキャンバー構造と、反発性を高める軽量フレッシュデッキ・トップシートを組み合わせ、実にスケートライクなモデルに仕上がった。DCだからこそ完成した一本だ。
★Size: 150, 153, 156cm
★Price: ¥65,000
PUBLIC
GENERAL
両足間はキャンバーながらノーズとテールにはロッカーを採用したモデル。クイックなレスポンスが特徴で、なおかつ反発力も高いため、グラトリでは高さのあるオーリーを仕掛けやすい。適度なミドルフレックスなので、ソフトフレックスにありがちなボードのバタつきが少ない点も見逃せない。
★Size: 147, 150, 153, 154W, 155, 157cm
★Price: ¥57,000
RICE 28
RT7
ボード本来のアウトラインをリアルに体感でき、しなりや反発をダイレクトに感じられるキャンバーモデル。教科書のようなボードをコンセプトにしたRT7こそ、成長するためのキッカケになること間違いなし。中低速域だけでなくスピードを出してもトリックを仕掛けやすいため、欲張りなライダーにオススメ。
★Size: 148, 150, 152, 154cm
★Price: ¥87,000
011
BALANCE
スタンダードと革新を融合したニューモデル。クイックなエッジ・トゥ・エッジを意識したナローシェイプ、そしてトリックもカービングも両立できるように2段階サイドカーブを採用。クセのないNVコアとFTCのコンビネーションは、すべてのレベルの滑り手に新たなトリックへの扉を開いてくれる。
★Size: 148, 150, 151, 152, 153cm
★Price: ¥86,500
BATALEON
WALLIE
ジブとパークライディングを想定して作られたWALLIE。スケートボードからヒントを得たWallie Tips™が搭載されノーズとテールが極端に上向きにベンドされているので、クイックな人工物や地形でもノーズとテールが引っかからない。しなやかなフレックスに、足裏の2本のカーボンがトリックに必要なポップを生み出してくれる。
★Size: 148, 151, 154, 154W, 156cm
★Price: ¥68,000
TECHNINE
CAMROCK X JAHLIFE
テックナインの中でも非常に軽いCAMROCK X JAHLIFEは、ソフトフレックスに設定したハイブリッドモデル(ダブルロッカー)だ。両足間のキャンバーがポップを生み出し、ノーズとテールに搭載されたロッカーが遊びの幅を無限に広げてくれる。ジブやグラトリをした時の足への負担を減少し、取り回しやすさを重視している。
★Size: 136, 138, 142, 146, 150, 153, 155cm
★Price: ¥49,000
★地形遊びの上達を目指すなら
フリーライディングをしながら目の前に現れる地形を活かしてトリックを仕掛けたい。誰もが憧れるライディングスタイルを、よりイージーに実現させてくれるボードが存在する。それはキャンバーとロッカーのいいところを融合させたハイブリッドボードだ。例えば、迂回路などでよく見受けられる壁地形。キレイなRになっていることは少なく、急激に斜度が変化するケースがほとんどだ。そういったポイントにフルキャンバーのボードで突っ込むと、超ピンポイントで合わせないとノーズが刺さるか、バランスを崩してトリックどころの話ではなくなってしまう。なので、ノーズに軽くロッカーが入っているモデルがオススメだ。また、アプローチも的確に描いて入らないと、狙っているトリックを繰り出しづらくなるので、ターンの正確性をアップさせてくれるキャンバー要素も欲しいところ。ボードセンターがフラットかロッカーで両足の下にキャンバーがあるダブルキャンバー、ボードセンターがキャンバーで両足の外からロッカーになっているキャムロックといった形状がオススメだ。さらに、パウダーを滑りながら地形で遊びたいのであれば、ノーズにロッカーが取り入れられていないと、ボードセンターに重心を置いたままコントロールしにくいということも覚えておこう。最後に、フレックスは低速域だけで遊ぶわけじゃないので、あまりにソフトすぎるとボードがバタついてしまうので注意しておこう。レングスに関してはウエスト幅やボード形状次第では短くても問題ない。地形遊びの上達をサポートするボードがこちら↓
PIC UP!
BOUND
NEW LOOK
ゲレンデの隅から隅まで欲張りに遊び尽くしたい人にピッタリなのが、この「NEW LOOK」だ。その最大の特徴は、何と言ってもキャンバーとロッカーのハイブリッド形状であるCAMROCK仕様にある。この構造のおかげで、キャンバーの持つ高い反発力とエッジグリップ力、そしてロッカーのルーズな乗り味を見事に両立。>さらに詳しい記事はコチラへ
★Size: 138、140、146、150、152、155cm
★Price: ¥50,000
PIC UP!
NEVER SUMMER
PROTO TYPE TWO
パーク、ジブ、ストリートといったフリースタイルライディングで抜群のコントロール性を発揮するFUNSLINGERという名作ボードと極上のエッジホールドと強い反発を発揮するオールマウンテンボードのRIPSAWのいいところを合わせたPROTO TYPE TWO。 >さらに詳しい情報はコチラへ
★Size: 152, 154, 157, 160, 155X, 158X, 161X(X=Wide Version)
★Price: ¥92,000
DRAKE
TEAM KOHEI
工藤洸平がスペックからデザインまで手掛けたシグネチャーモデル。ボードセンターにはカーボンロッドが組み込まており、ほどよい反発を生み出してくれる。また、ディレクショナルツインのキャンバーなので、バンクでも安定したライディングが可能。地形を活かしたトリックも思いのままだ。
★Size: 152, 154cm
★Price: ¥73,000
ENDEAVOR
PIONEER
ボードセンターはキャンバー、ノーズとテールは緩やかなロッカーを採用したツインチップのハイブリッドボード。チャンネルシステムの両サイドには2本のカーボンを入れて反発力を高めており、パークにしっかり対応するだけでなく、ゲレンデ内のあらゆる地形でも楽しめる仕様となっている。
★Size: 141, 144, 147, 150, 152, 154, 156, 158cm
★Price: ¥69,000
GNU
HEAD SPACE
フォレスト・ベイリーが自身の経験をもとにデザインしたスペシャルボード。トゥとヒールでサイドカーブの異なる左右非対称マグネトラクションエッジが、どんな地形でも、どんなコンディションでも確実なエッジングを可能にしてくれる。また、芯材もトゥとヒールで構成を変えているのも特徴だ。
★Size: 149, 152, 155, 155W, 158cm
★Price: ¥68,000
NOVEMBER
ARTFREEDOM
オールマウンテンで活躍するように、操作性に優れたトーションとフレックスを持ち合わせた一本。自然の地形変化に対応するフリーライド性能を持ちながら、パークでの高いパフォーマンスをも可能にしてくれる。センタースタンスでのスイッチライディングも余裕でこなせる自由度の高さも特徴だ。
★Size: 144, 148, 152, 154, 156cm
★Price: ¥82,000
この特集の続き、vol.2の「ターン編」を1週間後(10/17にUP予定)に掲載します。スノーボードに必要不可欠なターン。このターンで目指すべきゴールに適したボードが何なのかを探ってみますので、お楽しみに!