X-TRAIL JAM in TOKYO DOME 2008

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X-TRAIL JAM in TOKYO DOME 2008

スノーボードに限ったことではないが、コンペティションが進化の一端を担っていることは言うまでもないだろう。
スノーボードは競うべきものではない…という議論もあろうが、“競う”こと自体をライダーが楽しみ、オーディエンスも楽しんでいるとすれば、それもスノーボードの一つのカタチなのだろう。
また今年も、X-TRAIL JAM IN TOKYO DOMEがやってきた。実に9回目の開催となる。今年はどんな進化が見られるのだろうか。

 
13.Dec. Quarter Pipe
今回のサプライズの一つは、急遽決まったショーン・ホワイトの参戦。2年ぶりの登場となる。
そしてもう一つは、トラビス・ライスの腰椎損傷による欠場。コンペの雰囲気は出場するライダーによって一変する。大会は波乱含みの様相を呈してきた。

日本人予選は、鈴木翔太(BURTON)、熊崎圭人(SALOMON)、平野英樹(BURTON)、細川孝介(KISSMARK)、藤野智也(BURTON)、村上史行(FORUM)、成田陸也(ROME SDS)、そしてWILD CARDを勝ち上がった鈴木拓巳(BURTON)、宮脇健太郎(RIDE)、百瀬康昭(FLOW)の10名。
2RUN、BEST POINTで行われた。
結果は、鈴木拓巳、熊崎圭人、百瀬康昭、村上史行の4名が予選を勝ち上がった。いずれもトリックの完成度も当然ながら、高さとスタイルでたたき出したポイントだ。本戦でも招待ライダーらといい勝負になるのではと期待させられる。

本戦の予選はこの4名に加え、そして日本人シードライダー、海外招待待ライダーを交えた計16名によって35分のJAM SESSION方式で競われる。
日本人のシード選手は村上大輔(K2)、藤田一海(K2)、中井孝治(BURTON)の3名。そして海外招待ライダーはリスト・マティラ(DRAKE/northwave)、トースタイン・ホーグモ(DC)、ニコラス・ミューラー(BURTON)、ケビン・ピアース(BURTON)、ピート・ピロイネン(BURTON)、セバスチャン・トータント(NITRO)、ショーン・ホワイト(BURTON)、テリエ・ハーコンセン(BURTON)、チャズ・ガルデモンド(DC)の9名。

予選JAM SESSIONがスタートすると、各ライダー1本目はシンプルな技でメイクしてくる。まずは回転数よりも高さでアピール。メソッドやトゥ・フェイキーなどでスタイル重視。そんな中、一際速いスピードでクォーターにつっこんでくるライダーがいる。トップスピードでバーチカルを駆け上がると小さな体がロケットのように宙にはじき出される。フィンランドから来たピート・ピロイネンだ。会場からも大きな歓声が上がる。
続くライダーたちの闘志にも火が付いたようだ。ショーン・ホワイトも高さのあるストレートエアをトゥイークでメイク。続くテリエもお馴染みのマックツイストでご機嫌伺い。
ややスローペースで始まったJAM SESSIONだが、中盤ぐらいからスピードアップ。中井孝治はスイッチバックサイド360や、アーリウープ540、フロント720などバリエーション豊富。藤田一海はバックサイド720、フロント900までをメイク。テリエの空中で一瞬時が止まったかのようなエアも健在。リスト・マティラはマックツイストをこれぞリップ・トゥ・リップと言わんばかりの正確さでメイク。昨年のTTRチャンピオンであるケビン・ピアースのバックサイド720もスムーズ。ニコラス・ミューラーも独特なスタイルでマックをメイク。
そんなお馴染みのライダーの中にあって、初登場ながらチャズ・ガルデモンドがちょっと気になる。大きな体格なのに板さばきがスムーズでしかもスタイルが決まる。カッコイイ。

結果は、ショーン・ホワイト、ケビン・ピアース、ピート・ピロイネン、チャズ・ガルデモンド。リスト・マティラ、テリエ・ハーコンセン、藤田一海、中井孝治の8名が準決勝に進むこととなった。しかし、8位の中井が最後の1本で脳しんとうを起こし出場を断念。9位のトースタイン・ホーグモが繰り上がりで準決勝進出となった。
見応えのある予選JAMだった。しかしこの後、セミファイナル、ファイナルまでが全てJAMセッション。何度もハイクアップする選手達には申し訳ないが、一ファンとして嬉しいの一言。

セミファイナル、ファイナルは更にヒートアップ。ハイレベルなトリックの応酬となった。明らかにこのコンテストを引っ張っていたのはショーン。ショーンのライディングが他のライダーを刺激し、さらにショーンが応酬する。なんとも負けず嫌いなライダーが集まったものだ。セミファイナルで惜しくも敗退したが藤田一海も、海外勢に負けないトリックとメイク率。今後が楽しみだ。

最終結果は、
優勝 ショーン・ホワイト(BURTON)
2位 チャズ・ガルデモンド(DC)
3位 ピート・ピロイネン(BURTON)
となった。

私の記録が間違っていなければショーンは、予選JAMからファイナルまで全部で16本。僅かに体制を崩したのは1本だけだったと思う。そして2位のチャズも、16本ほとんどメイクしていたと思う。
トリックのバリエーション、高さ、そしてメイク率。ポディウムに立つにふさわしい結果だった。

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qp-02▲QP RANK 1 BIB#16 Shaun White

qp-03▲QP RANK 2 BIB#2 Chas Guldemond

qp-04▲QP RANK 3 & HIGHEST BIB#12 Peetu Piiroinen
qp-05▲ BIB#1 藤田一海(8位)

qp-06▲ Travis Rice & Shaun White
qp-07▲HIGHEST BIB#12 Peetu Piiroinen


14.Dec. Straight Jump

9回目となるX-TRAIL JAMのストレートジャンプが開催されるこの日、東京ドームには4万人を超える観客が詰めかけた。

お気に入りのスノーブランドのアパレルを身にまとった、明らかにスノーボーダーっぽい人種と、普通の街着に身を包んだ人種が入り交じる。若い人達が多いが、年配の方やファミリーも目に付く。X-TRAIL JAM自体が実に幅広く受け入れられているイベントだということがわかる。

オープニングの幻想的な光と音の演出がオーディエンスの期待を高める。恒例の花火の轟音とともに歓声が上がる。
日本テレビのラルフ鈴木アナと、ニール・ハートマンのダブルMCに加え、昨年現役を退いたライオ田原が解説。そしてタレント若槻千夏が華(?)を添える。

競技スタート。
今年のストレートジャンプは日本人予選からドラマチックな展開。
1本目を終えた時点で1位は中井孝治(BURTON)の298点。レイト気味に回すCAB720、グラブもステイルフィッシュでかなりスタイリッシュ。2位は石川敦士(FLOW/QUIKSILVER)が得意のスイッチバックサイド720インディで285点。谷口尊人(ALLIAN)はCAB900テールグラブもしっかり入って256点で3位に付ける。予選通過ラインの4位は関功(ALLIAN)。シャッフル入れたB720で198点。

そして2本目。ドラマはここから始まった。
ワイルドカードから勝ち上がってきた山口真太郎(VIONG)がフロントサイド1080テールグラブをメイクして296点。一気に暫定2位に踊り出る。
谷口尊人の2本めはマサカリを繰り出す。メイクした!と思った直後、雪面にエッヂを取られバランスを崩す。ほとんどセーフと思われたが、点数伸びず145点。この時点で暫定4位に。
続く石川敦士はスイッチバックサイド900がメイクならず、暫定3位のまま。
暫定1位の中井孝治は、この時点で後の3人を残して予選通過確定。しかし攻める。フロントサイド900をインディグラブ持ちっぱで完璧にメイク。304点は本日初の300点オーバー。2位以下を引き離す。
ラス前のチョコバニラボール新井(YONEX)が予選通過するには谷口尊人の256点以上が必要。スイッチバックサイド720ミュートグラブを…メイクっ!282点で暫定4位に滑り込む。
そしてラストの石田貴博(FORUM)。282点以上なら予選通過だが。チャレンジしたトリックは、1本めにメイクならなかったダブルフロントコーク+180(仲間内ではダブペニ900と呼ぶらしい)。なんと土壇場でこの技をキッチリメイク!会場が歓声で包まれる。そしてジャッジは313点!再び会場がどよめく。
この結果、1位石田貴博、2位中井孝治、3位山口真太郎、4位石川敦士までが予選通過。バニボは惜しくも通過ならず。涙を飲んだ。

そして、本戦予選。
日本人シードは、岡本圭二(VOLKL)、平岡暁史(RIDE)、鈴木伯(K2)の3名。
海外招待ライダーは、前日と同じくショーン・ホワイト(BURTON)、トースタイン・ホーグモ(DC)、チャズ・ガルデモンド(DC)、セバスチャン・トータント(NITRO)、ニコラス・ミューラー(BURTON)、ピート・ピロイネン(BURTON)、ケビン・ピアース(BURTON)、リスト・マティラ(Drake/northwave)、テリエ・ハーコンセン(BURTON)の9名。
日本人予選通過の4名を加えた16名で本予選35分間のJAMセッションがスタート。例年なら本予選は2RUNベストポイントだったが、今年はここもJAM。
一人あたり7〜8本のジャンプが見られる。なんとも贅沢な大会だ。
2RUNの場合は、1本1本に緊張感があって見応えがあるが、やはりJAMでは思い切ったトリックも繰り出されるだけに楽しい。
一番手の平岡暁史CAB900メイクで幕を開けたJAMはいきなり高回転の応酬になるかと思われたが、石川敦士のスイッチバックサイド540やチャズ・ガルデモンドのスイッチ・トゥイーク、ニコラス・ミューラーのレイト・バックサイド180などスタイリッシュな技も次々と披露される。1巡目のラストはテリエの優雅なバックフリップ。2巡目3巡目ともなると高回転・高難易度のトリックが飛び出す。CAB900はもう標準トリック。ショーンがCAB1080、フロントサイド1080を連続メイクすると、トースタインがスイッチバックサイド1080をメイク、チャズもCAB1080をメイク、いずれもまだまだ余裕すら感じる。セバスチャン・トータントがコーク720、ピート・ピロイネンも投げだし系のバックサイドロデオ720や、900をメイクすると、去年一躍話題をさらった岡本圭二がダブルバック+180を披露する。日本人ではトータルで中井孝治がかなりいい。CAB720、CAB900、フロントサイド900、バックサイド900とバリエーションも多彩で、メイク率でも海外勢に一歩もひけをとらない。山口真太郎がついに終了間際にフロントサイド1260をメイク。予選通過に期待が高まる。

しかし、予選の結果はトースタイン・ホーグモ、ピート・ピロイネン、ショーン・ホワイト、チャズ・ガルデモンド、リスト・マティラ、ニコラス・ミューラー、ケビン・ピアース、セバスチャン・トータントの8名となった。中井は惜しくも9位で、セミファイナル進出ならず。

そしてセミファイナル。
このセミファイナルはまさに圧巻だった。そしてX-TRAILのストレートジャンプは、このセッションで確実に次の次元に上がったと言っても過言ではないだろう。

1巡目、ショーンがまさかのCAB900失敗。階段を駆け上がるショーンの姿に動揺が隠せない。2巡目にトースタインがスイッチバックサイド1260をステイルフィッシュで完璧にメイク。私たちが座る記者席からも「うぉっ!」と声が上がる。それもそのはずだ。予選で真太郎がF1260をメイクしたが、バックサイド1260やCAB1260を通り越していきなりスイッチB1260だ。次元が違う。
ピートは、回転数こそ及ばないものの、独特の体勢からCAB900、バックサイド900、フロントサイド900、バックサイドロデオ900、そしてCAB1080までを確実にメイク。ショーンは、僅かに手をついてはいるものの、CAB1260、バックサイド1260まで繰り出し挽回を図る。昨年の覇者リストもスイッチB900までメイクするが、次世代には及ばない。同じく、かつてX-TRAILを沸かせたニコラス・ミューラーもこのままではセミファイナル敗退が濃厚だと思われた。しかし最後の1本。大きなバックフリップ1回転したと思うと、回転が止まってバンザイ状態から更にもう一回転のスーパーレイトバックフリップ。ドームが震えた。難易度で言えば、もはやダブルバックフリップは大技ではない。しかしこのダブルバックには、ジャッジも記者も、そしてオーディエンスも声を上げざるを得ない。それだけ異質な空気感をまとったダブルバックだった。

セミファイナルの結果が出る。トースタイン・ホーグモ、ピート・ピロイネン、ショーン・ホワイト、そしてニコラス・ミューラー。この4名がファイナルへと進んだ。

ファイナルの結果をお伝えしよう。
1本目。ニコラスがCAB900テールグラブをメイクして310点。ショーンはCAB1080が僅かに合わず223点。ピートがバックサイドロデオ900をミュートグラブ持ちっぱなしでメイクし338点。トースタインはセミファイナルでメイクしたスイッチバックサイド1260を失敗し177点。
2本目。
ここからは点数が発表されない。
ニコラスはスムーズなダブルバックフリップをメイク。ショーンはCAB1080メロングラブを完璧にメイク。これでわからなくなった。続くピートはCAB1080が合わず。そして最後、トースタインが、スイッチバックサイド1080を繰り出す。ステイルフィッシュグラブをおよそ900(2回転半)まで持ちっぱなしの完璧なスタイルでメイクした。

全ての試技が終了し、会場は興奮の余韻に包まれた。
結果は以下の通り。
優勝 トースタイン・ホーグモ(DC)
2位 ピート・ピロイネン(BURTON)
3位 ショーン・ホワイト(BUROTN)
MIR 石田貴博(FORUM)

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冒頭に書いた通り、スノーボードに限ったことではないが、コンペティションが進化の一端を担っていることは言うまでもないだろう。
進化の過程の1コマを、目の当たりにできたことを幸せだと思う。
そしてこれからもまた新しい進化の1コマを見たいと純粋に思う。

自動車業界には今、未曾有の逆風が吹き荒れている。しかし、このイベントを長年スポンサードしているNISSANに敬意を表したい。そしてこのイベントが長く続くことを願ってやまない。
st-02▲SJ RANK 1 BIB#5 Torstein Horgmo
st-03▲SJ RANK 2 BIB#12 Peetu Piiroinen

st-04▲SJ RANK 3 BIB#16 Shaun White
st-05▲SBN&雪番長ライダー: 平岡暁史(本選予選15位)

st-06▲雪番長ライダー: 石川敦士(本選予選14位)
st-07▲雪番長ライダー: バニボ(日本人予選5位)

st-08▲MOST IMPRESIVE RIDER:#21 石田貴博
st-09▲ライオ田原、若槻千夏、ニール・ハートマン、ラルフ鈴木st-10

text:Mr.

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