patagonia / ショップリニューアルに込められた 「環境問題に向き合い、行動する」ためのプログラム

POWの紹介や白馬バレーツーリズムの山岳エコリゾートへ向けた取り組みなどを通して今起こっている気候変動を伝える

patagonia の直営店舗のひとつである東京・神田店がリニューアルオープンした。コンセプトはスノーと登山のテクニカルウエアに特化したラインナップと、製品をより長く使うためのプログラムを提供するショップ。その中には中古品の販売やレンタルプログラムの開始といったパタゴニア日本支社として初となる試みも含まれる。この新しい取り組みにフォーカスを合わせ、今回のリニューアルを通してパタゴニアが目指すことを探る。

Photo: ZIZO

ウエアを循環させて、過剰な破棄を抑える

「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」という企業理念のもと、patagonia はこれまで、環境負荷を抑える製品製造方法を取り入れるなどの企業努力を続けながら、我々ユーザーにも環境問題に向き合うために「アクションを起こすことが大切だ」というメッセージを伝え続けてきた。しかし実際に行動に移すことを難しいと感じる人も少なくない。そこでpatagonia が考えたのは、行動につながるプログラムを提供すること。

そのひとつがレンタルウエアプログラムだ。ここにはシェアすることで過剰な購入や廃棄を抑えようという狙いがある。初心者や年に1 ~ 2回しか滑りに行かない人にとっていきなりpatagonia のウエアを購入するのはハードルが高いかもしれない。レンタルという方法ならば出費を抑えつつ環境に配慮した製品を使うことができるし、大して使わないまま劣化して捨ててしまうこともない。大きな負担なく環境活動のアクションに参加できる。

さらに、レンタルで得た収益は全額「Protect Our Winters Japan(POW)」に寄付されるため、POWがおこなっている「雪を守るための活動」を支援するという間接的なアクションにもつながっていく。

※「Protect Our Winters(POW)」_スノーボーダーのジェレミー・ジョーンズが立ち上げた環境団体。気候変動から雪を守るためにアクションを起こすことを呼びかけている。日本(POW JAPAN)では小松五郎氏が代表理事を務める。

レンタル期間は最大1週間(貸し出し~返却まで)、レンタル料はウエア上下で¥4,000(税込み)。 11月中旬より予約開始、12月下旬より貸出スタート。予約受付は使用する1ヶ月前から電話や店頭にて。ただし実際の貸出は店頭のみ。実際に店頭に行って、サイズや滑るシーンなどを相談しながら適切なウエアを選んでもらおう。返却は宅配も可能。利用後はメンテナンスされ、機能を回復させた状態で再度貸し出される

もうひとつの新しい試みは中古品の販売。こちらもサイズアウトをして使えなくなったり、何年もタンスに眠らせたままになっているウエアを必要な人に使ってもらうことで、製品を循環させ、廃棄する量を減らすことを目指す。

ユーズド製品は生地が磨耗していたり新品に比べて撥水性などの機能はやや低下しているが、もちろん雪山での使用に支障がない範囲。洗濯、撥水処理後、2度3度の検品も行われているので安心して使うことができる

長く使えるか、環境に配慮されているかを吟味する

もちろん新品のアイテムを買うことも間違いではない。長く使えるかを吟味したり、環境に配慮した製品かどうかを調べたうえで購入するという行動が意味を持つ。また、ダメージを受けたり劣化したウエアを買い換えずに修理して使うことを「選べ」ば、それも立派な行動の一つになる。
それぞれの選択肢がある中で吟味する。ここで提供されるプログラムを通じて、環境問題に向き合い、行動するということの理解を深め、次のアクションへ繋げていくことができる。

ソーイングキット(左)とリペアパッチ(右)。リペアパッチはある程度の傷や穴は塞いでしまうし、山でウエアが切れてしまっても応急処置として使用することもできる。店頭ではリペアパッチの使い方を教わりながら自分でトライすることもできるし、スタッフさんに頼むこともできる。その場で直せないものは、patagoniaのリペアセンターに修理に出すことも可能。どんな修理が必要なのか、相談してみよう
スノーワックスにも環境に配慮されたものがあることはご存知だろうか。パタゴニア製品以外でも選択肢を提案している。我々にとって必需品だからこそ慎重に選びたい

「雪山を守る」ために自分ができることを探してみる

常設の展示パネルにはPOWの紹介や白馬バレーツーリズムの山岳エコリゾートへ向けた取り組み、白馬エリアの気温変化と降雪の推移など、スノーに特化した情報が展示されている。POWの発信する情報をキャッチしたり、再生可能エネルギーで運営するスキー場を探して滑りに行ってみるなど、知り得た情報をもとに行動することで、自分でできることを探ってみるきっかけになるだろう。

行動する理由はシンプルに「大事な雪山を守るため」。難しく考えずに、ずっと長くスノーボードをし続けられる未来を想像すれば、自然と体が動いているかもしれない

環境問題に向き合う人々の集える場所に

神田ストアは地元千代田区神田地域でも積極的に活動している。毎年神田で開催されている冬のキックオフイベントにPOWを招き「大切なフィールドである雪山を気候危機から守ろう」というメッセージをともに伝えた。また地域の高校に気候危機問題を学ぶ機会を設けた結果、生徒賛同のもとスキー学校が白馬に変更されるなど、地元での活動も実を結んでいる。このように、お店が地域とローカルコミュニティと一般ユーザーをつなぐハブになることを目指している。

スタッフの皆さんもそれぞれできる範囲で楽しみながら行動している。その経験を聞くのも貴重な体験だ
今回お話を伺ったストアマネージャーの三橋さん。自身もスノーボーダーであり雪山をこよなく愛する。フィールドを守るため、雪を守るために、店頭や地域のコミュニティで、一緒にアクションを起こしてもらえるように働きかけ続けている

「テクニカル製品の中古販売、レンタルプログラムといった新しい取組を通して、アクティビズムを伝えることはチャレンジであることは確かです。お客様への説明、伝え方といった点も今まで通りではなく、さらに踏み込んでお客様自身にアクションを起こしてもらうようにしていくことは、ただ説明するだけでは伝わらないと思いますので、スタッフの経験なども踏まえて一緒に考えていけたらと思います。私たちは常に楽しみながら問題に取り組むことをしてきているので、皆様と一緒に行動できることを嬉しく思います。
今回の取り組みを通して、お客様自身が自分達のフィールドを守るには何をするべきかを理解して解決に向けてアクションを起こしてくださると嬉しいです。多くの方にプログラムを活用いただき、『私たちのフィールドである雪山を守るために、行動を起こす』というメッセージを伝えていきます」三橋氏

・パタゴニア公式サイト www.patagonia.jp

・パタゴニア東京・神田 Instagram