
ニューヨークで生まれたクラフトマンシップと、日本の職人技術が互いに響き合いながら進化する「OWNER OPERATOR」は、国境を越えた共同制作によって唯一無二のアウターウェアとグローブを生み出すブランドだ。本国ブルックリンと山梨のCAT VILLAGE、そしてハウスメイドの縫製者が同じ思想を共有し、価値あるものを丁寧につくり続けている。その背景にある深いプロダクトへの想いをこの記事で掘り下げていく。
国境を越えて進化するブランド
ニューヨーク州の雪深い街で育ったスティーブンとピート。スノーボードを通じて友情を育み、互いに美術学校とファッション学校へ進んだ2人が、2008年に立ち上げたブランドが「OWNER OPERATOR」だ。ブルックリンに自社工場を構え、素材選びから裁断、縫製に至るまで、すべてを自分たちの目が届く距離で行うことにこだわる。技術のある労働者の手から生まれたものに正当な価値を与えるべきだという信念は、創業から変わらない。ゆえに製品は決して安くはないが、価格以上の「正しいものづくり」を体現することにこそ、彼らの誇りがある。



OWNER OPERATORが提示する世界観の原点には、90年代初頭のスノーボードシーンにあった “ローテクで刺さる格好良さ” がある。最新機能を詰め込むのではなく、当時の空気感やシルエットが持つ魅力を現代に再構築する。ファッションとスノーボードの境界線を行き来する彼らにとって、そのマインドこそがブランドの軸なのだ。ロゴを作ることさえ躊躇したほどだが、最終的に採用されたアライグマのアイコンは、1980年レークプラシッド五輪のマスコットから着想を得つつ、クラシックなデザインに小さなギャップを生む“遊び”として機能している。象徴として掲げるのではなく、あくまでデザインに寄り添う存在である点にもブランド哲学がにじむ。


そんなOWNER OPERATORは、2023年、日本と再び手を組むことで新たな進化を迎えた。ブランドは2008年に日本でも展開を始めたものの、一度は活動が途絶えていた。しかし円安などの現実的な課題から輸入のみでは価格が高騰してしまう中、本国から「もう一度一緒にやらないか」と声がかかったことが、再始動のきっかけとなった。日本側は迷わず応じ、山梨県・CAT VILLAGE(AFD ICEGEARを生み出す日本屈指の工場)と連携し、本国のパターンをベースにしたジャパンメイドのウェア生産がスタートした。
この取り組みは単なるライセンス生産ではなく、本国と日本が対等な関係でブランドを共作するプロジェクトである点が特徴的だ。パーツは可能な限りブルックリンから支給され、日本側は生地に日本の素材を選ぶ。日本が新たなデザインを提案すれば、本国がまずファーストサンプルを制作し、それを日本へ送り、双方が確認しながらパターンを微調整していく。工程は複雑だが、“OWNER OPERATORはひとつのブランドである”という純粋な信念が、国境を越えて共有されているからこそ実現する共同作業だ。結果として、日本で作られたウェアは本国サイトでも販売され、その逆も成立する。いまやブランドはアメリカ製・日本製という枠を超え、2国のカルチャーと技術が呼応し続けるユニークな存在へと進化している。

作り手の心が通うウェアとグローブ
ウェアのラインナップは、日本とアメリカが互いに影響を与え合いながら組み立てており、現状はジャケット2型、パンツ2型、グローブ2型が共通で展開されている。本国ではビブパンツやフルジップのカスタムオーダーも行っており、ユーザーが着丈や身幅、色、パッチ、ドローコード仕様まで選べる仕組みも健在だ。いわば “必要なものだけを丁寧につくる” という姿勢が貫かれていて、毎シーズン無理に新作を作る必要はないという哲学もブレない。創業時から続くその考え方は今も受け継がれている。

一方で、日本におけるグローブ作りはさらにパーソナルで、情熱的だ。輸入代理店ネイティブプロダクツのスタッフでありフォトグラファー/クリエイターとして活動するYoshiJosefToomuchが、わずか二人からなる本国チームと同じように、自宅でミシンを踏み、パターンから裁断、縫製まで完全に “ハウスメイド” でグローブを作り上げている。分からないことがあればビデオチャットで本国に直接確認し、2024年にはスティーブンが来日して実践講習を行った。翌年には本人がニューヨークへ渡り、3日間ひたすら本国の縫製技術を隣で見続けるほどの熱意を注いだ。こうして培われた知識と技術が、今日のOWNER OPERATORのグローブを支えている。



このブランドをともに発信するライダーたちの存在も大きい。山根俊樹がウェアを使用し、山村 未駆人はウェアとグローブを使用する。さらに平岡 卓、武田 誠、他にも中尾“MASAI”正明、大信雄一、加治秀之といったT.J BRANDファミリーもグローブを愛用している。ウィメンズでは松田 麻衣子や畠山絵美など、多くのスノーボーダーがその哲学に共感し、実際の滑りを通してブランドを体現している。

OWNER OPERATORの魅力は、決して商品単体のスペックだけにとどまらない。ニューヨークで生まれた思想、日本の職人技術、双方のクリエイターたちが丹念に積み上げたコミュニケーション、それらすべてがプロダクトに詰まっている。アメリカ製か日本製かではなく、「どちらも本気でつくっている」という事実こそがこのブランドの真価なのだ。価値のあるものを、価値あるつくり方で世に送り出す。そんなシンプルで力強い想いが、このブランドのすべてに貫かれている。
大量生産でも、流行消費でもない。スノーボードカルチャーとスタイルへのこだわりをリアルにつなぐアイテムが欲しいなら、OWNER OPERATORは確かな答えを持っている。雪上でその思いが詰まったウェアやグローブを使えば、きっと今まで以上に充実したスノーボーディングを楽しめるはずだ。

OWNER OPERATOR Official site
USA: https://www.owneroperator.us/
JAPAN: https://nativeproducts.jp/owneroperator-japanmade/





