Go My Way. – 角野友基インタビュー <後編> -「オリンピックに出て成績を残すのは、自分の中でのケジメだと思っている」

Photo: Christian Pondella / Red Bull Content Pool

<前編>では、出場が叶わなかった平昌五輪について、またコンペティションにこだわる理由や、自分の限界を超えるゾーンに対する自身の見解などについて話してくれた。インタビュー後編は、スノーボーダーとしてコンテスト以外に今後表現したいことや、これからの目標について話を続ける。
Edit+Text: HaruAki

*こちらの記事は、「STAY HOME」スペシャルコンテンツとして、FREERUN本誌 2020年1月号(2019年12月27発売)掲載インタビュー記事を特別公開しています。

E X P R E S S I O N  I N  M O V I E

「映像を観た全員の口が開いたまま塞がらないような作品を残したい」

-ゆくゆくは大会ではなく、映像で魅せたいという想いはある?
ありますね。自分の映像を観た全員の口が開いたまま塞がらないような作品を残したい。そのためなら1年じゃなくて2年に渡って撮り溜めてもいいです。もしくは、オレがカッコいいと思うライダーを集めてチームを作ってDVDを出すのもアリですね。それを引っさげて全国各地で試写会をやるのもいいなって。オレが昔から知ってるスノーボードってそうやったから。今みたいに大会を追いかけるカタチだけがスノーボードじゃないので。そこに戻りたいなって。

-どんなフィールドをメインにしたいの?
スノーボードを使っていたら何でもいいです。パークだけじゃなくて、ストリートもバックカントリーも攻めたい。とにかくオールラウンドに魅せたいんです。偏ったのは好きじゃないから。上から下までの流れのなかで自分を表現したいっていうか、自分のスノーボードのすべてを魅せたい。ジャンプの最先端トリックから、バックカントリーでの攻めたライン、ストリートでのエグいカットまで。スノーボードが上手い自信はあるから、どんなフィールドでも何回か滑ったら大丈夫やと思うんです。もちろん、最初は転がりまくるかもしれないし、それぞれの難しさも知っているけど、逆に挑戦のしがいがあるじゃないですか。

-誰に観てもらいたい?
スノーボードをしてない人に観てもらいたいのはもちろんだけど、ガッツリとやってる人たちにも観てもらいたい。で、あんぐりさせたいんです。オレ自身、カズ(國母和宏)くんの『KAMIKAZU』を観て、めちゃくちゃ喰らったから……。それで山を滑りたいってめっちゃ思えるようになったんで。オレ、その場で頭を下げましたからね。「今度、山に連れて行ってください。一緒に滑ってください。『KAMIKAZU』を観て、オレ、めっちゃ滑りたくなりました」って。

-今、滑れるフィルマーを探してるって聞いたんだけど、それは直近でも何かしようと考えてるってこと?
そんなフィルマーがいたら、ちょっとドキュメントっぽい映像を作ってもいいかなって。オリンピックまでの道みたいな……。それに、そういった映像を観てもらって、もっとオレに興味を持ってもらい、それから滑りの映像を観てくれたほうが、オレっていう人も理解してもらえるだろうし、よりスノーボーダーとして魅せられるんじゃないかなって。滑りだけやったらわからないところもあるし伝わりにくい部分もあるから。そんなイメージを持っているからフィルマーがいるなら、すぐにでも映像を撮り始めたいですね。そして、次のオリンピックの直前なのか直後あたりにバンって出せれば面白いかなと思ってます。

ノーグラブのバックサイド180でもカッコいいものは、やっぱりカッコいい。RED BULL RECHARGED 2019にて Photo T-BIRD / Red Bull Content Pool

 

I  W A N N A  B E  A …

「オレのスノーボードを観て前を向ける人がいたり、何かに気付ける人が増えてくれたらうれしい」

-今シーズンは、どんな動きをするの?
1月半ばあたりからアメリカに渡って練習し、1月末にはX GAMES、翌々週のDEW TOURに参戦し、それが終わったら帰国してCOWDAYに出ます。そのあとは2月に中国で行われるX GAMESに出場し、その直後にアメリカに行ってすぐにUS OPEN。3月頭に日本に帰ってきてからはHAMMER BANGER SESSION、AIRMIXって予定です。あとは、RED BULLの映像プロジェクトがあるから、それでも動く予定ですね。

-ユウキが大会を離れるときってくるのかな?
それはくるでしょうね。自分に限界を……もう無理やって感じたら、スパーンと止めるんじゃないかな? だって、X GAMESのような大会は、そのときに脂が一番乗ってるライダーが出るものやから。でも、まだ23歳。きっと当分は先のことだと思いますよ。

-今、足回りのギアって?
今はハードギアのスポンサーを探しているところです。でも、さすがに早く落ち着きたい。ちょこちょこギアが変わると感覚も変わっちゃうので……。とりあえずギアを安定させないことには前を向けないかなと思ってます。そして、もっとスノーボードに専念したいですね。

-大会を回るライダーにとっては、自分の手足のように使うギアが変わるって大変だよね。
去年はめっちゃ調子よかったのに、X GAMESでいきなり新しいスポンサー候補のテストボードに乗ったんです。ボードの特性もよくわからないまま、お披露目みたいな感じで……。そのときは身体が動くし、スノーボードの調子もよかったから、どうにかなるかと思ったけど、やっぱりどうにもならなかった。

-今後、どんなライダーになりたい?
直近はオリンピックでメダルを獲って、そのあとは自分が出演する映像を観た全員を驚かせたい。それで……ゆくゆくは太陽みたいな存在になりたいんです。スノーボーダーの太陽みたいな存在に! かなりデカいことを言っているのは知ってるし、オレみたいな人間じゃ無理って言われるかもしれないけど……。でも、コイツのスノーボードを見ていれば大丈夫だって思われたい。だからこそ、トリック、ライディングスタイル、ライフスタイル……すべてをひっくるめて、オレはスノーボーダーやぞっていうのを魅せたいんです。何が正解なのか、今はわからないですけどね。オレが考えるカッコいいスノーボードをして、その姿を観ることによって前を向ける人がいたり、何かに気付ける人が増えてくれたらいいなって。

-ユウキにとってスノーボードって?
考えたことないくらいオレにとっては生活の一部だし、ごく自然と存在するもの……かな? これがないとオレは生きていけないかも。息をするのと同じだし、やってないと情緒不安定になっちゃうかもしれない。ただ確かなことは、これまでオレはスノーボードにすごく助けられてきたってこと。だから、オレにとっては言葉以上の自己表現のツールみたいな感じですかね。それにしても、ここまで人生を180度変えられるものってすごいですよね?

-これから再び快進撃がスタートするような直前のタイミングでインタビューができてよかったよ。
そうですね。自分の中の気持ちにも整理がついたし、この数ヶ月間、特にこの1ヶ月間で、人としてかなり成長したって自分でも思えるタイミングやったから。あとは、スノーボーダーとしての人生を全うしつつ、自分だけじゃなくて周囲のスノーボーダーも潤わせられればと思ってます。下の世代のライダーがのびのびとスノーボードできる環境を整えたいし、本当にスノーボードを好きな人たちが笑ってスノーボードができる環境を作りたいなって。

大きなギャップを実に角野らしいスタイルで放物線を描く。彼が空中にいる間は、流れる時間がゆっくりに感じるから不思議だ。アメリカ・アスペンでのシューティングにて Photo: Blotto
Photo: Burton

角野友基 Y U K I  K A D O N O
1996年5月18生まれ。兵庫県三木市出身。8歳のときに父親の影響で兵庫・六甲山スノーパークでスノーボードを始め、11歳でプロ資格を取得。小学・中学生時代はオフシーズンも神戸のインドアゲレンデや神戸KINGSで腕を磨いた。2012年、AIR+STYLE北京大会でアジア人として初優勝。2014年、ソチ五輪スロープスタイル8位入賞。2015年、AIR+STYLEロサンゼルス大会にて優勝。同年のUS OPENスロープスタイルでも優勝と、これまでに輝かしい成績を残し続けてきた。2017年にはHAMMER BANGER SESSIONでバックサイド・クワッドコーク1980を繰り出し世界中を震撼させた。スポンサー: RED BULL, OAKLEY

Go My Way.
– Y U K I  K A D O N O  I N T E R V I E W – END.

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次回のインタビューは、突き抜けたスタイルとスノーボードに対する熱い情熱を持つ「山根俊樹」です。お楽しみに!