今もなおシーンのトップを走り続けるプロスノーボーダー・布施 忠。これまで自身のライフスタイルをプロダクトに落とし込んだシグネチャーウエアを、10年に渡ってBILLABONGからリリースし続けてきた。そんな布施は今シーズン、BILLABONGが自信を持って世に送り出すSympaTexという高性能素材を採用したADNENTURE DIVISIONというコレクションのウエアを纏うこととなった。これまで布施がBILLABONGと歩んできた道を振り返りながら、今季のウエアについて、また今後の話を布施本人とウエアのデザイナーであるDezzy氏に聞いた。
Photo: Taro Koeji

布施 忠とともに進化し続けてきた10年間

まずはBILLABONGがリリースしてきた布施のシグネチャーウエアについて、ウエア担当デザイナーであるDezzy氏に話をうかがった。
「2010年から僕もBILLABONGに関わるようになって、タダシくんのシグネチャーウエアをリリースする初年度からデザインに携わらせてもらいました。これまでコーチジャケットやワークウエア、ジャパン企画のハイエンドウエア、オールドスクールなビンテージウエアなど、シーズンごとに異なるテーマを設けて、それを妥協することなく追求し、いいプロダクトを表現してこられたと思います。本当に様々なデザインを生み出してきましたが、そのコンセプトは常に等身大のタダシくんのライフスタイルを切り取ってウエアに落とし込むことでしたね」

2009年11月にBILLABONGは布施忠とグローバル契約をする。その年に監修モデルとして初めてのシグネチャーモデルをリリースする。ちょうどその前年度からJAPAN LIMITEDが加わり、TADASAHIモデルは国内企画の開発の基盤にとなっていく。2011年以降、さらに高機能なウエアのデザイン開発を取組み2つのモデルに分かれいく。一つは山を滑る為の機能、素材に特化したデザイン、もう一つは彼自身が好きなワークウェアのカジュアルさを落とし込んだデザイン。それは彼のライフスタイルを表現したもので、山を滑るけれど着こなしは普段と変わりないスタイルで、かつ高機能であるウエアである。それが何年か進化し続け、2014年はGLOBAL MODELとして、USA, CANADAでリリースされることになる。同年、LIFE STYEL PROJECTのフィルマー越路太郎も加わって”A DAY IN THE LIFE”というテーマに沿って、滑り手と撮り手と作り手が一つになり、ウエアに対してのストーリーがより深く組み込まれていく。
2016年にはライダー20周年として、彼の功績を祝うモデルをリリース。これまでのデザインと機能性を組み合わせモデルを1つに集約する。この年あたりから忠はカナダから日本に拠点を移し、誰も踏み入れていない未開の地を開拓していくことになる。撮影プロジェクトとして”EXPLORE”をLIFE STYEL PROJECTと取組み、今まで見たことのない日本の山でのラィディングをウエアと共に刻み込んでいる。そして、2018年は”THROWBACK’92″というテーマ。BILLABONGが初めてスノーウエアをリリースしたのが1992年。ファーストライダーはノアサラスネックだった。彼はBILLABONGとSIMSのライダーであり、忠のスポンサーも現在、彼と続くように同じである。当時のウエアデザインをインスピレーションとして、彼のオールドスクールなスタイルと組み合わせることで、スローバックしたテーマを落とし込んだウエアをリリースする。
そして、布施 忠のシグネチャーウエアは、2019年に10TH ANNIVERSARYとして集大成を迎えた。

プロ活動20周年、シグネチャーウエア10作目など、様々な節目をBILLABONGとともに歩んできた布施。そんな彼は今もベテランという枠に収まらないほどエネルギッシュで、いつも冒険少年のごとく目をキラキラと輝かせながら、スノーボードと真摯に向き合っている。そんな彼は今シーズン、自身のシグネチャーウエアではなく、SympaTexという高性能素材を使用したADNENTURE DIVISIONのラインのウエアを着用することになった。それは彼自身がBILLABONGと新たなるステージへのトビラを開き、新たな一歩を踏み出したということにほかならない。

10周年という集大成を経て、2020年はBILLABONGと新たなるステージへのトビラを開く。


BILLABONG × SympaTex by ADVENTURE DIVISION

ADVENTURE DIVISIONのウエアについて深く知るべく、再びDezzy氏に話を聞いた。
「もともとBILLABONGではSympaTex採用ウエアはけっこう前からやっていたんです。ただ、それを日本で本格的に展開していくのは今シーズンからなんですよね。
そもそもSympaTexとは、ドイツアクゾノーベル社が開発した、厚さ10ミクロンの無孔質ポリエステル素材のこと。水蒸気を伝導するという性質を持った特殊加工されたポリエステル系素材が湿気を外に逃がしてくれるんですよね。しかも、無孔なので目詰まりせず、空気やバクテリアも通しません。そして、特筆するべきは過酷な環境にいるライダーの身体を守るため、かなり防風性が高いということ。耐水圧も数値にすると45,000mmもあります。さらに100%リサイクルのメンブレンなので、環境に対してのサスティナブルな取り組みについても考慮されています。あと、SympaTexはストレッチ素材なので、BILLABONGでは表地と裏地にストレッチが効いた生地を採用しているので、かなり動きやすいんです」

ここでSympaTexについて補足をしておこう。多くのメンブレンに使用されている素材は多孔質タイプと呼ばれるもので、無数の微小な穴が開いている非常に薄いフィルムを生地にラミネートした素材だ。透湿性に優れ、汗をかいてもムレずに快適なのだが、微小な穴が目詰まりを起こすと機能が損なわれてしまう。一方、SympaTexは前述したとおり無孔質タイプ。水蒸気が抜ける穴もないのにムレが抜けていく不思議な素材なのだ。水蒸気は分子レベルで移動する無孔なので、水滴を通さず目詰まりの心配もない。そんな高性能ながら、他の代表的なメンブレンに比べるとコスパが高い素材である。

「冒険を愛する人たちのために存在する高性能なプロダクトを展開するADVENTURE DIVISIONは、すでにスノーではグローバルチームのボード・メリル、ヴォレ・ニベルトなども着用しているコレクションです。もちろん日本ではタダシくんが着用しています。

布施の活動フィールドは日本の山岳地帯だけでなく、カナダの広大なバックカントリーフィールドも視野に入る。まさにワールドワイドなアドベンチャーを体現している

このADVENTURE DIVISIONのハイエンドモデルには部分的にプリマロフトが背中に入ってて保温性も高いです。ただ、タダシくんはバックカントリーで身体を動かし続けることが多いから、いつもはインサレーションがそこまで封入されていないモデル(DELTA STX JKT)を愛用しています。プリマロフトが入っているモデル(PRISM STX JKT)はゲレンデをメインに滑るときに着用することが多いようですね」

冒険をしながら国内外の新たな斜面を開拓する布施。滑る環境にあわせてSympaTexを採用したウエアを使い分ける

ADVENTURE DIVISIONでSympaTexを採用したウエア

カラー: ERM, DTA

▲PRISM STX JKT
価格: ¥42,000(税別)
サイズ: S, M, L
カラー: ERM, DTA
表生地: 2L Sympatex®プレーンストレッチ
耐水圧 : 45,000mm
インサレーション: PRIMALOFT®エンジニアパネル

カラー: AUB, BLK, ERM

▲DELTA STX JKT
価格: ¥38,000(税別)
サイズ: S, M, L
カラー: AUB, BLK, ERM
表生地: 2L Sympatex®プレーンストレッチ
耐水圧: 45,000mm
インサレーション: 60g Body / 60g Sleeves / 40g Hood

カラー: BLK, DTA, ERM

▲NORTH WEST STX BIB
価格: ¥34,000(税別)
サイズ: S, M, L
カラー: BLK, DTA, ERM
表生地: 2L Sympatex®プレーンストレッチ
耐水圧: 45,000mm
インサレーション: シェル


SympaTex × 布施 忠

布施 忠がそのフィーリングをフィードバック

「素材のことまでは詳しくないんだけど、SympaTexを使ったウエアは着ていてすごく調子よかったですね。これまでのシグネチャーウエアよりも軽くなったし、ストレッチも効いててゴワつく感じもない。今までシグネチャーウエアではキャンバス生地など使ったりして、自分のスタイルや見た目を重視してきました。それに以前は高性能ウエアを着ているのを見ても、そんなのを着ても上手く滑れるかって言ったら違うじゃんって思ってて。だから、そういったものに対してのアンチテーゼみたいなウエアを手掛けてきたんです。自分のライフスタイルからブレないってのがコンセプトだったから。ただ、最近は自分のなかで変化があったのか、今はいいモノを着て、さらにパフォーマンスが上がるなら、そのほうがベターなのかなって思うようにもなってきたんですよね。

これだけのパフォーマンスとスタイルを表現するためには調子いいプロダクトは必要不可欠だ。

実際にSympaTexを採用したウエアを着て、スノーモービルで山奥に入って過酷な環境での撮影を経験したんですけど、明らかに今まで以上に身体が軽く感じたし、それが動きの軽快さ、結果的にいいライディングに繋がったのは事実です。濡れないし風もシャットアウトしてくれるから寒くないですし、北海道のゲレンデを滑っているときも本当に調子がよかった。

スノーモービルで山の奥地へ向かう布施。こんな環境下でも十分な機能性がある。
撮影現場のハードな動きも快適に過ごせた

レイヤリングはいつもファーストレーヤー、セカンドレイヤー、シェルですね。滑っているときは動き続けているから、これで十分。ただ、撮影のウェイティングのときはインナーダウンも着ることもありますね。あと実感したのが透湿性の高さ。汗をかいても乾くのが速いなって。特にハイクしてるときに感じましたね。
そう考えると、このSympaTexのウエアはどんなレベルの人が着てもオーバースペックにならず、ずっと快適な状態をキープしてくれると思います。初心者だとコケると立ち上がろうとするときに動いて汗をかくじゃないですか。ちょっと滑れる人よりも初心者のほうが汗だくになるから。そんな人にもピッタリだと思いますよ。自分は激しいところを攻めに行きたいし、そのためには動き回ることもあったり……いや、むしろ滑りながら汗をかきたいタイプかも(笑)。だから、このウエアはとても気に入ってるんですよね」

▼布施 忠が着用するADVENTURE DIVISIONライン

▼BILLABONG ADVENTURE DIVISION TRUSTED BY TADASHI FUSE


これまでの10年とこれから

「最初のシグネチャーウエアは、めちゃくちゃシャカシャカするウインドブレイカーみたいなのを作ったんですよね。それが10年前っていうのが信じられない。つい、この前のような感じがするから(笑)。振り返るといろんな思い出があるけど、常に自分のライフスタイルをプロダクトに落とし込めたっていうのは本当によかった。ちょっと前までは、BILLABONGって言ったらサーフィンのイメージが強かったじゃないですか。でも、オレが入ったことで流れというか風が変わったように感じられた。それがすごく嬉しくて。BILLABONGのスタッフのみんなと一緒にスノーボードをしながら、その楽しさを分かち合ったり、サーフィンも一緒にしたり……本当にいい思い出しかないですね。デザイナーのDezzyくんも昔からウエアを手掛けてきた経験もあるし、ずっとオレのシグネチャーウエアとも向き合ってやってくれた。そんな仲間たちと同じ遊びで同じ方向性を共有しながらできたのが、これまで続けこられたことに繋がってるのかなって。ただ作って終わりじゃない。そういうところもスノーボードショップの人たちが感じ取って応援してくれた理由なんじゃないかなって今は思うんです。

布施とDezzy氏によるウエアのデザインミーティングの様子
布施のプロ活動20周年を記念して野沢でイベントを開催した時の写真。ウエア開発に携わったデザイナーDezzy氏(右)もこの日を自分ごとのように喜び盛大に盛り上げた。 Photo: BILLABONG
BILLABONGスタッフと一緒にスノーボードをしながら楽しさを分かち合った。このコミュニケーションがあったからこそ今がある。Photo: BILLABONG

今シーズンは自分も今までやったことがないようなことにチャレンジしていく予定なんですよね。いろんなスノーボーダーに直接レッスンで教えたりとか、一緒に山に行くツアーみたいなことを計画しています。詳しくはインスタでチェックしてください。あと、LSP! 略さずに言うとライフスタイルプロジェクト。そこに関わってる人たちが、どんなライフスタイルを送っているかっていうのをリアルに伝えられるような動きもしていきたい。ただ、いい滑りや、いい場所を見せるだけじゃなくて、自分の芯を崩さないで自分のスタイルを貫いていきたいと思ってます。これからも何をするにもアツくやっていきますよ。自分はそうしないと気が済まないタイプだから」

これからも自分のスタイルを貫きながらBILLABONGウエアとともに新たなシーンをリードしていく。

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