ローカルライダーたちが集う新潟・石打丸山。庭野“キャスパー”陽平に滑り続ける理由を聞いた。



新潟は湯沢・魚沼。東京駅から新幹線を利用すれば1時間あまりでアクセスできるため、首都圏在住のスノーボーダーも足繁く通うエリアだ。ここには様々な特色を持ったスキー場が点在しているが、なかでも長年にわたってローカルライダーたちが自然と集まり続けているのが石打丸山だ。なぜ彼ら彼女らは、石打で滑り続けるのか。

Photo: Itsuki


朝イチは山頂に行かずして始まらない

現在、石打のパークプロデューサーを務めているキャスパーこと庭野陽平。このエリアで生まれ育った彼は、幼少の頃から今に至るまで、石打をホームマウンテンにスキルとスタイルを磨き続けてきた。今シーズンはFREERUN12月号のメイン特集に登場し、自身初となるフルパート『WAY OF LIFE』を配信するなど、これまでのスノーボーディングライフを様々なカタチでアウトプットしてきた。そんな彼に石打を滑り続ける理由を聞いた。

「このエリアの他ゲレンデと比べて、いい感じの光が当たるんですよ。それだけで気分が全然違うじゃないですか。晴れた日の朝イチにゲレンデのトップまで行くと、斜面にキレイな光が当たっていて、眼下には美しい風景が広がってる。そこへ飛び込むような感じでゲレンデクルージングできるのは石打ならではだと思います」

圧雪バーンにもパウダースノーにも、朝の優しい光が降り注ぐ

パウダーが降り積もれば、朝からツリーランエリア(山頂)を攻めたり、山頂ゲレンデのハジパウを当て込んだりするそうだが、たとえ降雪がなくても、朝イチは必ず山頂まで行くのがキャスパーのルーティン。お目当ては、クオリティの高いグルーミングバーンだ。

「気分的にモヤモヤしてるときでも、山頂からかっ飛ばすとスッとするんですよ。圧雪の質もいいからカービングも最高に気持ちいいですしね」

朝イチの山頂ゲレンデでのカービング。絶景へとダイブするかのような感覚を味わえる
マッタリと山頂ゲレンデをクルージングしつつ、狙いを定めたポイントでハジパウを喰らう
気分爽快になるための超高速ライディング @山頂ゲレンデ
ツリーランエリア(山頂)でのパウターン

ちなみに、パウダーが良すぎる場合は、朝イチからナイター終了までパウダーハントに興じることもあるという。ただ、「コースが面白いっていうのは最低限。いや、何度も滑りたくなる理由として当たり前」とキャスパーが言うように、長年にわたって滑り込んでも飽きさせないのは、石打にはバラエティに富んだ地形がゲレンデのそこかしこに点在しているからだ。そして、それだけに留まらないと言う。

リフト1本1本が、やたらと濃い

「リフトのつなぎは決していいほうではないかもしれない。でも、その分、リフト1本1本がめちゃくちゃ濃厚なんですよ。“あそこのスポットを集中して滑りたいから、あのリフトを回そう”とか、狙いのスポットを回しやすいし、そんなリフトがいっぱいある。それは自分にとって逆にメリットですね。しかも、10年以上滑ってるのに飽きない地形もいっぱいある。自然地形なんで、シーズンによって時季によって同じカタチじゃないですしね」

周囲の人の流れを読んで、メルヘンコースの壁地形をヒット
こちらもメルヘンコース。両サイドに壁があるので遊び放題
尾根コース脇の地形を活かしたターン。画になりすぎる!

ローカルたちは、そうやってリフトを効率的に使いこなしながら、遊べる地形の宝庫・石打を滑り込んでいる。
また、面白そうなヒットポイントがあっても、そこに適したスピードでエントリーできないとイメージどおりの遊びはしづらいもの。だが、石打はそういったポイントにスピードをつけて入れる斜面が、その直前にあるから不思議だ。そんな当てどころが必ず用意されているのも、石打の地形の面白さだろう。入るライン、スピードによって、遊び方が無限に広がる。だから、幾度となく滑っても飽きないのだ。

尾根コースの壁地形で放ったメソッド・トゥイーク
上の写真と同じ地形だが、アプローチスピードを落として繰り出したハンドプラント


イケてる滑り手が作り手だからこその奥深いパーク

とは言え、人気エリアの人気スキー場ゆえに、多くのスノーボーダーやスキーヤーによって、時間の経過とともにバーンは荒れてゆく。そうなったときに足を運ぶのが、スノーパークだ。

「石打のパークって、かなり歴史があるじゃないですか。昔からカルチャーを発信してきた場所だからこそ、自分は魅力的に思えるんです。今はプロデューサーをやらせてもらってますが、今シーズンもスノーボーダーも、スキーヤーも、フリースタイラーもフリーライドが好きな人も、上級者も初心者も、すべての人が満足できるパークを目指してます」

軸ズレのフロントサイド360メロン

ジャンプやジブを攻める王道ラインを行くもよし、アイテムの起伏を活かしてラインを繋ぐもよし。ゲレンデ内の地形同様に、パークも無数の遊び方が存在する。だからこそ、石打のパークには「正解のライン」がない。ジャンプを飛ばなくてもいいし、地形だけを繋いでもいい。その日の雪、その日の気分で遊び方を変えられる設計になっているからだ。

多くの人が石打のパークに魅せられる理由。いつの時代も滑り手たちに刺激を与え、滑走欲を掻き立ててくれるのは、やはり優れたパーク造成クルーの存在があるからだ。

「オペレーターが本当に最強なんですよ。自分たちがイメージしたものを、ほぼ重機だけでカタチにしてくれるんです。しかも、かなりの安全設計で」

オペレーターを務めるチュータ氏いわく、「自分やディガーたちが誰よりも石打のパークを滑ってる自信があります。その全員が生粋の滑り手なので、ディガーからのフィードバックがあって、どんどんパークが進化していく。造成が難しそうなアイテムのリクエストがあっても、彼らの要望には応えたいし、そこに挑戦することで自分の圧雪技術も向上していく。それが、すごくいい循環なんですよ」とのこと。

フロントサイド360のステイルフィッシュで宙を舞うキャスパーとキッカーのノリ面でビッテリーターンをかますチュータ氏。この写真だけで意思疎通が完璧なことが伝わってくる
ディガークルーにトレインの撮影をリクエストすると、恐ろしく近距離でエントリーしてきた。お互いの滑りを認め、そして信頼し合っている証だ
全員がイケてるスノーボーダーでありスキーヤーのディガー軍団。この日は他撮影で不在だったが、石打ローカルスキーチームのY.B.Iのライダーも在籍している

そんな彼らだからこそ、石打のパークは常に時代が求めるニーズに合致したアイテムやレイアウトに仕上がっているのだ。石打のパークが進化し続ける理由は、造成する側が“作って終わり”ではなく、“滑り続けて考え続けている”からだ。

今後のパークの展開について話し合うチュータ氏(左)とキャスパー(右)
フロントサイド・リップスライド。アイテムのグラフィックもキャスパーが担当しており、様々なメッセージが込められている

「パークは、まだまだ進化していきますよ。今あるアイテムがベースとなって、さらに3Dに遊べるようにもしていく予定ですし、新しいアイテムを設置することも考えています。楽しみにしていてください」

パーク全景。写真をよく見ると、ここでもオペレーターとディガー軍団が滑っている

さらに、石打丸山の春のお祭りイベント、「SHARE」。今年は3月28日(土)に開催される予定だが、例年であればスノーパークの上部に特設コースが造成されるところ、今年は現在のパークを徐々にSHARE用にリメイクしていくとのこと。

もちろん整備時間になればキャスパーも作業をおこなう
パーク整備が終わった午後。この時間帯に光が当たるスポットを狙って、再び地形遊びを楽しむ。パラダイスコースでのクレイル
上の写真からラインを繋いでのステイルフィッシュ


雪以外も人を惹きつける石打の空気感

また、今シーズンの石打は、週末になればゴンドラ乗り場の近くでDJがゴキゲンなサウンドを届けている。

「スノーボードだけじゃないものが、いろいろ絡み合ってる感じが、やっぱり石打だと思うんです。だから、昔から今に至るまで、ずっと好きな場所なんですよね」

スノーボード、音楽をはじめ、様々なカルチャーが交差し、新しい何かが生まれる場所。ローカルが石打を滑り続ける理由は、雪やコースだけじゃない。この山に流れている空気そのものが、彼らを引き寄せているのだ。

下山途中のザイラーコースでも起伏で遊ぶ
パークを眺めながら、今後の展開を妄想するキャスパー

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