藤沼 到、40個のトリックを収録した記念ムービーを公開!

プロスノーボーダーとして、また、様々なイベントMCとしても活躍する藤沼 到氏から、今年40歳を迎えた記念ムービーが届きました。このムービーには、2015年に負った大怪我や、その後のリハビリの日々、支えてくれた周りの人たちへの感謝の思いが込められています。
藤沼氏の思いとともにぜひご覧ください!

(以下、藤沼氏が綴ってくれた動画制作への思いです)

予想以上に酷かった怪我の状況と
リハビリを続けられた思い

世間ではスポーツ選手の靭帯断裂がニュースに取り上げられるほど大きな怪我ですが、僕の場合は前、後、内側の3本の靭帯が断裂しました。さらに僕の怪我の中で最も深刻だったのが、普通スポーツの怪我では起こり得ない膝蓋腱の断裂だと言われ(「膝蓋腱の断裂」は、通常は高所作業の落下事故などで起こる怪我らしいです)、膝蓋腱をつなぐ手術がうまくいかなければ上手に歩く事も厳しいという現実を受傷直後に突きつけられて…。同時に、MRIには映らない大腿骨と脛骨の間にひっくり返るように移動していた外側半月板損傷や、くっきり膝の近辺で折れていた腓骨骨折は僕の怪我の中では軽症だとも告げられ…。それはもうスタートの時点で圧倒的な負け試合をさせられるような、コールド負け確定の点差からプレイボールする、みたいな…w。

リハビリは肉体的にも精神的にもかなりキツかったです。リハビリを始めた当初は、曲げる事も伸ばす事も出来ない膝を無理やり曲げて伸ばしてって感じで、大袈裟ではなく毎日ギャー!って叫んでリハビリが終わる感じで(^◇^;)。そんな厳しい時間を長く過ごしていたので、自然と前向きな気持ちが薄れていき、「これはもう正直走る事とか無理じゃないか?」「走れもしなきゃ滑るなんてもっと無理じゃないの?」って、ネガティブになっている自分を感じる時間も長くなったかもしれません。

ただ、僕が怪我をした事で大先輩ライダーの皆さんや、それまで疎遠だった人たちや、本当に大勢の人が励ましのメッセージをくれたり、お見舞いに来てくれて…。諦める事はすぐにでも、いつでもできる簡単なことだけど、「それって応援してくれた人達に対してとてつもなく申し訳ないことなんじゃないか?」と思うようになりました。さらに、怪我してスポーツを、夢を諦めるという話は何度も聞いたことがあったので、もしもその状況を自分が覆す事ができたら、同じような境遇の人へ少しでも希望をプレゼントする事ができるのではないかと考えました。そんな考えが頭に浮かんだら「頑張って頑張って頑張り抜いて、やれるだけやれたら、また勇気を出して板を履いてみたら良いんじゃないか?そうしなきゃダメだ!」と思うようになりました。

また、様々な方が気遣ってくださってイベントへMCなどで呼んでくださり、徐々にスノーボードの現場にもお声がけいただける機会が増えてきて、気持ち的にも「自分はスノーボーダーだ!自分の居場所がここにあるんだ!」と思えるようになりました。

ただ…どうしてもスケートボードをする勇気が持てなくて。スノーボードで斜面を降りられるならスケートボードでもボウルのカービングなどはできるよね?と、誘われた事もありました。が、転倒を防ぐための逃げの動きをするためにはダッシュできる体の強度が必要だと考えると、素早く動くことが難しい僕にはハードルの高い動作だと思い、3年半もの間、子供の頃から大好きだったスケートボードから目を背け続けていました。

今となって考えると「うまくいかなくて悲しくなるかな」とか「デッキに乗ってもあまり動けない自分を人前に晒すことが恥ずかしい」とか、心の中で様々な葛藤があったのですが…。

始めた頃の思いを再確認したことが
スケート再開のきっかけに

白馬番亭でガイドをしている友人のNAKAYA KENZO(Scooter, TADPOLE craft Backyard)に誘われて上越にあるプロショップNEVERLANDに行った時に、仲良しの小学生がやりたいトリックをメイクできず悔し涙を流しながら何度もそのトリックにトライし続けているのを見て、心を動かされました。
「あぁ、僕の考え方は何てちっぽけだったんだろう。人に見られたくないから滑らないなんて馬鹿げている。人のために滑るのが目的じゃない、楽しみたいから滑るんだ、楽しいから、自分のために、自分が楽しいから滑るんだよな!?」と思って、その子に「僕も一緒にそのトリックをやるから見ててよ!3年半ぶりに技をするからメイクできないかもだけど、見てて!」って言って。トライしたらメイクできて…「あ!? 僕の体はこれくらいの事には耐えられるくらいは強くなったんだ!!」と自信を持つ事ができました。

それからはサッカー選手がリフティングをするように、野球選手がキャッチボールをして怪我した箇所の様子を見るように、僕もデッキに乗ってできる動きや難しい動きの確認作業を行えるようになりました。

タイトルと動画のテーマに込めた思い

僕とムービーを撮っているお笑い芸人ライダーの岩ちゃん(head, SP-bindings)と、「我々ももう40歳だし何か記念イベントでもやりますか!?」っていう話が出たのですが(僕と岩ちゃんは全く同じ生年月日、1979/11/27生まれです)、岩ちゃんはオフシーズンの芸能活動が忙しくてなかなか時間が作れず。じゃあ僕だけでも「ここまでお世話になったみんなに恩返しのメッセージを込めた映像を撮りたい」と思って、JWSC高等部の教え子で現在は映像編集会社でフィルマーとして活躍している鈴木翔平に協力を打診すると、「せっかく作るからには何かテーマを決めましょう!」という流れになって決めたのが今回の動画のタイトルにもなっている『40tricks for my 40th birthday』です。40歳の記念に、スノーボードの現場復帰のために頑張って再開したスケートボードでのリハビリを活かして年齢と同じ40個のトリックをやろう!ということからその名前になりました。撮影場所は僕とフィルマー鈴木翔平の母校である全日本ウィンタースポーツ専門学校JWSCのインドアパークで撮られています!

Photo: photography樹