2021年1月7日、北海道・ルスツリゾートで撮影を行った。撮影に参加してくれたのは、FREERUN本誌でも幾度となくキレッキレのカービングターンを魅せてくれるこのエリアを代表するダウンチルのキャプテン・天海 洋と、15年に渡りルスツのグルーミングを担当する圧雪オペレーターの窪田正史さん。日本国内で特に注目を集める極上のグルーミングバーンを仕上げる職人と、そのバーンに美しいラインを描く滑り手のセッションを通じて、ルスツの魅力をお伝えしたい。
Photo: Neil Hartmann & Jimmie Okayama
Edit: Gaisu
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ルスツは誰でも楽しく気持ち良くなれるゲレンデ
本州に住んでいるスノーボーダーなら誰もが憧れる北海道フィールド。中でもシーズン中に1度は訪れたい候補地は、世界一と言っても過言ではないほどのドライスノーを味わえるニセコ・ルスツエリアだろう。筆者も同じくこのエリアに魅了され毎年足を運んでいる。ニセコの魅力は言うまでもないが、羊蹄山を挟んだ太平洋側に位置するルスツリゾートが、今かなりアツいことになっている。
もちろんこのゲレンデは、以前から道内のライダーやスノーボーダーにファンも多く、全国的に人気のリゾートではあったが、このゲレンデをクルージングするダウンチルクルーの滑りをライブで見てから面白さが倍増した。そう、ここはなんと言っても日本屈指のカービング天国だったのだ…。
まずは、この撮影に参加してくれたダウンチルのキャプテン・天海 洋に、ルスツの魅力を聞いてみる。
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「ルスツは上級者、中級者、初級者とレベルを問わず誰でも楽しく気持ち良くなれるゲレンデなんじゃないかな。パウダーも良いし、森には気持ち良い木がいっぱいあったりしますよね。それに、あの広いグルーミングバーンでのカービングは最高です。その理由は、やっぱり圧雪の技術力が信頼できることですかね。山も3つあるからコースバリエーションも豊富だし、どの山で滑っても良い景色に出会えたり。それに洞爺湖とか太平洋も近いから、いろんな雪質があるんですよね。千歳空港から向かうとルスツはニセコの手前にあるので、より近いのも魅力。あと晴天率も高いから、地元の僕みたいな滑り手としても頼れるっすよね。まさにオールラウンドですよ!」
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実は撮影当日も最強寒波が訪れる直前だったため、雪風が酷くならない曇天の朝一のみが勝負と踏んでいた。しかし、その予想は見事に外れ、奇跡的に晴れ間も現れてくれたのだ。
「今日の晴れ間はまさかですよ。でもルスツはその奇跡が起こりやすい。ニセコは降ってるけど、羊蹄山と尻別岳によってルスツの天候は全く違うっていう日が多いから」
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ニセコとルスツは車で約40分あまり。この距離感でも実際にそれぞれのエリアの天候は全く異なることがある。だからこそ、ローカルたちは毎朝情報交換をし合い、ベストなコンディションを見極めているのだ。続けて、いつもルスツを滑る際のルーティンを伺った。
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「朝一の9時に先頭組ならイーストからクワッドに乗って、イゾラの奥を目指ざすパターンもあるし、全部は人の流れによるっすよね。ルスツはどのコースも面白いから、晴れてたらヘブンリーへ向かいたいし。でもみんなそっちへ行っちゃってるんだったら手前でいいしって。朝一に先頭組にいるか、1.5番手にいるのかでもちょっと動きが変わったりとか…。逆に9時半からスタートになっちゃったらイーストから回してく方が多分面ツルがあるだろうなとか。人の心理の裏をいつも行ってるんで(笑)」
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なるほど…。なるべく面ツルを狙うために状況次第で毎朝かなり深い読みのコースチョイスがあるようだ。以前、FREERUN本誌の取材でもあげていたルスツで好きなコース『イゾラのスティームボートA』の魅力を聞いてみる。
「Aはロングで気持ち良くて、斜度もあってそこそこ流せる。Bも結構人気があるんですよ!どちらも天気が良ければ爽快ですね。そのままヘブンリーとか。あそこは光の向きがいいんです」
逆にパウダーだったらどこを狙うのだろうか。
「ヘブンリーの沢とかも好きだし、イゾラA、Bの未圧雪コースも好きかな。それに付随するA沢、B沢とかも実は隠れてあったりとか…。そういう細かいのも好きなんですよ。その日のコンディションで、こっちの斜面は北面が入ってるから雪が良いとか、風の入り方と地形で雪の溜まり方も異なるから、状況を見ながら判断する感じです。パウダーでも、『深すぎても好みじゃないんですよ、私は』って、その人の板によって浮く浮かないことがあったりもする。俺は、浮かない雪はあんまり好きじゃないから『ちょっと薄いところはどこだろう?』とか、そういうパウダースポットの探し方もするかな」。
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寄り道しながら一筆書きで繋ぐライン
ここからは本題のカービングの話に戻してみる。彼らの後ろをトレースしながら滑ると、色々な発見と学びがある。普段は何気ないちょっとした地形や片斜面も、彼らから見れば絶好の『地形=遊びスポット』になるのだ。では、ルスツの地形をどう見たら面白いのか。あるいは、どう地形で遊べばいいのか。そのあたりのアドバイスをしてもらった。
「トップトゥボトムで縦にバシッと行くよりも、横に振って拾ってった方が地形の寄り道がしやすいですよね。ルスツには地形のウネリがたくさんあるから、寄り道しながら面白しろそうなラインを探して、なるべく1本の一筆書きターンで遊ぶのが面白いんじゃないかなと。大事なの寄り道ですね。あんまりスピードを出し過ぎず、横に速く(笑)。でもその寄り道をしやすくしてくれるのがルスツの圧雪力ですかね、やっぱり」
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筆者も全国各地のゲレンデを滑って来たが、ルスツの圧雪の素晴らしさは段違いだと感じる。もちろん雪質が良いのは言うまでもないが、朝一グルーミングバーンのクオリティは半端ない。天海 洋にとって、一番信頼できるグルーミングバーンとは一体どういうものなのだろうか。
「俺は雪ちゃん(←雪)を全身で感じるタイプだから(笑)。カービング中にジャガイモ(←ゴツゴツした雪の塊)とかに当たっちゃうと『イテっ』とか、まれに突き指するとか(笑)。圧雪車に乗ったことはないけど、グルーミングバーンの繋ぎ目とかで『こんな斜めのところを面一に合わせるの難しそうだよな』とか思いながら滑ってます。でも実際ここのグルーミングバーンは、気持ち良く体を預けても全然大丈夫だから。やっぱりルスツは気持ち良く滑れるよね。雪が良いのか圧雪車がいいのか、技術力なのか。もちろん人によって技術の違いはあるだろうけど、たぶん正史くんをはじめとするオペレーターの人たちの “圧雪愛” があるんだと思う。今日のグルーミングも最高に気持ち良かったですよ」。
綺麗なつなぎ目を意識している
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今回の撮影に駆けつけてくれたもう1人のゲストが、ルスツの圧雪オペレーターとして15年勤務する窪田正史さん。もちろん生粋の滑り手でもあり、仕事が終わるとほぼ毎日ルスツを滑っているらしい。気になるオペレータの職人技だが、まずは1日をどんなスケジュールで作業をしているのか聞いてみる。
「圧雪は、0時に出勤して機械の暖機と点検、チーム内のミーティングを1時間ほどして、それからイースト、イゾラ、ウエストのチームに分かれます。ルスツは、37コースのバリエーションが楽しめるんですが、そのうち7割のコースがグルーミングをするコースで、後の3割は未圧雪のコースやコブ斜面になります。今シーズンは11台体制で作業し、イーストとイゾラで8台、残りがウエストになります。実際の作業時間は、1時に出発して大体8時頃まで。その後はパトロールさんにゲレンデを渡して、ゲレンデをチェックして営業開始の9時にお客様へゲレンデを開放するといった流れになります」
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これだけ広大なフィールドが広がるルスツ。僕たちがゲレンデを滑るギリギリまで圧雪作業をしているのには驚きだ。では、圧雪の評判がいいと聞くルスツだが、どんなところにこだわって圧雪作業をしているのだろうか。
「圧雪のこだわりは、コースや地形の段差や継ぎ目を合わせて、綺麗にカービングを描けたり、コースサイドの壁で遊べるようなゲレンデ作りを目指してます。段差というのは、1台の圧雪車と次に走る1台との掛け合わせという繋ぎ目を綺麗にしてあげることで、滑り手のカービングがスムーズに1本の綺麗なラインで繋げられるようなイメージです。コースにもよりますが、圧雪車何台かが通ってそのコースを仕上げる場合もあれば、1台で仕上げる場合もあります。オペレーターがその日の雪質を見極めながら、圧雪車の性能を最大限に発揮できるよう操作しているんです。やっぱり圧雪の段差があると滑った際に気持ち良くないですから、なるべくその差を感じないように丁寧にグルーミング作業をしています」
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圧雪職人たちが心を込めて夜中から朝にかけて作業していく。その中で大事なことは雪質の見極めと技術だと話すが、プロの視点でどんな技術が必要なのだろうか。
「う~ん… これは経験でしかないかな… あとは、感覚的な感じなんです。あんまり頭で考えてないんですよね。コップを掴むっていうのを頭で考えないでやるような感覚で圧雪も仕上げられるかどうか…。なんとも言えないですね(笑)」
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最後に、正史さんにルスツの魅力について聞いてみる。
「やっぱりバリエーションの多いコースで、未圧雪もグルーミングバーンも楽しめるっていうのが魅力でしょうね。パウダースノー、グルーミングバーン、あと景色も。それにコースとリフトの乗り継ぎがいいところだと思いますね」
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圧倒的なコースバリエーションと上質なグルーミングバーン。それでいて極上の雪質と日本随一のワイドバーンが揃うルスツ。今シーズンは様々な影響もあり、そのバーンを今までにないくらいノーバディで滑ることができる特別なシーズン。ぜひ今まで行ったことがある人も、ない人も、ルスツへ行った際は彼らの話を思い出しながら、繋ぎ目のない綺麗なグルーミングバーンを目一杯寄り道しながら楽しんでいただきたい。
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