先月2月中旬、日本のガールズスノーボードシーンに欠かせない上田ユキエと水上真里が北海道を共に旅した。ふたりは今から22年前に初めて篭ったゲレンデで出会い、その後お互いスノーボーダーとして22回のシーズンを過ごしてきた。それぞれ怪我に泣いたシーズンもあれば、海外の雪山を一緒に過ごしたシーズンもあった。スノーボーダーとして、お互いのターニングポイントを常に感じてきたふたり。偶然のような必然的なタイミングで今回旅をすることになったのだ。
この企画では、彼女たちが過ごした北海道での6日間の記憶とともに、各地で出会うゲストライダーとのセッション、北海道の魅力、そして今もなお彼女たちを虜にするスノーボーディングの魅力を、上田ユキエが自ら書いたストーリーで4回連載に渡ってお届けする。
Text: Yukie Ueda
VOL.2 ~層雲峡温泉&黒岳編~
ふたりとも初めて訪れた山、黒岳
知らない土地だからこそ予想外のことが起こる
次なる目的地は黒岳の麓、層雲峡温泉だ。旭岳のちょうど裏側に位置する黒岳へは2時間のドライブを要した。地図で見るとすぐ近くなのに、一度旭川市街の方向へぐるりと回り込んで行かなくてはならない。しかしこのドライブこそが気持ちをリセットし新たな地へのワクワク感を盛り上げてくれる。と、助手席の私は思っていた。
層雲峡温泉街へ辿り着いた頃はもう真っ暗だった。私はすぐに温泉に浸かり、真里はお散歩がてら氷瀑祭りを見に行った。ここは年の差なのか(笑)。花火の音は部屋まで響き渡り、すでに部屋でビールを開けていた年上の私にも聞こえた。
どうしてだろう、こんなに一緒にいるのに夜布団に入ってからも話が尽きない。早く寝なくてはならないのに。むしろ布団に入ってからじゃないと出てこない話題があるものなのだ。眠くて朦朧としているのに会話と笑いが止まらず、それには毎晩困った。
黒岳はお互い初めての山で、行ってみたいと思っていた山のひとつだった。しかも今シーズン後半のリフト運行が始まる日だった。ところが天候は荒れる予報で、リフトもロープウェイも動かない可能性が大きいと聞いていた。それも仕方ない、旅の期間は決まっている。雪も天気も当てるのは運だ。
私たちは翌朝7時半にはロープウェイ乗り場で待ち構えていた。案外いけそうな天気だ。しかし従業員以外誰もいない、他にお客さんの車も一台もなかった。「なになに貸し切り~?」なんてはしゃいでいたが、8時に動くロープウェイに乗ったあと上のリフトは9時まで動かないので、ご存知の方は9時のリフトに合わせてやってくるのだった。そんなことは知らない私たちは一番のロープウェイに乗り込み、係りのおじさんと話し込む。ようやく事態を把握したが時すでに遅し。1時間近く待ちぼうけを食うことになった。知らない土地だからこそ予想外のことが起こり、それもまた楽しむ要素になるのだ。設営されていた雪洞ではしゃぎ、雪の壁の高さに驚き、そしてここまで来て一番乗りを抜かされたらたまらないと早めにリフト乗り場で待った。その間にもいい雪が降り続いていた。
いよいよ動いたリフトで登ると更に真っ白だった。晴れていればここから頂上までハイクアップして素晴らしい景色の中を滑ることもできるらしい。黒岳初心者の私たちはとりあえずリフトで回すことにした。平日とあって貸し切り状態。私たちの他にこの日見かけたのは全部で15人くらいだったと思う。
Specal Thanks: 大雪山 層雲峡・黒岳ロープウェイ 黒岳リフト http://www.rinyu.co.jp/
その日おじさんや黒岳マニアのスノーボーダーに聞いたコースはまるで神様がくれたご褒美のように一日中私たちを楽しませてくれた。お昼ご飯はバックパックやポケットに入れてきた非常食とパンをリフトの上で分け合って食べた。ロープウェイで一度下界まで降りたらもう戻って来る自信がなかったので、滑れるだけ滑って早めに上がって移動しようという魂胆だったが甘かった。スノーボード好きの熟女たちはそんな簡単に満足するはずがなかった。結局5時間以上ノンストップで滑り続け、またも車に戻ってからお互いクタクタなことに気づいた。これでも「あともう一本行く?」ってとこを思いとどまって「引き際が肝心!私たちも大人になったね!」なんて言いながら降りてきたのだ。私たちを中毒にさせてしまうほど極上の雪と地形がそこにあったのだから仕方ない。
女ふたり旅 〜層雲峡温泉&黒岳編 MOVIE〜
黒岳を後にし、2時間かけて名寄まで移動した。
そこには世界を制したあのスノーボーダー、今回のトリップの重要人物が待ち構えてくれていた。
続く。
次回も1週間後に 「VOL.3 〜名寄編〜」 をUPします。
お楽しみに!
VOL.1 ~旭岳編~はこちら
★PROFILE
上田ユキエ
1973年1月22日生まれ。カナダウィスラーでスノーボードを始め23年、ハーフパイプやビッグエアーなどの競技を経てバックカントリーの魅力にはまる。現在はアメリカに移住し5歳の息子を育てながら自らのプロ活動を続ける傍ら、キッズと母親のプロジェクト(LILKIDS&MAMA)や日本の若手をアメリカで経験させるキャンプ(CALI LIFE CAMP)などを運営している。
SPONSOR: K2 SNOWBOARDING, Billabong, MORISPO SPAZIO, NEFF, RONIN, ZOOT, CORAZON SHIBUYA, LALALATV
水上真里
1976年7月17日生まれ。高校の交換留学生として行ったNEW ZEALANDでスノーボードと出会う。パイプ、ストリートレール、スロープスタイルを経て、現在はバックカントリーを中心に滑る。怪我で数年間滑れなくなったことをきっかけに都内や雪山でスノーボーダー達が楽しめるパーティー(PARTY BUNNYS)やイベント(SHREDDING GIRLS)を開催している。
SPONSOR: GNU, NORTHWAVE, DRAKE, WESTBEACH, SPY, BLACKDIAMOND, SBN FREERUN, SHREDDING GIRLS, PARTY BUNNYSイベント, 赤羽ファースト歯科