この企画はバックカントリーのようなゲレンデを紹介するというものである。バックカントリーを滑っている私に対して「スキー場以外で滑ってみたい」「1人で雪山に登ってみようかな」などのコメントが多く寄せたれたことがきっかけとなった。
バックカントリーガイドに連れて行ってもらうにしてもツリーランや深雪を滑るのは本人のスキルだけが頼りだ。まずはバックカントリーのようなゲレンデでスキルを磨いて段階を踏んで、経験値を積むために全国各地でバックカントリーのようなゲレンデを紹介したいと思って始めた企画である。
今回はニセコのグランヒラフスキー場で滑ることになった。
ニセコは海外からも訪れる観光客やスキーヤー、スノーボーダーが多い。
この北海道の軽い雪は海外の人たちからはjapow=Japan Powder
と呼ばれている。特別な軽い雪だ。
そしてこの場所は私にとって思い出のあるスキー場の一つだ。
私が初めてグランヒラフで滑ったのはもう15年前。
その頃はsnowsweetlifeという北海道のTV番組で滑らせてもらって
その当時Brightaという女の子のバックカントリーメンバーで
ここを拠点として滑っていた。
撮影のない日は女の子6人くらいで上から下まで競走のように滑っていた。
正直、広すぎてそのころは全くコースが覚えられなかった。
そこからはあまりくる機会がなかったが、
2年前からニセコで行われているアメリカのガールズキャンプ、
BTboundのコーチで呼んでもらってこのエリアをまた滑ることになった。
あの頃の気持ちも思い出すことができたし、雪質はやはり極上のままだった。
ニセコで滑らなかった数年間が悔やまれるほどだった。
そこから毎年来るように決めたほどだ。
2月上旬からニセコをベースに3週間滞在していたが、
今年の積雪はすごい。とにかく積もる。
災害級レベルだ。
実際に、山奥の温泉地は除雪が間に合わず臨時休業し、それを知らずに、
私は一人でその温泉地に行ってそこの駐車場でスタックしてしまい、
仲間が助けに来るまで1時間車の中で待機していたのもつい数週間前だ。
こういう雪深い場所で大雪が降った時は、
あまり外へ出ずに家でじっとしているのが良いと学んだ経験だった。
ゲレンデ内のコースでもこの雪質だ。
軽い雪は宙を舞って真っ白になり、前が見えなくなるほどだった。
「全然、前が見えないよ!」と言いながら顔がにやけてしまう。
スキーヤーやスノーボーダーにとってはこの上なく幸せな不平不満だろう。
前のターンのパウダーもあげたまま、次のターンのパウダーも上がる。
雪が軽いから宙に舞っている時間が長いからだ。
こんな軽い雪はここでしか味わえないかもしれない。
ニセコの雪を思う存分に堪能しようと思えた。
ヒラフの一番上のリフトからのゲートが開いているということなので
せっかくなので登ってみることにした。
ゲートから頂上までは約20分ほど歩いて登った。
歩く場所は決まっているため、先人の足跡が残っていて、歩きやすかった。
少し風も強く雪も降っていたが、
頂上では談笑する人や記念撮影をする人たちで賑わっていた。
上まで登ってきた達成感からかみんな笑顔だった。
たくさんの人を簡単に笑顔にしてしまう自然の力は本当に偉大だ。
上まで登ると達成感がある。
登ったからこそ、ゲート内とまた違う斜面を滑ることができる。
いつもと違う特別の場所。
こういう気持ちがバックカントリーに対して
憧れが強くなるきっかけになるのだろう。
この山の地形はまさに3Dだ。
ただ平面にツリーラン(木と木の間を滑ること)ができるだけでなく、
上下の起伏もある。対面から斜面を見ることもできる。
滑り手にとっても撮り手にとっても面白い。
いろんなラインを描くことができ、
それをいろんなアングルでそれを撮ることができるからだ。
滑りたいポイントを探して、
狙っているポイントをカメラマンに伝える。
カメラマンにいかに細かく狙っている場所を伝えるかが
こういうバックカントリーのようなゲレンデでは大切だ。
パークなら『ここをこんな高さで飛ぶだろう』とか
『このレールを擦るからここからのアングルで良いだろう』とか
想像がつきやすい。
でも、バックカントリーやバックカントリーのようなゲレンデでは、
「あの木の横でターンします。」と言ってももちろん全く伝わらない。
「どの木?」と言われるのがオチだ。
実際にこのやりとりをして初めて自分のボキャブラリーのなさに驚いたくらいだ。
街の中なら「あの赤い看板」などと伝えやすいが、
森の中で同じような木々が並んでいる中、
違う場所から見ている相手にどう伝えるか。
実際にBTsoundのガールズキャンプでは、
アメリカ人ライダー達は滑りたい場所の写真を撮って
インスタ等でラインを写真上に描いて、それをカメラマンに送っていた。
みんな伝えるのが大変だからだろう。
でも、電波の繋がらない状況もバックカントリーではよくあることだから
言葉で相手に説明できるように練習するのをお勧めする。
「私のフォールライン(真下)にある大きな白樺の木から1メートル、
ライダーズライト(山側から見て右側)でヒールサイドでターンします。」
などと細かいやり取りが必要だ。
バックカントリーやバックカントリーのようなゲレンデで滑る時は
自分のイメージを的確に相手に伝える能力も大事だとつくづく感じる。
撮影するからだけじゃなく、普通に滑る時も的確に相手に伝える力は必須だ。
例えば、
仲間より先に滑って大きな穴に気がついたとする。
「あの木の右側に穴が開いてるから気をつけて」と言っても
全く相手に伝わらず「どの木だろう?」と
相手が違う木だと勘違いしたまま滑ってしまい、
まさにその木の右側を滑り穴に落ちてしまう。
そうならないように、「私から5メートル上で、3メートルライダーズレフトにある枝が沢山ある大きな木」など
しっかりと的確な場所を的確に相手に伝える能力を仲間と磨くのも
今後役に立つスキルだと思う。
なのでグランヒラフのようなバックカントリーに近いゲレンデに滑りに行った際に、
自分の言葉で滑る場所を仲間に伝える練習をお互いにするのをお勧めする。
思ったより難しいけど、それが結構面白いと感じるだろう。
vol.2に続く
ライダー
水上真里(みずかみまり)スノーボード 歴26年
GNUsnowboards,Norrona,Drakebindings ,Northwaveboots,Spy goggle,Hestra gloves
グーフィースタンスF21 R3 51.5センチ
カメラマン
MZKphotofilms(エムゼットケーフォトフィルムズ)
@グランヒラフスキー場「バックカントリーゲレンデ」vol.2へ続く