上田ユキエと谷部若子のスノーボーダー母対談。Yukie HouseのSnowboarder’s Diary Vol.2

Yukie HouseSnowboarder’s Diary Vol.2

Yukie Houseとは?
スノーボードライフをより充実させるため、家族とアメリカ・カリフォルニア州・マンモスマウンテンに生活の拠点を移し、新生活をスタートさせた上田ユキエ。マンモスには日本からも多くのスノーボーダーが訪れ、彼女の家に宿泊するという “マンモス民宿のユキエ女将化が定着しているようだ。
 この企画では、上田ユキエの自宅「Yukie House」に訪れたスノーボーダーに、自らがフォーカスを当てインタビューや取材を実施。自身も現役ライダーというゲストたちとの良い距離感の中で、お互い密にコミュニケーションをとりながら、普段あまり知ることのないスノーボーダーたちのライフスタイルや素直な気持ちを上田ユキエの言葉に載せてお伝えする。

第2回目は、90年代前半のスノーボード全盛期に同じ時代を生きた仲間、谷部若子。5歳の息子を連れ私のいるマンモスに初めて母と息子ふたりっきりの海外トリップに挑戦した。不安なこと、緊張感がどれほどあったのかは同じ母親として手に取るように想像できる。私の息子トラノスケ6歳と、滑るために日本から海を越えやってきた5歳のりとまる。この旅で、子供たちはどんな刺激を受け、母親は何を考えたのだろうか?スノーボーダーの息子を持つ母親として対談インタビューを実施した。

IMG_5603母親になった今もスノーボードが人生を豊かにしてくれる。そのことを自信を持って我が子にも伝えたい

私は以前、2歳半の息子とふたりっきりで友達のいるカナダへスノーボードトリップに行った経験がある。ふたり分のスノーボードギアと小さな息子の手を引き、自分が息子を守らなければならないという緊張感と、未知の経験へのワクワク感に包まれた旅だった。
 父親もいない母とふたりだけの旅という経験は、息子にも新たな意識を持たせることができたと思っている。またカナダは、私がスノーボードを始めた思い入れのある地だったから、いつか「私があなたを初めてウィスラーへ連れて行ったのよ」と、言いたかったのかもしれない。決して楽な旅ではなかったが、母と子の一生の思い出となる旅になったと思っている。
 今回、YUKIEハウスを訪ねてくれたゲストの若ちゃん(谷部若子、旧姓 藤川若子)は、今でも貴重な女性スノーボード仲間のひとりだ。彼女はプロにこそならなかったけれど、この人ほどスノーボードが好きな女はそうそういない。お互いスノーボードに関わる形は違えど、揺るぎないスノーボードへの情熱を持つ『同志』である。不思議なもので、彼女との四半世紀の付き合いの中で今が一番分かり合えている。それは、お互いが小さなスノーボーダーの母親となり、『スノーボード』という素敵な子育てのツールを見つけたからだ。『プロに育てたい』ではなく『大好きなものを伝えたい』。それが純粋な私達の思いなのだ。

上田ユキエ(以下Y: 今回は遥々マンモスまで来てくれてありがとう!帰国して振り返ってみて、今回の旅の感想を聞かせて。
谷部若子(以下W: 最高!! のひと言に尽きるね。マンモスは、選手時代に毎夏行ってた大好きなフッドを彷彿させる大自然の山々で空気感が似ていた。フッドは主人と出会った思い出の場所やし、更に感慨深い思いに浸りつつ、「この環境を我が子と味わえるなんて」と言う幸せを感じたよ。

独身時代に好きだった場所に連れて行くのは、母の密かな自己満足のひとつだ。ここもその一つ、子供が生まれる前によく通っていた、たいレストラン
独身時代に好きだった場所に連れて行くのは、母の密かな自己満足のひとつだ。ここもその一つ、子供が生まれる前によく通っていた、たいレストラン
旅先の地だからこそ母と子供が一緒に感動できる貴重な経験が詰まっている
旅先の地だからこそ母と子供が一緒に感動できる貴重な経験が詰まっている

Y: りとまる(息子)の様子はどうだった?マンモスでは日本とお父さんと離れて少し繊細になっていた部分もあったよね。初めての地で友達との生活に興奮もしていたよね。母親としては息子の様子をどう感じていた?
W: 大好きなトラ(トラノスケ)とずっと過ごせて大興奮(笑)。でも、時差ボケや標高の高さ、英語環境など、心も体も自分の思う様にならない事もあるし、お父さんという逃げ場?頼る場所?も無く、彼なりに気を張って頑張ってたと思うわ。旅の中頃には、夜中にお父さんシックで泣いたりもしたしね~。毎日喧嘩したり泣いたり笑ったりして、滑って遊んで楽しかったのは間違い無いと思うよ。

異国文化で生まれ育っていても、子供は心が通じ合うのが早い。そこにスノーボードという共通の楽しみがあれば尚更だ
異国文化で生まれ育っていても、子供は心が通じ合うのが早い。そこにスノーボードという共通の楽しみがあれば尚更だ
この年で既にスノーボーダーとしての仲間意識、そして訪れるものとローカルとして案内する意識も感じているのが凄い
この年で既にスノーボーダーとしての仲間意識、そして訪れるものとローカルとして案内する意識も感じているのが凄い
スノーボードを通じてわかり合う気持ちは、小さくても大人でも同じだ
スノーボードを通じてわかり合う気持ちは、小さくても大人でも同じだ

Y: そうだね、小さいながらに環境と戦い、そして慣れるのも驚くほど早かったよね!若ちゃんを見ていて私も息子とふたりっきりでカナダの友達の家に行った時の気持ちを思い出したよ。自分ひとりの海外トリップや、家族での海外旅行とも緊張感が大きく違うよね。誰にも(親や主人)頼れないからこそ、母親としても成長するし、そこで助けてくれる人への感謝も生まれる。そして子供は頑張っている母親の姿を見て何かが変わると思うんだ。母と息子の絆も深まる気がするよね。
W: ほんま。うちは普段から家族単位で動いてるし、息子を預けた事も無かったし、ふたりで海外に旅するの初めてだったからかなりの緊張感やった。守るべきものがある責任感をあらためて気付かされたわ。

異国の地で頼れるのもワガママを言えるのも母だけ。母はすべて受け止めるのは自分しかいないという緊張感を持つ。そしてそこから生まれる絆がある
異国の地で頼れるのもワガママを言えるのも母だけ。母はすべて受け止めるのは自分しかいないという緊張感を持つ。そしてそこから生まれる絆がある
どこにいてもお母さんの手料理が食べられれば子供は元気になる!子供には環境の変化に流されないよう体調管理に気を使うのも楽しく過ごすための大切なポイント
どこにいてもお母さんの手料理が食べられれば子供は元気になる!子供には環境の変化に流されないよう体調管理に気を使うのも楽しく過ごすための大切なポイント

Y: 旅の要素にスノーボードがあると、親子関係も変わるよね。私はこんなに幼い子供と《同士》とか《仲間》みたいな関係になれるとは思ってもみなかった。楽しさを共有することで生まれる意識があって、親と子の上下関係ではなくなる瞬間が私は面白い部分だと思ってるんだ。若ちゃんが子供にスノーボードをさせていて良かったと思うところはどんなところ?
W: 今回の旅では、私も長年の夢やった『海外で我が子とスノーボード』を叶えてもらったこんな早くに一緒に滑れるって思いもせえへんかったし、ほんま嬉しい。順番にジャンプしてイェーイとか、お互いいい滑りした時にハイタッチする瞬間とか、完全にスノーボーダー同士の関係になれてるのが面白くも楽しくもあるねん。

夢の4ショット。まさかこんな日が来るとは。私たちの可能性は子供たちが広げてくれている
夢の4ショット。まさかこんな日が来るとは。私たちの可能性は子供たちが広げてくれている

《英才教育》と《子育てのツール》の違い私たちが子どもとスノーボードをする理由

Y: 私たちが共感しあえる感覚に、《スノーボードは子育てのツール》っていうのがあると思う。プロに育てるためにスノーボードさせているわけじゃない。もちろん本人の意思があって結果的にそうなるのもアリだけれど、それがゴールではない。
 私たちは、同じ時代に選手として戦っていた時代もあって、それぞれ違うスタンスでスノーボードと長年向き合ってきた同士だからこそ、『スノーボードのある人生』というものの価値をよく感じていると思うの。私はそういう部分を子供にも伝えたいと思っているんだよね。そのあたり若ちゃんはどう考えてる?またその反面、子供にスノーボードをさせていてマイナスに思う部分ってある?怪我とか、、かなあ?
W: マイナスって言うか、怖いんはやっぱり怪我。命に関わる危険もあるしね。夫婦共にスノーボーダーで、仕事でもあるし、周りからは当然息子にもスノーボードやらすよね!? プロ目指すよね!? みたいに言われたけど、私らは本人がやりたいって言いだしたら、一緒に楽しめたらねって位やってん。ほな、3歳で自分からやりたいって言いだした(笑)。彼にとっては生活の中にある遊びの1つやな~。自転車乗ったり、公園行ったりするのと同じ感覚。本人が楽しみを見つけて上手くなりたいなら全力で応援する。それがスノーボードでなくてもって考えてる。

我が子の成長を一番近くで見て感動できるのは、スノーボーダー冥利に尽きる。いつまでもカッコよく滑り続けたいと思う気持ちも与えてもらえる
我が子の成長を一番近くで見て感動できるのは、スノーボーダー冥利に尽きる。いつまでもカッコよく滑り続けたいと思う気持ちも与えてもらえる

Y: こうして行動することに大きな影響を及ぼすのが子供の父でもあり自分の夫である旦那様の存在でもあるよね。私は自分が行動して説得や理解をしてもらいながら突っ走っている気がするけど(笑)。若ちゃんところはどんな感じ?
W: うちは、私がスノーボード好き過ぎて、それを1番理解してくれてるのが主人。私はスノーボードしてないと元気無くなってくるらしい(笑)。そやし、滑れる環境を、結婚しても子供ができても与え続けてくれてはる。主人には、ほんま感謝しかないわ。

離れて頑張る姿を一番見せたいのは父親だ。そして父親に頼らず頑張る時間が、その存在の大きさを気づかせる
離れて頑張る姿を一番見せたいのは父親だ。そして父親に頼らず頑張る時間が、その存在の大きさを気づかせる

Y: 日本とアメリカで教育の違いはあるけれど、これから義務教育になっていく息子たちにどうやってこれまでのようなスノーボードのライフスタイルを続けさせてあげられるか、それが課題でもあるよね。私はこうしてマンモスへの移住を決断した。若ちゃん家にも変化があったよね?
W: そうやね~。うちは仕事の関係もあって、シーズンになると雪国生活やったんやけど、この秋から年間通して新潟に住む事になってんだからユキちゃん家と同じタイミングで私たちも移住(笑)。義務教育になったら、長期で休んだり、あちこち移動しにくくなるし、仕事もあるし、東京も年半分位しかいいひんし。ほなこのタイミングでって事で決断。結果今まで以上に、息子にとって雪山が更に身近な遊び場になって、今まで以上に楽しんでくれたら嬉しいな。母としても雪山が身近になって嬉しいなってね(笑)。

Y: まさに!母自身が一番喜んでる(笑)。私は日本を離れて日本の教育のいいところを外から見てる。若ちゃんはアメリカをはじめ他の国に子供を連れて行って感じることはある?子供がいてこそ感じる海外のいいところなどあれば教えて。
W: 日本はみんな一緒にさせたがる。海外は小さい子供であっても、一個人として尊重してくれる。極端な言い方かもしれへんけど、ここが一番違いを感じるところかな。息子には「人と違っていいんやで、自分の思う様にやっていいんやで」って、ずっと言うてきてるけど、幼稚園では『右にならえ』な部分もあって、戸惑いがあるんかも。でも、幼稚園で先生に自分の意見をはっきり言うてたみたい。このはみ出し母にしてはみ出し息子ありやな(笑)。

小さな頃から様々な文化や人種がいると知ることは、語学だけでなく子供に柔軟性を与え視野を広げるだろうと思う
小さな頃から様々な文化や人種がいると知ることは、語学だけでなく子供に柔軟性を与え視野を広げるだろうと思う
旅での感動の記憶は普段の出来事よりもより深く子供の心に刻まれる
旅での感動の記憶は普段の出来事よりもより深く子供の心に刻まれる
アメリカの壮大な景色の中で気持ちよさそうに滑る我が子の姿を眺められる日が来るとは。我が子のおかげでスノーボードをしていて良かったと思うことが増えて行く
アメリカの壮大な景色の中で気持ちよさそうに滑る我が子(りとまる)の姿を眺められる日が来るとは。我が子のおかげでスノーボードをしていて良かったと思うことが増えて行く

Y: 私もそこ凄く感じる。子ども達が将来世界に目を向けて幅広い視野で活動していくなら、ハミ出ないことを尊重するのではなくもっと自分の意思を尊重していけるようにならないと、後々苦労するんじゃないかなと思ってしまう。日本の教育の素晴らしいところももちろんあるんだけど、そこは日本の子ども達ももっと自由にのびのびやっていいのにと思うな~。最後にこれからの谷部家の親子スノーボードの極意があったら教えて!
W: 今ある環境の中で、今一緒に楽しめるスノーボードを共に出来たらええな。りとまるは最近になって「スノーボード滑るの楽しい」て言うようになったわ。いっぱい滑ったり、必死で練習する感じでは無いけどね(笑)。でも『楽しいって』思ってくれるんが、母は何より嬉しい。

Y: ありがとう~。また一緒に滑れるの楽しみにしてる!

1_ダミーダミーダミー
左: 谷部若子、りとまる。右: 上田ユキエ、トラノスケ

Profile
谷部若子(旧姓 藤川)
19711025日生まれ。京都出身、東京在住。秋から新潟在住。
5からスキーをやっていて、スノーボードブームの頃21歳でスノーボードを始めすぐその楽しさにハマる。スキー場でバイトをしながらハーフパイプの選手となり、BURTONがスポンサーに。地区大会では3度の優勝。NZCARDRONAの大会で優勝。選手引退後も、スノーボートを続け、結婚、出産後の今でも家族で国内外のスキー場へ。夢を追いかけ頑張るアスリートプログラムの子供達の遠征にも同行、サポートしている。
Sponsor:ROME SDS, Area51s

谷部りとまる
20124月生まれ。01歳は抱っこ、おんぶで。2歳はおんぶと、母の足の間に乗せて。3歳で自分のスノボデビュー。4歳のシーズンを終え、スノーボード歴2年。

Interviewer
上田ユキエ
1973122日生まれ。東京出身。カナダウィスラーでスノーボードを始め24年、ハーフパイプやビッグエアーなどの競技を経て、ガーズルムービープロダクション “LIL” を立ち上げ日本のガールズシーンを牽引。結婚を機にアメリカへ移住し6歳の息子(トラノスケ)を育てながらプロ活動を続け、現在はバックカントリーの魅力にはまり国内外の様々なフィールドを開拓中。20174月マンモスマウンテンに拠点を移し、よりナチュラルに山の近くで家族と新たな生活をスタートさせている。
Sponsor: K2 SNOWBOARDING, Billabong, MORISPO SPAZIO, NEFF, RONIN, ZOOT, CORAZON SHIBUYA, LALALATV
オフィシャルブログ

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