スノーボード界のレジェンド、テリエ・ハーコンセンが3回目の優勝!「天神バンクドスラローム2025」

今大会のコース全景

2025年3月1日・2日、群馬県みなかみのMt.T by 星野リゾートで「天神バンクドスラローム2025」が開催された。今年で15回目を迎えたこの大会には、全国からトップライダーやアマチュアスノーボーダーが集まり、熱い戦いを繰り広げた。
Photo & Text Gaisu


シーズンの集大成とも言える天神バンクドスラローム

3月初旬に毎年開催される「天神バンクドスラローム」には、プロ・アマを問わず、全国各地から多くの滑り手がエントリーし、そのシーズンの滑り込みの成果を試す場でもある。今年は雪に恵まれ、スタート位置が尾根からの本格仕様に戻った。

尾根からのスタートで盛り上がるオーディエンス

筆者も取材撮影兼、エントリーというスタイルで40歳以上のクラスで出場。参加者は受付後、1本だけのコースインスペクションを実施。中盤の「通称: ビッグバンク」付近が特にテクニカルだという情報が広まり、実際に滑ってみると難易度は高め。それでも、滑りやすく気持ちの良いコースだった。

開会式後、50歳以上のベテランクラスから予選がスタート。毎年このクラスはとくに賑やかで、こだわりの強い先輩たちによるプライドをかけた戦いが繰り広げられる。続く小・中学生クラスでは、親たちの応援が飛び交い、白熱したレース展開に。大人さながらの早い滑りをする中学生クラスのレースは見応えがあった。

Grand master(50up)男子 Mike Cummins
Grand master(50up)男子優勝 熊木秀一
Grand master(50up)男子3位 高橋信吾
Master(40up)男子優勝 遠藤 励
Master(40up)男子2位 米倉洋晃

筆者もエントリーした40歳以上のクラスには全国の実力者が集結。直前に大会オフィシャルの「S TUNE」でワクシングを施したボードで挑戦。滑走直前にテリエ(・ハーコンセン)が教えてくれた屈伸の準備運動が効果を発揮したのか、ビッグバンクもノーミスでクリア。コースコンディションの良さもあり、満足のいく滑りができた。

予選最後のオープンクラスでは、女子は木下花菜がトップ通過、男子は濱口誕人がテリエを抑えて1位通過という結果に。

上・中央: 盛り上がるテントブース 下: 大会オフィシャルワクシングサービス「S TUNE」
Master(40up)男子 加治秀之
OPEN男子 諸田直人
OPEN女子 中村陽子
OPEN男子&MC 渡辺大介
OPEN男子&MC  平良 光
OPEN男子 松浦広樹
Grand master(50up)男子 真木蔵人
OPEN男子4位 久保田 空也
ゴール地点の様子

決勝は新旧ライダーたちの熱いバトル

予選リザルトは夜19時頃にオフィシャルLINEで発表される。この結果を受けて、各宿泊先では「やった!予選通過!」「惜しくもダメだった…」と歓声や悔しさが入り混じり、参加者たちはそれぞれの結果に一喜一憂する。また、土曜の夜には「キャニオンズ」でライブイベントが行われ、アフターパーティでも予選結果の話題で盛り上がる。

キャニオンズでのアフターパーティ

翌日の決勝は各クラス2本の滑走で争われた。朝は少しアイシーなバーンだったが、次第に緩み出す。筆者もギリギリで決勝進出を果たし、慎重に滑る1本目、攻めた2本目と挑戦。ビッグバンクでの減速はあったものの、無事完走した。

決勝前に競技説明をする福島大造氏
メーカーテントブース周辺の様子
OPEN女子6位 北原あゆみ
OPEN男子 山崎恵太
OPEN女子4位 須藤恵美
OPEN男子7位 春山 禅
OPEN男子 増田塁輝
OPEN男子 小松吾郎
OPEN男子 勝山尚徳
OPEN男子 吉田啓介

オープンクラス男子の注目は、テリエと濱口誕人の対決。濱口は安定したライン取りで攻め、テリエはスムースかつ優雅な滑りで魅せた。最終走者の吉田啓介が滑り終え、大会の締めくくりとしてディガーチームがパーティランを披露。

結果、最速タイムを叩き出したのはスノーボード界のレジェンド、テリエ・ハーコンセン。堂々の3回目の優勝を果たした。

OPEN女子5位 木下花菜
OPEN女子2位 David Chloe
OPEN男子2位 濱口誕人
OPEN女子優勝 小暮 南
OPEN男子優勝 Terje Haakonsen
ディガーラン
ディガーパーティラン

世代を超えた熱き戦いとスノーボーディングの未来

15回目を迎えたこの大会。ライダーたちの顔ぶれも大きく変化してきた。例えば、テリエと濱口の年齢は50歳と18歳で32歳もの差がある。しかし、バンクドスラロームという競技の魅力は、世代を超えて本気で戦えることにある。

毎年新たなスターが誕生し、ベテラン勢も刺激を受ける。このスノーボードカルチャーの継承こそが、天神バンクドスラロームが示してきたものなのだと思う。筆者自身も年齢を重ねながら、少しは自らの成長を実感しつつも、まだまだ挑戦すべき目標があることを再認識した。きっとそれぞれの参加者も、今大会で何かしらの想いを持ち帰ったことだろう。

そして、大会プロデューサー・福島大造氏が掲げる「みんなで作るバンクドスラローム」という言葉通り、選手、スタッフ、メーカー、ショップ、スキー場と、関わった全ての人が一体となり盛り上がった15回目の節目にふさわしい大会になったのではないだろうか。

左上から時計回りに) 1: Master(40up)男子で優勝したフォトグラファーの遠藤 励がオーディエンスに向けカメラを向ける。2: OPEN女子の表彰では優勝した小暮 南がコメント。3: OPEN男子 優勝者の発表で見事テリエが3度目の優勝を飾った瞬間。 4: 1月に大怪我を負った西田洋介に向けた参加者からのメッセージ  5: ともに優勝した遠藤 励とテリエのツーショット

以下、表書式でのテリエのコメント

「僕にとってここ天神(Mt.T)はとても特別な場所で、それは個人的にクレイグ・ケリーが最も愛した雪山であることに感情を抱いているからなんだ。彼は1995年に初めて訪れて、いつも素晴らしいフリーライディングを見せていた。僕はバンクドスラロームが好きだから世界中の大会に出場しているんだ。なかでも本家であるマウント・ベイカーの「LEGENDARY BANKED SLALOM」は大きな存在だし、日本ではここ、天神の大会が最も大きな草大会と言える。このコミュニティはとても特別なもの。いつものメンバー、初めて会う人、子供から大人まで誰もがね。この週末に4人もの人が僕のボードにワックスをかけてくれ、みんな僕をサポートしてくれるんだ。そして僕も、もちろんみんなが共に助け合いながらこのコミュニティを支えているんだと思う。この大会には4年間参加しているけど、ここに戻って来る度にこのイベントへの特別な気持ちが膨らんでいるんだ。そして来年、また素晴らしい新世代たちの活躍を楽しみにここへ戻って来たいと思う。ありがとう!」― テリエ・ハーコンセン

 

天神らしさを継続する意味

「今年の大会は、スタートが尾根の上からになったことで、参加者もより滑りごたえが出ただろうし、滑り手の個性も出せたと思うから見ていて面白かったですね。コース作りでは、雪が多かったことで地形が薄くなり、ラインを出しやすかったのが特徴ですが、ビッグバンク後のコース調整には試行錯誤を重ねました。気温によって雪がベタつくと次のバンクに届かず、逆に凍るとスピードが出すぎる。みんなで意見を出し合いながら造成した結果、比較的スムースなコースになったと思います。こうした作業を通じて現場でも一体感が生まれ、大会の雰囲気もより良くなりました。運営面では人手が少なく大変でしたが、若手の活躍が光りました。もちろん競技でもベテランに刺激を受けながら、新世代が力をつけているのを感じましたね。お互いにアドバイスし合い、競技を超えたコミュニティの魅力が詰まっていました。これこそ『天神(Mt.T)らしさ』です。そして、やはりテリエの滑りは圧巻!安定感とダイナミックさを兼ね備え、3回目の優勝も納得の内容でした。また、濱口誕人をはじめとした若手の台頭にも期待が高まります。次の大会では新たな展開が見られるかもしれませんね。これからも、そうした『天神らしさ』を大事にしながらどう継続していくかが重要なんだと思います。選手、運営、協賛メーカーやショップ、スキー場が一体となるこの大会の価値は大きく、続けることが何より大事。そして何よりもこの場所で開催できるからこそ、TENJIN BANKEDの意味もあるし、ここにはワールドクラスの素晴らしいいフィールドがある。スキー場のスタッフ全員の協力があって出来ている大会です。そうして15回続いたからこそ、次世代への継承を意識し、新しいアイデアを取り入れながら、『みんなで作り上げる究極の草大会』としてさらに発展させていきたいですね」― 大会プロデューサー: 福島大造


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Mt.T by 星野リゾート