アルプス・シャモニー。モンブラン・デュ・タキュルの南東にそびえる花崗岩の尖塔群、Aiguilles du Diable(悪魔の針)。
かつては「登ることすら不可能」とされたこの場所で、JONES PRO TEAMが再びスノーボーディングの限界に挑んだ。
Pica Herryを中心に、Victor de Le Rue、Laurent Bibolletらがラインを刻む『In the Shadow of the Diable』は、
単なるライディングムービーではない。
それは、リスクと向き合い、それでも山に引き寄せられる理由を静かに、しかし強烈に問いかける作品だ。
悪魔の名を持つ稜線へ
舞台となるシャモニーのAiguilles du Diable(悪魔の針)は、転倒やミスが許されない極めてシビアなフィールド。
映像からは、その美しさと同時に、常に張り詰めた緊張感が伝わってくる。
ライダーたちは、派手なアクションやスピードを誇示しない。一歩ずつ進み、立ち止まり、考え、判断してからラインに入る。
その姿が丁寧に描かれていることで、一本のラインに至るまでの“過程”の重みがはっきりと伝わってくる。
Pica Herryが体現する“静”のスタイル
Pica Herryをはじめとするライディングは、とても静かだ。
荒々しさよりも、地形を読み、雪を信頼し、最小限の動きで滑り切る。
それはJONESが掲げてきたシュラルピニズム=登りと滑りを一体で捉えるスノーボーディングを、そのまま映像に落とし込んだようなスタイルだと感じさせられる。
受け継がれるシャモニーの精神
作品の中では、なぜ彼らが危険を承知で山に向かうのか、なぜまた同じ場所に戻ってくるのか、という問いが繰り返される。
答えを押し付けることはなく、観る側に「自分はなぜ滑っているのか?」と静かに問い返してくる構成だ。
Jeremy Jonesをはじめとするキャストの言葉は、単なる回顧ではなく、
「なぜ人は危険を承知で山に向かうのか」という普遍的な問いへとつながっていく。
“なぜ、滑り続けるのか?”
終盤のチャプター「Why We Do It」。
ここで語られるのは、達成感や映像的成功ではない。
恐怖、不安、集中、そして一瞬の解放。
それらすべてを含めてなお、人を山へと向かわせる衝動そのものだ。
『In the Shadow of the Diable』は、スノーボーディングを冒険行為として捉えるJONESの姿勢を、極めて誠実に映し出している。
このムービーは、ただすごい滑りを見せるための作品ではない。
スノーボーディングが“冒険”であり、“選択の連続”であることを、映像を通して素直に伝えてくれる作品だ。
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