昨シーズンから話題を集め、今年の秋にドロップするINK MOVIE(インク・ムービー)。このプロジェクトは日本が世界に誇るライダー國母和宏が、ムービーシーンにおける自身の経験や繋がりを日本の次世代を担う若手ライダー達へと繋げるために自ら動き出し、1シーズンをかけて若手とともに撮影に挑み続けた結晶だ。この作品は、ネクストジェネレーションのスノーボーダーたちへ捧げる新たな道しるべになるに違いない。
ティーザーが発表される前になるが、さらなる期待を集めるために、第1弾としてアメリカ・マンモスマウンテンで撮影に挑んだ4人(今井郁海、大友寛介、大久 保勇利、宮澤 悠太朗)の若手ライダーたちのクリップが発表された。本記事では、それに連動して現地で数日間を共にした上田ユキエが、彼らの撮影舞台裏を伝える。
Text: Yukie Ueda
4人の若手ライダーが、春のマンモスへやって来た
ハーフパイプの日本代表選手としてスノーボードに打ち込んできた今井郁海。今まで彼とは会ったことがなかったが、その滑りの評判はよく耳にしていた。また、北海道の大学に通いながらフリーライドをしまくっている大友寛介。私世代のスノーボーダーにはあるヒーロー(伝説のスノーボーダー太田寛介)を彷彿させる。スノーボード好きな父が名付けたと言うその名前の由来に引き寄せられるかのようにスノーボードの世界へどっぷりと浸かっているライダーだ。そして、平昌オリンピックでの滑りも記憶に新しく、スロープスタイルの選手として世界を転戦している大久保 勇利。現在W杯を転戦しながらも、競技にこだわらず幅広いスノーボーディングをしている。最後は、スロープスタイルの選手として数々のイベントや大会を転戦している宮澤 悠太朗。柔らかい滑りとスタイルの持ち主だ。
彼らに共通しているのは、若いながらにして持ち合わせるそれぞれのスノーボード人生における経験値。加えて言うならかっこいい容姿と滑り。それぞれのルーツやバッククラウンドは全く異なり、それは彼らの滑りのスタイルとも比例し、それぞれ滑りの個性が際立っている点だ。
カズがどういう視点でこの人選をしたのか、わかるような気がした。
4人それぞれの性格
リーダー格は一番年上でもある郁海。まるで同級生のようにみんなとはしゃぐ姿には年上の威厳のようなものは感じられないが、陰ではきちんと責任を持った行動をしていた。緩く穏やかな雰囲気と裏腹に滑りは豪快でがっつりスタイリッシュ。みんなに慕われる性格はこのギャップから来ているのかもしれない。
そこを補佐すべく2番目に年上の寛介は、このメンツの中では一番真面目で連絡事項のレスポンスも抜群に良い。みんなにいじられやすいキャラでもあり、「かんちゃんかんちゃん」と愛嬌ある呼び名で慕われていた。
そして年下ながら「じゃあこうしようぜ!」と物事を決めていく悠太朗。実は今シーズンの初めに怪我に泣いたが、W杯でやってきたマンモス滞在中にこのINK MOVIEの撮影に声がかかり大喜びしていたのを覚えている。その流れを知っているだけに彼がこのムービー撮影にかける意欲の強さが見え隠れしていた。
勇利は一番年下らしく決断はみんなに任せて好きなように過ごしていた。いつもくだらないことを言っては本人が一番笑っているという。場を和ませるムードメーカーである。
とにかくこの4人は仲が良かった。いつでも4人で一緒に物事を決め、行動し、大笑いしていた。
スノーボードに行き、帰ったら買い物に行ってスケートパークへ行く。順番に食事を作り、トランプで洗い物の当番を決めては毎晩暖炉の火を囲み盛り上がる。今時の風貌でインターネットの繋がる空間で過ごしているにも関わらず。仲間と過ごす時間の楽しみ方を彼らは知っているように思えた。
シューティングとマンモスライフ
天気をチェックし、コンディションの良い日にフィルマーを雇うことになっていた。それまで彼られらはGO PROを使って自分たちで撮影を進めていた。しかし5月にしては雪の多いこのシーズン。彼らが到着してからラッキーなのかアンラッキーなのかパウダーの日が続き、理想のパーク撮影とは少し違った。
郁海にとっては初のマンモス。寛介は、小学生の頃にジブの大会で来たことがあると言った。勇利と悠太朗は大会のため今シーズンもここへ訪れていたが、このような形でまたマンモスへ撮影トリップをしに来ることになるとは誰も想像していなかっただろう。
春のマンモスライフはスノーボード以外の時間も楽しんだ。大自然の温泉にも連れて行った。春と言えどもこの山は激しい気温差で吹雪く日もあり、彼らは寒い寒いとはしゃいでいた。「こんな風にマンモスで過ごすなんて初めて」だと、彼らは口を揃えて言っていた。そうこうしながらパークのコンディションが良くなるのを待つ4人。
そして遂にむかえた撮影の日は、彼らの滞在の最終日だった。彼らのライディングを確実に抑えるべく、現地でも信頼の厚いウィーバーというフィルマーと約束した。マンモス滞在ラストナイトでもある撮影前夜は我が家でご飯を食べることになった。プレッシャーと緊張感に包まれているかと思いきや、彼らは普段通り明るく大笑いしながら騒いでいた。
そんな夜、彼らへカズが言っていた言葉を伝えた。その言葉を持ち帰り、最終日への撮影へと挑んだ4人。
記事は、<後編>へと続く。
▼このムービーが、マンモストリップの模様をGOPROを使って自分たちで撮りあったINK MOVIEの特別クリップ!
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★この記事のライター
上田ユキエ
1973年1月22日生まれ。東京出身。カナダウィスラーでスノーボードを始め26年、ハーフパイプやビッグエアーなどの競技を経て、ガーズルムービープロダクション “LIL” を立ち上げ日本のガールズシーンを牽引。結婚を機にアメリカへ移住し8歳の息子(トラノスケ)を育てながらプロ活動を続け、現在はバックカントリーの魅力にはまり国内外の様々なフィールドを開拓中。2017年4月マンモスマウンテンに拠点を移し、よりナチュラルに山の近くで家族と新たな生活をスタートさせている。
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