DUPRAZ誕生のバックグラウンドストーリーに迫る 〜噂の超オールラウンド・スノーボードの正体とは??

こちらがセルジュ・デュプラス氏、これだけの偉業を成し遂げながらも、本人はとてもフレンドリーな性格。ファンスノーボーディング・スピリッツに溢れている
こちらがセルジュ・デュプラス氏、これだけの偉業を成し遂げながらも、本人はとてもフレンドリーな性格。ファンスノーボーディング・スピリッツに溢れている

もともとはウインドサーフィンのボードシェイプが原点
そして完成した初めてのエッジ付きスノーボード

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みなさんは「HOT」というスノーボードブランドの名を聞いたことがあるだろうか?かつてスノーボードにおいてアルパインレーシングがとても盛り上がっていた1980年代に世界の頂点を極めたスノーボードブランド。そしてその「HOT」を生み出した人こそ、ここ近年急激に注目され始めたフリーライディングボード「DUPRAZ」を作り出したセルジュ・デュプラス氏なのだ。
もともとデュプラス氏はウインドサーフィンのボードシェイパーだった。ウインドサーファーの父、兄はディンギーの選手というマリンスポーツ家族に囲まれ、彼もまたウインドにハマり、18歳で地元フランスから単身ハワイへ渡り、ボードシェイプを学んだ。その後フランスへ戻り、地元で「HOT WINDBOARDS」というウインドサーフィンのカスタムボード(シェイプボード)を作り始めた。しかし、その後冬のスポーツとしてにわかにフランスでもスノーボードのムーブメントが巻き起こる。1983年デュプラス氏もスノーボードに出会う。当時はまだエッジ付きのスノーボードなどない、ただの板。スノーボードの原型がつくられていくなか、1986年デュプラス氏も「HOT SNOWBOARDS」を立ち上げる。最初はやはりパウダーを滑るための板からのスタートだ。もともとスノーボードが生まれ育つ前から、フランスではパウダー用の滑走用具として、モノスキーの文化が根付き始めていたのだという。そのノウハウもスノーボード作りには活かされた。
しかし、パウダーしか滑れないのでは、リフトを使ってスキー場で楽しむことはできない。圧雪面を滑れなければ大衆が飛びつくような魅力的な滑走用具にはならない。そうしてデュプラス氏は。いち早くスキーの構造をスノーボードに導入し、フルメタルエッジを備え、トーション、フレックスを調整した「ONE SIXTY」を完成させる。それは、それまでパウダーを滑ることしか出来なかった創世記のスノーボード時代において、あまりにも革新的なモデルだったことは言うまでもない。

レースシーンの頂点を極めた最強の非対称ボード
伝説に残る名作LOGICAL

1990/1991シーズンのHOTのラインナップ。非対称レーシングボードLOGICALがHOTのブランドを象徴するモデルだった
1990/1991シーズンのHOTのラインナップ。非対称レーシングボードLOGICALがHOTのブランドを象徴するモデルだった
HOT全盛期当時の代表的レーサー、スラローム競技のスペシャリスト、フィリップ・イモフ
HOT全盛期当時の代表的レーサー、スラローム競技のスペシャリスト、フィリップ・イモフ

ONE SIXTYの後、スノーボードの成長は一気に加速していく。フリースタイルと共にアルパインレーシングも盛んになり、いや、ヨーロッパではアメリカ以上にスノーボードのアルパインレーシングシーンの人気は沸騰。スノーボーダーたちは、誰もがすぐにスピードとターン性能にこだわり始めた。そんなムーブメントが巻き起こる中、デュプラス氏は、さらに高速でのカービング性能を高めるためにボードの幅を細く、前向きのアングルでライディングするモデル、REVOLUTIONを開発。その発展型として誕生したのがあの伝説とも称される最強の非対称ボード「LOGICAL」だ。フィリップ・イモフ、アンドレ・マセウスキーをはじめ、数々のトップレーサーがLOGICALで各地で行われるレースを次々と制覇。気がつけば、HOTがレースシーンを独占しているかのような最強軍となっていたのである。それと同時にヴィッテリーターンを生んだセルジュ・ヴィッテリーもこのHOTのボードを使っていた。
LOGICALは接雪長とサイドカーブまでをフロントとバックサイドで大きく変えた設計の非対称ボード。あまりにも斬新なコンセプトと数々のレースで実証された秀でたポテンシャルに、他社も次々と追従した。もちろんこの日本でも牛山基樹を筆頭に数多くの当時のトップレーサーがLOGICALを使って、レースシーンでその強さを立証したのである。しかし、その好調ぶりから一転、1990年にデュプラス氏は「HOT」を去る。1989年90年と極端な雪不足で、ヨーロッパのスノーボードシーンも大きな転換期を迎え、止むをえぬ状況の中、デュプラス氏は充電期間に入る。

DUPRAZの原型は10年以上の歳月を費やして生まれた
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パウダー、圧雪カービング、レーシングとスノーボードを進化させてきたデュプラス氏が、その充電期間に作り上げたものが、現在のDUPRAZの原型となる初代D1だ。1990年にHOTを離れてから初代D1が誕生したのが2003年、まさに10年以上の歳月を費やして開発されたボードとも言える。目指したのは、さらに進化したスノーボードのカタチ。パウダーでも気持ち良く滑れて、ハードパックのゲレンデでも、アルパインスノーボードのような特殊な形状と、それをコントロールするための身体能力がなくても楽にカービングが楽しめるボード。デュプラス氏は言うなれば、かつては性能が極端に特化したボードを作ってきた。しかし、ここで彼が目指したのは、総合的に「最高」と言えるボードなのだ。
DUPRAZは、オフピステ+オンピステ、どちらでも十分に性能を発揮しつつ、同時にサーフィンの感覚、いわゆるスノーサーフィンの楽しさを味えるボードだ。どんな雪面コンディション、地形であってもカービングを楽に楽しめるというのがコンセプトにある。2003年12月1日にデュプラス氏はDUPRAZとして初代D1を発表。しかしその最新のコンセプトを持つD1は当時、一見、古いカタチと誤解されることが多かった。しかし、試乗会を重ねると同時に、12年ほど前からデュプラス氏はバンクドスラロームの大会をスタートさせる。それはDUPRAZがバンクドスラロームで、非常に優れた性能を発揮するということを確実に立証していった。総合滑走能力がより問われるバンクドスラロームのコースで、DUPRAZならより楽に滑れて、スピードが出せる。その後、DUPRAZの評価は徐々に上がっていくことになる。

バンクドスラロームのコースを楽に滑れるから早い。バンクドの大会を開催以来、何度もその性能を実証してきた
バンクドスラロームのコースを楽に滑れるから早い。バンクドの大会を開催以来、何度もその性能を実証してきた

DUPRAZは誕生以来、シェイプは大きく変えていない

圧雪バーンでのカービングや自然地形遊びも楽しいボード
圧雪バーンでのカービングや自然地形遊びも楽しいボード

実はDUPRAZは誕生以来、D1シリーズのコンセプトやシェイプはほとんど変わっていない。素材や製造方法が進化することで性能はさらにアップ、現在の最新モデルへと成長を重ねてきたのだ。そもそもスノーボードをベストな状態で楽しむのには、それぞれの目的に合ったボードが必要であるという概念が定着してきていた。パウダー用、圧雪カービング、フリースタイルなど、厳密に言えばさらに細分化の傾向にもある。デュプラス氏のDUPRAZはその概念を覆すところを出発点とする。インタビューの時、デュプラス氏はそのキーワードについてこう語った。「なめらか、角がない、直感的、適合的」「自分で乗りこなすよりも、ボードが合ってくる」「イージーで気持ちよい」なんとも、我々一般スノーボーダーにとって、それはそれは魅力的なキーワードである。「第3世代のスノーボーディングは全てを1本でカバーする」そうして現在販売されているのが、さらに進化を重ねた最新型のDUPRAZなのだ。
大きくシェイプは変わらずとも、従来よりも構造が調整され、軽量化も進んだ。DUPRAZはそのボードの性格上、現在の自分のボードレングスよりも、かなり長めをチョイスする。そうするとかつてはその重量感に慣れないという人もいたようだが、最新型は軽く、扱いやすい。つまり、とても親しみやすいボードなのだ。
誰もが乗りやすいと感じるに違いない。噂のDUPRAZ、スノーボードを時代の節目で大きく進化させてきたボードデザイナー、セルジユ・デュプラス氏の傑作を是非一度は試してみて欲しい。

DUPRAZ BRAND PAGE

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