スノーボードを楽しむ誰もが願う「もっと上手くなりたい」という気持ち。その思いに応えるには、練習方法だけでなく“どのボードを選ぶか”が重要なカギを握っています。
世界的ブランドBurtonは、長年の開発とライダーからのフィードバックをもとに、多彩なラインナップを展開しています。しかし選択肢が多いからこそ、最初の一本をどう選ぶかは悩みどころ。
そこで今回は、異なるエリアで豊富なユーザーを見てきたプロショップの声を取材しました。岐阜「FREAK」店長・小鹿さんと、北海道「FREE」店長・佐藤さん。Burtonスノーボードの魅力を熟知している両者のアドバイスを比べることで、自分の滑りたいフィールドや上達の方向性に合った“最短の1本”が見えてきます。
① ターンが上手くなるには?
シンプルにターンの楽しさを覚えられるCatographer (FREE/佐藤さん)
おすすめモデル:Cartographer / Custom
佐藤さんはまず、Burtonのラインナップの中で外せない存在としてCustomを挙げる。
「カービングを含めて全般的に理想的なのはカスタム。ゲレンデ全体で安定感があり、どのシーンでもバランス良く応えてくれる」
そのうえで、カービングに焦点を絞って“練習に最適な1本”として薦めたのがCartographerだ。
「ディレクショナル形状でターンのきっかけがつかみやすく、癖がなく扱いやすい。昔のBurton AIRのような雰囲気を残したフリーライド感もあって、シンプルにターンの楽しさを覚えられる板です」
ノーズが大きめでテールがしっかりしているため推進力があり、安定したライン取りをしやすいのも特徴。特にこれからカービングを学びたい初心者~中級者にとっては、余計な癖がなくターンの基礎を体で覚えられる理想的なモデルだ。
佐藤さんによれば、「価格も比較的抑えられていて、選びやすいのも大きなポイント」。
最初にCustomを知っておくことは重要だが、カービングの入り口として現実的かつ実用的なのはCartographer。
「まずCartographerでターンを固めてから、次のステップでCustomへ進む」というステップアップの流れもおすすめだという。

不意の雪質変化や荒れたバーンでも安定感のあるProcess(FREAK/小鹿さん)
おすすめモデル:Process / Custom
ターン習得は上達の基礎。ここを押さえられるかどうかで、その後の滑りの幅が大きく変わる。小鹿さんはこう語る。
「ターンを覚えるなら、シンプルな構造の板が一番です。キャンバー構造で、適度なフレックスを持つもの。踏んだ分だけしなり、素直に返ってきてくれるので、荷重・抜重の感覚が掴みやすいんです」
その条件を満たす代表格がBurton Custom。癖がなく扱いやすいオールラウンドな性格で、世界のトップライダーが実際に使用していることからも信頼度は抜群だ。初中級者が練習に使えばターンのリズムをつかみやすく、中上級に進んでも性能が不足することはない。
弟分にあたるProcessも優秀だ。ハイブリッド構造を採用し、ノーズとテールにフラットゾーンを設けているため、不意の雪質変化や荒れたバーンでも安定感がある。
「Processも大会で使うライダーがいるぐらい性能が高いんです。扱いやすくて、しかもコスパがいいから、初中級のステップアップには最適」と小鹿さん。セットアップはCartelやGenesisといったバランス型バインディング、ブーツはRulerとの組み合わせが鉄板。「ルーラー×カーテルは王道中の王道。安心してターン練習ができるセットです」とアドバイスしてくれた。
② 総合的なスキルアップを果たしたい
Customのオールラウンド性能に+パウダー仕様のFamily Tree Hometown Hero(FREAK/小鹿さん)
おすすめモデル:Custom / Family Tree Hometown Hero
「ゲレンデを隅々まで自由に楽しみたい」「1本で色々やりたい」。そんな人にはオールラウンド性能が重要になる。
小鹿さんは「総合力を求めるならCustom。斜度、雪質、地形を選ばず、常に安定して応えてくれる万能ボードです」と語る。
ただし、ここからは自分の“次の目的”を見据えて選ぶことがカギになる。
「パウダーもやりたいのか、パークも攻めたいのか。目的が見えてきたら、そこに寄せたモデルにシフトしていくといい」
そんな「次の一歩」にフィットするのがHometown Hero。Customのオールラウンド性能に、パウダー対応のノーズ形状やボリュームを加えたモデルで、圧雪からサイドカントリーまで幅広く対応できる。
「自己責任エリアを含め、ゲレンデ全体を視野に入れたい人にHometown Heroはぴったり」
総合力を求める層には、この2本が鉄板の選択肢になるだろう。
総合的に迷わず薦めるのはやはりCustom(FREE/佐藤さん)
おすすめモデル:Custom
幅広いスタイルを1本でカバーしたい人にとって、佐藤さんが迷わず薦めるのはCustom。
「アウトラインもフレックスも完成されていて、大きな変更がほとんどない。その安定感がカスタムの魅力です」
Customはカービングやジャンプ、ゲレンデ全体でのフリーライディングまで対応できる万能さを持つ。リピーターが非常に多く、「一度は他のブランドやモデルに浮気しても、最終的にカスタムに戻る人が多い」というのも象徴的だ。さらに、総合力が高いため、「次にどんな方向に進むかわからない人でも、この1本なら安心できる」と佐藤さんは言う。例えば「今年はジャンプをやってみたい」「カービングに力を入れたい」と方向性が変わっても、カスタムなら対応できる懐の深さがある。また「サイズレンジが広く、体格や脚力に合わせて選びやすい」のもポイント。小柄なライダーから大柄なライダーまで幅広く対応し、誰にとっても“自分のCustom”を見つけやすい。
「1本で長く乗りたい」「買い替えサイクルを減らしたい」という実用的なニーズに応えると同時に、ライディングのステップアップをサポートしてくれる存在。総合的にスキルアップを果たしたいなら、まずはCustomを軸に据えるのが確実な選択だ。

③ 今年はパークで上達を目指したい
フルツイン構造で扱いやすく、コスパも良いGood Company(FREE/佐藤さん)
おすすめモデル:Good Company
パークで上達を目指すライダーに佐藤さんがすすめるのは、Good Company。
「パークで滑るならフルツインシェイプが理想。Good Companyは数少ないツインチップの選択肢で、キャンバー構造だから扱いやすい。脚力が強くなくても扱いやすいし、バターやプレスといった動きもしやすい」
フルツイン構造であることは、パークライディングにとって大きな意味を持つ。スイッチライディングでも違和感が少なく、ジブやスピントリックの習得に適している。特に初心者~中級者は「レギュラーとスイッチの両方で同じ動きを練習できる」ことが、早い成長につながる。
さらにキャンバー構造は、ジャンプやジブの基礎練習を積む上で不可欠だ。反発力がしっかりあるため、ジャンプでの抜け出しが安定し、ランディングでもコントロールしやすい。グラウンドトリック(バターやプレス)も、キャンバー特有の適度な反発を利用して“板を踏んで遊ぶ感覚”を養いやすい。こうした基礎動作は、パークに限らず全般的なライディングスキルの底上げにもつながる。上達を目的とするなら、キャンバーで基礎を固めることが遠回りに見えても結果的に近道になるとアドバイス。
Good Companyのもう一つの強みは価格だ。6万円台と手頃で、「学生層にも選びやすい」という。コストパフォーマンスに優れながら、パークに必要な要素をきちんと備えている。安価だから練習用というのではなく、これ1本で“基礎を学び、パークを楽しみ、上達までつなげていける”実力がある。
加えて、扱いやすさも見逃せないポイントだ「脚力が強くなくても扱える」と佐藤さんが語るように、体力や筋力に不安がある人でも操作しやすい柔らかさを持ち合わせている。パークへの初挑戦を考えるライダーにとって、心理的なハードルを下げてくれる存在にもなる。パークで成長を目指すなら、Good Companyは“最初の正解”といえるだろう。ツイン+キャンバーというベーシックな構成は、基礎をしっかり積み上げながら自由に遊べる環境を整えてくれる。「まずはGood Companyでキャンバーの感覚を掴み、ツイン形状を活かして練習する」ことが、最短で上達に近づく方法なのだ。
ジブやストリート的なセクションに挑戦したいライダーにはRewind(FREAK/小鹿さん)
おすすめモデル:Custom / Rewind
パークでの上達を考えるとき、小鹿さんがまず強調するのは癖のないキャンバー構造の重要性だ。
「ジャンプは癖がない方がいい。キャンバーのシンプルな板でないとラインが取れない。Flying Vのような構造よりは、素直なキャンバーが上達につながる」その上で、小鹿さんが薦めるのはCustom。フリーライド性能が高く、ジャンプでもラインを安定して描けるため、トランジションの大きいパークやスピードを求められるジャンプにも対応できる。
パークの中も結構カービング性能が求められる。ジャンプが入ってきたら、やっぱりカスタムのようなフリーライド性能がしっかりした板じゃないと安定しない」
一方で、ジブやストリート的なセクションに挑戦したいライダーにはRewindを推す。
「リワインドはよく曲がる板。薄く作られていてフレックスが出やすい。ジブやプレスに向いている」柔らかさと操作性が特徴で、低速域でも動きを出しやすく、トリック習得を加速させる。
パークライディングは華やかに見えるが、実際にはスピードと安定性が欠かせない。スピード不足でジャンプに入ると怪我につながる危険性があるため、滑走性の高いソールを備えたモデルを選ぶことも忘れてはならない。小鹿さんは「安全に練習を重ねるためにも、パークでは性能をしっかり重視して選ぶべき」と強調している。
つまり、ジャンプ中心ならCustomで安定したライディングを、ジブ中心ならRewindで柔らかさを活かす。目的に応じて選び分けることが、パーク上達の近道となる。

④ パウダーをもっと楽しみたい
深雪での浮力+圧雪や春雪でも扱いやすいバランスの3D Fish(FREAK/小鹿さん)
おすすめモデル:3D Fish
パウダーを狙うライダーにとって、ボードの選び方は滑りの楽しさを大きく左右する。ただし、日本のゲレンデ環境、とくに岐阜エリアのような地域では「一日中ディープパウダーに当たる」機会は実際には少ない。降雪後の朝一番はふかふかの雪が広がっていても、時間が経つとすぐに荒れてきたり、圧雪バーンやアイシーな斜面を滑る場面も出てくる。
「パウダー100%に特化した板を買っても、出番が限られてしまうんです。だから岐阜のコンディションを考えるなら、パウダーも滑れるし、荒れたバーンや圧雪もきちんと対応できるモデルを選んだ方が実用的です」小鹿さんはこう語る。
そうした現実的な条件を満たしてくれるのがFish。伝統的なパウダーボードでありながら、最新のFish 3Dはノーズとテールに工夫を加え、深雪では浮力をしっかり確保しつつ、圧雪や春雪でも扱いやすいバランス設計となっている。「春のざらめ雪や荒れたコンディションでも、Fishなら違った楽しみ方ができる」と小鹿さんのお勧めはFish 3D。
さらにバックカントリーや自己責任エリアを視野に入れるなら、Family Treeシリーズが候補になる。Hometown Heroのようにオールラウンドな性能を持つモデルや、よりディープパウダーに強いモデルまで揃い、岐阜エリアのゲレンデの多様なコンディションに対応できる。
「ブーツやバインディングは柔らかめでルーズにした方がいい。フリースタイル寄りにするとパウダー特有の浮遊感を楽しめます」というアドバイスも。岐阜の変化しやすい雪質に対応するには、セットアップも含めて「遊べる余白」を残しておくことが上達と楽しさを両立させるコツだ。

パウダーとゲレンデの両立に優れているAlekesam(FREE/佐藤さん)
おすすめモデル:Family Tree Alekesam / Smooth Operator
佐藤さんがパウダー用ボードで最初に強く推したのはAlekesam。
「サーフ感覚で乗れて、ノーズが柔らかいから前足の扱いがしやすいAlekesamが、間違いないですね。テールにしっかり乗っていても安定しているし、ゲレンデのカービングもすごく気持ちいい」 。
特徴は、パウダーとゲレンデの両立に優れている点だ。バックカントリー専用ではなく、日常のゲレンデライディングからそのままパウダーに入っても違和感なく楽しめる。
「本当に上級者じゃなくても扱いやすい」 という言葉どおり、特別なテクニックを必要とせず、雪の深さや地形を選ばずに楽しめる懐の広さを持っている。短めサイズでも十分に遊べるのも魅力。
「地元の山は大きくないけど、短い板で遊んでも面白い」 と佐藤さん。北海道のように雪が深く軽い地域では、短めでも浮力が得られ、機敏な操作性を楽しむことができる。小柄なライダーや女性にとっても選びやすい1本だ。
一方で、よりスピードや安定感を求めるライダーにおすすめなのがSmooth Operator。「ハイスピードでのクルージングを楽しみたい人にはスムースオペレーター。遊びながら乗るというより、直進安定性を重視する人に合う」 。
幅広設計で柔らかい雪や重めの雪でも沈みにくく、スピードを落とさず安定したラインを刻める。北海道のようにコンディションが変化しやすいエリアでは、この安心感が大きな魅力になる。
さらに比較対象として挙がったHometown Heroについてはこう語る。
「浮力はあるけどやや細めで不安定。ゲレンデでは扱いやすいけど、北海道の雪ではもっと幅広で安定したボードの方が活躍する」 。
つまり、ゲレンデ中心に考えるなら適しているが、ディープパウダー中心の北海道ではAlekesamやSmooth Operatorの方が実用的だ。
「まずはAlekesamでサーフ感覚を楽しみ、ゲレンデと両立させながらパウダーに慣れる。より高速での安定を求めるならSmooth Operator。北海道の雪を滑るなら、この2つがお薦めの選択です」
◉ボード選びで気をつけるべきこと
「キャンバー構造で基礎を固めるのが上達の早道」
「Style Shop FREE」(北海道・紋別郡)佐藤さん
佐藤さんが繰り返し強調するのは「自分がどんな滑りをしたいかを伝えること」
「例えば、この山でいつも滑っていて、パークを滑る率が高いとか、時々パウダーにも入りたいとか。そういうフィールドや遊び方を教えてもらえれば、それに合ったおすすめが出せる」と語る。目的を具体的に共有すれば、最短で最適な一本にたどり着けるという。
また、上達を考えるならキャンバー構造を選ぶべきだと断言。基礎を確実に身につけるには、反発と安定性を持つキャンバーが不可欠だ。
さらに、経済的な観点からもこうアドバイス。
「高価なものだから何本も買えない。だったらフリーライディングもできて、パークでも使えるなど、2通り以上の使い方ができるボードを選んだ方がいい」。限られた本数で幅広くカバーできる汎用性こそが、長く乗り続けられる条件になる。

「今ではなく、次の目的に合わせること」
「FREAK」(岐阜県・大垣市)小鹿さん
小鹿さんが繰り返し強調したのは「今ではなく、次の目的に合わせること」。
「自分の現状にぴったりの板よりも、少し先を見据えた板を選ぶ方が上達につながります。買い替えサイクルも減るし、成長に合わせて対応してくれるので結果的に無駄がないんです」
ショップで多いのは「今の板と比べてどう変わるのか?」という質問。
「まずは今の板が自分に合っていたのかを振り返るのが大切。そこから不足を補うように新しい板を選べば、確実にステップアップできます」と小鹿さんは語る。
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