2018年12月27日に発売された小誌「FREERUN」のメイン特集である「マウンテンフリースタイルを体現するスノーボーダーたち」にて、國母和宏のシグネチャームービー『KAMIKAZU』にフォーカスし、そのなかで出演ライダーのブレア・ハベニットにインタビューを敢行した。ただ、誌面では語りきれないほどアツくて濃い返答ばかりだったので、本サイトにて彼のインタビューの特別版を掲載することにした。誌面と合わせてチェックしてもらいたい。
Q. 「KAMIKAZU」の撮影で印象深かったことは?
「俺のパートは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州レベルストークのイーグルパスヘリで撮影したんだ。もちろんカズも一緒さ。俺たちのヘリを操縦してくれたパイロットは技術がすごくてさ、スパイラルしながら下降しちゃうんだよ。コークスクリューみたいな感じで、ピンポイントで着陸スポットへ向かったり(笑)。ちゃんとシートベルトをしていなかったら、みんなフロントウインドウに突っ込んでいたね。ある日、上空900メートルくらいをヘリで飛んでいるときに、タカがヘリのすぐ下を飛んでたんだ。翼を広げて思い切り羽ばたいているタカを上から見るって、そんなにないことだから、かなり貴重な体験だったよ。言葉じゃ表現しきれないね。まるで史上最高の遊園地のアトラクションみたいだったよ。ナショナルジオグラフィックの世界をライブで見たって感じ。とにかく、ヘリに乗るのは、いつだってエキサイティングさ。未来の空飛ぶ車みたいなもの。でも、現実なんだ」
Q. 『KAMIKAZU』でアナタが伝えたかったスノーボーディングとは?
「スノーボードを通して、社会に対して何かを主張するつもりはないよ。スノーボードはスノーボード以外の何物でもないしさ。わかるでしょ? 別に正義者を気取りたいわけじゃないし、スノーボードを使って環境への配慮や思いやりのある社会を訴えたり、今のシステムへの怒りを共有したり、そんなことを俺はしない。人はみんな違うんだし、それが良いんだから。だから、俺はスノーボード以外のことを発信しようとするスノーボードムービーは嫌いなんだ。安っぽく見えちゃうからね。ヘリまで飛ばして、もっと環境に配慮しようって? 冗談はよしてくれよ。でも、『KAMIKAZU』にはそういったナレーションは一切ない。俺はハッピーだったよ。カズは作品に自分のエゴを入れようとはしなかったし、他のライダーに自分のことを褒めるようなコメントもさせなかった。ライディングがすべてを語ってくれるのを理解しているからね。『KAMIKAZU』は本物のスノーボーダーが作った本物のスノーボードムービーさ。ここ何年もの間で最高のムービーだと思うよ」
Q. 『KAMIKAZU』で好きなパートは?
「冒頭で(布施)タダシが沢のパウダーを滑っているシーンが特に気に入っているよ。『KAMIKAZU』のムービー全体をよく表していると思う。クレイジーなエアでもないし、ムービーのピークってわけではないけど、あれこそがスノーボードだって思うんだ。魂のスノーボードっていうか……。カズが最初にタダシを持ってきたのも、エゴがないからなんだろうね。そこにあるのは上の世代へのリスペクト。そして、友達と一緒にパウダーを滑ることへの愛だと思う。それが究極のスノーボードだしね」
Q. 『KAMIKAZU』では様々なラインを描いていたけど、どうやってイメージして、どうやって滑っているの?
「チャレンジのしがいがあって、自分が滑りに流れのようなものがあって、危なくなったときの対処法が見えるラインを選んでいるんだ。いつも事前に自分がライディングしているところをイメージするんだけど、もしも完璧に自分が滑る姿をイメージできなかったら、俺はそのラインにはドロップしない。行けるって確信して、いざドロップしたら、あとはスラフの位置を考えつつ足下の雪にフォーカスするだけさ。そして、イメージどおりに、もしくはイメージに近い状態でターンできているかどうかってことを確かめながら滑る。もちろん、ハプニングが起きたときの対処法も頭の片隅には置いているよ。実際に滑っていると、ときにスピードとフローに妥協しなくちゃいけない場合もある。もし妥協しなければ死ぬってことに繋がるから、たいていの場合は別のオプションを探すようにはしているね。スタイルとフローを捨ててまで危険なラインを滑りたいとは思わないから。ただ滑り降りることが最大の目的じゃないしね。自分らしさが重要ってことさ」
Q. これまで、いろんなスノーボーディングを経験して、バックカントリーをメインに滑るようになったと思うんだけど……。
「コンペティションというものは、人間としての成長過程において、とても大きな意味を持っていると思う。そして、自分自身のことはもちろん、他人の行動パターンについても教えてくれるんだ。プレッシャーがかかるなかで何かをするってのも人生の一部だし、もしスノーボードのコンテストをとおして、プレッシャーがあっても感情をコントロールできるようになったら素晴らしいよね。でも、たとえ勝つことができても、それで終わりじゃない。冷静でいることや仲間意識を持つことが必要だから。仮に大会で優勝しても、周囲に感謝の気持ちがなければ、それはゲームのごく一部で勝ったにしかすぎない。つまり、ゲーム全体での勝者ではないってことさ。ただ、バックカントリーはゲーム全体の話になってくると思う。現実を直視でき、気を配れる仲間や友人たちのクルーが必要だからね。もちろん、お互いがお互いのことを考えるってこと。そして、みんながみんなの目標を達成できるようサポートすることが欠かせない。ゴールに向かって仲間と一緒に努力をすれば、お互いの関係性がより深いものになるしね。パークやストリートを抜け出し、大自然に仲間とともに足を踏み入れてほしい」
FREERUN12月27日発売号では、ブレア以外にも布施 忠、キーガンバライカ、ジェイク・ブラウベルト、ギギ・ラフ、國母和宏のインタビューも掲載されているので、是非ご一読を!