
来期2026/2027シーズンのCOALは、スノーボーダー的にかなり豊富なトピックスがある。それは、ストリートスノーボーダーのレジェンド「マイキー・ルブラン」が再びこのブランドに関わった影響が大きいからだ。マイキーと言えば、90年代~2000年代のストリートシーンを代表するライダーとして、独自のスタイルとアティチュードで多くのスノーボーダーに影響を与えてきた存在だ。「ミスター・ストンプ」とは彼の代名詞で、レッジを飛び越える激しいオーリーからのストンプや、リスクの高いレールトリックに果敢にトライすることでその名を馳せた。当時、ストリートムービーの礎を作ったキングピン・プロダクションズや、コアなビデオクルーとして強い存在感を放ち、同時にスノーボードブランドとしても展開していたM3などのムービーパートで強烈な印象を残し、今のアーバンスノーボーディングカルチャーの基礎を築いた一人とされている。彼の数々のビデオパートは、当時の世代だけでなく後年のライダーたちにも語り継がれている。
また、ライダーとしての活躍に留まらず、自身でHOLDENというウエアブランドを立ち上げるなど、スノーボードとファッションの両方に多大な影響を与えてきた。2020年代になっても現役のチャージを続けており、50歳という年齢で現役ライダーと共に『ASSISTED LIVING』といったプロジェクトに取り組み、過去にフッテージを残したスポットを再訪しながら新たな映像を制作するなど、世代を超えたライディングの継承にも挑んでいる。さらに、51歳でスノーボード雑誌「Slush Magazine」の表紙を飾るなど、今なおシーンに名を轟かせているのだ。
これだけの実績を持つマイキーが、COALの中心人物として動き出した。来期の様々なトピックスを引っ提げ、1月下旬に都内で開催された「SBJ BUSINESS TRADE SHOW 2026」で来日。この記事では、彼とCOALの過去の関係性から、ブランドとの関わり、そしてこれからのCOALの展開について話を聞いた。
Photo: ZIZO
Text: Gaisu

COAL創成期の空気感とHOLDEN誕生秘話。すべては同じフロアから始まった
– まず、あなたはCOALの初期ライダーだったと思いますが、約25年前のブランド発足当時、COALはどんなブランドでしたか?
COALは当時、初めての帽子専門ブランドで、すべての帽子をデザインして作っていたんだ。当時のスノーボードマガジンの広告は今と全然違っていて、ほとんどのブランドはライディング写真にロゴを載せるデザインが主流だった。でもCOALは、ポートレートでストリートウエアを着ているビジュアルを使い、ライフスタイルを広告として表現していたんだ。
– 噂では、ちょうど同時期にCOALの会社の2Fで、自身でHOLDENのウエアブランドを立ち上げたと聞きました。それは本当ですか?
当時、COALを立ち上げたブラッドと、HOLDENのデザイナーのスコットが同じ家に住んでいた。常にデザインをシェアしてディスカッションしていたんだ。だからそれは本当のストーリーだよ。COALのロゴもスコットがデザインした。僕はHOLDENのオーナーで、当時スキーにインスパイアされたアウターウエアが多い中、普段から着られるストリートファッション的なスノーウエアを作りたかった。それがHOLDENだね。
– HOLDENは日本でも人気ブランドになり、その後ハイブランドへと進化しました。その背景は?
HOLDENは素材やクオリティにこだわって作っていたけど、スノーボードシーンの中だけで展開していると金銭的にも品質的にも限界があった。そこで思い切ってメイド・イン・イタリアにし、やりたいことをすべて詰め込んだら価格は高くなった。でも、それはそれでハイプライスブランドとして成立していたと思う。
– その後HOLDENはどうなりましたか?
ブランドは今も存在しているけど、3年前に自分とスコットは抜けている。僕がいる間はスノーボードウエアもアパレルも展開していたけど、現在は新作は出ていないようだね。
– HOLDENを離れた後は?
まず1年間休んでスノーボーディングに没頭した。その頃にスペンサー・シューベルトらと『ASSISTED LIVING』を制作。その後はニューヨークでラグジュアリーブランドなどを扱うファッションのディストリビューターとして2年間活動していた。もちろんスノーボーディングは続けながらね。THE NORTH FACEやRIDEはずっとサポートしてくれている。

「足りなかったのはスノーボードだった」COAL復帰の理由と、現在の役割
– 再びCOALに携わったのはいつ? きっかけは?
2024年11月からで、COALのオーナーとはもともと仲が良く、彼から誘われた。当時やっていたディストリビューターの仕事は悪くはなかったけど、何かが足りなかった。それがスノーボードだったんだ。自然やカルチャーがそこにはなかった。COALには「楽しさ」がある。それが理由だね。
– 現在のCOALでの役割は?
ブランドストラテジーディレクター。セールス、プロダクト、マーチャンダイズ、マーケティングなど、ブランドに関わるすべてをディレクションしている。
– これまでの経験はどう活きていますか?
HOLDENで学んだクリエイティブと、ディストリビューター時代に学んだマーチャンダイズの視点が活きている。さらにカルチャー面では、COALをリブランドしたいと考えたんだ。ブランドとして(國母)カズを再び前に出し、トラビス・ライスをチームに迎え、今注目されているLAMPSHADEとコラボすることで、新しい空気感をブランドに取り込もうとしている。
– 今後のビジョンは?
スノーボードブランドとしてカルチャーを支えながら、プレミアムなヘッドウエアブランドであること。さらにウィメンズラインを充実させたい。女の子たちはファッショナブルだから、いろんな帽子を被りたいだろうし、そこを今強化してる。そしてサーフやスケートなど他カルチャーへの広がりも考えている。スノーボードの枠にとどまることはしたくないし、超えていきたいと思ってるんだ。
– 今まで、これは絶対に曲げなかったという自分のルールは?
自分のことだけじゃなく、携わる人々をサポートすることが一番自分の成功に繋がると思ってる。若いライダーをフックアップし、道を作ることでブランドも成長する。今でも若い子たちとスノーボードするのも好きだし、そのエナジーが自分を若く保ってくれるし、それが結果的にブランドの成長にもつながる。COALでもそれを意識してるね。
– 50歳を過ぎてもスノーボード雑誌の表紙を飾るなどプッシュできる理由は? 若手を引っ張ってる意識もありますか?
ただ楽しいからやってるだけだよ。スポンサーも別に僕にプレッシャーをかけてくるわけでもないし、シンプルに楽しいから今の年でもプッシュしてる。滑りだけじゃなく、COALでブランドとして頑張ることもプッシュしてるつもり。ま、全部を楽しんでるんだよ。RIDEの安藤健二(アンディ)みたいなやつもいるだろ。楽しむことに年齢は関係ないんだ。

トラビス、カズ、LAMPSHADE。2026/27のトピックスは“カルチャーの再点火”
– トラビス・ライスをCOALに迎えた理由は?
今のCOALにカルチャーをちゃんと表現してくれる人が欲しかった。トラビスは、バックカントリーでも本当にすごいライディングをしているし、そのシーンをメインストリームに持ってきちゃうぐらいの影響力がある。彼のもうひとつの魅力は、プロダクトに対する“いいものを作る”ことへのこだわりがすごいこと。COALでいいものを作りたいと考えた時に、それを実現できる。来期展開するバラクラバのフィット感や素材、そういう細部へのこだわりも含めて、滑りの世界観とその両方を持ち合わせている素晴らしいライダーだと思うね。

– 来期はカズ(NOMADIK KAZU 777)とのコラボアイテムも展開。カズの印象は?
ライダーとして完全にヤバすぎるし、スタイルもパワフルだよね。ファッションに関しても独特の感性を持ってる。カズと初めて会ったのがミラノだったんだけど、200人くらい人がいる中にカズが入ってきた瞬間、みんな「おっ!」って止まった。でも彼は静かに超堂々としてて、その存在感がすごかった。もの作りに関しても、COALや僕が何かを押し付けるんじゃなくて、何が作りたいか聞くだけで、シルエットもファンクションもカズから具体的なアイデアが出てくる。彼もこだわっていいものを作ってくれるタイプだね。

– LAMPSHADEとのコラボの経緯は?
LAMPSHADEはブレイク・ポール、パーカー・シュモフスキー、ニック・ベイデンの3人が作った手作りビーニーのライダーズブランド。彼らとは仲のいい友人で、めちゃくちゃかっこいいと思っていたし僕自身もLAMPSHADEのライダーをやっていた。自分もCOALに入ることになって、彼らと一緒にやったらどうかなと思ったんだ。で、彼らにCOALと一緒にやってみないって話したら、彼らもやりたいって言ってくれた。今を走ってるライダーたちが作るものってやっぱりイケてるから、そこをCOALの中にエッセンスとして入れられることで、いいものを作れていると感じているんだ。

– 話を少し変えて、今のスノーボードシーンをどう感じていますか?
大きなブランドも多いし、ビジネスライクになってる部分もある。でも若くてフレッシュなライダーやカルチャーの部分をちゃんとフォーカスしていく必要はあると思ってる。COALではそこを担っていきたい。リアルな部分やフレッシュさをね。
– 今のストリートスノーボーディングシーンは?
スキルも進化してるし最高にヤバいよね。でも根本的に楽しんで滑ることは変わってない。みんなで集まってセッションして、話して、どんどんクリエイティブなトリックが生まれて自由にやる。それってファッションにも繋がる部分だと思うんだ。山とストリートのカルチャーはまた違って、街で滑ってることでファッションに繋がるっていうのはあるかもしれない。山だとギアは機能に寄っていくけど、街は逆に何を着てもいいし、ルールがない。そこで生まれるものがストリートにはあると思うね。
– 日本のスノーボードカルチャーをどう感じていますか?
日本には30回近く来てるけど、外から見た感じで言うと、日本人のターンを見ても、ジャンプを見ても、スタイルを見ても、ピュアだなと思うね。滑りもめちゃくちゃハイクオリティだしね。だから正しいっていうか、それがイケてる。そのままでいい、そのまま行ってくれ!君たちのやってるのは正しいと思うからってね。
– 最後の質問。『10年後、スノーボーダーにCOALってどんなブランド?』って聞いた際、なんて言われたいですか。
シンプルに「Coal Get me!」って言われたら嬉しいかな。COALがあることで自分を表現できる。今の俺がある、みたいなね。みんながそう思ってくれるって相当レベルが高いことだけど、そんなブランドでありたいね。

COAL
Official Website: https://coalheadwear.jp/
instagram: @coalheadwear.jp



