かれこれ2016年の冬から取材を続けている、ヨコノリ・ミュージシャン東田トモヒロの北海道ライブ・スノーボード旅。FREERUN本誌やWEBでも数回にわたり特集してきた恒例の旅で、初めて紙面で掲載したのは2016年。翌年の秋には「LIFE IS YOUR LINE」というタイトルで、富良野、道東、札幌を巡る旅を誌面で紹介した。
その旅には、東田の昔からの仲間であり、道産子レジェンド、Mr.ヨコノリスト三ツ谷さん(studio328)も同行。どのエリアでも濃厚な仲間との出会いがあり、道東では写真家THE DAY PHOTOGRAPHYことAbechanとも繋がった。後にこの北海道旅は「雪旅」と名付けられ、旅のオーガナイズは三ツ谷さんからAbechanへと受け継がれていく。
昨年のFREERUN本誌でも、「雪旅 2024」にフォーカスし、北のローカルスキー場を巡る彼らの旅のストーリーをお届けした。どの冬も、北海道各地のディープなヨコノリカルチャーが根付く場所でライブを行い、そこで色濃いローカルと繋がり、現地で極上のスノーボードセッションを楽しむ。そのコンセプトだけは、今も、そしてこれからも変わらない。
本記事【前編】では、昨年2月に行われた「雪旅 2025」の序盤にフォーカス。稚内・宗谷エリアから始まった“失われた斜面”との再会、興部、上川、そしてピップから手稲へと続く、縁と嗅覚に導かれた雪旅前半の記録を、東田くんの言葉とともに振り返っていく。
Edit: Gaisu
Photo: Abechan(THE DAY PHOTOGRAPHY)
奇跡は人との繋がりと雪山に存在する。失われた“いい斜面”を探す雪旅の始まり
昨シーズン、東田くんとAbechanは、稚内でのファーストライブから雪旅をスタートさせた。この地で交わるのは稚内・宗谷クルー。帆立などの漁業が盛んなこの地で、彼らはライフスタイルとしてスノーボーディングと向き合っている。


「宗谷クルーがよく行く音威子府のスキー場の上部に、閉鎖されたコースがあって。一昨年そこを滑った際に、『あれ今度滑れたらいいね』って彼らと話してて、それを今回実行した感じなんだよね。みんなでスプリットで登って、『遂に狙ってた斜面を行けたね』みたいな、ある意味感動的なこの旅のファーストライドだった」

リフトで行けるところまで上がり、そこから約1時間半ほどのハイクアップ。その先に待っていたのは、かつてスキー場で最も評価が高かったという急斜面だった。
「昔そこはお金を取って、キャットで上まであげるサービスがあったらしいんだけど、もうそれすらやめてて。しかもそこは、このスキー場で一番いいコースだったらしくって。でも今はクローズされて、地元の人たちからも忘れられた、失われた斜面ってことだね」


前回はローカルゲレンデにフォーカスした旅だったが、今回の雪旅は「失われたコースの再発掘」が自然と始まっていった。
そうした今ではスキー場からロストされた斜面を拾えるのは、彼らのようなスノーボーダーだからこそだろう。東田くんの旅のスタイルは、雪旅に限らずサーフトリップでも共通している。常にメジャーではなく、マイナーなローカルスポットへ。好きな人だけが集まる、ある意味特別な場所へと自然に引き寄せられていく。

「常に裏を狙ってる感じで、今回はそれをスプリットで登って。海外の人が多くなってきてる場所を巡るっていうんじゃなくて、居場所を自分たちで探してく。そういうスノーボードに今変わってきてるよねってことなのかなって。俺らは逆にね。だから、今回は失われたいい斜面を探す旅みたいな感じに自然と引き寄せられたんだと思う。北海道ってあるんですよね、そういう斜面がまだまだ」。

アートと雪が交わる場所。興部CLCと日向スキー場のポテンシャル
次に訪れたのは、興部町にある「CLC」。スノーボードのグラフィックやブランドTシャツのデザインなどを手がける、リアルなスノーボーダーでもあるデガラシくんが運営する、スノーカルチャーの深いスポットだ。
「デガくんのところは、雪は他に比べて少ない分、アートとか音楽とか、そっちへの反応が高いから、ライブも盛り上がるんだよね」
このエリアでは日向スキー場を滑った。タイミングこそパウダーではなかったが、非圧雪ゾーンの多さが際立つ。
「非圧雪ゾーンの多さが半端なく多いわけ。オープンバーンの斜度の感じもすごくいいから、カービングもめっちゃ気持ちいいし、日によっては超いいパウダーを拾える。沢があったり、バンクドコースもあったり、コンパクトなのにめっちゃ盛りだくさんっていう」


事前にこのスキー場の良い噂がAbechanの耳にも入っていた。
「それが間違いないっていうのが、実際に行ってよく分かったね。それにスキー場の並びに安い温泉が隣接されてて、その温泉のパフォーマンスも高い。至れり尽くせりって感じだったから、ここもおすすめできる場所のひとつだよね」


アドレナリンがピークに達した、仲間と分かち合う上川バックカントリー
その後、旅の中盤の締めとなるライブを当麻町の「ココペリ」で行い、翌日はそこから車で30分ほど走った上川周辺の里山でバックカントリーをすることになった。

「ここが、この旅の山滑りのひとつのピークだったんすよね。俺らの仲間内で、ほんとにスノーボード好きな人だけが集まって」
雪山に復活した三ツ谷さんとの歩きもあり、ローカルのハブちゃんも合流。彼が大事にしているポイントへと案内された。


「休日だったんだけど、ここは空いてるだろうっていう場所へ連れてってくれて。あの時の滑りが一番アドレナリンが出たよね。エクスタシーの極みで『フォー!』って、思わず何度も出たもんね」
人工物の匂いがほとんどしない、本当に“深い山”のエリアへと入り、スプリットで歩き、仲間とノートラックパウダーをシェアする。
「歩いてて疲れるっていうより、逆に元気になる感覚だった。サーフィンでいうパドルアウトが気持ちいいみたいなね。ほとんど護岸工事もされてない、自然だけしか見えないリーフポイントに入ったような感覚」

一般的なスノーボーダーやインバウンドがあまり着目しないゾーンだからこそ、そこに強く惹かれる。
「自分のなかでも、こういう場所がビタッとハマるって再認識できた。山に呼ばれた感ってあるんだよね。仲間が誘ってくれて、タイミングで集まって、天気も最後に晴れ間が出たりして。ほんと神がかってた。やっぱ人の縁ってすげえなって、スノーボードで分からされるみたいな」

基本がすべてを繋げる。ピップでのカービングと、手稲ローカルのシークレットライン
翌朝は旭川から札幌方面へ移動し、本来は午後から手稲ローカルとのセッションを予定していたが、旅に同行していた三ツ谷さんから、ひとつの助言が入った。
「俺らはまず手前のポイントでいいのをやって、その後に奥のポイントを狙うっていうラインでやってるから」
その言葉を受け、一行は近場のピップスキー場へと向かい、カービングセッションを行うことになった。
「俺のスノーボードの師匠でもある三ツ谷くんが、『カービングなめんな!』って背中で語ってくる感じでさ。やっぱ基本の板の扱いが今の彼の一押しで、特にビッテリー系のキレキレのカービングって究極じゃん。そこをある程度やれてないと、パウダーもやれねえだろって話なんだと思うんだよね」
ピップのグルーミングバーンで行ったのは、言わば“チューニング”。
「ギターでいうところのチューニングだったね。エッジトゥエッジっていう基本ターンをしっかり整えて、それから丁寧にパウダーに入っていく。あと、手前のスキー場で面ツルバーンがあるなら、まずそこを攻めてから旅の先へ行けっていう、スノーボーダー的な旅のライン取りも教えてもらった。やっぱ朝イチの面ツルには価値があるんだよね」
その後は札幌方面へ車を走らせ、手稲にあるプロショップ「TRIAL手稲山」のミヤちゃんの元へ。彼らに案内されたのは、ローカルのみぞ知る付近のシークレットエリアだった。
「これも縁だよね。ミヤちゃんが『札幌方面に来るなら、こっちにも来たらいいのに!』って事前に誘ってくれてて。その言葉にちゃんと応えたかったから向かったんだよね」
そこには、ローカルたちが大切にしている斜面が、きちんと残されていた。
「誰でも行ける場所じゃないからこそ、ああやって午後まで斜面を残してくれてたのが最高に嬉しかった。あの一本は、旅のもうひとつのハイライトだったね。仲間と雪がもたらすギフトだと思う」


その後は手稲スキー場のゲレンデで彼らとセッションを楽しみ、翌日の朝イチも手稲でおかわりセッションが続いた。この日はローカルたちが口を揃えて“今シーズン一番”と語るほどの極上パウダーを当てた。

「ローカルたちが『今日、今年一ヤベー』って言ってたくらいだからね。結局、横乗りが好きで、音楽が好きで、ライブで集まった人たちとちゃんと繋がって、その一日一日を大事にしていくと、すげえいい斜面と、いい雪に出会えるんだよね」


縁と雪に導かれ、また次の目的地へ。
【後編】では、「雪旅 2025」が辿り着いたその先を描いていく。













