The Road To Mochiyori
DEATH LABELライダー・PJ Gustafssonが綴る『The Road To Mochiyori』は、単なるトリップレポートではない。スウェーデンから函館、ニセコ、そして羊蹄山へ──約28時間の移動、時差ボケと疲労、そして雪・仲間・文化との再会。そのすべてが交差する旅路の中で、日本というフィールドが持つ特別な引力が浮かび上がってくる。前編では、函館での濃密な時間と食文化の衝撃、そして羊蹄山を舞台にしたリアルなライディングの日々を、PJ自身の言葉で追体験。そして今回の後編ではいよいよ北海道から青森を経て、群馬、最終目的地「Mochiyori」へ。
PART FOUR|HAKODATE ADVENTURES
ヒロは「Hakodate Adventure Tour」という会社を運営している。


函館市周辺の自然を舞台に、四季を通じて体験型のツアーを行う会社だ。なかでも人気が高いのが、市内近郊の川で行うカヌーツアー。
この日はツアーの予約が多く入っていたが、ヒロは「せっかくだから一緒に行こう」と僕を誘ってくれた。僕は夏になると湖のそばで育ち、家族の影響もあって、幼い頃からボートやカヌー、カヤックに親しんできた。
そのため、日本で初めてカヌーに乗るという体験には、正直かなりワクワクしていた。
朝早く現地に到着し、ツアー客と合流する前に、ヒロとふたりだけで短いリバークルーズを楽しむ。静かな潮泊川、澄んだ空気、穏やかな水の流れ。
連日のハイクとライディングで疲れ切っていた身体にとって、この時間は本当にありがたい休息だった。

スノーボードをしていないときのヒロの“仕事の顔”を見るのも新鮮で、一日だけ彼の仕事に同行できたことは、とても良い経験だった。
翌日は湖でのワカサギ釣り。数時間、氷の上でのんびりと過ごしたあと、函館を、そして今回の北海道の旅を終える時間がやってきた。

出発前に、函館名物「ラッキーピエロ」でハンバーガーとフライドポテトを買い込み、夜、車でフェリーに乗り、本州・青森へと渡った。
PART FIVE|DEATH LABEL MANSION
青森に到着したのは、午前2時頃。温泉施設の駐車場で数時間仮眠を取り、朝6時のオープンと同時に温泉へ入り、さらに身体を休める。
その後、地元のスノーボード・スケート・サーフショップ「ABOUT」が開くのを待ち、短い挨拶を済ませてから、水上へ向かう長いドライブを再開した。

約9時間後、ようやく到着したのが「DEATH LABEL MANSION」。DEATH LABELオーナーの大川貴文(タカ)が待っていてくれた。
ここは、タカが所有する水上のアパートで、チームライダーや仲間たちが集い、寝泊まりしながら滑るための拠点だ。この場所では、本当に数えきれないほどの思い出が生まれてきた。
何度訪れても、ここは僕にとって“家”のような場所だ。

翌日は、星野リゾートが新たに運営する天神平(Mt.T)が、吹雪のため一日中クローズ。だがそのおかげで、翌日は信じられないほどのコンディションに恵まれた。
ニセコからJunも合流し、木下花菜も天神平で合流。
その後数日間、アンドリュー・ブリューワー、東 裕二といったDEATH LABELのチームライダーたちも加わり、天神平や水上周辺のローカルリゾートで滑り倒した。
夜はナイター、一日の終わりは温泉と最高の食事。これ以上ないルーティンだった。




PART SIX|SNOWBOY PRODUCTIONS「Mochiyori」
数日間の大雪とパウダーセッションを経て、僕たちは週末に向けて川場スキー場へ向かった。
目的は、Snowboy Productionsが手がける新イベント「Mochiyori」。
Snowboy Productionsの中心人物は、Krush Kulesza。
Holy Bowlyをはじめ、「It’s Tits!」「The Projects」「Downtown Throwdown」など、数々の伝説的イベントを生み出してきた張本人だ。
28年以上にわたり、Krushはスノーボードイベントとテレインパークの進化を牽引してきた。彼のアイデアは世界中で模倣されてきたが、オリジナルに並ぶものは存在しない。
彼の原動力は、純粋な“進化への情熱”。イベントの現場で彼が動き回る姿を見るだけで、それが伝わってくる。
常に「もっと良くする方法」を考え、周囲の人たちが楽しんでいる姿からエネルギーを得るタイプの人間だ。
Snowboyのフィーチャーやイベントが進化してきたように、Krush自身もまた、コミュニティ、インクルージョン、表現、参加意識といったより大きなビジョンへと歩みを進めてきた。
Mochiyoriも、その延長線上にあるイベントなのだ。
世界中から、年齢もバックグラウンドも異なるライダーたちが川場に集まり、創造性に満ちた唯一無二のパークで、ライダー、フォトグラファー、フィルマー、ビルダーたちが一体となる。週末を通して、トリックとハイタッチが飛び交い、会場の雰囲気は終始ハイテンション。
僕自身は、新品のボードでスピードに苦戦し、さらに膝の調子も万全とは言えなかったが、それでも本当に楽しい時間を過ごすことができた。
ハイクし、いくつかのフィーチャーを滑り、他のライダーたちを見て、昔からの友人や新しい仲間と語り合う。
アンドリューは初日に激しく転倒し、その後は滑ることができなかったが、DEATH LABELの若手──中家海音、萩原大成、成田音生、太田 心、工藤大和は、
スピードとスタイルでコース全体を支配していた。





週末の宿は、フォトグラファー桑野智和が運営する「Wakuwaku Village」。
スウェーデン北部の伝統的なコテージをリノベーションした宿泊施設で、群馬にありながら、どこか“故郷”を感じさせる場所だった。
快適なキャビンが並び、群馬エリアを訪れるなら、ぜひおすすめしたい滞在先だ。
昼は最高のパークを滑り、夜は語り合い、笑い合う。
古い友人、新しい友人、そしてこれから先も続いていくであろう関係性が、この数日間で確かに生まれていった。
また必ず、ここへ戻ってくる。
そう強く思わせてくれる旅だった。

PJ Gustafsson(ピー・ジェイ・グスタフソン)
スウェーデン出身のスノーボーダーであり、DEATH LABELのコアライダー。パーク、バックカントリー、ストリートまでフィールドを限定せず、スピード感のあるアプローチと自然地形を活かしたライン取りを武器に、世界各地で独自のスタイルを築いてきた。
長年にわたり日本を定期的に訪れ、日本の雪質、山、そしてカルチャーに深い敬意と愛情を持つライダーのひとり。映像作品やフォトシューティングにおいても存在感は大きく、そのライディングは派手さだけでなく、雪山と真摯に向き合うリアルな感覚を映し出す。
本作『The Road To Mochiyori』では、ライダーとしてだけでなく、一人の旅人として見た日本の風景と時間を、自身の言葉で綴っている。
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