BURTONが仕掛ける想像力重視の新感覚イベント「MYSTERY SERIES」レポート

BURTONが「US OPEN」に代わって新たに手掛けるシリーズ戦「MYSTERY SERIES」。今シーズンは、その未知なるシリーズ戦を周知させるためのイベントとして、世界各国で単発で開催されている。その日本版となる「FLOW LINE」が、さる3月19日(土)と20日(日)の2日間に渡り、長野・白馬八方尾根スキー場にておこなわれた。その模様をお届けしよう。

Photo: ZIZO=KAZU

いきなり結論になるが、「みんなちがって みんないい」。まさに、そんなイベントだった。

MYSTERY SERIESの詳細については告知記事(コチラ!)で触れたので割愛させていただくが、他のコンテストとは異なる新しいフォーマットが採用され、参加者が“スノーボード本来の楽しさ”を共有できる内容となっていた。オリンピックやワールドカップのように、トリックの難易度を競うことがメインではないからだ。重要なのは、滑り手のクリエイティビティ。そこから生まれるオリジナリティ、そしてスタイル。さらに言えば、いかに人に刺激や感動を与えられるか。自分の限界をプッシュしつつ、どれだけスノーボードを心の底から楽しんでいるか。それらに重きが置かれていた。

舞台は、白馬八方尾根のパノラマゲレンデの林間コース、通称・パノリン。その迂回路特有の壁地形や落ち込みといった地形を活かしつつ整備されたフリースタイルコース。そこに集まったのは、メンズ、ウィメンズ、キッズあわせて80名を超える参加者たち。

開会式直後からテンションはかなり高め!

初日はガスに包まれて視界が悪かったものの、一般開放された特設コースでライダーとのFUNなセッションが繰り広げられた。そして、2日目。この日はジャムセッション形式でのコンテストがおこなわれるため、安全を考慮して特設コースはイベント参加者専用となっていた。

MCを務める平田 巧が開幕を告げると・・・
参加者はそれぞれ1本のフリー滑走でウォーミングアップ

コンテストは、コースを上部セクション、中部セクション、下部セクションに分け、それぞれ優秀ライダーを選出するという形式がとられた。ちなみに、藤森由香、高橋龍正、宮澤悠太朗、竹内悠貴のBURTONライダーに加えて、高橋と同じINK MOVIEで活躍している久保田空也と佐藤正和がジャッジを担当し、それぞれのセクションで3名ずつが参加者の滑りにポイントを付けていくというもの。

まずは上部セクションでのジャッジング・タイム。ここは連続ウェーブを抜けてライダーズライトにある壁地形を活かしたサイドヒットがメインディッシュだ。スタイリッシュなグラブで魅せる者、ハイスピードで突っ込んで360や540などのスピンやフリップ系のトリックを繰り出す者、ランディングバーンを活かしてレイバックする者……など、本当に何が飛び出すかわからない。だから、面白く、ジャッジもクールな滑りを魅せた参加者に歓声を上げていた。そして、スタート地点から他の参加者の攻めっぷりが確認できるので、徐々にセッションはヒートアップしていった。

サイドヒットでコーク540をメイク
上部セクションでは、藤森、高橋、宮澤がジャッジを担当した

約1時間の上部セッションを終えると、ジャッジングポイントが中部へと移動。中部セッションのスタートだ。ここはレギュラーバックサイドのバンクにドラム缶が刺さったセクション、シングルレール、ライダーズライトの壁を活かしたサイドヒットに、迂回路を飛び越えるギャップジャンプなど、かなりテクニカルなエリアとなっていた。しかも、気温が高かった前日に緩んだ雪が夜の間に冷えて固まり、非圧雪バーンはかなりバンピーなコンディション。それでも普段から様々なコンディションを滑り込んでいるスキルフルな参加者は臆することなくギャップジャンプにトライしていた。このセッションも時間の経過とともに次第に熱を帯びていったのは言うまでもないだろう。

バンクでスピードをつけるか魅せるかも本人次第!追い撮りOKな自由な空気感が漂っていた
中部セクションは、佐藤、久保田、竹内が担当。後ろ姿は佐藤
ジャッジをしないときはライダーもコースを流していた。宮澤が放った迂回路超えのスタイル全開のクレイル
スノーボードだけでなくスノースケートでも滑走OK!
ドラム缶に当て込むようにレイバックを繰り出した。カッコよすぎる!
北京パラリンピックから帰国し、隔離期間が明けて、この日が久々のスノーボーディングだった岡本圭司(右)は何度もコースを流していた。このときはディガーたちとランチ休憩中

ランチ休憩を挟んでからは、ラストとなる下部セッションの火蓋が切って落とされた。ここでは、レギュラーのバックサイドバンク、キッカーとしてもヒップとしても使える複合アイテム、そして壁地形を活かしたサイドヒットや連続ウェーブをどう調理するかがポイントとなる。多くの参加者がキッカーでのジャンプを選択するなか、誰も行かない天然マッシュを攻めたり、軽く降り積もった新雪でスラッシュを上げたり、参加者はコースを所狭しと駆け回っていた。何よりも印象的だったのは、誰もが笑顔で滑っていたということ。それぞれの想像力を駆使し、いかに自分を表現するか。それを心の底から楽しんでいるようだった。しかも、特設コースが面白いのだから、自然と笑顔になるのもうなずける。それは、ジャッジしていないライダー陣もスキを見計らってはコースをクルージングしていたほどだったのだから。

竹内も様々なアプローチでオリジナルのラインを描いて遊んでいた。ヒップのようにアイテムを使ってブッ刺しのルックバックのインディを披露
ヒップのランディング部分をバンクに見立てて当て込むことも可能
フロントサイド360でサイドの着地面を狙う参加者
キックがあっても飛ばずに壁地形への当て込みのキッカケに使えることを証明
バキッと音が聞こえてきそうなメソッド・トゥイーク

そしてアッという間に3つのポイントでのセッションは終了したのだった。

 

コースの下見からアイテムの設営まで、そしてジャッジも務めた藤森由香に、このイベントを振り返ってもらった。

イベントの締めの挨拶をする藤森

「最近、世界のトップライダーがゲレンデのサイドヒットのライディング映像をWEBで配信してたりするじゃないですか。それを観てて、すごく面白いと思ったんですね。しかも、キッズもビギナーも参加できて、想像力とスキル次第で誰もが楽しめる大会形式のイベントってなると、サイドヒットが一番なのかなって。それで、いろんな人に相談して今回の特設コースを仕上げてもらいました。バーンが硬かったから攻める人はいないかもって思ったけど、サイドヒットで縦回転にトライする人だったり、ロードギャップにチャレンジする人だったり、いろんなラインを見つけ出して自分なりに滑ってくれたり、ジャッジしながら観ていて本当に面白かったです。それに、みんな自分をプッシュしていたから、それを見られて嬉しかったです」

 

表彰式のプレゼンターも務めた高橋(中央)、宮澤(左)、竹内(右)

また、同じくジャッジを担当した高橋龍正にも話を聞いたところ、「すごくバリエーション豊かなコースだから、好きなジャンルが異なる普段は一緒に滑らないような人たちが一同に集まってセッションをする。そんな光景を観られただけで楽しかったですね。実際に滑ると、ライン次第でジャンプもできるし、飛ばなくても次々に攻めたくなるポイントが広がっていくから面白かったですよ。実際、己の道を貫き続ける人、型にハマらずに縦横無尽に滑る人、みんな本当に気持ちよさそうなラインを描いてましたもんね」とのこと。

 

<<リザルト(※すべてカナ表記&敬称略)>>

★上部セッション賞

キッズ: タケダ リキ

ウィメンズ: ハラ ユキノ

メンズ: ニシイ タカヒロ

 

★中部セッション賞

キッズ: ナツメ ムツホ

ウィメンズ: シンガイ ミナミ

メンズ: スギヤマ カズヒロ

 

★下部セッション賞

キッズ: マルヤマ イチノシン

ウィメンズ: イシイ ヒマリ

メンズ: アライ ヨシカズ

 

★BURTON賞: ミカミ リナ

 

★INK賞: スギヤマ カズヒロ

中部セッションのメンズ賞とINK賞をダブル受賞した参加者のスギヤマさんに出場した感想をうかがった。

「毎週、静岡から白馬エリアのパークやバックカントリーを狙って滑りに行くんですけど、いつも地形を活かして遊ぶことが多いんですね。そんな普段からやってる滑りが活きたと思います。来シーズンもこのイベントがあるなら参加したいし、こういったコースがゲレンデに常設されたらいいなって思いました。本当に楽しかったです」

 

最後に、イベントの雰囲気をより感じていただくために、21枚の写真をスライダーで紹介しよう。

 

こうして初開催となった日本での「MYSTERY SERIES」は幕を閉じた。ゆくゆくは、日本各地でラウンド1がおこなわれ、そこから日本代表を決定するラウンド2を開催し、最後に各国の代表が集まって世界王者を決定するラウンド制の世界大会となるそうだ。予定では2024年に完成するとのこと。そんなBURTONが仕掛ける誰もが参加可能でオープンなシリーズ戦。今から今後の動向が楽しみでならない。

text:Haru

 

シリーズ戦の特設ページはコチラから!

さらに興味がある人は、「#burtonmysteryseries」のハッシュタグで検索!