今年のウィンターシーズンは過去にない様々な問題を抱えている。暖冬による記録的な雪不足、そして連日ニュースで取り上げられている新型コロナウイルス。これらの要因により、本来2月下旬から3月にかけて予定されていたイベントの中止が相次いでいる。
その中で、小規模開催や無観客開催など、急遽フォーマットを変更し開催できたイベントもある。そのひとつが先日2/29(土)〜3/1(日)におこなわれた今年で10回目となるTENJIN BANKED SLALOM 2020だ。
関係者の間で直前まで開催すべきか検討されたが、表彰式を従来の屋内ではなく屋外のゴール付近でおこなうこと、少しでも体調が優れない人への参加見送りのお願い、受付など人と接近する際のマスク着用など、徹底した自己管理の要請を運営側から出し、規模を縮小して開催されることになった。
今年のコース造成は、ローカルや日本各地から集まった堀手をはじめ、スノーボード界のレジェンドであるマイク・カミンズやマイク・バシッチ、そして1週間前にかぐらで開催された「SHAPER SUMMIT JAPAN」で来日していたロブ・キングウェルを交えコースのラインを数日前から決めていった。
会場となる群馬県・天神平スキー場の雪不足も影響し、悪戦苦闘を強いられ、例年のコースよりもやや下部にあたる大岩付近がスタートとなった。が、上部の斜度のあるテクニカルなバンクがないことや、造成の際にみんなでほぼ滑りながらバンクが作られたこともあり、滑走距離こそ少なくなったが、バンクトゥバンクの繋ぎをスムースに気持ち良く流せるコースが完成していた。
そのため例年よりも攻められるコースとなり、スピードをキープさせるためのワクシングや滑走するタイミングがとても重要になった。板が良く走る雪のコンディションもタイムに大きく影響するため、日曜日の決勝では1本目と2本目の滑走順を入れ替えるなどの工夫も見られた。特に男子や女子のオープンクラスでは、1本目と2本目とでは雪のコンディションに大きな変化があり、参加したライダーたちのDQなども目立ち大波乱のレース展開に。
もともと表彰式をゴール付近でおこなう予定だったが、各クラスごとに最後の滑走者が滑り終えると、その場でタイムを発表し表彰する流れに。これはこれで、ライブ感もあり大きな賑わいを見せていた。
男子・女子のオープンクラスでは今までにない顔ぶれが上位に食い込んだ。次世代のスノーボーダーたちの活躍が目立ち、各クラスで新たなヒーローが誕生した。
10年という歴史の中で、参加者たちの年齢も上がり次世代のスノーボーダーが新たに加わるなど、バンクドスラロームというカルチャーはしっかりと成熟しながらも継承されている。この10年間、そのシーンの流れをTENJIN BANKED SLALOMは見てきているのだ。運営スタッフたちが日本のスノーボードシーンを盛り上げたいという熱い思いはもちろんのこと、何よりも老若男女問わず誰でも参加でき、楽しみながら自分と向き合い成長できるというこのシーンの本質がそうさせたのだと思う。
この時期にイベントを開催することには計り知れないプレッシャーがあったはずだが、それを乗り越えて無事開催してくれたことは日本の未来のスノーボードシーンに大きな勇気を与えてくれたに違いない。