水上真里と松井英子の女ふたり旅 群馬・沼田エリア VOL.1 ~川場編~

2020年の大人の「女ふたり旅」は、群馬県・沼田エリアを舞台に川場、丸沼、尾瀬岩鞍と各スノーリゾートを3連載でお届けする。今年はプロスノーボーダー水上真里と松井英子のふたり。レギュラー出演のLA在住である上田ユキエが現在の社会情勢により帰国できない状況になったため、急遽ピンチヒッターとして群馬在住のライダー松井英子が参戦。
雪不足と言われる中でも、自分たち次第で楽しみ方は広がると話す彼女たち。大人の女ふたり旅が始まった。
Text: Mari Mizukami
Photo:Takahiro Nakanishi
Special Thanks: GNUsnowboards, RIDEsnowboards, Kawaba

<旅をするふたりを簡単に紹介>

水上真里(MARI MIZUKAMI)
プロライダー歴20年。ヨガ講師のDIY女子
松井英子(EIKO MATSUI)
群馬県の横乗り女性ライダー代表。イベント主催で活躍する看護師


女ふたり旅、川場スキー場での再会

今回の撮影がスタートする直前、「ごめん、マリ!日本に行けなくなっちゃった」。
急遽、(上田)ユキエちゃんが帰国できなくなったと連絡が来たのは撮影の3日前だった。
やはり、理由は今世界中が困惑しているあの出来事だ。私も彼女の立場なら同じ選択をしただろう。
「代わりのライダーは…群馬エリアにいるガールズライダーがいいね」。
2人の意見は一致し、群馬在住の松井英子の名前が上がった。通称えーちゃんとは今まで一緒に滑ったことはなかった。噂で大の横乗り好きだと聞いていたし、群馬在住の彼女と一緒の旅なら幅広く楽しめそうだと思えた。

早速、えーちゃんと連絡を取り、聞いてみた。
「女ふたり旅の群馬編、ユキエちゃんが来日することができなくなっちゃって…代わりに一緒に撮影できるライダーを探してるんだけど、えーちゃんどう?」
すると、「是非とも参加したいです!仕事のお休みをなんとかしてみます!!」と、なんとも体育会系の気前の良い返答で即決することができた。

群馬旅、最初のフィールドに選んだのは川場スキー場。

川場スキー場は東京からも近く設備もグルメも全てが兼ね揃えられている

3月上旬、撮影当日の朝、川場に着いてすぐにえーちゃんと合流した。撮影にはカメラマンの中西くんも来てくれた。
彼は今回で3シリーズ目となる「女ふたり旅」を撮り続けてくれている、もはや専属カメラマンといっても過言ではない。私も信頼しているカメラマンだ。
この日の川場は晴天に恵まれ、雪のコンディションも良さそう。今シーズンは温暖化の影響で雪は確かに少ないが、川場スキー場の方曰く、川場に来るお客さんは例年よりも多いと言う。雪山を楽しむことを共感できる人たちが多いのは嬉しいことだ。

「まずは頂上まで行ってから滑ろうか」と、2人でリフトに乗った。

リフトに乗るとすぐにえーちゃんが話し始めた。
「出会ったのは確か…9年前にマリさん主催のガールズイベントに出場したときです。大会の優勝者はフランス行きの航空券がもらえる内容で、とても夢がありましたよね。勝てば次のフィールドに行けるって思えるような」。

これだけ聞くとなんだか華やかそうに聞こえるが、このイベントを主催しているとき、私は膝軟骨の大手術をして数年間は滑るなんてとんでもない、歩くのも困難な時期だった。

この頃、毎夏に南フランスのLes2alpsスキー場への招待をもらっていた。フランスで滑りたいという意思があっても、歩くのが困難で、滑るのは夢のまた夢。自分が行けないのならガールズライダーを発掘して代わりに行ってもらいたいという想いで主催した大会だった。

えーちゃんの話でその頃を思い出すと、今の私は当時の怪我を乗り越えプロライダーとして『滑らせてもらえてる』。大変だったあの頃からは検討もつかないくらい充実したスノーボードライフを送れていることにあらためて気付かせてくれた。彼女との会話は初心を思い出させてくれたのだ。

リフトの上から見える川場スキー場のコース。頂上からボトムまで一気に下りると楽しさ倍増

会話をしていく中で、やはり今回ユキエちゃんが帰国できなかったあの話になった。感染の拡大により状況は刻一刻と悪くなり、日常生活が脅かされている真っ只中のトリップでもある。
これからもみんながずっとこんな気持ちで毎日生活を続けていたら、心も暗くなってしまうだろう。好きなことを楽しむ精神は、今の全ての人にとって大事なことだと思う。大変なことが起きている地球の上に住んでいるのならなおさらだ。誰もが同じ意見だと思うけど、国境を越えて今は協力し合うのが1番大事。

「今、せっかく楽しいスノーボードをしているんだからさぁ、なんか笑顔で楽しむことだけを地球上に発信したいよね」。
節度を持って、気を付けるところはしっかりと意識をして楽しむところは楽しもう!そう意気投合した私たちは女ふたり旅のトリップを思い切り楽しむことにした。

この旅の撮影で少し緊張しているエイコの気持ちを自然になごましてくれる中西カメラマン。Photo: Mari Mizukami

気持ちを切り替えて、まずは遊べる地形を探しながら一緒にフリーランを楽しんだ。
当て込める壁を発見!程よい硬さでスピードも出せた。

光が差すバンクを見つけてレイバック 。Rider:Mari Mizukami

午前中の雪は引き締まっていてレイバックには最適だ。えーちゃんも飛び越えたいポイントをカメラマンの中西くんと話し合っていた。

暖冬の影響で出てしまった笹もアイテムに見立てて飛び越えるエイコ。 Rider:Eiko Matsui

頂上から中腹に降りる途中には当て込める壁地形が何個もあった。その後はバンクのコースもあり、さらにその下はパークへと続いている。

マリとエイコのフリーライドセッション

ゲレンデのトップトゥボトムを1本流すだけで、様々な練習ができ楽しみが広がるゲレンデだ。パークも充実していて自分たちのレベルに合わせて選べるほどアイテムが多い。

誰もが挑戦できる幅広いアイテムが設置されているパークだ

「川場でパークといえば、あのライダーいるんじゃない?」
えーちゃんも同じことを考えていたようだ。

高橋烈男。

川場でグラトリやパークを中心としたスクールのコーチをしている噂は聞いていた。早速、ふたりでレオくんのスクールまで訪ねてみることにした。

レオくん、いました!

高橋レオのJSTAAA公認のパーク&グラトリスノーボードスクールの前で

一般社団法人の日本スノーボードトリック検定認定協会JIBの理事をしている彼にゲストライダーとして撮影に参加してもらうことになった。

「じゃあそのカメラの位置ならフロントサイド回しますね」と、カメラマンの中西くんと話し合い、アングルに合わせて技を選んでいく。

そして一発目から綺麗にFS360を軽〜くメイク。

パークでの遊び方も偏りがなく、自由自在に滑っていたレオ

「じゃあ次はレールでいいですか?」

サクサクサク。できる男は仕事が早い。レオくんと初めて出会ったのは牧の入スキー場でパイプが盛り上がっていた時期だった。

2000年頃ってもう20年前だ…
つくづく時の流れは早いと思う。

レオの頭の中には良いイメージしかないのだろうと思わせるような完璧なラィディングを魅せる

せっかくプロライダー兼スクールのコーチがいるので、私が個人的に挑戦したいグラブのコツを聞いてみた。すると要点を3つくらいに押さえてシンプルにわかりやすく教えてくれた。
スノーボードは感覚的なものだけど、言葉で動きの原理を相手にわかりやすく易しく説明できる能力があるというのも指導者としては大事だと思う。

プロライダーの後ろをついて滑ることができるというところもこのパークレッスンの魅力の一つだろう

世間一般では、教えても伝わらないときに、教わる方に理解力がないように思われがちだが、いかに万人にわかりやすい言葉を選んで伝えられる言語力、説明力があるかどうかが教える側の課題でもある。しかしこれがなかなか難しいのだ。自分の学びたい技が「シンプル」だと思えることでメイク率も上がるだろう。滑りも教え方もこういうスクールで学ぶことは上達への近道なのは間違いない。プロライダーにグラトリを教えてもらえる施設が川場のスキー場内にあるって画期的だ。

JSTAAA公認 高橋烈男
川場スキー場スクール

サクサクと技を決めていくレオくんに刺激されて、えーちゃんもパークを攻め始めた。

ジブが苦手と言う割には、スタイルを入れて攻める松井英子のテールプレス

川場のジャンプは飛び出し口に青いラインが引いてあるので、タイミングも取りやすくて安心。評判の良いパークだから上達も早い。

松井英子のテールグラブ。力の抜けたスタイルで着地もスムーズにメイクしていた

春のスノーボードは板の滑走面に顕著に差が出る。この時期のワックスは必須だ。今シーズンは暖冬のため、雪が溶けて午後は特に板が走らないことも多い。より早く板を走らせて楽しむため、雪のコンディションに合ったワックスを探しにムラサキスポーツへ行くことにした。スキー場の中にお洒落なショップがあるのはありがたい。

センスも良く品揃え豊富な川場のムラサキスポーツ

ムラサキスポーツに行ってみると…
店員としていたのはあのマグンこと林 正久だった。彼がオススメしてくれるワックスなら間違いない。ショップでワックスをかけてくれるメニューもあるようだ。

川場の雪の状態を考慮して、滑るワックスを教えてくれるマグン

マグンは今シーズン終了までお店にいるらしい。川場で彼の滑りを生で見るチャンスがあるのも川場スキー場の魅力の一つになるだろう。

間違いないライダーが選んでくれたワックスで板の滑りが良くなったのでグラトリセッションを再開することにした。
川場にはたくさんのコースがあるが、グラトリ練習のために比較的なだらかなコースを選んだ。

少しずつ進みながらふたりでグラトリを楽しむ。

Gnu snowboards KLASSYモデル148はパウダー以外のグラトリにもオススメ。Rider:Mari Mizukami

スイッチテールプレス。
板をフラットに保つのが鍵となるトリックだ。
「自分の滑り方を広げるためにも、アングルやスタンスをたまに変えて以前のスタンスと違うスタンスで滑ることって大切だよね」。
それぞれ骨格が違うので自分の身体にあったスタンスを発見するのはスノーボード上達への近道だと話も盛り上がった。

スイッチテールプレス。Rider:Mari Mizukami

1日でフリーラン、パーク、グラトリまでいろんなジャンルを川場スキー場で満喫できた。夢中で滑りすぎてしまいランチを食べ損ねたが、遅めのランチも対応してくれているカフェがあるのも嬉しいサービスの1つだ。

美味しいと評判のPIER39のサンドイッチ。お値段もお手頃価格でボリューム満点

「どれを食べても美味しいんですよ、ここ。」えーちゃんの言う通りどれも美味しい。お持ち帰り500円クレープや梅酒の試飲など女子が気になるものばかり。

グルメにも力を入れている川場スキー場のランチは楽しみの1つ

美味しい食べ物が大好きな私たちはスキー場付近のグルメの話で尽きなかった。今回の女ふたり旅、群馬トリップも楽しくなりそうだ。

続く。

女ふたり旅 群馬・沼田エリア VOL.1 ~川場編~ MOVIE

次回は、長距離スノーボード&スノースケートができる「ホワイトワールド尾瀬岩鞍」編です。乞うご期待!

★PROFILE
水上真里
1976年7月17日生まれ、プロ歴20年。2000年にハーフパイプでプロ昇格。国内外のムービー出演、海外撮影などで20カ国を旅してきた。フランスの大会、3人1組で滑るスキー、スノーボード大会を日本で主催した経験を持つ。オフの過ごし方は「自宅一軒丸ごとDIY」に挑戦したり、ヨガ講師やブラインドサッカーのスペシャルサポーターなど幅広く活動している。
SPONSOR: GNUsnowboards, Norrona, SPY, Northwave, Drake, HestraGloves, SBNfreerun,プラズマ解離水,HiKOKI(日立工機)
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松井英子
1983年5月24日生まれ、群馬県在住で大阪出身。公務員になるもスノーボードにハマり退職。スロープスタイル、ビッグエアの大会に出場し、北米でのラィディングやサマーキャンプのディガーの経歴を持つ。スノーボード中心のライフスタイルを送るため群馬に移住し、地方新聞で発信している。フリーライドの大会の出場をしながら、横乗りの楽しさを伝えている。冬はスノーボードやスノースケート夏はスケートボードやフラットランドのスキムボードのイベント主催者などをしている。
SPONSOR: RIDEsnowboards, AIRBRASTER, HERTELWAX, 39factory, 湯沢沙羅, グンマーSARアジト, AG SKIMBOARD
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