映像で世界に殴り込みをかける女 “高橋博美” インタビュー <後編> GIRLS INTERVIEW 01

前編の最後で紹介した高橋博美のフルパートは、すでにチェック済みだろうか? もし、まだという人がいるならココからチェック! 高橋博美のインタビュー後編では、世界中の勢いのあるガールズライダーたちが集まった新たなムービープロジェクト「THE UNINVITED」について、また、その中心人物であるジェス・キムラとの関係性や、今後の高橋自身が伝えていきたいスノーボーディングについて語ってもらうことにする。

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新たなムービープロジェクトが持つ可能性

F: そもそもTHE UNINVITEDって、どんなプロジェクト?
T: ザッとしか聞いてないし、英語でのやりとりだったから自分の理解してる範囲で説明しますね。まず、ジェスは女性ってところにこだわってるんです。かつて大会にしても撮影にしても、行く先々で女性ってだけで邪魔者扱いされてたらしいんですよね。今でこそジェスは数々のアワードを受賞したり、シグネチャーボードなどをリリースしてるけど、かなり数少ないチャンスをつかんでトップライダーの一員になったと言ってました。そして、今も世界には上手い女の子たちがいるのに、まったく取り上げられない状況を何とかしたかったみたい。だから、まだ埋もれているけど、魅力的なライダーを発掘して世界に発信するために起ち上げたんだって言ってました。これって今の地位にいるジェスだからできることだと思うんですよね。今回のプロジェクトのなかには、子供に授乳しながらストリートするライダーもいたり、エストニアのようにスノーボードのイメージがあまりない国のライダーもいます。とにかくカッコよくて、自分のスノーボードを追い求め続けているライダーをピックアップしたいらしいですよ。

F: UNINVITEDって名前をつけた理由を聞いてる?
T: 大会や撮影などに招待されないライダー、招かざる者みたいな意味で、「性別、年齢、容姿に関係なく、とにかく滑りを見てよ」ってことなんだと思います。

F: その想いに共鳴して参加を決意したわけだ。
T: そうですね。あと、撮影も自由にやっていいって言われたのも大きかった。海外に行ってジェスたちと行動をともにするんじゃなくて、私が慣れている日本っていう環境で映像を残し、それを送ってほしいって。やりやすいってこともあったし……今まで自分がやってきたことが評価されたと思ったんです。それに日本の映像が世界で流れるっていう点にも魅力を感じたんですよね。

F: ジェスとは昔から仲がよかったの?
T: 何年か前に(長野)白馬で一緒に撮影をしたことがあって、そこで初めて会いました。当時はジェスよりもいいものを残したいってギラギラした想いで撮影に挑んだのを覚えてますね。その後、頻繁に連絡を取り合ってたわけじゃないけど、昨シーズン、日本に来る前に連絡が来たって感じです。ただ、その昔の白馬の撮影のときに話が合ったというか、波長が合ったというか、何か通じるものがあったんだと思います。ジェスって私と同い年で、さらに撮影のスタイルが似ているんですよね。現場の作り方、チェックから本番に入るまでの時間の使い方が驚くほど一緒で。撮影ってなると、その人のペースがあるじゃないですか? 私自身、あまりガールズライダーと撮影をガッツリと一緒にやったことはないですが、同性でここまで合うのは初めてだったかもしれない。本当にストレスなく撮影できたんですよね。ジェスも同じように感じてたと言ってました。

F: 昨シーズン、ジェスとは、どんな撮影をしたの?
T: 私はヒザをケガしていたから、「ストリートは無理だよ」って事前に伝えてたんです。そしたらジェスも同じようにケガをしてて、パウダーじゃないと無理って(笑)。で、パウダーのいいところに行ってセッションをしたって感じです。

F: ちなみに、今シーズンの撮影は順調?
T: 今のところは、あまり……(苦笑)。でも、他のライダーはガッツリと撮影しているので、ヤバイ作品になることは間違いないと思いますよ。

F: 今後、UNINVITEDってどうなるの?
T: 今シーズンが終わったら、本編が発表されると思うんです。どういった形式になるかは未定なんですけどね。本当は、すでにリリースを終えてる予定だったけど、メインライダーのほとんどがケガしちゃってたのもあって、撮影期間を2年に変更したみたいなんです。ただ、次に出る作品は今後の日本のガールズシーンに、何かを投げかけられるとは思ってます。


自分次第で世界は変わる

F: 今後、どんなことを表現していきたい?
T: 最近はストリートとかバックカントリーとか、カテゴリーを分ける人が多いというか……。偏ってる人、食わず嫌いの人が多いと思うんです。日本人の特性なのかもしれないけど、バックカントリーも、遊びながらラインを描く人、裏山でキッカーを造ってジャンプする人、ビッグマウンテンを滑る人みたいに分けちゃってて……。例えば、ザビエル(デ・ラ・ルー)とニコラス(ミューラー)はまったく違うとか(笑)。でも、それは本人がハマっていることを追求しているだけだから、私からすると自由でいいじゃんって思うんですよね。何で滑りのカテゴリーを分けるの? 全部がスノーボードじゃんって。私は何でもしたい。ストリートも、バックカントリーも、パイプもパークも、すべてがスノーボードだと思うから。私も最初の頃はストリートしか見えてなかったけど、バックカントリーで撮影をやるようになって世界が一気に広がりました。何でもやってみると面白いし、そういったスタンスのほうが確実にスキルアップするはず。私は下手でも何でもやってみるようにしてきました。そこには新しい発見があると思ってるから。できないからやらないじゃなくて、できないからやるってほうが多いんです。ラインもやるし、大きな山も行くし、アラスカも行ってみたい。ジャンプもするし、ストリートもしたい。全部を経験したうえで「私はコレ」っていうのがあれば集中すればいいと思うけど、全部をやらないで「私はコレ」って決めつけちゃうのは、ちょっと違うと思うんですよね。それに、ずっと同じことをやってると行き詰まるし、新しいところに行けるから楽しいっていうか……。だから、自分の映像を観てくれた人には、私に憧れを抱いてもらいたいっていうよりも、「自分もできるかな? 面白そうだから、ちょっとやってみたいな」って興味を持ってもらいたい。より広い世界に出ていくためのステップにしてもらいたいんです。あと、映像の世界もカッコいいって思ってくれる日本人ガールズライダーが増えるキッカケになってくれると嬉しいですね。私の映像を見て、これからシーンを支えてくれる次の世代の女の子がさらに燃えてくれるといいな。こっちの世界にも夢があるんだよって。オリンピックみたいに競技に集中するのもいいけど、こういった映像の世界もあるってことを多くの人に知ってもらいたい。それで点数じゃないところのスノーボードの価値、面白さを伝えられれば最高ですね。

ずっとブレずにやってきたことで世界進出を果たした高橋。今後の彼女の活躍が楽しみでならない。 Photo: Hiroyuki Numakunai
ずっとブレずにやってきたことで世界進出を果たした高橋。今後の彼女の活躍が楽しみでならない。 Photo: Hiroyuki Numakunai

Profile
高橋博美(Hiromi Takahashi)
1984年5月17日生まれ、宮城県出身。ストリートからバックカントリーまで、どんなフィールドでも、その男勝りなライディングで攻めるガールズライダー。現在は東北エリアを中心に活動するフィルミングクルー・bigtimeのメンバーとして撮影活動を続けている。昨シーズン、ジェス・キムラがハンドリングするガールズプロジェクト「THE UNINVITED」のメインメンバーに選ばれた。
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