宮崎郁美 × elan LEELOO-mi 「もっと前に加速」するために

宮崎郁美 Profile 1981年6月18日生まれ。野沢温泉村出身。20歳でSAJ全日本技術選の舞台に立ち入賞。その後現在までに7度もの優勝を飾る。女子歴代最多優勝、3連覇などいまだに破られない輝かしい記録を保持しつつ、ママライダーとなった今も高みを目指し続ける

エランスノーボードの日本人ライダーで唯一シグネチャーボードをリリースしている人物。エラン一筋、このブランドとともにスノーボード人生を駆け抜けてきた宮崎郁美の滑りを支えてきた板は、一体どんな特性を持つのか。宮崎さんとも親交も深いエランスノーボード、セールスマネージャー武田氏、二人の対談からその秘密を紐解いてく

Photo: Kentaroufuchimoto.com, Yoshikazu Aizawa


国内生産だから、日本人女性の体格や
脚力にしっかりと合わせた開発ができる

海外中心での生産体制から、現在は多くのモデルを国内生産に切り替えることで、より高い品質のスノーボードをリリースしているエランスノーボード。昨年には昔ながらのディレクショナルシェイプにバンブーを組み合わせた「TITAN」の発売で話題を呼んだが、他にも高速域でのカービングを追求したインバース、フリースタイルライディグを得意とするデイ・ウォーカー、パウダーを主戦場とするデイ・トリッパーなど、あらゆるシーンをカバーするラインナップを揃えている。大正12 年から続く老舗工場ブルーモリスの技術力を得てエランのスノーボードはさらにその魅力を研ぎ澄ませている。

エランのラインナップではユニセックスモデルの印象が強いが、実は女性対応のモデルやサイズもしっかり展開している。女性モデルの開発により一層力を入れ始めたのは18-19 シーズン頃のこと。その背景にはやはりジャパンメイドへの移行が大きく影響していた。

「海外(スロベニア)で作るよりも、日本で作る方が圧倒的に日本人スペックに落とし込みやすかった。それはレディースモデルも同じでした」。エランがレディースモデルを作る上で重要視しているのは操作性の良さだ。日本人の体格や脚力で扱いやすく、板を立てれば自動的に曲がっていく。そんなボードであればタイトな日本の山を自在に駆け抜けられるだろう。

LEELOO-mi
ツインチップに通常より後ろ寄りにキャンバーを設定したリアキャンバー構造がターンの立ち上がりの際に加速を生み出す。自由なターン弧を描けるように、足元はV字に撓むフレックス構造を採用。カービングからオールマウンテンまで1台で全てを楽しめる女性用オールラウンドマウンテンボード。

SAJ の技術戦で7 度の優勝を飾り、デモンストレーターを20 年近く務める宮崎郁美。LEELOO-mi(リールーミー)は彼女のシグネチャーボードとして登場し、彼女の滑りをサポートし続けているエラン女性用スノーボードの代表格モデルだ。スピードとシビアなボードコントロールが求められる技術選で、並いる強豪たちと渡り合えてきた理由のひとつに、この板のもつ高い推進力がある。各社のハイスペックな高性能ボードが集結する技術選の世界で、当初一般的なキャンバー形状だったLEELOO-mi に試乗した宮崎さんから上がったのが「もっと前に前に加速したい」という発言。この要望に応えるために、武田氏が採用したのがキャンバーの中心を通常よりも後ろ気味にずらした「リアキャンバー」だった。

センターに対してテール(右側)寄りにキャンバーのピークが位置するリアキャンバー形状が後ろ足の力を加速力に変え、ボードを前に前にと走らせる

後ろ足で加重した際に力を溜め込み、ボードを押し出すように加速させる。だから踏めば踏むほど板が前に走っていく。改良版に乗った宮崎さんからあっさりOK が出るほど、リアキャンバーという形状が彼女の滑りにフィットしていた。技術選で使用されることが多いハンマーヘッドボードにもシェイプ特有のメリットはあるものの、安定感の高さゆえにボードに任せる動きが多いからボードに頼ったターンになってしまう。それに対してLEELOO-mi は自分の意のままに素直に板が操作でき、その上で乗り手が求める最高のパフォーマンスへと導いてくれる板なのだ。


「踏み込む」と「操作する」感覚を得られる板にしたい

カービングの上達には「板を踏み込む」「板をコントロールする」ことが必要だ。開発するにあたり宮崎さんにはその両方を体得できる板にしたいという思いがあったという。
「武田さんにリクエストしたのは全体のフレックスの硬さとトゥフレックスのバランスでした。私の感覚では芯がしっかりしていればフレックス自体はそんなに硬くなくていい。自分で板を動かしたいからセンターは柔らかめにしたい。そのバランスが本当に良くまとまっているんです」

板を踏み込むとU ではなくV 字に撓むフレックス構造は、板のねじれをしっかりと使える。マニュアル車に乗るように板を思うままに操るのに最適なのだ。
「板をある程度コントロールできても板の反発を使って板を踏み込むことができない人や、逆に板の芯には乗れているけど微妙な板捌きが苦手な人。どちらの人でもLEELOO-mi はバランス良くスキルを引き上げてくれる板だと思います」


自分のスキルを引き上げてくれる板とは?

技術戦覇者のシグネチャーボードというと「扱い難いのでは?」と思ってしまう人がいるかも知れないが、LEELOO-mi は実はそこまで操作が難しい板では無いのだという。

「カービングする時にしっかり板を立てられるかどうか、という人でも乗れますよ。安定感があるしソールもいいからよく走るし。エランのモデル全体にも言えるけど、サイドカーブを強めに設定してるから、エッジを立てれば割とスムーズに曲がっていくんです」と武田氏。さらには「自分の実力に対して板のスペックをどこに置くかは本人の志次第だなと思うんです。昔はあえてオーバースペックの板に乗ってる人も多かった。それを乗りこなせるようになれば自分の技術もレベルアップしたという成長の指標にしていたんです。そういう気持ちを持っている人には、今はまだそこまで上手くなくてもLEELOO-mi を勧めますね」

エランスノーボード武田氏。かつて人気を誇ったエラン女性モデル、ヘザー・ブラウンシリーズを手掛けたのもこの人

LEELOO-mi は女性サイズのラインナップの中では中級以上に設定されているが、頑張って上手くなりたいという気持ちをしっかりと持っている人なら、試してみることで自分のスキルアップの早道を見出せるかも知れない。


さらに様々なシーンで滑る楽しさを体感できる
バランスの良さ

カービングのイメージが強いLEELOO-mi だが、実は適正チャートでは綺麗な六角形になるほど性能バランスが良く、様々なシーンで活躍できる。特に力を発揮するシーンを聞くと…。

「パイプライダーは切ってなんぼっていうのがうちの考え方です。切れる板が必須という共通点のあるカービングで実績を残しているので、ハーフパイプでも調子いい板だと思います(武田氏)」

一方、宮崎さんのおすすめはフリーランでロングランとパウダーシーン。特にパウダーでは「リアキャンバーが効いてますね。深いパウダーでもしっかりと板を浮き上がらせるので、私はよっぽどじゃなければセットバックなしでいっちゃいます」なのだそうだ。

宮崎さんは長野県・野沢のビッグマウンテンで鍛えられ、技術選をメインフィールドにする前はスノーボードクロスやスロープの大会も経験してきたスノーボーダー。様々なシーンを楽しんできたからこそ、1 本でなんでもできるというオールラウンドでの扱いやすさがLEELOO-mi に凝縮されているのだ。

どんなシチュエーションでも1本で遊ぶのが宮崎流。春のザク雪でもエッジを立ててスマートにターンをしていく

コントロールしやすさを重視するからこそ
女性にも優しい

LEELOO-mi でも生かされている、より「切れる」ターンへと導いてくれる乗り味。自分の行きたいポイントにスムーズに向かっていけるコントロール性の良さは多くの女性をターンの楽しさへと導いてくれるに違いない。カービングに自信のない人はLEELOO-mi よりもソフトな設計のマハロやアウトランド、スパイクから試してみても良いだろう。どの板もエランの目指すターンを習得する手助けをしてくれるはずだ。


サイドウォールにはワインレッド色を採用。宮崎さんが好きな赤ワインをイメージしたカラーリングなのだそうだ。「好きなものを楽しもう」というメッセージが込められたスノーボーダーらしいギミック
エランの上位モデルにはそれぞれ違う動物のシルエットのロゴが配されている。LEELOO-miは雌ライオン。目標に向かって挑み続ける宮崎さんの姿はまさに百獣の王のよう
宮崎さんがelanに加入してからスノーボードの調整をしてきたのも武田氏。彼女の要望を最適な形でスノーボードに落とし込めるのは長年の経験と二人の阿吽の呼吸のなせる技

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