大阪のど真ん中でのレールコンテスト 「COWDAY STREET 2025」【後編】

「COWDAY STREET 2025」【前編】では、予選会 兼 FIS公認の「COWDAY RAIL CONTEST」の様子をお届けしたが、【後編】となる今回は、イベントのメインコンテンツである「COWDAY STREET CHAMPIONSHIPS」の模様をレポートしていく。
Photos: COWDAY実行委員会

FIS公認の「COWDAY RAIL CONTEST」が終わり、アーティストによるライブパフォーマンスが行われている間に、バトルフィールドには手が加えられていた。それまで隠されていたレール下部の階段がむき出しにされようとしていたのだ。いわばコンテスト仕様からストリート仕様へのトランスフォーム。これからどんなライディングが拝めるのか、オーディエンスの期待は一気に膨らんだ。

トランスフォーム前
トランスフォーム後
会場を盛り上げたMCのジェシー(左)と岡本圭司

招待ライダーは、ストリートを主戦場にフィルミング活動に邁進している小川凌稀、戸田真人、米野舜士、鈴木冬生、長澤颯飛、高森日葵。そして、来たる冬季五輪の候補ライダーでもある荻原大翔や宮村結斗、木村葵来といったテクニシャンたちが名を連ねた。そこにFIS公認の「COWDAY RAIL CONTEST」で上位入賞を果たした次世代ライダーたちが加わり、下剋上を狙う構図となっていた。

「今シーズンはオリンピックがあるからスケジュールがすごくタイトだけど、それでもナショナルチームのライダーには出てもらいたかった。彼らの高難度なトリックが、ストリートで撮影をしているライダーたちのスタイルやトリックとぶつかり合う。やっぱり両者に“カッコいい”があって、それを多くの人に観てもらいたいっていうのが一番なので」とは、参戦ライダーたちの絶妙な人選バランスについて、大会事務局の代表を務めた稲村 樹に聞いたときの答えだ。

日が暮れて気温がグッと下がるなか、いよいよ「COWDAY STREET CHAMPIONSHIPS」の決戦の火蓋が切られた。

舞台を囲む人、人、人
決戦スタート前の恒例行事、合掌

ファーストステージは、男女ともにジャムセッション方式。ベスト3のランの合計ポイントと、技の多彩さなどが評価されるオーバーオールポイントの合算で、男子は8名が、女子は6名がセカンドステージへと進出することとなる。そして、そのファーストステージでのポイントがセカンドステージへと持ち越され、セカンドステージで1人3本のランを行い、そのベストポイントと合算したスコアで勝者を決定するという、やや複雑だが、そのぶん斬新で盛り上がるルールが採用されていた。

スタイルで魅せるのか、高難度トリックで勝負するのか、それともクリエイティビティで会場を沸かせるのか。

スイカこと石原晴菜によるFSボードスライド

まずは女子。ここでも強かったのは、FIS公認の「COWDAY RAIL CONTEST」から出場権を得た次世代ライダーたちで、彼女たちのメイク率は驚くほど高かった。だが、そのなかで誰よりも輝いていたのは、昨年の女王・高森日葵。見るものを惹きつける何かが、彼女の滑りにはあったからだ。トリック難度もスタイルも、攻める姿勢も、他の誰よりもズバ抜けているように感じた。高森は、キンクレールで激しいクラッシュに見舞われるも、ダウンレールでFSボードスライド・プレッツェルオフやCAB270オン・ボードスライド・レギュラーオフなどを完璧にメイク。そして、その勢いはセカンドステージでも変わらない。他のライダーがプレッシャーからかメイク率を落とすなか、ここ一番で決める強さは本物だった。終わってみれば、次点に大きなポイント差をつけての圧巻の連覇だった。

コレがスタイル。高森日葵のCAB270オン・ボードスライド

高森日葵の動画

 

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「今回もめちゃくちゃ楽しめました。やっぱり街中でやるレールイベントってテンションがアガります! ルールも新しくなって面白かったです。予選から勝ち上がってきたライダーは全員が上手くて、なかでも(中山)ジュリちゃんはメイク率も高かったし、スイッチもすごく上手で、すごくいい刺激をもらいました。

アイテムは、去年に比べてダウンレールの角度がキツかったり、ダブルダウンもキンクの角度が急で、かなり難しかったです。でも、そこが逆にストリートに近い感じだったし、改めてストリートをやってて良かったと思いました(笑)。ただ、何度か激しくヤラれちゃったので身体がボロボロに(苦笑)。セカンドステージは軽い脳震盪だったのか、ちょっとフラフラしてたんですけど、絶対に決めたかったCAB270オンをイメージどおりにメイクできてよかった。

COWDAY STREETは、シーズン前に自分のスイッチを入れてくれるイベントなので、来年も是非やってほしいです! 賞金ですか? 家族で焼肉に行く予定です!!」――高森日葵

「COWDAY STREET CHAMPIONSHIPS」リザルト

【女子】

優勝: 高森日葵(タカモリ・ヒマリ)

2位: 中山珠莉(ナカヤマ・ジュリ)

3位: 松岡杏樹(マツオカ・アンジュ)

 

続くメンズ。ファーストステージから、ダウンレールとキンクレールでは、ハードウェイのFS270オン、CAB270オン、さらにはBS450オンまで飛び出す激しいトリック合戦となった。そのなかでも小川凌稀や戸田真人はバターインや身体をひねりまくったボードスライド、オシャレすぎるタップアウトなどを披露。また、SWBSリップスライドからのプレッツェルアウトなど洗練されたボードさばきが印象的だった長澤颯飛ら、ストリートを主戦場とするライダーたちは終始スタイルでも魅せまくっていた。

男は背中で語る。戸田真人・オン・ザ・レール

長澤颯飛の動画

 

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スピンしながらトランスファーを仕掛ける木村葵来

一方、宮村結斗はBS360オン・FS180オフを放つなど玄人ウケするトリックで応戦。ただ、やはりファーストステージで会場をもっとも沸かせたのは荻原大翔だ。フラットレールにCAB270で飛び乗ると、コーク軸の630でアウトしたのだ。ひとりだけキャノンレールをコスっているかのような浮遊感と完成度だった。

荻原大翔の動画

 

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セカンドステージも、ストリートに生きるライダーと現役コンペティターの激しいバトルとなったが、優勝をかっさらったのは、KIYO FILMの『NEKOSOGI』でエンダーを飾った米野舜士。CAB270オンなども、まるでFSボードスライドを仕掛けているかのようなスムースさは見事としか言うしかない完成度の高さだった。

FSボードスライドのようなCAB270オン・ボードスライド

米野舜士の動画

 

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優勝が決定した直後に米野を囲むNEKOSOGIクルー

「前回はジャムセッションだったけど、今回は大会感が少し強くなっていて緊張したっす(苦笑)。でも、ルールとか採点方法が最近のスケートボードの大会に似ていて面白かったですね。あと、ストリートで撮影をメインにしてるライダー、コンペをゴリゴリやってるライダー、いろんなスタイルのライダーが出てるのも面白かった。今回はアウトで魅せるアイテムもあったから、これはコンペに出てるライダーがヤバイことをやるんじゃないかと思ってたら、やっぱり出ましたしね(笑)。

前回よりアプローチもアイテムも急で難しかったけど、これぞストリートって感じの舞台で、そういったなか優勝したのが、ストリートムービーでDPと長年やってきた2人だったっていうのは、自分にとってすごく感慨深かったです。賞金ですか? ちょうど車を買ったばかりだったんで、車関係にほぼ使っちゃうと思います(笑)。

大都会の中心地でレールコンテストをやってくれるのは、ライダーとしてもすごく嬉しいし、あの場所じゃないと見せられないこともあるから、また来年もやってもらいたいし、参加させてもらいたいです。こういったイベントが他の大都市でも開催されたら、もっと嬉しいです!」――米野舜士

「COWDAY STREET CHAMPIONSHIPS」リザルト

【男子】

優勝: 米野舜士(コメノ・シュンシ)

2位: 一ノ瀬 海渡(イチノセ・カイト)

3位: 木村葵来(キムラ・キラ)

 

「COWDAY STREET 2025」の総来場者数は昨年以上にのぼり、今年も大成功のうちに幕を閉じた。レールコンテストに関して言えば、昨年からフォーマットが刷新されたことで、新たな発見が生まれ、見応えも大幅に増していた。そして、多くのスノーボーダーの“滑りたい欲”に火をつけると同時に、トップライダーたちの本物のカッコよさに触れる機会を与えてくれた。最後に、COWDAY STREETの中心人物である稲村の言葉で締めることにする。
Photo: Akira Onozuka

「COWDAY STREETは今後も続けていきたいイベントですが、毎年同じことはしたくないという想いがあります。これはCOWDAYらしさかなと思っています。セクションの構成やルールも含め、より“誰が勝ったのかがわかりやすい”コンテストを目指して、今年も新しいチャレンジを取り入れました。

今回はFIS公認のRAIL CONTESTを初めて併催したこともあり、タイムスケジュールの遅延や運営の混乱など、参加してくれた皆さんにご不便をおかけしてしまった点は大きな反省材料です。ここは真摯に受け止め、来年以降の改善につなげていきます。

コースづくりでは、とにかく“ストリートらしさ”にこだわりました。THE PARKSチームと何度も議論を重ね、昨年からの大きな変更点として、木で組んだ階段構造、そしてレール角度を導入しました。実際のストリート階段の角度は26〜27度が多い一方、一般的なスキー場に設置されているダウンレールは14度以下がほとんどです。本物と同じ角度にするとコンテストとしては成立しづらいのですが、“ストリートのリアルをどこまでコースに落とし込めるか”を考えた結果、最終的に22度に設定しました。ライダーが「角度が急」と感じたのはそのためです。でもだからこそ、“普段からこの角度で滑っているストリートライダーは本当にすごい”というリアルさを、今回のコースで表現できたと感じています。ストリートをバックグラウンドに持つライダーたちがすぐに適応していた姿はまさにその証拠でした。

また、今年は有料観覧席や観戦スペースを増やしました。今後ライダーの価値を高めていくためには、“観戦にお金を払う文化”がシーン全体として必要ですし、将来的には大会の収益をライダーに還元できる仕組みもつくっていきたいと考えています。前回は来場者が想定以上に多く、安全面を確保するギリギリの状況だったため、今年は観覧動線やスペース配慮にも力を入れました。

来年の開催に向けてすでに準備を進めています。さらにバージョンアップしたイベントを届けられるよう、そしてスノーボードコミュニティ全体を広げられるよう、これからも挑戦を続けていきます。COWDAYは、ケイジさんが立ち上げた頃から“ライダーファースト”を掲げてきたイベントです。その精神はこれからも変わりません。来年も新しいCOWDAY STREETにご期待ください」