師走の仕事の忙しさとバランスを取りながら、夜限定で一週間のナイトシューティングを決行
一足先に17/18シーズンが本格的にスタートした北海道。道内各地では11月からまとまった降雪があり、各スキー場のオープンも早まるところがあったりと、近年稀に見る早いシーズンインを迎えていた。社会人で家族がいて、子供もいる一般のスノーボーダー集団 “toolatefilm” が活動する函館エリアも例外ではなかった。
「11月、12月に僕たちのフィールド『函館ストリート』に、ここまで雪があることは滅多に無いので、いいスポットを見つけて早めに撮影を開始しようと考えました。そんな時に思いついたんです。宮沢りえ主演の『僕らの七日間戦争』を(笑)。このエリアは雪が解けるのも早いし、雪があるうちにガッツリやりたい。僕らは家族や仕事があるから、ライダーと同じような動きはできない。でも今年はありがたいことに、生活圏内の僕らの街には早い時期に結構な雪がある。それなら『集中して一週間(七日間)毎晩撮影をやろう!』って。みんな、『え~、マジで!?』って言うかなと思ったらノリノリで、『やれるだけやろう!』みたいな感じで、この七日間の深夜撮影が始まりました」
彼らを撮影するカメラマンは、この企画の為に夜の撮影機材を買い足し、万全の準備をしていく。事前にクルーたちが集まり、ミーティングを重ね、グループLINEで連絡を取り合いながらスポットを確認し合う。撮影場所に近いメンバーが、撮影スポットに向かい効率良くスポットを周ってチェックする日々が続く。この7日間の撮影も仕事や家庭を持つ彼らにとってはいつも通り夜の撮影スタイルになる。7日間連続で撮影と向き合う中で、『何をどれだけ残せるか?』『その撮影の先に何が見えてくるのか?』『何を魅せられるのか?』という答えを探す。今まで以上にスノーボーディングと真剣に向き合うというコンセプトを持ち、夜限定で一週間のナイトシューティング(僕らの七日間深夜戦争)に挑戦した。
はたして彼らは、仕事をしながらガッツリスノーボードと向き合った末に何が見えたのか? 今週の《前編》では、前半4日間を、toolatefilm代表の堀尾氏の日記とムービーで振り返ってみる。
Photo: sadaphoto
toolatefilm 7days night war diary
前半4日間の日記
《DAY1》
12月11日(月曜日) 撮影: 19:00~1:30
「七日間の撮影という戦いが始まる初日、日中に雨が降りました。今まで調子良く降雪があったんですが、始めた初日にまさかの雨。事前に決めていたスポットは、昼間のうちに雪が溶けてしまい全く出来ない状況になってしまった。急遽別のスポットに集合した夜19:00頃からちょうど寒気が入り、状況は最悪でした。そんな中でも『今出来ることをやろう』ということで、1stスポットを決行。ファーストドロップは芳賀 卓。彼は鉄工所の作業を終え撮影に直行し、1発目でクリーンメイク。その後も、寺田祐介、松崎美穂と次々メイクしてくれてDAY1は終了。この時、松崎美穂は39度の高熱だったんですが、彼女もこの撮影にかける想いが強く、現場でフラフラになりながらもメイクしました。しかし翌日には熱が40度まで上がってしまい撮影初日に1名の戦線離脱者が出る始まりでした」
《DAY2》
12月12日(火曜日) 撮影: 21:30~3:00
「この日の函館市内は40㎝の降雪を記録。函館でこんなことは滅多にない。今日は若手を中心に21:30に現場に集合。気温は-10度とかなり寒い。FREERUN(10月号)で紹介してもらった企画や、僕らのDVDを見て一緒に撮影をやりたいって言ってきた物好きな若手クルーの佐藤真雄、川村光佑が撮影に参加。この2人はアーバンスノーボーディングはビギナーで大苦戦。それを尻目にベテランチームと石本 眞那斗はしっかりメイク。撮影はカメラを出せないほどの吹雪で中断も考えたが、無理矢理やり込むスタイルでなんとかギリギリフッテージを確保。2日目にして既に疲労の見えるライダーもいて暗雲が立ち込める展開。深夜3:00に撮影が終了。寝ないとマジで死んでしまう」
《DAY3》
12月13日(水曜日)撮影: 21:00~1:00
「天候も回復。撮影をやっていると『このスポットはこいつだな』とか、『このスポットは自分がやりたい』などスポットの人選も色々考える。この企画を始める前のミーティングで、あらかじめチョイスしたスポットの写真を見せながらクルーで話しあった際、DAY3のスポットに若干13歳の石本 眞那斗がかなり食いついていた。事前に現場チェックに行き、除雪を終わらせるなど、イメージトレーニングが完璧だった眞那斗。ランディングが受けているために多少作り込みが必要で、翌日の撮影本番を考えると、ライダーをひとりに絞り5トライ程度がリミットだと判断した。クルーで長く動いていると、ここは『こいつにやらせたい!』。そんな気持ちが芽生えてくる。芳賀はスタート台の補助だけ、佐藤はメンタル面のサポートのためだけに一時間半かけて現場に集合。結果として、今回の企画の中でもビックメイクに値するフッテージを13歳の眞那斗が残した。”Oneforall allforone” ベタすぎて言いたくないが、そんなことを感じさせる撮影だった」
《DAY4》
12月14日(木曜日)撮影: 22:00~1:30
「この日も天気が良く暖かい。この日のスポットは両方階段のサイドインダウンレール。アプローチもランディングもかなりタイトで、シーズン初めの獲物にしてはそこそこリスキーなアイテム。22:00に集合し、順調にアプローチ、ランディング、階段を掘り出す作業を終え、いざ撮影!その時、まさかの発電機が故障した。もちろんこの企画に8日目は無い。しかし映らなければ今日のフッテージは全く残らない。夜にしか撮影ができない自分たちにとって明かりは大事だ。悩んだ挙句、現場で発電機をバラすことにした。バラして整備して、なんとかかかるようになるまで一時間半、体が冷え切った。しかも発電機は直ったわけではなく不安定。かろうじて最低電力でギリギリの明かりを確保しトライ。シーズン一発目のレールで、バックリップをドセンター逃げ場無しでまたいできた佐藤。何本目かで惜しいところまで行き、『次はメイクするだろう!』と、みんなが思っていた矢先、スラム職人の鬼スラムが炸裂。脳震盪で記憶が飛び撮影が中断した。こんな日もある。今日はノーカットだなと誰もが覚悟したが、30分後に佐藤は復活してニコニコしながらバックリップをメイクし、なんとか1カットを残すことができ安心した。この頃になると疲労がピークに達し、撤収作業はみんな無言だった。明日も仕事だ頑張ろう」
僕らの七日間深夜戦争《後編》は1月4日にUPします。
次回は、残りの3日間のストーリーとともに、彼らメンバー全員のコメントを掲載するので次回もお楽しみに!
この企画のテーザームービーはこちら
「僕らの七日間深夜戦争」登場人物プロフィール
堀尾義紀
北海道森町出身在住の36歳。ボスでありトラブルメーカー&エディット担当。創業88年のホリオクリーニング四代目。既婚者でひとりの娘がいる。SPONSORS: DRAKE, NORTHWAVE, RADGLOVES
芳賀 卓
北海道函館市出身在住の30歳。いじられ役担当兼、遅刻担当。鉄工所勤務。既婚者で大の車好き。SPONSORS: nichesnowboard, RADGLOVES
石本 眞那斗
北海道北斗市出身在住の13歳。子供だけに現場で寝落ち担当。北斗市立浜分中学校1年生で英会話部。弟と妹を持つ兄。SPONSORS: gray snowboards, RADGLOVES, ONEEAY wax
佐藤知紀
北海道上ノ国町出身在住の35歳。副代表でありスラム担当&スタート台職人。上ノ国消防勤務で救急車乗務員。既婚者でふたりの娘がいる。SPONSORS: gray snowboards, RPM outer, RADGLOVES
西峰進也
北海道函館市出身在住の41歳。クルー最年長で絶賛本厄中の常識人担当。函館市浄水場勤務の公務員。既婚者でふたりの息子がいる。
寺田祐介
24歳北斗市在住、とりあえず力持ち!家業のの建設業を継ぐ為に修行中、筋肉自慢、角刈り、天然、たまに当たるラッキーパンチがテラのスタイル。
松崎美穂
toolatefilm唯一の女性ライダー。自称22歳、クルーの中で最も強靭な身体を持っている。職業は介護、趣味の酒釣りは今シーズンも絶好調。SPONSOR: RADGLOVES
佐藤真雄
北斗市浜分中3年生。石本 眞那斗の先輩。男だけどあだ名はマオちゃん。toolatefilmに今年加入した新たなメンバー。
川村光佑
今季スノーボードクロスでプロ昇格した高校3年生。競技と撮影というハイブリッドなオールラウンダーを目指している。
森 定宏(SADAPHOTO)
北海道上ノ国町出身在住の36歳独身。上ノ国消防勤務のフォトグラファー担当。