降りるコースを間違えたり、コース下から状況を教えてもらいたかったり。雪上で少し離れた相手と意思疎通をするのは意外に大変だ。電話をかけるという手段もあるけど、もっと簡単な方法があればなおベター。
ソニーから1月下旬に発売される「NYSNO(ニスノ)-10」というアイテムは雪上でコミュニケーションをとることに特化した新感覚のギアである。BluetoothⓇで接続して通信範囲内ならスマートフォンを使わずにハンズフリーで最大3人まで同時に会話ができるという優れものだ。スマートフォンと接続すればボタン一つで通話が可能。スマートフォンに入っている音楽を聞きながら滑ることも出来る。もちろん雪上のハードなコンディションにも対応するように防水、防塵、耐衝撃、耐低温性能を備えている。
例えばバックカントリーでガイドの指示に従って一人ずつドロップインするタイミングをはかる時、例えば離れた場所にいるコーチに指示を仰ぐ時など、自分のスノーボードを一歩深く踏み込むために使ってみたいアイテムだ。
新感覚のギアに興味津々の編集部はさっそくコンタクトをとって実際に使ってみることに。アルツ磐梯スキー場の石内さん、市川さんにもご協力頂き、開発者であるソニーの尾原さんも呼び出して雪山でトライ!
>> スマートフォンを介さずに会話が出来るグループトーク
最大3台の同時会話が可能。グループ登録後、付属のリストバンド型リモコン「TALK」ボタンを押せば会話スタート。もう一度「TALK」ボタンを押せば終了となる。最長会話距離は約1km(※1)。(※1) 見通しのよい場所での2者間会話可能距離(ソニー測定方法による)。地形、天候、障害物、周囲の電波状況などの影響で短くなる場合あり
>> スマートフォンの通話も楽々、ハンズフリー通話
会話可能距離より遠い場所にいる仲間と会話がしたい時にはこのハンズフリー通話を使おう。Bluetoothでスマートフォンと接続すれば、こちらもリストバンド型リモコンのボタン一つで着信応答が可能。グローブを外さなくても、ポケットからスマホを出さなくてもOK。
>> 音楽をワイヤレスで楽しもう
「NYSNO(ニスノ)-10」は、ヘルメットに装着しヘルメットを直接振動させて音をつくり出す音響技術を採用している。耳を塞ぐ事がないので音楽を聴きながらも周囲の音も聞く事が出来る。また、3種類の振動モードを切り替えるプリセットイコライザー搭載で、自分のヘルメットに合わせて音質を選べる。-10℃環境下で最大8時間の連続再生が可能。
>> スノースポーツに最適なタフネス性能
変わりやすい雪山の天気や突然の衝撃に対応するタフネスさもしっかり装備。水洗いも可能な防水仕様(JIS IPX5相当)で、防塵性能(JIS IP6X相当)、1.2mの高さからの落下テストをクリアした耐衝撃性能、-10℃でも動作可能な耐低温性能を備える。
(協力:アルツ磐梯スキー場、石内圭一さん、市川真紀さん)
INTERVIEW
ソニーから発売されるこの「NYSNO(ニスノ)-10」はスノースポーツ専用。なぜスノースポーツだったのか、雪山というハードな環境に対応する為にどんな開発が行なわれたのかを、開発者であるソニー尾原さんにその背景を伺った。
-NYSNO(ニスノ)-10を開発しようと思ったきっかけを教えてください
もともと僕を可愛がっていただいたスキー界の人たちになにか恩を返したいなという気持ちがありました。ソニーとスノースポーツという二束のわらじで仕事をしてきたのですが、それを融合させた何かひとつの形を作りたいとずっと考えてたんですね。思いついたのは3年半前の2013年の春です。いつも春になると僕は粟野さんと 一緒に月山という山形のスキー場に行ってレッスン会をやるんです。当時の僕はウォークマンⓇの設計部に所属して新しいウォークマンⓇ用のスピーカーを考案しようと、あるメーカー様からものを震わせる素子をご紹介頂いたのですが、なかなか良いアイデアが出てきませんでした。ところが、いつものように月山を滑っていた時に「そうだ。これヘルメットにつけたら面白い んじゃないの?」と思ってぺたっとつけたら、びっくりするような体験をしました。物理的に耳を塞がれず、音楽はもちろん風の音や自分が雪を削る音など周囲の音も聞こえるっていうのがとっても新鮮で「これは面白いんじゃないの?」と。音楽を聞きながら滑ることの高揚感も得られました。
-どのような過程で開発が進みましたか?
ソニーとしてやっぱり音を追求しました。丁度その頃に、僕はヘッドホンの設計部に異動になったのですが、そこには世界的にも認知されている音響技術のスペシャリストがいらっしゃいました。その人に「どうしてもやりたい」とプロジェクトに巻き込んで音の質にまずこだわりました。また、ス キーヤーへアンケートを取っていくうちに音楽よりも会話をしたいというニーズが高いことがわかりました。バイクでツーリングするときに会話に使うインカム を参考にできるなと思って、そこでグループトークという機能を考えだして。グループトークの機能にはBluetoothの通信技術を採用したのですが、Bluetoothに詳しい社内の友人に「こういうもの作りたいんだけど、知恵貸してよ」っていってミー ティングにつきあってもらって。一人で始めたけど、自分ひとりではできない部分を色々な人たちを巻き込んで。ひとりのスノースポーツ愛好家の立場から、ソニーの『ホンモノの』スノースポーツ用プロダクトを生み出したいという気持ちで進めました。
-雪上で使用するために耐久性や安全面など、開発過程で気をつけたポイントは?
品質については発案した当初から頭の片隅にはいつもあって、品質保証の担当者とも協議を繰り返してきました。非常に助かったのはアクションカムの設計部が同じソニー内にあったことです。弊社のアクションカムではどういう試験をやっているのか、どういうことに気を配ったかをヒアリングして、同じような試験項目 をクリアしようと考えました。同様なシチュエーションで使われるアクションカムが満たしているスペックを参考にして、NYSNO(ニスノ)-10に必要な品質レベルを追求していきました。
-強い衝撃を受けたときはどうなりますか?
大きな衝撃がかかるとヘルメットやNYSNO(ニスノ)-10本体ではなく、マウント部が破壊されるように設計しています。マウントは予備を同梱し、またスペアもアフターサービス品として購入できます。使っている人に損傷を与えることなく壊れるべきとろを壊す、かつ壊したくないところは壊れないようにっていうことを配慮して設計しています。
-ヘルメットブランド「GIRO」とはどのように協力体制をとっていたのでしょうか
NYSNO(ニスノ)-10をヘルメットに装着するというのを最初から決めていたので、まずはじめにヘルメットのことを知らない限りは作れないと思ってヘルメットのトップブランドであるGIROの販売元である株式会社ロータスインターナショナルの内山社長にコンタクトを取りました。ヘルメットについての知識がなければ作りだせないのでご協力をいただきたい、という話をしたのが3年前の本当の発端の頃から。技術的にも実現できるかわからないときから、「そういうことであれば」っていっ てテスト用のヘルメットをご提供いただいたんですね。その中で、ヘルメットってどのような素材で作られているんですか?とか、防具とし てどこが大事なのかといった、ヘルメットの知識を与えて頂きました。
NYSNO(ニスノ)-10に対応したヘルメットは、GIROブランドに限定されているわけではないんですが、「NYSNO(ニスノ)-10商品化に向けてヘルメットのことを知りたい」ソニーと、「NYSNO(ニスノ)-10がヘルメット全体の普及につながるきっかけになれば」と思っていただいた内山社長の想いがつながり、商品開発が進みました。
『NYSNO(ニスノ)-10』ヘルメットマウントワイヤレスヘッドセット
価格:オープン価格(市場推定価格 税抜¥30,000前後)
※ヘルメットは付属しません
発売日:2017年1月下旬(3,000台限定)
問合せ(販売):株式会社ロータスインターナショナル
http://lotusweb.shop4.makeshop.jp/shopdetail/000000000001/
問合せ(製品):ソニー
http://www.sony.net/NYSNO/
装着ヘルメット
GIRO LEDGE MIPS(ヘルメットの詳細はこちら)