1999年にフリーライディングとフリースタイル・スノーボーディングを原点に日本発信のスノーボードウェアとしてスタートした「rew」。ゴアテックス、ポーラーテックなどをはじめとした高性能素材を使用し、厳しいコンディションにおける対応力、快適性を重視したスノーボードウェアを開発。「スノーボード専用」という着眼点から、機能を徹底的に見直して改良を重ね、今もなお進化を続けている。
「ウェアが進化している」と言ってもピンと来ない人も多いのではないだろうか?
様々なウェアが市場には流通しているなか、本当に我々はどんなウェアを選ぶべきなのか?
rewがこだわり、歩み続けてきた進化の過程と、これから向かう先を知ったとき、あなたも自分のウェア選びに重視すべき着眼点が見えてくるのではないかと思う。
「rew」「VOLUME GLOVES」を作り続けるリトルビー社オーナー・松田 晃氏の話から最高のウェア選びに必要な真実を伝えよう。
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カッコ良さとスノーボードのしやすさを
貫いてきたスノーボードウェア
スノーボードが世界で広まり始めた初期の頃、
当時はスノーボードウェアとしてはっきりとしたカタチがあったわけではない。
「学生の頃、僕は当時Quiksilverがつくってたスキーウェアでスノーボードを始めたんです。でもやっぱりスキーウェアって違うなって思って、クレイグ・ケリーに憧れてBurtonの黄色いパンツと紫のウェアを手に入れた。
その後沢山のスノーボードウェアブランドが現れて、SPECIAL BLENDの登場あたりで、フリースタイルスノーボードのウェアっていう基礎ができた。
それが一気に加速して、スノーボードウェアはスキーウェアにも影響を与えた。それはスキーウェアがスノーボードウェア化していったとも言えますね。
またHOLDENに象徴されるような細身のウェアが登場するなどスノーボードならではの『スタイル』への拘りが、シルエットをどんどん変化させたんです」
そこに間違いなくスノーボードウェアの基礎がある。
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「スノーボードにも使えます」という
他用途ウェアの誤まった選択とは
「スノーボーダーがバックカントリーを楽しむようになって、BurtonのAKだったり、VOLCOMだったり、国内であればGREEN CLOTHINGや、うちのrewなどのスノーボード基盤となるブランドが高性能のウェアへと進化を重ねる一方、アウトドアブランドがスノーボードウェアに参入するようになってきた。
『スノーボードにも使えます』ってね。そもそもヨーロッパのアウトドアとスキーがベースになっているようなウェアと、スノーボードウェアがバックカントリーを滑るために機能を充実させていったウェアには大きな違いがあるんです。
スキーの視点からつくられたウェアはストックを持ち、前を向いて滑ることを前提としています。だから、袖の形など考え方も違うわけです。
一方、アウトドアウェアは裾丈の長さも違う。スノーボードは滑るのは横向き。そして僕らは登ることも考えてつくっている。
元々ハーフパイプをハイクアップするということも考えてつくってきましたから、登りやすいことや暑くなったときの対策、濡れないこと、壊れないこと、スノーボードに必要な機能は、スノーボードウェアの歴史のなかで積み上げられてきたものがあるんです。
滑っていく向きがスキーとは異なるから、フォームも違うし、シルエットの見え方も違う。さらにフードの形、大きさ、ベンチレーションの位置など細部がそれぞれ変わってくる。
『大した違いがない』と感じている人もいるかも知れないですが、実は大きな違いがあるということなんです」
さらに日本のブランドと海外のブランドでも違いがあるという。
「僕たちは日本人体型のMサイズを最初につくって、そこからS、L、XLなどサイズのバリエーションをつくっています。
海外のブランドでは基準となる体型が違う。大きいサイズが標準。日本人を基準としているからこそのフィット感の良さや、動きやすさには違いがあると思います」
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軽量化を進める上で他用途のウェアとの
決定的な考え方の違いがある
「rewでは初期の頃にライトシリーズというのを発売したことがあるんです。自分もそんなに体が大きくないですし、重たい服って疲労度がありますよね。
スノーボードで朝から晩まで滑るってなると、 重たいウェアとか、綿入りのウェアとか、動きづらいものは疲労が溜まってしまう。
それで軽いウェアが欲しいと思って、ライトシリーズをつくりました。
そこからが始まりでrewではタフさと機能性を備えながらも、1日の疲労を軽減する軽量なウェアの開発にこだわり続けています」
軽量化に関わるのは、使用する生地素材だけではない。
「とにかく、軽くするために、細かいものどう省いていくか。それをテストを繰り返しながら見極めています。
例えば、THE REAL INSANEというマウンテンフリースタイルのカテゴリーのウェアは、軽量化するために細かいものを徹底的に省いています。
プルオーバーにしてジッパーを最小限にすることでシームテープ加工の領域や裏のフラップも減り、プラスチックのストッパーも省いて軽量化。ポケットの長さも短くすることで重量は減ります。スノーボードシーンでの必要性を細かく見直して、軽量化を進めているのです。
そうやって重量にこだわってつくっているのでカタログにも明確に重量を表記しているんです」
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アウトドアウェアでも軽量なものはあるが、そこは全く意味が異なるのだという。
「軽いものはあっても、シームテープ加工が施されていなかったり、ジッパーが接着加工のみで縫っていなかったり。つまりは、スノーボードで必要とされる機能性、耐久性が満たされていないわけです。
アウトドアウェアとスノーボードウェアは強度が必要とされるポイントが異なります。アウトドアはどこかに引っ掛けて壊れることが多いですが、スノーボードは擦れ切れることが多かったり。切れやすい部分が違うので、切れにくくするために縫い目の位置も異なっているんです」
もちろん、スノーボードウェアを良くしていくうえで、アウトドアウェアの持つ機能を取り入れる部分もある。
「アウトドアウェアの良い点は取り入れてきています。でも、そのまま真似るということは一切ありません。
全てをスノーボードという観点から見て、最高のパフォーマンスが得られるように機能を見直したり、改良して取り入れてきています」
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「暖かい」+「疲れにくい」を実現する
スノーボード専用のレイヤリングシステム
特にレイヤリングシステムは、アウトドアのものを基にして、改良を加え進化してきたものだ。
「速乾性ポリエステル、またはウールのファーストレイヤーを着て、その上にフリース、アウターにシェルジャケットというのがレイヤリングシステムの基本にありました。rewでもそれを取り入れてウールやポリエステルのアンダーウェアとフリースをつくったんです。でも、なんだか動きにくい。
実はフリースとアンダーウェアが干渉していたんですよ。
スノーボードに比べるとアウトドアは動きが少ないから、動きづらさを感じない。しかし、レイヤーの2枚が干渉し、摩擦が起きることでスムーズな動きが妨げられ、強いては疲労に繋がっていたわけです。
そこでrewでは表に滑るナイロン素材、裏にポリエステルの滑る素材を使用したパフィージャケットをつくりました。
アンダーウェアと体は密着していていいわけですが、ミッドレイヤーとは摩擦が少ない方がいい。フリースをやめてパフィージャケットに変えることで、動きやすく、疲労を減らすことができるのです」
rewではスノーボード専用のレイヤリングシステム「シンプルレイヤリングシステム」を提唱している。
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「実際にアウトドアのレイヤリングシステムはいろいろな種類があり、複雑なんです。我々はそういう考え方じゃなくて『rewのウェアを着るんだったら、この1種類でいいですよ』と明確にしているんです。
素材の薄いもの、厚いものなどを、いくつも揃え、コンディションに合わせて入れ替える必要がない。
スノーボード専用で、1番簡単で、1番お金がかからなくて快適なスノーボードライフを送れるものっていうのをインナーでも構築してるんです。
もちろんインナー類もスノーボードの動きにフィットするようにつくっています。アウトドアブランドのものは袖や腕周りなどタイトにつくられていますから、rewではスノーボードの動きを考えて少しゆったり目につくっています」
高価な1着は意外とコストパフォーマンスが良い
様々なものの物価が高騰している時代。
スノーボードウェアに使用される素材、パーツ類も価格が上がり、ウェアの価格自体も上昇傾向にあることは否めない。
「rewでは、最小限でもとても機能に優れていて、耐久性も十分で長く使っていられる製品を目指しています。
例えばrewのライダーのなかにはポーラーテックを使用しているファーストレイヤーを10年来着ているという人もいるんです。ちゃんとつくっているから本当に長持ちするんですよ。レイヤリングもシンプルに構成できるから、いろんなものを購入する必要がない。
つまり1着で見ると高価に思えるかも知れないですが、使用期間を考えてのコストを考えると意外とお金がかからないことに気づけると思います」
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様々な部位の改良は、
すべてスノーボーダー目線で判断する
rewでは「自分たちが使わないものはつくりません」という強いポリシーがある。
そしてそれは細部の改良においても徹底して貫かれている。
「余計なものは、軽量化を進めるうえでできる限り省いていきます。実は機能を加えるよりも省く方が難しいです。
必要か否か、ライダーと意見を交わし、不要だと判断できればとっています。グローブの手首甲側のゴムを省いたり、ジャケットとパンツをセットで購入してもらうことが多いから、どちらにもパスケースが付いてる必要がない。さらに時代はICチップ化がすすみ、リフト乗り場でリフト券を見せる必要も無くなってきていますしパスケース自体の必要性も無くなっている。
ゴチャゴチャいろんなものが付いていることが価値があるという考え方が間違っていると思うんです。優先すべきは軽く、動きやすく、使いやすいこと。シンプルで機能性に優れていることこそが重要なんです」
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過去にはお客さんのクレームから、画期的な改良点が見出されたこともあったという。クレームの内容を細部まで精査、ライダーと共にしっかりとテストを経て機能を見直し、改良が進む。商品開発に役立てることで、今もrewのウェアは毎年進化を遂げている。
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そもそも我々は機能が多い方がいいという概念に固着していたようだ。
確かにrewのウェアを試着すると軽量で動きやすく、しかもフィット感が良いことが実感できる。ライダーと一丸となって製品のさらなる進化にこだわり続ける松田氏。
ウェア、そしてグローブのひとつひとつの機能にスノーボードとしてベストのものを見出し搭載するというモノづくりの姿勢が感じてもらえたと思う。
「なかなか上手くならない、どうも最近楽しくない」
そんな理由には、重たいウェア、動きづらいレイヤリングといったマイナス要因が潜んでいるかもしれないのだ。
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