祝ミラノ 第2弾。HALFPIPE・ゴールドメダル! FREERUN 12月掲載インタビュー『Yuto Totsuka 「そのとき」戸塚優斗』を緊急公開。

あのとき語ってくれた「そのとき」を、完璧なかたちで現実に変えた戸塚優斗。
そのランは、言葉を超えて胸を打った。心からの感謝を。そして、限界へ挑み続けたすべてのライダーに最大限のリスペクトを送りたい。
スノーボードは、いまも進化の途中にある。さらにその先へ。>>>


あの冬がやってくる。4 年に一度の舞台を目前に、“ そのとき” を目指して走り続ける戸塚優斗。過去の悔しさも、積み重ねてきた努力も、挑戦の軌跡も、すべては“ そのとき” のため。競技者としての覚悟と、等身大の若者らしい本音が交錯する。
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苦悩と再起

今、フォーカスしているモノ・コト。真っ先に挙げるなら?
さすがに今はオリンピックですかね。

オリンピックは特別な存在?
特別というよりも、2 回出場して2 回ともダメだったから悔しいのが大きいのと、あとオリンピックだけなんですよ。

オリンピックだけ?
X GAMES、US OPEN、DEW TOUR、ワールドカップ、世界選手権、そしてSNOW LEAGUE……まだ獲得してないビッグタイトルがオリンピックだけなんです。だから、自分にとっては最後のピースなんですよ。

今、世界大会で勝つためには、想像を絶するトリックを連発しないといけないよね?
ホント、ぶっ壊れてますよね(苦笑)。

それでも大会に出場し続ける理由は?
純粋に好きなんだと思います。あの場にいる全員が自分の1 ランを見てくれる。仲間と一緒に練習して、その仲間と戦い合う感じも、あそこで立ったときの気持ちよさ、達成感も好きで。大会でしか味わえない緊張感、嬉しさ、悔しさ……そういったものに魅せられてる気がしますね。

ちょっと古い話になるけど、2020-21 シーズン、 連戦連勝で戸塚優斗の時代が到来したと思った。でも、その後は2024 年2 月のワールドカップまで優勝がなかった。何かあったのかな?
あのシーズンに出場した大会をすべて勝ったことで、優勝するのが当たり前みたいに言われたり、周りからの期待もどんどん大きくなって……それに押し潰されてしまったんです。練習しても上手くいかないし、何をやっても立てる気がしない。不安というよりも、飛ぶ前からわかるんですよ。「これは立てない」って。それに、あの勝ちまくったシーズンも、実は全然自信がないのに「なんか立った」みたいな連続で……。

そんなことある? じゃあ、あの連戦連勝はラッキーだったと?
そうなんです。映像で見れば普通に決まっているんですけど、自分の中では「抜けで失敗した。でも、立った」「空中でコケると思ったけど立てた」っていうのを全戦で繰り返してて。それが気持ち的に追い詰められたことで、まず不安だったトリックが立てなくなり、そこから次々に不安なことが積み重なって、結果、何をやってもダメな状態になってたんです。

メンタル面が大きかったんだね。
糸が完全に切れちゃった感じでしたね。お尻の骨を折ったり、肩を亜脱臼したり……とケガも重なって、もうスノーボードするのも嫌だな、やめようかな、とまで思うほどでした。何とかナショナルチームには残れて、前回のオリンピックには出られたけど……って感じだったんです。

だけど、久々の優勝のあとは、X GAMES でシルバーメダル、SNOW LEAGUE で優勝と、また勢いが出てきた。どうやって調子を取り戻した?
めちゃくちゃ練習して、不安をひとつずつ取り除いていきました。一番の不安がスイッチバックサイドのスピンだったんで、バグジャンプ→パイプってのを何回もやって、自分に合う回し方をずっと探し続けました。それこそ朝イチから最後の1人になるまでずっと。で、やっと自分の中で「これでいける」と思うようになって、次に出た大会でSWBS ダブルコーク1260 の入ったルーティンを初めて下まで繋げられたんです。

練習は裏切らないんだね。
ですね。それ以降、もう1 回も大会でSWBS ダブルコーク1260 はコケてないんです。自分を信じて練習しまくって本当に良かった。今は飛ぶ前やスタート前からコケるって思うこともないし、むしろ「できる!」ってほうが強いですね。

ちなみにスランプの期間、練習以外で何か心の支えってあった?
ちょうどミセス(Mrs. GREEN APPLE)が復活して“ フェーズ2” が始まったんですよ。もともと好きで聴いてたんですけど、その頃からライブにも頻繁に行くようになって。それとバイクですね。大型免許を取るために通ってた教習所でバイク仲間が増えて、一緒にいろいろ走りに行ったりしました。それまでがスノーボードばっかすぎたっていうか。スノーボードの調子はドン底だったけど、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)でしたっけ? それが上がって、いろいろ救われたし、頑張ってこられたと思います。

JAM’S(ミセスのファンのこと)だって書いていいの?
いくらでも書いてください(笑)。

10 月のスイス合宿では、トリック精度の向上にひたすら打ち込んだ
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スタイルと勝利

昔からスタイルにこだわってるライダーだなと思ってた。
ありがとうございます。こだわりはすごくあります。でも、大会になると練習してきたトリックも出したいし、何よりも勝つためには回さないといけない。そこの葛藤はすごくありますね。それを上手く両立できたのが、SNOW LEAGUE でした。

SNOW LEAGUE は、1on1 のバトル形式だけど参加して面白かった?
はい。でも、1 日がめっちゃ長かったです(笑)。他の大会なら1 日に2 本とか決めればいいところ、あの大会は1バトルにつき3本勝負。両サイドからドロップインして、1 バトルで2 本決めなきゃいけない。勝ち進んでいくと……何本やるんだろうって(苦笑)。それでも大会というよりイベントに近い雰囲気だったので、すごく楽しめました。

誰との対戦が燃えた?
(平野)ルカですね。最近はどの大会に行っても、ルカとは出走順が近くなんですよ。スタート前とか、けっこうふざけあったり、一緒にいて面白いヤツなんですけど、だからこそ対戦では燃えましたね。

ルカの話が出たけど、バック・トゥ・バックのトリプルコークのメイクを目の前で見て焦った?
いや、自分はトリプル・トリプルを繋がないルーティンを組むので、「おー、やったじゃん」くらいで焦ったり悔しいとかは一切なかったです。繋ぎが540 と900 だったけど、1ランに2 発のトリプルコークを入れたルーティンもやったことがあったから。

トリプルコークを打つ前など、今も怖いって思うことはある?
ほとんどないです。もう自分の感情がバグってるんですかね(笑)。それでも1日の1本目は多少の怖さはあるかも?

そういった恐怖心は、どうやって克服を?
怖いとか怖くないの前に、やるしかないから。今までやってきた練習、自分の空中の感覚を信じて。それに、もうトリプルコークではケガしないでしょって思って打ってます。ちょっとミスっても力を逃がすように落ちたりもできるから。

今後、回転数はどこまで増えるんだろう?
1800まではいけると思います。それ以上はもう無理かな……いや、いつかは出るかもしれないですね。

1800にトライしたことはあるの?
やってはいないです。けど、やれるんじゃないかな、と。最後にボードをペッて返せばいいだけなんで。

「ペッ」って軽っ(笑)。
いや、でもホントに最後に180返すだけだからメイクできるとは思うんですよね。

そのくらいの回転数までいくと、スタイルを出すのは難しい?
もうトリック自体にスタイルを入れられないところまできていると思います。空中で身体をひねらないと回らないから。スタイルの面で言うと、それ以外の方法でしかないと思うんです。

……というと、ルーティン全体でスタイルを出すってこと?
そうです。例えば、ファーストヒットで大技をやるんじゃなくて、ルーティンの真ん中に組み込む、とか。1 発目でやるのは簡単なんですよ。狙ってる壁に、狙ったスピードで入れるから。でも、後半になるにつれ、どんどん難しくなる。観客席も下にあることが多いし、どんどんトリックを繋いでいって後半に大技がくるほうが、観ていても面白いじゃないですか。会場も盛り上がりますしね。そういうのも踏まえて、自分の場合は、トリプルコークを 入れるのをルーティンの中盤と後半って決めています。あと、スイッチバックサイドのスピンを組み込むのもこだわりですね。

ドロップインで180 するのも、こだわり?
手前で180 してからドロップインするのも試したけど、ドロップインしながらのほうが、ヒールエッジを壁に当て込むタイミングで、ボードを一気に踏み込んでいけるんですよ。それが自分に合ってると思ったからですね。たまーにトウエッジが引っ掛かりそうになりますが(苦笑)。

では、大会の日のお決まりのルーティンってある?
家を出る前は必ずミセスの曲を流して準備すること。あと、自分の順番がくる前に四股を踏むこと、ですね。

力士がやる四股?
そうです。準備体操とかストレッチとかは滑る前にやらないけど、その代わりに四股を踏んでます。そっちのほうが調子いいって感覚になってて。

いつからやってるの?
トレーナーさんに「困ったら四股を踏め」って言われたことがあって、それを信じ続けて、もう4 ~ 5年はやってますね。気合が入るし、今じゃやらないと変な感じがすると思う。あと、ルーティンで言えば、ドロップ直前に、飼ってる2 匹の犬が刻印されてるネックレス、あと指輪にキスしてからスタートしてますね。

そういえば……ウエアのパンツのポケットにも、いろいろ入れてないっけ?
今も入ってますよ、すごい量のお守りが! 小さい女の子からもらった手作りのもの、神社のもの、彼女が作ってくれたもの、全部入れててパンパンです。でも、いろんな人が守ってくれてると思えるし、もう持ってないと落ち着かないですね。

 


カッコいい論

ズバリ、「カッコいい」って、どういうことだと思う?
例えば、すごいスピンする人がいて、その人が狙ってるルーティンを決めきったら、それはカッコいいなって思います。その難しさだったり、どれだけ練習してきたかもわかるから。あとは、自分が再現できないことをやってる人を見てもカッコいいと思います。

それぞれのスタイルが出やすいメソッド・トゥイーク。そういったシンプルなトリックを見てカッコいいと思うことは?
もちろん、ありますよ。ただ、けっこうシチュエーション次第だとも思っていて。例えば、大会の1 発目でトゥイークをやるとか、ウイニングランでやるとかなら、めっちゃカッコいいって思うんです。それをそこでやる勇気や価値、そういう特別な要素がカッコよさをより引き立てていると思うから。

ちなみに、戸塚優斗の中にある「カッコいい」は、これまで誰かの影響を受けてきた?
(片山)ライブくんですね。間違いなく。スノーボーディングっていうものを教えてくれたのがライブくんなんで!

「INK MOVIE」にも一緒に出てたよね?
1 回だけ出させてもらいました。撮影も一緒に行かせてもらって。それまで飛んだことないところを飛んだり……めっちゃいい経験でした。

バックカントリーの世界に興味は?
ありますけど、まだ早いなって感じです。パウダーはまだまだ下手だし、ジャンプしても全然立てなくて(苦笑)。いつも滑ってるパイプとは違う難しさがありますからね。そっちも上手くなりたいけど、今はまだ競技と真剣に向き合いたい気持ちのほうが強いです。

“そのとき” がくる

いよいよオリンピックイヤーだけど、意気込みを教えてくれる?
勝ちたいのもあるけど、あの舞台で決めたいって気持ちが強いですね。もう自分がやれることって決まってるじゃないですか。今さら狙っているルーティンは変えられないから。なので、これまで磨いてきたトリック、ルーティンを信じてやるだけです。そして、すべて成功させたら、どこに立っているのか。それが金なのか銀なのかって感じなんです。

もうルーティンって決まってる?
ほぼほぼ。あと1つだけ組み込みたいトリックがあって、それを練習しているところです。その完成度次第かなって思ってます。

ちなみに狙ってるトリックとは?
SWBSダブルコーク1620。それをファーストヒットでやりたい。そこからトリプルコークに繋げられたらと思ってます。

そういえばミセスの楽曲は、テレビ朝日のオリンピック・テーマソングになってるよね? 表彰台の頂点に立ったら対談が実現したりして? それもモチベーションになってたりする?
はい、めっちゃ(笑)。

滑ってるときもミセスの曲を聴いてるの?
滑ってるときは何も聴かないです。リップを抜けるときの音、ボトムに入ったときの音を大事にしたいから。パイプの硬さとかボードのズレとか、音にもヒントがあるんですよ。ただ、滑る前は聴いたりもしますけどね。

よく聴く曲は?
ミセスの『愛情と矛先』ですかね。曲の終盤に「大丈夫だよ。安心して。君の強さは偉大なものだ」っていう歌詞があって、大会前に聴くと「よし、自分も大丈夫だ」って安心させてもらえるんです。

では、最後の質問。スノーボードを通して伝えたいことを教えて。
失敗を恐れずに挑戦することの大切さ、その挑戦が成功したときの達成感ですかね。でも、何でやってるんだろうって思うこともあります。ケガのリスクもありますからね。ただ、失敗も成功も、その過程も含めて、自分は挑戦するのが好きなんだと思います。だから、その挑戦する姿を見て、何かを感じてもらえれば嬉しいなって思うんです。

Profile /
2001 年9 月27 日生まれ、神奈川県横浜市出身。 スポンサー: YONEX、G-SHOCK、FLUX、DEELUXE、SMITH、DAKINE、HESTRA、PLUS、GALLIUM、FOOT LAB.、PEAK POINT、A’S HOLDINGS、AIRWEAVE、高鷲スノーパーク、HEAVEN STORE


Edit + Text: HaruAki

(本記事は2025年11月27日発売・FREERUN 12月号に掲載されたものです)

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