次世代ライダーが賞金総額120万を懸けて争ったCOWDAY 2022

 

2015年からスタートしたCOWDAY。国内でのビッグコンテストが減少傾向にあるなか、回を重なるたびに規模や知名度、賞金総額がアップし、次世代を担うライダーたちの登竜門的存在となっていた。だが、一昨年は雪不足のため中止、昨年はコロナ禍でオンライン開催に。そんなCOWDAYが、今年は長野・白馬47を舞台にFIS大会としてスロープスタイル競技が行われた。

Photo: HaruAki

 

3月29日。予選は、女子11名、男子39名で争われ、1人2本のベストポイントによって、女子は6名、男子は12名が翌日のファイナルへとコマを進めることができるというもの。

これがコース全景だ

コースは上から、フラットレール→上からもサイドのRからも入れるレール→ダウンレールorキンクレール→16mキッカー→12mキッカー→レインボーレールorキャノンレールという合計6セクション。そして、印象的だったのは、公開練習の時間がかなり長く、ひとり4~5本はコースチェックができていたということ。また、念入りにアプローチやアイテムが整備されていたので、スピード不足やキックでエッジが喰われるなどの事態に陥ることなく、誰もが気持ちよくトリックを繰り出していたということだ。まさに、ライダーファーストというコンセプトのもとスタートした大会。運営するのもコンテストを経験してきたライダーたちだからこそ、出場選手のことを第一に考えてのことだった。

北京パラリンピックに出場した市川貴仁さん(右)と大岩根正隆さん(左)による予選の前走

さて予選では、ジブでのスピンインやスピンアウトをクリーンにメイクしたうえで、女子はジャンプで540と720のコンボが、男子ではバック・トゥ・バックのダブルコーク1080が予選通過の基準となっていた。

270オフや450オフが飛び出したジブセクション
レインボーレールでのブラントスライドがイケてた前田涼葉
ダブルコークをトラックドライバーで。難易度とスタイルの両方が求められた

ヘッドジャッジを務めた橋本 涼氏に話を聞いたところ、「セクションを上部と下部に分けてジャッジングし、さらにオーバーオールでの流れも採点します。もちろん転倒は大幅減点になりますが、着地でブレが大きかったりグラブではなくタッチになっていたりニーグラブは印象点が低く、一方、他のライダーとは異なるラインやスタイルは評価しました。攻めながらもクリーンにメイクする、これが重要ですね」とのこと。

北京五輪でもジャッジを務めた橋本氏がヘッドジャッジを担当

その言葉どおり、アグレッシブかつスタイル全開で、そしてクリーンなランを披露した18名が翌日のファイナルに残ることとなった。

 

3月30日。決勝も1人2本のベストポイント制でおこなわれることに。ライブ中継もあったので、すでに結果をご存知の方も多いかもしれないが改めて振り返ってみよう。ちなみにライブ中継はアーカイブとしてWEBにアップされているので、全ライダーの滑りをチェックしたい人はコチラから確認していただきたい。

チョコバニラボール新井、岡本圭司、谷口尊人がライブ中継を盛り上げた

前日の曇り空から一転、青空が広がる絶好のコンテスト日和。ただ、問題は気温だった。朝の早い時間帯には10度を超える予報で、実際、公開練習の後半にはスピードが出づらい状況に……。

公開練習から飛ばしていた大坪 脩三郎
整備はこまめに、丁寧におこなわれた
会場にはMCアリーによる的確な選手紹介や披露されたトリックがいい声で流れた

だが、ディガークルーによる丁寧な整備のおかげで、いざ競技がスタートするとファーストジャンプは飛びすぎるくらいの滞空時間の長いトリックが連発。特に男子は前日からギアが1段階アップしていた。1本目からキャブ・ダブルコーク1260をメイクするも続くジャンプのバックサイド・ダブルコーク1260でミスをした西條一希、フロントサイド1440にトライした大坪修三郎や根岸宥景など、確実に予選よりもレベルが上がっていたのだ。ただ、ミスも多かった。

青空に赤いソールが映える柿本優空のジャンプ
第2セクションをサイドインするなどオリジナルなラインが印象的だった鈴木淳宏
藤谷瞭至のファーストキッカーでのダブルコーク

そんななか優勝したのは、ハードウェイ・キャブ270オン・ボードスライド→スイッチフロントサイド・ボードスライド・270オフ→キャブ270オン・ボードスライド・270オフ@ダウンレール→バックサイド・ダブルコーク1080インディ→フロントサイド・ダブルコーク1080ウェドル→バックサイド・ボードスライイド・バックフリップ・オフ@キャノンレールというルーティンを1本目に組んだ北海道・札幌新陽高校スノーボード部の17歳、藤谷瞭至。2本目ではファーストジャンプでバックサイド・トリプルコーク1440にトライするも着地に嫌われるものの、最終セクションのキャノンレールでボードスライドからのプレッツェル630オフを繰り出すなど、まだまだ彼のトリックの引き出しの奥は深そうな印象を受けた。

ロンググラブのバックサイド720がカッコよかった枝松知優

一方の女子は1本目にほとんどの選手が転倒やミスがあり、2本目が勝負となった。優勝したのは、FISジュニア世界選手権のビッグエアで2位、スロープスタイルで3位入賞をしたばかりの枝松知優、16歳。バックサイド・テールスライド・270オフ→バックサイド・ノーズスライド・プレッツェルオフ→ハーフキャブオン・50-50・テールタップオフ→バックサイド720ウェドル→フロントサイド720ウェドル→50-50・バックサイド180オフのルーティンを安定感抜群でスタイリッシュにメイクしていた。

最後に、コースデザインやライブ中継のMCなどを務めた岡本圭司は大会をこう振り返った。「ひとつひとつのトリック自体は世界レベルと言ってもいいけど、トップライダーと違うのはメイク率。今回はミスが多かったというのは、参加した選手自身も理解してるはずだし今後の課題だとわかってるはず。でも、こうやって国内で大きな大会があって、才能のある若手ライダーたちの本気の滑りが見られたのは本当に面白かったです」

見事に賞金を獲得した者、残念ながらミスが出てしまい涙をのんだ者。ただ、彼ら彼女らのなかに未来のオリンピアンがいるかもしれない。そう思わせるハイレベルなバトルだった。そして、彼らのポテンシャルを最大限に引き出そうという想いも運営側から伝わってきた。やっぱりナマで見るコンテストって面白い。3年ぶりのオンスノーで開催されたCOWDAYは、自然とそう思える濃い内容だった。

閉会の挨拶をする牛乳石鹸の宮崎清伍さん。彼自身がリアルスノーボーダーだからこそ、「COWDAYのようなコンテストは日本に必要」だと協賛し続けているそうだ

 

リザルト

<メンズ>

1位: 藤谷瞭至

2位: 加来優生

3位: 鈴木淳宏

 

<ウィメンズ>

1位: 枝松知優

2位: 前田涼葉

3位: 奥山華波

なお、今大会の優勝者(男女)は今シーズンのFREERUN本誌にてショートインタビューを掲載するので、そちらもお楽しみに!

公式WEBサイト
https://www.cow-day.jp/snow/

COWDAYのインスタグラム
https://www.instagram.com/cowday2021/