2019年3月2日(土)~3日(日)の2日間に渡り、TENJIN BANKED SLALOM 2019が開催された。今年で9回目の開催となった本大会に参加するため、国内外のプロライダーをはじめ、全国各地の提携大会から出場権を獲得した強者、また一般応募で見事夢の出場権をGETできた参加者など、多くの滑り手たちが群馬県・谷川岳天神平スキー場へと集まった。その模様を実際に滑った感想とともにお伝えする。
来年へ繋げるためのチャレンジングなコース
今年で9回目の開催となった本大会。来年の記念すべき10回大会の開催へ向け、新たなチャレンジが試みられた。それは、従来のコースが作られていたバーンから、下から見上げると少し左へと移した、より急斜面からのスタートという難易度の高いラインへの変更だった。このバーンは、天神ローカルたちが峠リフトで回す際に昔から好んで滑ってきた名物ラインでもある。大会プロデューサーの福島大造氏は、「今年は来年の10回大会へ向けたチャレンジの年にしたい」と語っていた。それが今回のアグレッシブな天神平らしいコースへのトライへ繋がったのだ。
約1週間前からコース造成が進む中で、今シーズン全国各地を悩ませている暖冬が、このコース造成にも多くの影響を及ぼしていた。天神平スキー場も大会直前の降雪は少なくアイシーな雪質に悩まされていて、硬い雪の固まりをノコギリでブロック状に切り分け、それを積み重ねながらバンクを造成するという苦労があった。
大会当日、もともと予定していた土曜日の予選が、急遽コースインスペクションデイへと変更された。やはり開催当日もアイシーなコースコンディションは変わらず、上部のバンクは従来よりもスティープなバーンに造られたハードなコース。土曜日の天候は晴天に恵まれたが、このコース状況の中、参加者は限られたコースチェックだけで、本番の本気スイッチを入れた滑りをすることで怪我人が出てしまうことへの懸念からこの判断を下した。
自分は今年もエントリーをして、実際にいち参加者としてこのコースをインスペクションしたが、上部は見た目の想像よりも斜度があり、左右のバンクへ振りながら滑り降りるもののボードがフォールラインへと行き急ぎ、スピードコントロールをミスればバンクの遠心力で外へ振り出されてしまう緊張感のあるコースだと感じた。それでいて、それぞれのバンクが従来のサイズ感よりも大きいという印象を受けた。だからこそ、よりハイラインをキープしながらスピードを殺さずに気持ち良く走り抜けたい。そのスピード調整がかなり鍵になる。そんなコースフィーリングだった。
参加者全員が「自分自身にトライできた」今大会
翌日いよいよレース本番を迎える。天気は曇りで気温も低く、見た目のバーンコンディションはアイシーな状態のままだった。出走順は男子オープンクラスからとなり9:00からスタートした。さすがのライダーたちもレース前にはしっかりとフリーランを重ね、このアイシーなコンディションに慣れてから出走する面々も多い様子。その中でも、生塗りワックスをしっかりかけてレースに臨むあたりはさすがだ。
オープンクラスの序盤は実績のあるライダーたちが名を連ね、昨日からコースアウトが目立った2バンク、4バンク目もハイラインで攻めていった。上部からの観戦は今までにないかなりの迫力で見応えも十分だ。
60番目、いよいよ自分もスタートを切った。前日のインスペクション終了後、そして当日早朝のレース前に、コース造成スタッフたちが力をあわせてコースを整備してくれたおかげで、想像よりもエッジがしっかりと雪面に噛みバンクも整っている。実際、攻めた滑りは全くできなかったが、なんとかフィニッシュすることができた。正直スタート前は、今まで出場したバンクドスラロームの中でも一番緊張した自分がいた。「無事完走できるか?スピードコントロールができず吹っ飛ばされないか?」と、様々な不安が頭の中でよぎったが、滑り終えた瞬間の爽快さは忘れられない感覚だった。ゴール後に、笑顔でハイファイブを交わしてくれる仲間がいて、レースを無事やり遂げた安堵感が最高に気持ちよかった。
その後もスタッフたちによってコース整備を重ねていきながら大会が進んでいったが、女子オープンクラスからは危険を防ぐためにスタート位置を下げてのスタートに変更された。刻一刻と変化するコンディションに合わせながら大会を進めていく。このあたりの状況判断もベテランスタッフたちによる長年の経験値が活かされ、夕方時間内には全ての参加者の滑走が終了した。
このバンクドスラロームという大会は、もちろんタイムやリザルトが明確に出るものだし、コースアウトをしてしまえばその場で終了してしまう。でも、完走することだけが全てじゃないんだと思う。この日のためにシーズン中しっかりと滑り込みをして、目標を持ちスノーボードを楽しむ。そのプロセスが何よりも素晴らしいものなのだと思うからだ。正直、今回のコースは今までにないくらいハードなコンディションだったと言える。しかし、結果がどうであれ、この日を迎えるための自分自身の努力は何にも代えがたい宝物になっているのだと思う。
冒頭にも書いたが、大造氏が「今年はチャレンジの年」と話していたように、今大会は参加者全員が「自分自身にトライできた年」になったのではないだろうか。50歳以上のレジェンドから小学生までのスノーボーダーが同じコースを滑り自分と向き合い一喜一憂する。そんな大会は他に見当たらない。
今年で9年目を迎え、今では全国各地で提携大会が行われ、このカルチャーが根付きながら一緒に成長している。運営スタッフ、ローカル、ライダー、参加者とみんなで作り上げるこのバンクドスラローム。来年はいよいよ記念すべき10周年を迎える。はたしてどんなドラマが待っているのだろうか、今から楽しみだ。
TENJIN BANKED SLALOM 2019リザルトはこちら