【濱田海人インタビュー】 「魅せる」と「勝つ」の両立を目指して

北京五輪・男子スロープスタイルのファーストランにて、カメラマンがセクション2を滑走中のライダーを見失い、少しの間、テレビにはコースだけが映し出されていた。だが、これは決してカメラマンが悪いわけじゃない。誰も想像していなかった奇想天外なラインをライダーがチョイスしたからだ。そんなスノーボードのフリースタイルマインドを世界に見せつけたライダー、濱田海人に迫る。

Photo:kentaroufuchimoto.com

取材協力:ムラサキパーク東京


憧れの夢の舞台

「THIS IS SNOWBOARDみたいなランをテレビで見せられたのは嬉しい」。北京五輪のスロープスタイルの競技を終えた濱田はテレビインタビューでそう応えた。

あれはコースの設計図を見たときから考えていたラインだったそうだ。「他の誰かが同じラインで滑ったら、別のラインを攻めることも考えてました。北京ではクリエイティブな滑りと高難度なトリックの両立を目指してたし、あのセクションでそんなにポイントは出なかったけど後悔なんてしていません。その分、インパクトは残せたのかなと思っているので」 。どこか清々しい表情で、幼い頃からの夢舞台でのライディングを振り返った。

濱田がスノーボードを始めたのは5歳のとき。冬に地元・北海道でソリ遊びをしていた際、急に立ち上がって滑るのを楽しむ姿を見た両親が、「スノーボード、できるんじゃないか」とトライさせたのがキッカケだ。それから毎週のように家族で滑りに行った。上達するにつれ、周りのキッズと同じように大会にも出場するようになった。そして、ソチ五輪からスロープスタイルも正式種目に加わることが発表されたとき、彼のなかで「夢はオリンピックでの活躍」になったという。その後は環境がいいと聞きつけたゲレンデに足を運んでは練習を繰り返す日々。回転数の増加や回転軸の複雑化にともない、エアマットを活用したジャンプ練習施設にも通うようになる。こうして確実に難度の高いスピンもマスターし、コンペティターとして順風満帆な成長を遂げていった。だが……。

「高校1年のときにユースオリンピックに出場できることになったんですけど、その直前にあった僕にとっての初めてのワールドカップで喰らっちゃって……。ジャンプの着地で失敗して頭を激しく打ち、脳から出血があったんです。結局、ユースオリンピックには出場できなくて。しかも、それが1月だったんで、そのシーズンは完全に潰しちゃいましたね」

療養期間を経て、周囲のライダーたちの進化に追いつくために努力を続け、その翌シーズンには雪上に復活。再びナショナルチーム入りを目指して大会を転戦し始めた。前々回の平昌五輪には間に合わなかったが、その4年後、やっとの想いで北京の舞台に立つことができたのだった。そして、披露したのが、あの自由すぎるランだったわけだ。

Photo: Lee Ponzio 大会でもスタイルにこだわる。それが濱田海人の信条だ

映像が広げた新たな世界

ただ、彼が北京五輪で表現したようなスノーボーディングにおける「イマジネーション」「オリジナリティ」「スタイル」について考えるようになったのは、実は高校を卒業してからだという。

「子供の頃はカルチャー要素どっぷりなムービーを観ていてカッコいいスノーボードを知っていたのに、いつの間にか勝つことだけにフォーカスしてしまい、カッコよさっていう部分を忘れてたっていうか……。完全にトリック重視になってしまって、どこか殻に閉じこもったような感じだったし、今じゃ想像できないくらい世間知らずでした(苦笑)」

そんな彼に意見したSALOMONのチームマネージャーをはじめ、いろんな人の話を聞いたり、様々な映像を改めて観ることで、濱田は技術だけでなく、カルチャー的な側面の知識を深め、自身のスタイルとも真剣に向き合うようになったのだ。だからこそ、濱田が自己表現のツールとして自身で撮影&編集したムービーを発信していく活動を始めたのは、ごく自然な流れだったのかもしれない。もちろん、そこにもこだわりがあった。

「撮影して誰かに編集してもらうんじゃなくて、自分で編集までしないと結局は自分が思っているままのイメージを観る人に届けられないんじゃないかなって。それで映像編集の勉強を2、3年前に始めました。今では編集すること自体も好きなんですよ」

そして、濱田はここでも類まれなる才能を発揮することとなる。2021年のCOWDAYのムービーコンテストで、「パーク&ストリート部門」で優勝を果たしたのだ。いや、それだけではない。新たなチャンスを掴むことにも成功した。現在、濱田をサポートしているブランドは多々あるが、そのなかで唯一グローバル契約を結んでいるGIROが彼に声をかけたのも、そんな映像がキッカケだった。彼がInstagramにアップした、スイス・サースフェーでおこなわれたTHE STOMPING GROUNDSでのエディットだ。それをGIROのグローバルのチームマネージャーが観て、「彼のライディングと、GIROがスノーボードのライダーに求めているスタイルが一致した」ため契約に至ったという。

 

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これがInstagramにアップされた映像だ


COWDAY2021で優勝を勝ち取ったのはこちらの映像
COWDAYのYouTubeチャンネルより引用)

自分らしく勝ちたい

「僕はジャンル分けされると、今はコンペティターだと思ってます。その立場である以上、結果を出さないといけなくて。クリエイティブなことをすれば結果が出るわけじゃない。勝てる技もちゃんとやらないといけない。『魅せる』と『勝つ』の両立は難しいし、それができているのは世界でも数人くらいだと思います。ただ、最近はそれらを天秤にかけて大会に挑んでいるんです。スノーボードって、やっぱりスタイルっていう部分を大事にしているじゃないですか。ぶっちゃけコンペは勝てばいいんですけど、僕はカッコよく勝つというのが醍醐味であるとも思ってて。特にスロープスタイルは何をやってもいい。僕がオリンピックでやったみたいに逆走しちゃってもいいですしね(笑)。そこが好きなんですよ」

そんな濱田が現在目指しているのは、イタリア・ミラノ/コルティナ五輪だ。まだ3年もある、ではない。もうあと3年しかないという意識で挑んでいるそうだ。北京に残してきた忘れ物を、イタリアで取り戻すために……。

「まずはナショナルチームに入るために、今はワールドカップに出てポイントを稼がないといけません。ただ、最近のジャッジの傾向として、安定度と完成度がすごく評価されてるし、この先、大会で一気に回転数が上がることはないと思うんです。だからこそ、1800や1980のメイク率をいかに高められるか。そして、グラブなどで空中のスタイルを、いかにバチッとキメられるか。難しいトリックなんだけど、いかにも簡単にやってますよって感じを出せるか。それができるように練習をしているところです」

今の濱田はトリック重視だけではない。
「自分のやりたいことをやってきたのが、どんどんカタチになってきていると思うので、今後も高難度のスピンやトリックにプラスして、僕にしかできない変なことをやったりとか、『そこ、行くんだ』みたいな滑りをしたり、観てくれる人に期待してもらえるようなライディングはしてきたいですね」

かつてバスケットのNBAで活躍したコビー・ブライアントはこう言った。「次のマイケル・ジョーダンにはなりたくない。僕はただコービー・ブライアントでありたい」と。濱田も自身のオリジナルスタイルを貫き続ければ、新たなインパクトをシーンに与えるライダーになるだろう。あのとき、あの場所で、あの興奮をお茶の間に届けたように……。いや、次はそれ以上の何かを、きっと!

冒頭のコメントには続きがある。「スノーボードシーンを盛り上げるうえで、けっこういい感じにかませたんじゃないかなって思います」。次の夢の舞台では、もっと大きなことを“かましてくれる”だろう。そう期待せずにはいられない。


愛用するヘルメットとゴーグルは?

現在、濱田はグローバル契約を結んでいるGIROのゴーグルとヘルメットを愛用している。彼のようにクリエイティブなラインを描くためには、もちろん滑り手の想像力も欠かせないけれど、コースの特性やアイテムをよく観察することが重要だ。そのためには目から入ってくる情報が頼りになることは言うまでもない。それをサポートするのが、白銀世界の凹凸を見やすくしてくれるレンズを搭載したゴーグルだ。

「ゴーグルに関しては平面レンズが好きで、カッコいいなって思うフレームのモデルを使ってます。以前は球面レンズを使ってましたが、最近は平面レンズのほうが歪みが少なく感じるし、僕の目に合ってるんです。大会で使ってるのはMETHOD。レンズ交換がラクなところが気に入ってますね。普段の山滑りにはクラシカルなフレームがカッコいいBLOKを使うこともあります。両方ともVIVIDレンズが搭載されていて、晴れているときはもちろん、暗いときや吹雪いているときも雪面の凹凸がめっちゃ見えるんですよ。雪面が見えるか見えないかは、試合でも撮影でもすごく重要なので、とても助かっています」

また、高校1年のときに頭部を大怪我したこともあり、誰よりもヘルメットの重要性は理解している。

「頭の怪我をしたときも、もちろんヘルメットはかぶってました。してなかったらゾッとするというか、死んでたんじゃないかなって……。怪我したこともあって安全面には気を配ってますね。なので、MIPS(多方向衝撃保護システム)が備わっているLEDGE FS MIPSを使ってます。安全性に優れているだけでなく、かなり軽くて調子いいんですよ」

Photo:kentaroufuchimoto.com

それでは、それらの商品を詳しく説明しよう。

GIRO
METHOD


★フレームカラー: BLACK CLOUD DUST
★レンズカラー: VIVID EMBER 35(VIVID INFRARED 58がボーナスで付属)
★価格: 25,300円

晴天時はもちろん、どんよりとした曇り空や少し霧がかったフラットライトの状況でも、GIROが誇るハイコントラストレンズのZEISS製VIVIDレンズによって雪面の凹凸を認識しやすい。また、独自のテクノロジーでレンズとフレームの形状を最適化したことによって視界も驚くほど広い。通気性もよく曇り止め加工も施されている。そんな常にクリアで広い視界を約束してくれるMETHOD。しかも、通常13,200円のレンズがボーナスで1枚付属。コスパも非常に優れているモデルでもある。


雪山でのVIVIDレンズの見え方はコチラでチェックしよう!


同じ大きさのレンズとフレームでも、考え抜かれたレンズとフレームの形状によってGIROの視界はとても広い。それがEXVテクノロジーだ

GIRO
BLOK


★フレームカラー: BLACK SPLIT FOUNTAIN MOUNTAIN
★レンズカラー: VIVID EMERALD 27
★価格: 16,500円

VIVIDレンズやEXVテクノロジーなどの機能を搭載した、クラシカルなフレームデザインがイケてるBLOK。1万円台で購入できるのも嬉しいポイントだ。

GIROのゴーグルについての詳細、他ラインナップはコチラから!
http://www.giro-japan.com/goggle/mens_goggle.html

GIRO
LEDGE FS MIPS


★サイズ: S~L
★カラー: MATTE GRAPHITE
★価格: 17,600円

MIPS(多方向衝撃保護システム)を搭載した、頑丈なハードシェル構造が特徴のLEDGE FS MIPS。今シーズンからダイヤル式サイズ調整フィットシステムを採用され、より頭にしっかりと寄り添うヘルメットとなった。大きく開いたベンチレーションが頭のムレを防いでくれ、イヤーパッドを取り外せばスケートボードや自転車でも活躍する。

MIPS(多方向衝撃保護システム)については、是非、コチラの映像もチェックしていただきたい。▽▽▽


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