【ライダーインタビュー】自由と型の狭間で——響きあう滑りと交差する哲学 TEAM RECT

自由と型の狭間を自在に遊ぶ“RECTスタイル”——。このスタイルに名前が付いて2年目。 個の滑りが響き合い、重なり合う中で、共通する美学を見出してきた彼ら。 SPライダー内の選抜チームとして活動する「RECT」の中から、今回は初期メンバーの5名にフォーカス。 それぞれのスタイルへのこだわりと、これから目指す滑りの形を聞いた。

Q1:あなたにとって「RECTスタイル」とは?

菅谷 佑之介:僕にとってのRECTスタイルは、自分の滑りを自分で組み立てていくスタンスだと思っています。 ただトリックを入れるとか、きれいにターンするだけじゃなくて、どんな動きに意味があり、どんな理由があるのかを考えて選び取る。見た目の派手さではなく、滑りの「意味」を大事にしています。
勝呂 裕一郎:ターンとトリックを分けて考えるのではなく、すべてが一連の流れに溶け込むような滑りがRECTスタイル。 そしてメンバーそれぞれが自由な発想で、自分らしさを追求する。そんなオリジナリティあふれる滑りを提案できるのがTEAM RECTの強みです。

Q2:結成2年目となりますが、何か変化はありましたか?

菅谷 佑之介:滑りに対する話し合いやフィードバックが、1年目よりもずっと深くなったと感じています。 同じ映像を見ても、それぞれ見る視点が違っていて、それを言語化して共有することで自分の感覚も整理されていきました。滑りの精度も上がってきて、それが映像にもちゃんと表れていると思います。 菅谷 幸之介:個の力だけでなく、チームとして互いに刺激し合える関係になってきました。その相乗効果で、それぞれの滑りの質も確実に高まってきていると感じています。
勝呂 裕一郎:活動の場所も内容もそれぞれ違いますが、それぞれが自分のRECTスタイルを軸に発信するようになってきた。個々の動きが際立つようになった分、チーム全体としての存在感も強まってきていると思います。 蘇原 空斗:1年目に比べて、チーム全体の意識が確実に高くなりました。 撮影の際に、どの角度で・どんなトリックを見せるか――そういったことへの意識も明確になってきていると感じています。 関谷 陸:チームとして撮影や発信といった活動がより積極的に行えるようになって、一体感が増してきたと思います。

Q3:自分の滑りの中で「RECTらしさ」や、自分ならではの個性が表れる瞬間は?

菅谷 佑之介:僕は“動きのつなぎ目”にこだわることが多いです。 1つのトリックをどう終えて、どう次の動きにつなげるか。その流れが自然で、全体としてまとまりがあるかどうかが、自分らしさのポイントだと思っています。 菅谷 幸之介:ダイナミックさとスマートさのバランス。 どの技にもインパクトがあり、それでいて無駄がない。そんな滑りを意識しています。見た人の記憶に残るような、一発一発に思いを込めています。 勝呂 裕一郎:カービングターンが得意です。 バーンや雪質の変化に合わせて、板や体の動きを変化させる。経験を活かして、ターン一つひとつに違った表情を出せるよう心がけています。 蘇原 空斗:僕は地形の活用が得意。スキー場のあちこちにある落ち込みや壁を見つけては、そこを使って遊ぶ。遊び方の工夫こそが、自分らしさだと思っています。 関谷 陸:スピードとキレが自分の武器。特に、トリックからターンへの移行でしっかりと止めて、スムーズに展開できるよう意識しています。 「見ていて気持ちいい」と思ってもらえるような滑りを追求しています。

Q4:RECTスタイルでまだ未完成だと感じる部分、これから挑戦したい技は?

菅谷 佑之介:そもそも「完成」という言葉に少し違和感があって、滑りって常に変化していくものだと思うんです。環境や道具、体の感覚も毎年変わっていく中で、“今の自分”に合った動きを探していく。その変化やズレに気づくことが、進化に繋がると感じています。 菅谷 幸之介:もっと一人ひとりのスタイルを際立たせながら、よりダイナミックで“魅せる”技に挑戦していきたい。まだまだ進化できる余地はあると思っています。 勝呂 裕一郎:すべてが未完成のままでいいと思っています。その方がモチベーションも保ちやすいです。とはいえ、他のメンバーと比べてトリックの数も完成度も劣っていると感じているので、基礎からしっかり見直していきたいです。
蘇原 空斗:特定の技にこだわっているわけではなく、今できる技のクオリティをどんどん高めていきたいです。チーム内で情報交換をしながら、互いにスキルアップしていけたらと思っています。 関谷 陸:挑戦したい技はたくさんありますが、それ以上に“自分らしさ”をもっと追求していきたい。どこから見ても「あ、関谷だ」とわかるような滑りを目指しています。

Q5:あなたが考える、RECTスタイルが最も映えるシチュエーションは?

菅谷 佑之介:動きへの反応がしっかり返ってくる整地されたバーンや、踏みごたえのある雪質のとき。自分の動きが伝わりやすく、見ている人にもニュアンスが伝わる場面にRECTスタイルがよく映えると思います。 菅谷 幸之介:“板と身体が逆になる瞬間”が特に映えると思います。大胆な動きとスタイルがぶつかり合う瞬間に、RECTらしさが最も際立ちます。 勝呂 裕一郎:快晴の朝イチ、圧雪バーンはやはり特別です。撮影日に限って条件が悪いことも多いですが、どんなコンディションでも魅せられる滑りを心がけています。とはいえ、雲ひとつない快晴に勝る瞬間はありません。 蘇原 空斗:チームみんなで同じバーンを一気に滑るシーン。各自の個性が際立ちながらも、ひとつの流れを作る。そういうセッションが一番映えると思います。
関谷 陸:チームで滑っているときが一番“映える”と感じています。仲間とセッションすることで新しいアイデアが生まれやすく、滑りの質も高まるんです。

Q6:SPバインディングとRECTスタイルの相性について、改めて教えてください。

菅谷 佑之介:SPは、雪面のとらえ方がすごく明確に返ってきます。面で踏んでいるのか、点で捉えているのか、自分の足元からの情報がダイレクトに感じられる。必要な動きを引き出し、無駄な動きを省くのに役立つ、信頼できるギアです。 菅谷 幸之介:SPは、RECTスタイルの限界を突破するために欠かせないギア。個々の滑りにしっかり応えてくれて、自分の動きを最大限に引き出してくれます。 勝呂 裕一郎:SPの薄型アルミベースプレートによる繊細な足裏感覚は、あらゆるシチュエーションで頼れる存在。COREを愛用していますが、柔軟性のある構造で自由に板を操る自分のスタイルにピッタリです。 蘇原 空斗:一言で言えば「最高」です。これからのスノーボード人生を通して、この足回り以外は考えられない。自分の動きについてこられるのは、SPだけだと思っています。 関谷 陸:SPは踏んだ感覚や雪面の情報がダイレクトに伝わるので、自分の滑りがそのまま表現される。だからこそ、“その人らしさ”がにじみ出る。RECTスタイルと非常に相性が良いと感じています。

Q7:映像を通して見る人に、どんな風にRECTの滑りを感じてほしい?

菅谷 佑之介:「なんか気持ちいい」だけじゃなく、「この動きってなぜこうなるんだろう?」と考えてもらえるような滑りを目指しています。派手さではなく、流れや理由のある動き。その中にある“考え方”まで感じてもらえたら嬉しいです。 菅谷 幸之介:RECTの滑りは、新しいスタイルの象徴だと思っています。ダイナミックで、スタイリッシュで、時代を越えていくような感覚。ゲレンデで誰よりも注目されるような滑りを、僕たちは本気で追い求めています。

Q8:チームRECTがこれから“滑り”で突破したい壁や目標は?

菅谷 佑之介:もっと“動きの幅”を広げたい。技のバリエーションではなく、動きの組み合わせやタイミングでまったく違う印象を生み出せる滑りを模索したい。見せ方の工夫次第で、表現の可能性はまだまだ広がると思っています。 菅谷 幸之介:今後も見る人すべてが憧れるような滑りを追い求めていくこと。それがRECTの目標であり、常に超えていきたい壁です。 勝呂 裕一郎:この先も、見る人すべてが憧れるような滑りを追い続けること。それがRECTの目標であり、越えていきたい壁です。 蘇原 空斗:日本だけでなく、世界を意識したチームを目指したい。国境という壁を越えて、世界に影響を与えられるようなRECTでありたいです。 関谷 陸:“個性の集合体”として、もっと外へ向けた発信を強化していきたい。滑りだけでなく、映像づくりでもRECTらしさをしっかり伝えられるコンテンツを制作していきます。新しい視点と表現で、雪上における可能性を広げていきたいと思っています。

「スタイル」とひとことで言っても、そこに込められた想いや向き合い方はライダーそれぞれ違う。けれど、「流れの中に意味がある」「自分の動きに理由を持たせたい」——そんな彼らの言葉の奥には、共通する熱量と哲学があった。

完成ではなく、未完成であることに価値を見出す——。 TEAM RECTが見せる滑りには、そんな問いと可能性が詰まっている。