helion-gallery-matt-wagner-tall-trees.html

2013/01/30

全ての行動に無駄なんてない。
たとえ、社会に認められなくても。

谷口さん。

ほんとうにありがとうございます!

少し長くなりますが。先日僕のポートランドの友人でHelion Galleryのギャラリスト、
Matt WagnerがリリースしたアートブックThe tall trees of tokyoについて。http://www.helliongallery.com/?page_id=3773Mattは、僕がポートランドに足しげく通って(3年で10回ぐらい)digmeoutのアーティストのショーをしていたときに知り合った男で、今は東京と、サンディエゴとポートランドを行ったり来たりしている。Mattが僕に本の話をしたのが2年前の中目黒、Hatosという外人バーのテラスでだった。「俺、いま若いアーティストの本を作ってるから、お前、そのイントロダクションを書いてくれ、テーマは、インディペンデントで頼む」と。で、僕は友人のMADBUNNYこと高田昭義裏について書いた。ずいぶん昔に書いた文章なのですっかり記憶の彼方にあったが、2年越しでようやく出版されて、サンプルをもらったばかり。改めて読んでみたが、いまも書いたときの気持ちも、自分の立ち位置も変わっていないなあと再確認した。せっかくなのでイントロ全文載せますね。時間があったら読んで下さい。で、Mattにこの写真は載せてくれよと頼んだのに載せてくれなかったMADBUNNYのロンドンのショーの写真も載せておきます。

以下「The tall trees of tokyo」より。——————————————————————————————————————————–「インディペンデント」であること。僕の友人はプロのスノーボーダーで、世界のハードな山々に挑んでいく。その小さなカラダからは想像もできないタフな滑りに、世界中のメーカーが契約に押し寄せる。彼はまた有名なアパレルのデザイナーとして既に15年も自らのブランドを続けている。そして同時に自分名義でのアーティスト活動もしていて、ロンドン、ベルリン、パリ、そして東京でアートショーを続けている。3.11の震災のあとすぐ彼は動いた。東北はスノーボーダーの彼にとっての仕事場であり、得意先の工場や友人たちがいっぱいいる場所だ。寒い冬に外に投げ出された人たちのために、彼はアウターウェアーを集めようと仲間に呼びかけた。彼は3日間で2500枚のアウターウェアーを集め、トラックを仕立ててすぐ被災地に向かい、避難所の人々にきちんとサイズ別分けられたアウターウェアーを届けた。僕はそんな彼に僕のギャラリーで展覧会をしてくれないかとオファーした。彼は喜んで応えてくれ、沢山のアート作品と段ボール10箱にも及ぶオリジナルグッズを送り込み、自分たちの仕事をすべてオフにしてスタッフとともに夜行バスで大阪に向かい、徹夜で搬入をし、展覧会期間中のほぼ半分を大阪で過ごしてファンや来場者とコミュニケーションをとってくれた。ショーは大成功だった。あとで彼のブログを見てみたが、彼は僕たちのショーの前日までロンドンでのグループショーに急遽参加し、被災地である日本のアーティストとして素晴らしいアートワークをプレゼンテーションしていた。彼はギャラリーからの突然のオファーに、ギャラリーの床をひっぺがして瓦礫の山を築き、その上に一面にデイジーの花を並べた。彼のアートワークは動画としてアップされ世界中に配信された。ワイルドでしかも美しく、希望に満ちたアートワークは。夜中にその映像を観た僕の心を深く揺さぶった。彼の名はMADBUNNYという。思いついたらリスクも顧みず現地に向かう。行動しながら考える。しかしそこから生まれるアートワークには徹底的にこだわる。そんな彼の生き方に僕は「インディペンデント」を感じる。彼は自分のフィールドで確かに「独立」しているし、それは誰にも邪魔される事はない。そして、そんな彼の廻りには、同じように「インディペンデント」なスピリッツにあふれた世界中の仲間が集う。インディペンデントであることに、場所は大きな問題ではない。MADBUNNYの拠点は東京ではなく、東京からさらに2時間も北部にある群馬だ。彼はそこから自らのアートワークを世界に発信している。僕らもまた、活動拠点は東京ではなく、大阪でアートプロジェクトを運営しているが、東京には仕事で月に1度はステイしている。東京が僕らを必要としているのだ。そんな僕らが最初に選んだ海外はまた、ニューヨークでもロスでもなくポートランドだった。僕らはポートランド経由で世界に進出した。ポートランドは、アメリカのどの街よりもインディペンデントなスピリットに満ちていると僕は思う。ヴァイタルな人とコミュニティのチカラ。それさえあればどこでだって世界につながることが出来るのだ。街ではなく人なのだと僕は改めて思う。新しいアイデアと、スピリットをシェアしよう。発信することだ。あなたがどこにいても。

谷口純弘 (digmeout)