映像で世界に殴り込みをかける女 “高橋博美” インタビュー <前編> GIRLS INTERVIEW 01

Photo: bigtime
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現在、韓国で開催されているピョンチャン五輪。そのスノーボード女子スロープスタイルでは、会場を気まぐれに吹き荒れる強風によって、本来の実力を発揮できないまま競技を終えた選手が数多くいた。そのため、4年に1度のスポーツの祭典なのだから、もっと選手ファーストであるべきだという意見が飛び交ったことは記憶に新しい。決められた日時に決められたコースでポイントを争う競技の世界に対して、長期間に渡ってコンディションを見極めながらロケーションを決定し、滑るルートやライン、繰り出すアクションやトリックも自由に選ぶことができる映像の世界。そこに順位なんてモノサシは存在しない。だからなのか、勝ち負けを好む日本のマスメディアでは、あまり取り上げられることはなかった。だが、スノーボードに注目が集まっている今だからこそ、その映像の世界に生きる女性ライダーがいることを知ってもらいたい。海外ライダーたちと対等に渡り合う高橋博美のことを。海外スノーボード専門誌によるアワードで幾度となく受賞してきたムービースターも惚れ込む、彼女の才能とスタイル、そして生き様。ぜひ触れてもらいたい。

映像の世界に魅せられて

FREERUN編集部(以下、F): まず現在開催されているオリンピックについて。オリンピックって、どんな印象がある?
高橋博美(以下、T): お祭りってイメージかな。もちろん、日本人ライダーたちには頑張ってもらいたいです。ただ、個人的には代表選手の決め方やFIS(国際スキー連盟)、オリンピック委員会なんかに対して少し否定的な部分もあって……。だけど、そんなことよりも、スノーボードを知らない人たち、より幅広に人たちにスノーボードが伝わるチャンスだってことのほうが今は大きいですね。

F: オリンピックを目指したことは?
T: うーん、ないかも(笑)。スノーボードを本気でやるにつれ、映像や写真で表現するライダーになりたいって想いが強くなったから。現在、(布施)タダシくんと動いている(越路)タロウさんがやってた「FUCKERS」のクルーをはじめ、地元の先輩たちの世代に影響されてきたというのもあると思います。周りの環境って大きいですもんね。

F: 昔は大会に出てたよね?
T: かなり昔の話ですよ。周囲から「ライダーになるなら、女だったらリザルトを残したほうが絶対に有利だよ」って言われてたのもあって。なので大会で優勝したいっていうよりも、ある程度のリザルトを手に入れたかっただけなんです。当時から大会で活躍するライダーになるってところにはピントが合ってなかった。むしろ、撮影によく行く周りのライダーたちから、「一緒に行こうよ」って誘われるくらいのレベルに早くなりたいと思ってましたからね。

F: ムービーに出演し始めた頃、ストリートの映像が多かった理由は?
T: もともとジブのほうが得意で、その滑りでムービーに出たかったというのが一番ですね。ただ、そのときから何でもやりたかったから、ストリートで撮影をしつつ、チャンスがあればバックカントリーに連れて行ってもらって経験を積むようにはしてました。でも映像のことを考えると、やっぱりフッテージを残しやすいストリートを優先してたのかなって思います。

F: 現在はどういった撮影が多いの?
T: 今はバックカントリーでの撮影が多いですね。ストリートも楽しいけど、とにかく山は難しすぎて……。それで負けず嫌いが出たっていうか、悔しいっていう気持ちが強くて、バックカントリーでの撮影に力を入れるようになったんです。と言っても自分のなかでストリートをやり尽くしたって感じもなくて、雪がいい時期って一瞬で過ぎ去っちゃうから、ここ2~3年くらい前かな? 雪のコンディションがいい厳冬期は山、春くらいからストリートっていう流れにしてるんです。完成する自分のパートのことを考えると、バックカントリーとストリートの映像が半々くらのほうが見応えもあると思いますしね。ただ、一昨年にヒザをケガしてしまって、昨シーズンはストリートを封印してました。

 

撮影するフィールド選びにも、ライダーのカラーが大きく反映される。 Photo: Hiroyuki Numakunai
撮影するフィールド選びにも、ライダーのカラーが大きく反映される。 Photo: Hiroyuki Numakunai


世界最高峰ガールズムービーへの参戦

F: ジェス・キムラによる映像プロジェクト「THE UNINVITED」に参加することになった経緯を教えて。
T: 昨シーズン、ジェスが日本に来る前に「一緒にトリップに行かない?」って誘われて、「行く、行く」って軽い感じで合流したんです。で、行ってみたら、そこで「UNINVITEDっていうガールズライダーたちのムービープロジェクトをやっていて、そのメインメンバーとして参加してほしい」って言われたんですよね。ホント、突然のことだったんです。

F: すでに公開されている特別パートはヤバかったね。
T: 過去のいい映像をほぼ使った総編集みたいな感じなので、今後、それ以上のものを残さないといけないから、めっちゃハードルが高くなった気が……(苦笑)。ただ、あのパートはジェスが日本に来たときに、「こんなポイントもあるよ~」っていうのを教えるために、私の過去の映像を見せたりしてたんです。そしたら、「ヒロミ、古い映像、全部ちょうだい」って言い出して。「日本だとヒロミは知られているかもしれないけど、世界はまだアナタを知らない人ばかり。こんなにいい映像があるのにモッタイナイよ。古い映像だからヒロミが嫌がらなければだけど、UNINVITEDで特別編集したパートを作りたいの」って。で、5~6年分くらいの映像……確か100GB以上は渡したんです。かなり時間が掛かるのに、そのすべてをジェス自身がチェックして使用するカットをピックして、編集する人に指示を出して作ってくれたんです。なんかジェスの愛を感じてしまって(笑)。だから、あのパートは自分にとっては宝物ですね。

F: 映像が配信されてから、何か変わった?
T: うーん、特には(苦笑)。あ、でもジェスから連絡がきて、「ヒロミのパート、他のライダーのパートに比べて再生回数がダントツのトップだよ」って。どうやら日本以上に海外では盛り上がってるっぽいです。「アイツ、ヤバイね」って言われてるみたい。

↓とにかく観てもらいたい高橋のフルパートがこれだ!


<後半へ続く>

次回は3月1日にUPします。後半では、ジェス・キムラによる映像プロジェクト「THE UNINVITED」の日本での撮影について博美に話を聞いています。後半もお楽しみに!

Profile
高橋博美(Hiromi Takahashi)
1984年5月17日生まれ、宮城県出身。ストリートからバックカントリーまで、どんなフィールドでも、その男勝りなライディングで攻めるガールズライダー。現在は東北エリアを中心に活動するフィルミングクルー・bigtimeのメンバーとして撮影活動を続けている。昨シーズン、ジェス・キムラがハンドリングするガールズプロジェクト「THE UNINVITED」のメインメンバーに選ばれた。
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