さらに進化するステップアップのためのパーク構想〜星野リゾート アルツ磐梯 / 猫魔スキー場

昨年の予想以上の暖冬は日本中のスキー場の営業に大きな影響を与えた。特にスノーボードパークにおいては、さすがの技術力を持つパークビルダーも雪量ばかりはどうしようもなく計画変更を余儀なくされた。そんななか、スノーボードパークづくりで最先端をゆくアルツ磐梯も急遽予定を変更し、メインステージを猫魔スキー場へと移動し、国内初のトランジションジャンプをつくるなど、暖冬のなかでも結果を残した。そして降雪が期待できそうな予感のある今シーズン、前年のリベンジと共に新たなる構想も動き出しているという。そこで2つのリゾートのパークを統括管理する日本のパークビルダーの先駆者・山田雄二氏と2022 年の北京オリンピックに向けて進化を続ける鬼塚 雅選手に前シーズンを振り返りつつ、今年のパーク構想について聞いてみた。

世界レベルで戦う上での練習環境の大切さ
鬼塚 雅(Miyabi Onitsuka)

子供の頃から慣れ親しんだアルツ磐梯
5歳の頃からアルツでは滑っていました。小学校低学年の頃キララキャンプに参加して、10mくらいのキッカーで練習していたときに、その時コーチだったプロライダーの天池いずみさんに「スイッチの能力が足りない」って言われたんです。それが悔しくてめちゃくちゃ練習した記憶があります。当時はプロライダーっていう存在もよく理解できてなくて、ただ大人の人に指摘されたみたいな感じでした(笑)。でも、今振り返るとそのおかげでキャブの技術が上がったなって思ってます。そしてキララキャンプがきっかけで、練習はアルツ、猫魔でずっとやってきました。 もちろんパークが良かったということはすごく大きな要因ですが、私は出身が九州の熊本だったのでそれまで近くにフリーランできる場所がなかったんです。だからアルツ、猫魔はすべてが経験できるところがすごくいいなって感じながら滑ってました。滑る場所は山頂&霧氷エリア、あとアルツのナイターも大好きです。コースもガリガリではなく、雪質がしまってちょっと硬めでよく板も走るし、ライトのキラキラした雰囲気が海外リゾートのナイターっぽいなと思うんです。ご飯も美味しくてレストハウスが居心地もいい、そんなところも好きですね。

海外の選手と競い合うために必然的に 海外のパークでの練習を選んできた
私、これまでを振り返ると本格的に選手を目指した時から、海外のパークを滑った経験の方が多いんです。日本に戻るといつも、海外と日本のパークってだいぶ差があるなと思っていました。海外の大会で戦う上で、日本では実戦的な練習ができる環境はなくて、基礎の練習しかできない。新しい技に挑戦したいと思っても、それを試せる場所がないとどうしようもない。平昌オリンピック前のように必要なタイミングにアルツにお願いしてパークをつくってもらって、やっと試合に向けた練習ができるという感じです。今、国内で世界レベルを目指して頑張っている選手はみんなそこで悩んでいると思います。私は主に日本にいるオフシーズンはジャンプ練習施設(クエスト)で練習しています。この夏もほぼ毎日行ってましたね。ジャンプ練習施設で技を完璧にして、それから雪上でっていうのが最近ですね。基礎体力の筋トレは週1 くらいかな、やることで安心感があるし。ただ、着地する時の衝撃に耐えられるっていうことにはトレーニングが役に立っていますが、やはり雪上となるとどうしても海外に行く必要性がありますね。

前シーズン、練習量を増やしたことで メイク率が上がりました
動作の基礎的なことを見直して、そして練習量を週4日ぐらいから週6日ぐらいへ大幅に増やしました。そうするとメイク率がだいぶ上がりました。私自身キャブをもっと攻めたかったんですが、どちらかというとフロントが調子良くて、それがたまたま前シーズンのいい結果につながっただけで、自分として好調というほどの状態ではなかった。もっと回転数を増やしたいと思います。周りの人も成長が止まっているわけではなくて、どんどんレベルが上がっているので、自分ももっと上げていかなきゃと思うんです。実は回転数も毎回これが限界って思うんですが、メイク率が上がってくると毎回その先が見えてくる。720をメイクした時はこれが限界だと思ったんですが、メイク率上がった時にちょっと強めに入ってみたら900回れたみたいに、少しずつですが、そうやって先が見えてくる感じです。

猫魔でのトランジションジャンプの練習が US OPENのスロープスタイル 3位の結果に繋がった
US OPEN の前にコースにトランジションジャンプが入ることが発表されて、それで情報を山田雄二さんに送ってつくってもらいました。それまでトランジションジャンプを飛んだことはありましたが、経験値として十分なものではなかった。猫魔に練習用の台をつくってもらえなかったらUS OPEN の3位はあり得なかった。あの練習の成果はとても大きかったんです。というのもスロープスタイルの選手にはハーフパイプの経験がある人が多いんですが、そもそも私はジブからスロープスタイルに入ったので、ハーフパイプを真剣に飛んだことがなかった。Rが苦手で有名だったほどです(笑)。だから短期間でどう克服するかが課題で、猫魔のトランジションジャンプで練習するときはスノーモービルでアップしてもらって何度も繰り返しました。3日間のスケジュールで1日調整、2日間はしっかり飛んで。モービルアップしてもらったんで練習量は1日あたりで1週間に匹敵するくらい飛びました。やっぱりトランジションジャンプではRを上手く利用するためのラインどりが問題。自分だけではどう飛んでいいかのイメージをつくりにくかったんで、戸塚優斗くんにお願いして、一緒に飛んでもらってアドバイスも受けました。キッカーとは違ってR に対してどうラインを巻いていくか。戸塚くんはすぐに余裕で飛んでました。高さも倍くらいをいきなり飛んでいて、距離も出ていましたね。そのラインはだいぶ参考になりました。US OPENではフラットで720を回りましたが、次回トランジションジャンプがアイテムに入ってきた時には縦回転を入れたいと思ってます。

 

Rをキッカーとするトランジションジャンプ。左右どちらからでも飛び出せる
モービルアップを利用してハイペースで練習を重ねる。1日の練習で1 週間分に相当するジャンプを重ねた
トランジションジャンプの練習ではハーフパイプのスペシャリスト戸塚優斗選手のアドバイスがかなりの力になった

北京オリンピック「金メダル」に向けて
オリンピックの一年前という時期なので、オリンピックの内定をとれる結果を残すというのがまず最低限のレベル。来年のオリンピックでの金メダルを目標にして、レベルをもっと上げていきたいと思っています。4年前の同時期と比べると一度経験がある分、本番に向けて準備を逆算していくイメージはできています。平昌の時は星野リゾートさんからのサポートが決まったのが本番のシーズン直前くらいでしたね。でも今回は現段階で日本で積み重ねた練習量も内容も違うので、すでにその違いが結果になって現れてきています。メンタル的にもこれからの1年は、いろいろなプレッシャーがかかってくると思うので、気をつけてやっていきたいと思います。

今までハーフパイプを真剣に飛んだことがないというRの経験値の少なさを、この練習で一気にカバーしてUS OPEN の結果へと繋げた

パークをつくる限りはスキー場にとって
しっかりとメリットになるものを目指す
星野リゾート アルツ磐梯・猫魔スキー場
山田雄二

雪不足のなかで「トランジションジャンプ」 「SCLOVER BIG AIR」といった アイテムにも取り組んで
今まで経験したことのない雪不足で大変でした。アルツ磐梯、猫魔共に当初の計画がガラッと変わってしまいました。そんな中でも雅さんのリクエストによって急遽猫魔につくったトランジションジャンプ、その後のSCLOVER BIG AIR の開催もできて、あの雪の状況の中では出来る限りのことはやれたと思います。結局コロナの影響で猫魔スキー場の方も予定より早くクローズせざるを得ませんでしたが、雪不足のなかで、できるだけ長い期間パークを残していくにはどうしたらいいかと、常に考えながらやっていました。トランジションジャンプをつくるには猫魔でも雪が不足していて、人工降雪で雪をつくる必要がありました。

雪不足のなか国内のトップライダーを集めておこなわれたSCLOVER BIG AIR。このアイテムはトランジションジャンプで造成した土台を利用してつくられた photo: yoshitoyanagida.net

アルツ磐梯、猫魔スキー場が パークづくりにこだわり続けてきた理由
パークに力を入れられるスキー場は限られてきているような面もあると思います。なんでもパークがあればいいということでなくて、つくる限りはスキー場がそれをメリットに出来ないといけない。いいパークなら人も集まってくるという効果に繋げられる、パークの質はすごく大切になってきているんだと思います。実際にパークをつくる技術を持っている人が少ないことも事実で、いいものを作ろうと思ってもなかなか簡単にいかない現状もあるわけです。アルツとしてはASIA OPEN やSLOPESYLEをやってきたスノーボードの聖地としての背景があるなかで、他のスキー場にはない魅力を発信する上でパークの信頼性はすごく重要だと考えています。僕も仕事を始めたときは、自分がそこを滑りたいからつくるっていうのが気持ちの中で大きかった。だからアイテムもそういうものに力が入っていましたが、今はやはりお客さん、スノーボーダーたちが求めるもの、楽しんでもらえるものをつくり、そこに魅力を感じて人が集まってほしい。もちろん鬼塚選手のようなトップ選手のリクエストにもしっかり応えられるものをちゃんとつくるという仕事に気持ちも入ります。

猫魔でさえも雪不足には悩まされたが、パークを求めて各方面からスノーボーダーが集まった photo:yoshitoyanagida.net

地形パークからキッカー、 ジブのパークへステップアップ
最近は地形パークのようなものをメインにしているスキー場も増えてきてはいますが、もともと自分としてはパークを滑る人を増やしていきたいという思いがあります。だから地形を楽しむことをきっかけにもっとパークにトライしてもらって、ステップアップしていって欲しいと思っています。ターンができるようになってきたら、地形パークにトライする。地形パークはそこをどう滑るかで、誰でも遊べるという簡単さも兼ね備えています。そこで無理せず遊んでいく中で飛んでみたくなったら、ビギナーパークから徐々にステップアップしてもらうという考えかたでパークをつくっています。もちろんスキー場としてもひとりでも多くのスノーボーダーに楽しんでもらいたいという狙いで、アルツ磐梯、猫魔スキー場にいろんなレベルとニーズに応えられるアイテムをつくっています。

安全性を高めるためのキッカー設計
一番気にするのは、飛び出す角度とランディングのバランスです。それに関してはこれまでの経験が十分にあるから、いろんなリクエストがあっても対応できています。特に大きなキッカー、そして前シーズンのトランジションジャンプのように初めてつくるものは特にランディングが難しい。最終的にランディングはライダーとの調整も重要になりますね。安全面という意味でもとても重要で、長いランディングをつくりたいんですが、それにはパークをつくる斜面の角度との関係もありますし、雪の量も必要になります。まだ猫魔は雪が多いので作りやすいんですが、アルツ磐梯の大きなキッカーはその上部1キロぐらいから雪を運んでくる作業が大変なんです。作る場所も試行錯誤してスタッフと相談しながら決めるという感じです。また、一般のスノーボーダーに楽しんでもらっているパークのキッカーも、ランディングに届かないというよりは飛びすぎが危ないのでスタート位置をきちんと示しています。レベルを細かく分けているのは、次のステップに上げたときのアイテムのサイズ格差が大き過ぎるととても恐怖心が大きくなります。安全面のリスクも大きくなりますし、ステップアップを足止めしてしまうことにもなる。我々は今までの感覚の延長線上で安全に少しずつスムーズにステップアップしていけるパークを提供したい。それが楽しいパーク、何度も通いたくなるパークになると思っています。

大きなキッカーのランディングづくりは難しい。ランディングバーンもウインチを使って圧雪車を引っ張り上げてつくる
安全面においても入念な整備が必要だ。完璧に管理されたアイテムだからこそ安心して飛び出せる

国内最大級
アルツ磐梯のパークラインナップ

アルツ磐梯にビッグキッカーができあがると各方面からライダーたちが集まってくる。写真は2019年2月にアルツ磐梯に登場したグローバルパークで飛ぶ稲村圭太 photo: ZIZO

世界へのステップに繋がる
国際大会レベルの「Miyabi Park」が登場

昨年、猫魔スキー場に急遽完成したトランジションジャンプには、鬼塚選手の練習の後に國武大晃など世界レベルのライダーたちが続々と練習に訪れた。日本では初、海外でもそうそうお目にかかれないアイテムは彼らにとっても貴重な練習の場となった。 「これまで本当に海外でしか練習できなかったんです。それは世界を目指して頑張っている日本のスノーボーダーはみんなそう。だからこそ日本のスノーボーダーが海外に行かなくても同じレベルの練習ができる『Miyabi Park』をつくりたいと思ったんです。私が海外で経験してきたこと、日本のパークがこうなったらいいのにというものを星野リゾートさんにつくってもらう。具体的にはまたトランジションジャンプは飛びたいなと思っていますが、今年試合を戦いながら考えてリクエストしてつくってもらい、他の日本の選手たちのステップアップの場にもしてもらえたらいいなと思っています(鬼塚 雅)」 アルツ磐梯に登場する「Miyabi Park」では、日本の最高峰の選手たちによるスーパーセッションが繰り広げられるに違いない。

今シーズンは磐梯山を背景にMiyabi パークでのライダーたちのエキサイティングなセッションが繰り広げられるだろう
どんなアイテムになるかは現在まだ未発表。これは平昌オリンピックのSLOPESTYLE キッカーと同形状の3WAY。左右のキッカーに角度がついているのが特徴

全レベルOK>流せるパーク

飛んだり、回ったり、技を決めなくてもだれもが自由に遊べるパークで遊び方も無限大。パークに入る恐怖心を感じることなく楽しさを味わえる。地形を使ったアイテムでバンクやハーフパイプに加え、オリジナルアイテムも登場予定。ただ滑るだけでも平らなゲレンデとは違う楽しみを体感。

レベル1~2(初心者)>ステップアップパーク for ビギナー

1m、2m、3m とメーター刻みのミニキッカーでステップアップ。初めてのジブには手すり付きBOXなどパーク未経験者も大歓迎のアイテムを揃えたパーク。ちょっと飛ぶ、ちょっと乗ってみるというパークの第一歩を体験できる。

レベル3~5(中上級)>ステップアップパーク for ミドル&エキスパート

ステップアップパークの中~上級編。3mのミニキッカーからメーター刻みでサイズをアップしていける8mまでの中級キッカーをラインナップ。いろいろな練習にトライできるBOX、レールアイテムがレベル別に並び、繰り返し練習しながら少しずつ上のレベルに挑戦できる。上級アイテムは国内スロープスタイル大会レベルの練習に最適なサイズのキッカーやジブアイテムが集結。今シーズンはレベルの幅も広がり、異なるレベルの人でも一緒に練習が可能に。


今シーズンは星野リゾート アルツ磐梯・猫魔スキー場を
お得に滑れるプランが続々登場

星野リゾート アルツ磐梯スキー場にはゲレンデの真ん前に居心地満点の磐梯山温泉ホテルが隣接。ホテルからゲレンデ直行で、パークでじっくり練習するというのもいいし、気分転換にフリーライディングを楽しむのもいい。また、猫魔スキー場への雪上徒歩ルートもオープンするので、猫魔へパウダーを楽しみにいくということもできてしまう。是非ともお得なプランを利用して、アルツ磐梯、猫魔を滑り倒そう!

宿泊+シーズン券 / 宿泊+リフト1 日券
なんとGOTOトラベル適用価格で「星野リゾート 磐梯山温泉ホテル」シーズン券付き宿泊プラン、リフト券付き宿泊プランを販売中。シーズン券を単体で買うより断然お得なプランなので要チェック!

日帰りバスツアー
今シーズンは日帰りバスツアーを多数運行。しかもGO TOトラベル適用の日帰りバスツアーが登場。日帰りバスツアーでも旅行代金が35%OFF(最大1万円まで)となり、地域共通クーポンももらえる。さらに発着地も大幅増!首都圏、福島、茨城、栃木、宮城、新潟などを予定!

地域共通クーポンでリフト券購入可能
リゾート全体が地域共通クーポン取り扱い店舗のため、リフト券や、
ショップでのお買い物、ゲレンデでの食事など様々な場面で利用可能。

アルツ磐梯の晴天の下。圧雪バーンでのカービングを楽しむのも気持ちよさ抜群
人数限定でCAT を使って非圧雪コースを楽しむアルツキャットライド
食事が美味しいというのもスノーリゾートを選択する上で気になるポイント

詳しくは星野リゾート アルツ磐梯スキー場HP へ(alts.co.jp)
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