旭岳の魅力に取り付かれ13年間この山と向きあってきた中川は、この日も上質な雪と極上ラインをクルーズした058「やっぱり人がいないとゆっくりやれるし、これは価値観の違いなんだろうね。ひと昔前と違ってスプリットもソリッドとあまり変わらないくらい調子良くなってるし、それ以上の機動力っていうメリットがあるから、最近山ではスプリットを使うことが多いかな」 そう中川が話すと、山内も最近はスプリットを使うことがほとんどだと言う。「楽に人がいないところに行きやすく、歩いてるだけで気持ち良いじゃないですか。あとセッティングを組み替えたりする行程も好きなんです。もうスプリットはやめられないですよね、正直」 実際自分は丸一日山でスプリットを使ったのは初めてだったが「ここまで楽に登れるのか」と、自分の中にあるスノーボードの概念が変わった。それくらい価値があるギア、それがスプリットボードだと。そして、ふたりの間違いないアテンドによって極上の雪とラインを滑ることができた。大きな沢からそれなりにスティープな斜面、間隔の良いツリーと新たな旭岳の魅力をわからされた。「旭岳の魅力は、雪が多くて手軽に山に入れるっていったら誤解が生まれるかもしれないけど、ロープウェイであげてくれるっていうのはやっぱりでかいよね。あとは、斜面のバリエーションも色々ある。でも間違うと簡単に遭難できちゃうから、その辺は注意が必要。絶対にバックカントリーの装備がないとダメな場所だし、スキー場ではないからパトロールもいない。山の中で事故ったら死ぬ可能性だってある。エントリーがしやすい分、そういう場所なんだっていう意識を持って、それなりにスキルを身につけたうえで山に入らないとダメな場所だよね」 中川は旭岳の魅力を伝えつつも、普段ガイドとしてこの山に1年中携わる者として、しっかりと注意喚起もしてくれた。北海道パウダーベルトを巡る濃密な6日間中川伸也山内一志PowderBelt in Hokkaido
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