FUN RIDE FOR ALL ~全てのスノーボーダーを「もっと楽しく」へ導く / 星野リゾート アルツ磐梯+猫魔スキー場の向かう先

磐梯山エリアを拠点とする、東北を代表するスノーリゾートである星野リゾート アルツ磐梯、猫魔スキー場。猫魔のアーリー~スプリングシーズンも含め、12 月初旬から5 月のGWまでロングシーズン、多くのスノーボーダーが訪れる、我々にとって非常に存在感の大きなリゾートだ。日本全国で旅を楽しくする提案を続ける「星野リゾート」ブランドとして、アルツ磐梯、猫魔は常にほかのリゾートにはない魅力を発信し続けてきた。そして今シーズン、アルツ磐梯が掲げてきたコンセプト「スノーボーダーの聖地」から、全てのスノーボーダーがもう一歩上の楽しさを体験できる「FUN RIDE FOR ALL」のステージへ。期待が高まるその展開は?これからリゾートが目指そうとしているカタチを探ってみた。


「スノーボーダーの聖地」

2003-2004年に星野リゾートがアルツ磐梯を運営し始め、数年後には「ASIAN OPEN」「SLOPE STYLE」といった国際大会の舞台として、世界のトップライダーを集めたビッグイベントを開催。これに合わせて大々的なスノーボードパーク展開をスタートした。当時設置されたスーパーパイプと共に、初心者向けから中上級まで幅広いレベルに対応し、かつ整備が行き届いた安全設計を優先したアイテムを揃えた大規模なパーク。当時「パークブームの流れに乗り遅れるな」と全国各地に乱立するかのように造られた簡易的なパークとの歴然とした差は、あっという間にスノーボーダーたちを惹きつけたのだ。  アルツ磐梯が掲げた「スノーボーダーの聖地」は、星野リゾート代表の星野佳路氏の話によれば「スキーヤーにとってはアルツ磐梯は新参者。ならば我々はスノーボーダーに来てもらおうと思った。迷わずスノーボーダーの方々を100%ウェルカムにするスキー場を目指した」という経営的側面もあった。しかし、我々スノーボーダーにとっては、ここでしか感じられない居心地の良さを備えたリゾートとなったことは間違いない。ゲレンデとしての満足感を得られる広さ、パーク、そのうえに食事の美味しさや上質なホテルを備えたアルツ磐梯は、それまで群馬・新潟・長野にしか足を向けなかった関東首都圏のスノーボーダーたちの行き先を変えるほどの魅力を発信し、瞬く間にその突然の「聖地」宣言も納得できるほどのリゾートへと急進してきた。


国内から世界へ、トップライダーたちの
レベルアップへのきっかけを与えた場所

雪不足とコロナ禍という難しい時期に、石川敦士を中心とする「ライダーたちの目指すべきところをつくっていきたい」という思いに迅速に猫魔スキー場が同調し、開催が実現したSCLOVER BIG AIR

「ASIAN OPEN」「SLOPE STYLE」といった国際大会には、当時圧倒的な強さで世界の頂点へと上り詰めていたショーン・ホワイトをはじめとした多くの実力派ライダーが集まり、そこに向けて日本人ライダーたちが挑戦するという構図がつくられた。海外に出て行かなくても、世界のトップの実力と自分との距離を確かめられる場。それをきっかけにライダーたちの成長の可能性が拡げられ、日本はX GAMESやオリンピックといった頂点の国際大会でメダルを獲れる選手が存在するレベルへと上がってきた。現在も猫魔スキー場で開催が続けられているジュニア世代の登竜門となる「INDEY PARK JAM」も含め、多くの国内トップライダーたちがアルツ磐梯、猫魔スキー場で様々な経験を積み重ね、そこからさらなるステップアップへと繋ぐ、そういう役割を果たしてきた場所でもある。2020年には小雪に加えてコロナの影響も受け、多くの大会が中止を余儀なくされ、ライダーたちが実力を凌ぎ合う場が全く見つからないという状況でも、猫魔スキー場では「SCLOVER BIGAIR」を開催。難しい状況下でも「ライダーたちの思い」が叶う場となったことは、スノーボードシーンに対するリゾート側の思いが強かったからにほかならないだろう。

SCLOVER BIG AIR 開催に向けて関連サイトに発表された顔ぶれには、国内トップの錚々たるメンバーに加え、萩原大翔や長谷川 帝勝ら当時10代半ばの若きライダーも含まれる。伸び盛りの若きライダーたちの将来につなげる意味の大きな大会であったことは間違いない。

全スノーボーダーに向けた
スノーボードパーク展開が意図するもの

流せるパークに設置されているアイテムは、イージーに流すことも可能ながら、しっかり狙えば派手な技を繰り出すこともできるのだ 板をスライドさせたり、当て込んだり、自ずと板さばきのスキルが磨かれる

FREERUN誌面でも毎年アルツ磐梯、猫魔スキー場のパーク展開を紹介している。その特徴はハイクアップもできる、いわゆるポコジャンレベルの初心者から、技術がまだまだ安定しない中級者が安心して練習できるアイテム、さらにグローバルパークという国内トップクラスのライダーが新たなる最高レベルの技を練習できるパークにいたるまで、全レベルのスノーボーダーが楽しめるパークをしっかりと造っていること。最近ではロングコースを利用した流せるパークを常設し、ゴリゴリのパークファンでなくてもフリーライディングの延長線上で楽しめるパークも人気となっている。常に新しいカタチを我々に提供し続けてくれるディガーチームは、数々の国際大会の経験から得た技術を引き継いでいて、ジャンプからの安全なランディングを何よりも優先してアイテムを造成。それらのアイテムは「ステップアップ」という明解なコンセプトのもとに造られている。無理なく、楽しく、自分の技術を磨くことができる環境がここにあるのだ。  猫魔スキー場はトップシーズンには絶品のパウダーという魅力があり、アルツ磐梯は広さと斜面のバリエーションでフリーライディングを十分に楽しめるからと、パークに入らない人も実際には多いことだろう。しかしながら多くのスノーボーダーは「もっとフリーライディングが上手くなりたい」と自分のライディングのスキルアップを求めている。そんな人たちにもこの良質なパークは効力を持っている。ふいに遭遇したギャップにクイックにタイミングを合わせる板さばき、バランスを崩したときのリカバリー。決して大きなアイテムにチャレンジせずとも、ステップアップパークに揃ったアイテムで遊んでいるうちにライディングのスキルも上がる。ゲレンデを見回して「あの人カッコイイ」と目を引く滑りをしている人は、実は「パーク経験値」もそれなりにあるということも事実。そんな側面でアルツ磐梯、猫魔スキー場のアイテムを見ると、キッカーのランディングの安全性だけでもなく、多彩なアプローチに対応できるように設計されていることに気づくだろう。  例えば「流せるパーク」を滑ったとき、ライディングの経験値だけでなくパークのスキルによっても、遊び方は大きく変わってくる。もし、あなたがボウルやバンクといった人工地形パークで遊びたいと思ったときでも、そこを攻略するスキルは、フリースタイルパークの基本的なアイテムにチャレンジし、ステップアップする過程で大きく養われることも明らかだ。

板をスライドさせたり、当て込んだり、自ずと板さばきのスキルが磨かれる

「FUN RIDE FOR ALL」
もっと楽しくへ繋げるために

実際のところ「パークで遊ぶ人が減ったのでは」という理由で、「維持費がかかる」パークへ注力することを諦めているリゾートも増えてきている。誰もがパークのスペシャリストを目指すわけでもなく、アルツ磐梯でいうグローバルパーククラスを飛べるということが、みんなの目標になっているわけでもないだろう。しかしスキルアップを目指すなら、パークも含めて、雪山で幅広い経験値を積むこと。それは間違いないことだ。  「スノーボーダーの聖地」からスタートしたアルツ磐梯、猫魔スキー場は今新たなる「FUN RIDE FOR ALL」というステージへと向かっている。本当にスノーボードが好きな人が満足できる場所、そしてもっとスノーボードが好きになるきっかけをつくれる場所を目指している。2シーズン前、アルツ磐梯と猫魔スキー場の徒歩ルートが開通し、車で1 時間以上離れた2つのリゾートの楽しさを1日で両得できる遊び方もでき、「FUN RIDE FOR ALL」への可能性もまだまだ拡大の方向へと向かっている。「聖地」を目指したときは星野氏の言葉を借りれば「新参者」だったかも知れないが、今やスノーボードシーン牽引する重要なリゾートのひとつとなっていることは間違いないだろう。

アルツ磐梯は猫魔スキー場と約15分の徒歩ルートで接続。ちょっとした冒険気分でアルツ側から猫魔へとフリーライディングを楽しみに行ってみよう

アルツ磐梯のグローバルパークのキッカーは
ランディングも十分長くて
国内で最も調子がいい
_山田悠翔

前シーズン、僕は2週間ぐらいアルツ磐梯に滞在しました。グローバルパークでの練習がメインだったんですが、本当に国内であんな条件が揃ったキッカーはないですね。とても有り難い。キッカーのカタチもいいし、ランディングも斜度があって長くて、国内で一番調子がいい。だから、自分は1620をはじめ、本当にいい練習ができました。かなり安全設計なんで、何でもトライできる。ランディングの衝撃も少ないし、ランディングがめちゃめちゃ長いから、どこまで飛んでも何とかなる。トリックの練習をするのにサイズ的にもベストでした。もちろんレベルが高いアイテムなので、誰もが入れるわけではないですが、そのぶん練習する人が混み合うこともなく、効率よく練習できる環境でした。  流せるパークにも入りました。規模はそんなに大きくないんだけど、自分の考えるラインを描いてライディングすることによって、次はまた違うラインが浮かんできたりしましたね。流せるパークではいろいろなスタイルで遊べるから、例えばスピードがなくても何かできるし、自由に楽しめる。滑ったら滑った分だけ遊びが見つかるんじゃないですかね。個人的には上から下まで流す途中にパイプがあったんでそこでいろいろ遊びましたね。1 本でカービングもできて、パークも遊べて、パイプもできるって感じで、幅広く楽しめました。
ゲレンデのすぐ前にある磐梯山温泉ホテルにも泊まったんですが、居心地が最高すぎ(笑)。ジャンプして、温泉に入って、美味しいゴハンを食べる。充実した2週間を過ごしました。


スノーボードシーンを盛り上げる
イベントの発信地としての動き

前シーズンのK FILEMS のイベントの様子。晴天ではなかったが、楽しさが伝わってくる集合写真

こうしてライダーたちの活躍の場としても親しまれてきたアルツ磐梯では、ライダーと一般スノーボーダーの集まる場として様々なイベントが実施されてきた。2 シーズン続けて工藤洸平を中心に集まったK FILMS のメンバーによる滑ろう会が開催されたりと、ここにはライダーたちの思いと常に同調できる体制が整っている。スノーボードシーンを盛り上げたいというスタート時からの「ウェルカムな姿勢」があるからこそ、様々なムーブメント発動する場にもなっている。本誌でもアルツ磐梯でのパークイベント、猫魔スキー場でのパウダー滑ろう会を万全な協力体制に支えられながら開催させていただいた。また、グラトリブームがここまで熱を帯びる以前からアルツ磐梯では大会がおこなわれていて、多くのグラトリファンも根付いている。  さらに今シーズンはBURTON が世界的に実施している「MYSTERY SERIES」の国内開催の舞台にもなる。バンクドスラローム+ パークセッションとプラスαメニューが用意される、年齢やスキルを問わずオープンマイドで楽しめるイベントだ。さらにはFISのビッグエアの大会開催も予定されている。グローバルパークのキッカーを使って国内のトップライダーたちが競い合う場としても盛り上がっていきそうだ。


ALTS & NEKOMA
FULL SEASON PARK PROJECT

シーズン初めからラストランまで、 アルツ磐梯+猫魔スキー場でスキルアップ

初心者から上級者、プロライダーにいたるまで、星野リゾート アルツ磐梯+猫魔スキー場はすべてのスノーボーダーに対して、パークをはじめライディングを思う存分楽しめる環境が整えられている。多くのスキー場では十分な積雪のある1月以降にならないと本格的なパークは楽しめないが、猫魔スキー場では12月のシーズン初めからのオープニングパークが登場。アルツ磐梯のコンディションも安定する1月からは、日本のスノーリゾートの中でも屈指のクオリティを誇るステップアップパークが始動。今年はビギナー、ミドル、エキスパートとわかりやすく難易度を示して、無理なく安全に練習を重ねながらレベルアップしていける環境が整えられ、さらに流せるパークもオープン。ステップアップパークでしっかりテクニックと向き合うのもいいし、流せるパークで自分なりのスタイルで遊ぶの楽しい。さらにトップシーズンを迎えると、プロライダーも集まってくるグローバルパークがオープンし、アルツ磐梯のパークが本領を発揮。暖かくなって雪が緩みはじめると、パーク展開はコンディションの良い猫魔スキー場へ。パーク道場として春猫魔は、シーズンラストまで盛り上がる。
星野リゾート アルツ磐梯 https://www.alts.co.jp/
星野リゾート 猫魔スキー場 https://www.nekoma.co.jp/