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マンモスで過ごす航はいつもリラックスした表情をしている

10代最後の冬をアメリカで過ごした岡本 航。今シーズンの航は、何かが違った。彼はこの山でどんな刺激を受けたのだろう。Text: Yukie Ueda

「この時期にここへ来る事には意味があるんです」
昨シーズンに引き続き、1月2月のハイシーズンにマンモスへ滑りに来た航は言った。
日本人が殆ど居ないこの時期に滞在するのは、日本人ライダーが多く訪れる春の時期にチームや仲間と撮影をメインに滞在するのとはまた違った意味があるという。

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金髪のカーリーヘアーをなびかせて滑る航はローカル達にもすぐ見つけられる

子供の頃からハーフパイプの練習に励み、大会を主な目的としてやってきた彼のスノーボードだったが、アメリカで幅広い考え方や自由なスタイルを目の当たりにし、ビジョンが変化してきたようだ。
雪が降れば地形を探しパウダーの中を飛び回り、晴れた日はパークやパイプを滑り、朝は圧雪されたゲレンデでカービングを楽しむ。山に上がらない日は裏庭でジブアイテムを作り、面白そうに遊ぶ。
自分の体の一部のように、ボードを自由自在に操り飛んだり当て込んだりしながらハイスピードで山を駆け回る航の姿。まるで型にはまったスノーボードから飛び出したかのように、これが俺のスノーボードなんだと伝えているかのようだった。

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籠から飛び出した鳥のように、広大なゲレンデを気持ちよさそうに走り回る
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ハイスピードでパウダーバーンを駆け抜ける
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体に染み付いた動きで22フィートのスーパーパイプを華麗に舞う

事実、その全てがスノーボードだ。
だからと言って決してこれまで航が見てきた世界や目指してきたものが間違っていたのではない。ハーフパイプという特殊な形状の中で繊細なボード操作を覚え切った航だからこそ、スノーボードの扱い方が本当に上手い。どんなジャンルでも次々とこなしていく。幼少の頃からハーフパイプに明け暮れた日々が糧となっているのだ。

航自身、スノーボーダーとしての転機でもあるのだろう。
日本人ライダーがほとんどいない時期のゲレンデでカーリヘアーをなびかせて、綺麗な滑りをする航の姿はローカル達の目に止まっていた。よく「ハーフパイプボーイ」と言う愛称で呼ばれていた。この2シーズンで航は少しずつ、でも確実にローカル達に認知されていった。

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マンモス最大のローカルイベント、JLAバンクドスラロームに初出場!

今回の滞在の後半、ローカル達の集まる場「JLAバンクドスラローム」に初出場する事になった。主催のビリーアンダーソンからも「昨年から、ワタルがいつも滑ってるのを見てたよ」と歓迎を受けた。
航はメンズプロのカテゴリーに唯一の日本人として出場。そして見事6位入賞を遂げた。

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自らこだわるボードメンテナンスもシビアなエッジ操作も、ハーフパイプに専念してきた経験が活かされている

「表彰台の真ん中に立つ!」と意気込んでいたので悔しくもあっただろうが、2日間の大会期間中、航は多くの人たちに声をかけられ、「あ!あいつ知ってる!」と自ら挨拶しに行ったりと、とても楽しそうに過ごしていた。

Photo: Jeff Baker
航の滑りはプロメンズクラスの強豪の中でも堂々の6位入賞を果たした Photo: Jeff Baker
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686のマーケティングマネージャーBrentと
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JLAイベントにはレジェンド、Jamie Lynn の姿も
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亡き弟 Jeff の追悼としてイベントを開催し続けるBIlly Anderson。彼にも存在を認められた航は「日本から来たマンモスローカル」になりつつある

航はこの山が大好きだと言う。どこよりも、ここマンモスで滑りたいのだと言う。滑ることで自分を表現して来た少しシャイでクールな航は、20歳を迎える寸前である10代最後の時期にこの山でどんな刺激を受けたのだろう。言葉が通じずもどかしいから滑りで表現し仲間を作る。そして仲間とコミュニケーションを取りたいから、言葉を勉強する。そんな風に過ごしたこの時期が、今後の航をどう成長させて行くのだろうと考えるとワクワクする。

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パイプの練習をしに来た頃は、この山頂にも登ったことがなかったという。今はこの山の地形をよく知るライダーである
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やって来たこと、積み重ねて来た時間は決して無駄にはならない。久しぶりのパイプで見せるこのトゥーフェイキーが物語っている
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型にはまらず、常識に捉われず、自分の感性で突き進めばいい

まだ歴史の浅いスノーボードには計り知れない可能性と道がある。既に敷かれたレールはほんの一部でしかない。幼い頃からどんな環境にあろうが、自分の作るレールを歩くかどうかは自分次第だ。環境だけが理由ではない。日本と海外、どちらが正解でもない。自分が信じた道を堂々と貫き通せるかどうかが自分の正解なのだ。

航がいよいよ帰国すると伝えるとローカル達は、「で、いつ戻ってくるんだ」と笑って言っていた。「どうせお前すぐ来るんだろ?」と。
もちろん航は、今度は暖かい日差しが溢れる春のシーズンにここへ戻って来るだろう。

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Profile
岡本 航(オカモト ワタル)
1999年3月10日生まれ。スノーボード歴11年。
Sponsor: SALOMON, 686, SMITH, FOOTLAB, ルートJファクトリー、緑園都市整骨院、KTTAPE, SOCIETY01, FLYHILL
主なリザルト: 14-15 FIS 全日本選手権 HP3位、15-18 Rev Tour Copper mountain優勝、15-16 US open出場、US grand prix8位、JLA Banked slalom 2019 pro 6位

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★この記事のライター
上田ユキエ
1973122日生まれ。東京出身。カナダウィスラーでスノーボードを始め25年、ハーフパイプやビッグエアーなどの競技を経て、ガーズルムービープロダクション “LIL” を立ち上げ日本のガールズシーンを牽引。結婚を機にアメリカへ移住し歳の息子(トラノスケ)を育てながらプロ活動を続ける。20174月マンモスマウンテンに拠点を移し、競技復帰を果たしながらよりナチュラルに山の近くで家族と新たな生活をスタートさせている。
Sponsor: K2 SNOWBOARDING, Billabong, MORISPO SPAZIO, NEFF, RONIN, UNCORAZON SHIBUYA, LALALAUSA
昨年のリザルト: 全米スノーボード選手権2018 Legend woman class Halfpipe 優勝 Boarder cross 優勝 JLA Banked slalom 2018 Mom class 優勝

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