来期登場するBURTONのSTEP ONシステムを試してみた!!


「革新的なバインディングとブーツをリリースします」昨年の11月末、BURTONのマーケティング担当者からのお知らせ。1月26日に白馬五竜スキー場にてその新製品の試乗会がおこなわれるという。「革新的」と共に付け加えられた、「あまり詳しくお伝えできませんが、ステップインのようなものです」と書かれたメッセージ。全貌が謎のベールに包まれた感じに、より一層興味をそそられつつ、その日を待った。当日はテリエ・ハーコンセン、竹内正則、鈴木翔太、中山悠也、高橋龍正、降旗由紀、吉村成史といった錚々たるライダーの面々も勢揃い。ライダーたちもSTEP ONの感触を確かめていた。

バインディングは極めてシンプル
バインディングは極めてシンプル


そもそも、STEP ONとは??

余計なものを削ぎ落とし、シンプルなデザインとステップオン(ブーツをワンタッチでバインディングシステムに固定)の機能に特化し、ブーツとバインディングを完全にフィットさせるシステム。
かかとに装着したヒールクリートがバインディングのヒールバックルにロック、トゥ部の両サイドに装備されたトゥクリートはバインディングのトゥフックに固定され、ブーツの左右へのズレを抑えるための役割を果たす。3つのコネクションポイントでの固定だが、ヒールバックルが固定されることで外れることがないという安全なシステム。
ロック解除はベースプレート脇のリリースレバーを引き上げるだけでOKで、ブーツを外した後、リリースレバーは自動的にリセットされる。さらにこのシステムは全てのインサートパターンに対応するという互換性を持つ。ブーツはBOAシステムを搭載、現状ではRULERとPHOTONにSTEP ONが搭載されるが、RULERの方には、これまでのステップインブーツに付いていたゴツいアンクルストラップがなく、PHOTONではスナッガーストラップと称したアンクルストラップを装備し、BOAシステムを活用することで、軽量化が施されている。

RULERは足首のストラップもなく、一見普通のブーツと変わらない。つま先の両サイドについたトゥーフックとヒールサイドのロックパーツがSTEP ONの証
RULERは足首のスナッガーストラップもなく、一見普通のブーツと変わらない
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こちらはWOMEN’S用のFELIX、MEN’S用のPHOTONと同じく足首にBOAを装備したスナッガーストラップがつく

概要はそんなところだ。

BURTONはこのシステムをホワイトルームと名付けられたラボの中で、4人のエンジニアが開発のために4ケ月間に渡る泊まり込み重ねながらの集中作業をおこない、完成させたのだと明かした。その後、3,000時間をかけてのON SNOWのテスト。チリ、USA、日本など、様々なフィールドでテストが行われた。ひとつの商品のためにこれだけの労力をかけたプロジェクトはこれまでなかったのだと、BURTON本社・開発担当エリック氏は語った。

WHY?

なぜ、BURTONはこのシステムにこれほどまでの労力を費やしたのか?
「革新的なシステムによるライディングの進化」
まさに求めたものはそこにある。
腰を雪上に降ろさず、素早くバインディングを装着できる。
前述したように、まずはかかとのヒールクリートがロックされれば良いということを考えると、そのスピードは今までのステップイン以上であることは間違いない。トゥフックへのロックは滑り出しからでも間に合うのだという。そして最大の特徴はブーツに金属の大きなプレートが内蔵されないということ。つまり、ブーツは極めて軽く、歩きやすい。特にアンクルストラップを装備しないRULERは通常のブーツと見た目も含め、ほぼ変わらない。さらにブーツ金属のプレートが内蔵しないことで、足裏にボードの感覚をしっかりと感じながらコントロールすることができる。
STEP ONは明らかにこれまでのシステムにはない、魅力を備えたシステムなのだ。

ソールには大きな金属パーツ一切ナシ!!
ソールには大きな金属パーツ一切ナシ!!
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この部分に装備したヒールクリートがバインディングとのコネクションポイント。上に装着しているクリップはウエアの裾をシステムに巻き込まないようにするため
バインディングも余分なパーツがなく、シンプルで軽い
バインディングも余分なパーツがなく、シンプルで軽い
これがかかと部分のロックシステム
これがかかと部分のロックシステムであるヒールバックル。左側にリリースレバーを装備

テストライディング!!

FIRST IMPRESSION

ブーツを手にした瞬間、なるほど軽い。と納得する。BOAシステムの搭載もここに一役かっているのはもちろんこと。BURTONのBOAシステムは、New England Ropesのナチュラルファイバーレースを採用していて、巻き上げもスムースで適度なフレックスもあり、いい感じだ。通常のブーツとの違いをRULERで見ると、BOAシステムの装備、かかとの部分にヒールクリートが装着されているのと、つま先の両側にトゥクリートが装着していること。PHOTONはこれに加え、BOAで締め上げるスナッガーストラップ(アンクルストラップ)が付いているのだが、パーツの重量は軽く、ここにそれほどのテンションをかける必要もなさそうだ。
バインディングも極めてシンプル。余分なものを削ぎ落としたという言葉通り、軽量と言える範囲に仕上がっている。かかと部のヒールクリートはバインディングにかかとを合わせて踏み込むだけで、すぐにロックされる。BURTONのスタッフの話では、この部分がロックされれば外れることはなく、トゥクリートがトゥフックにはまるとパチンと音がする。固定された状態は、今まで試したステップインのシステムと比べると、最もフレキシブルな印象。足裏に金属の大きなパーツがないからだろうか、自然にバインディングに乗っている感じ。これがSTEP ONという意味なのかと思わず納得。
パウダーの時、どこまで雪を取り除けば固定されるのか? そんな疑問をBURTONのスタッフにぶつけてみると「どうぞ、この状態でSTEP ONしてみてください」と、2cmほどのクッション材をバインディングのベースに乗せた状態でのSTEP ONにトライ。これも見事にクリア。ストラップのバインディングと同じく、そこそこ雪が乗っていても大丈夫。そういうことのようだ。

テリエの足元もSTEP ON

白馬五竜の斜面をクルージングするテリエ
白馬五竜の斜面をクルージングするテリエ photo: yoshitoyanagida.net
デモ動画のようにジャンプからの一発STEP ON
説明会の会場で公開されたデモ動画の1シーンにもあった、ジャンプからの一発STEP ONをさらりとやってみせるテリエ photo: yoshitoyanagida.net


FEELING

STEP ONはブーツのかかと部分をハイバックに滑り込ませるように踏み込むとすぐ入る。かかと部分がロックし、つま先を踏みトゥフックに固定する。1発で入らなければ、つま先を左右にねじ込むように踏み込むとすぐ入る。慣れてくれば、リフトを降りる時に後ろ足をはめて、すぐ滑り出すというスペシャルスタイルもいけそうな感じ。リリースもリリースレバーを引き上げると、ヒールバックルのロックが外れ、そのまま前に踏み出すことで外れてくれる。しかも外れた後にリリースレバーは自然にリセットされるので、リスタートも簡単だ。
さあ、実際にターンをきってみると、ブーツとバインディングが完全にフィットしているので、ボードコントロールでのレスポンスはとても良い。スナッガーストラップにはそれほどテンションをかけなくても十分なレスポンスを得ることができる。ブーツのBOAシステムを調整することでレスポンスを微妙に調整することもできる。なるほど、これはBOAの機能があってこそのシステム。しかもBURTONのBOAは適度なフレックスがあり、それがこのシステムに効いているように思う。ヒールサイドターンのレスポンスも良い。ハイバックのフォワードリーンの調整も出来るので、こちらのレスポンスも微調整が効く。
ターンの感覚もどこかを支点に引き上げているような感覚もなく、足裏全体でコントロールしている感じ。ブーツが足に馴染んでくればより自由な感じが得られるのではと予測できる。
そんなことを考えながら、この日丸1日、STEP ONシステムと共にBURTONの来期モデルを試しまくった。後半になると初めてのシステムなのと、おニューのブーツなので足のつま先の両サイドにちょっと痛みがあったものの、慣れれば問題解決のレベルか。試乗ボードをどんどん変えまくったせいもありそう。
最終的な製品化には、まだ若干の微調整も加えられるそうで、販売される頃にはさらにいい感じに仕上がって登場しそう。これは来期モデルの中でも相当話題になる製品となることは間違いない感じだ。

フォワードリーンはこの部分のネジを回すことで調整
フォワードリーンはこの部分のネジを回すことで調整
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photo: yoshitoyanagida.net

かつてBURTONでもSIシリーズというステップインが販売されていた。そのシステムも自分は2シーズンほど使っていたのだが、これはSIとは全く違う形のシステムだ。そして、相当の開発力を投下して完成した今回のSTEP ONは、通常のストラップバインディングでのコントロールの感じにかなり近いのではと感じた。明らかに革新的、ライディングをもっとイージーに、そして楽しくするための進化のひとつ。やっぱり新しいモノを試すのはとても楽しいことなのだ。STEP ONの市場導入が大いに楽しみにしたい。

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