外国人が激減したニセコの旅、今しかないニセコを滑る。

このコロナ禍が始まって約2年、外国人の街と称されたニセコはどうなったんだろう?
ニセコに住む知人からは、「今のニセコは最高だよ」とよく聞く。それはそうだ、コロナ前のニセコは欧米人やオージー、アジア人で占めていたからだ。外国人がいないとなれば、ニセコの住人にとって競争率の減ったパウダーゲレンデに変わったはず。ずっと行きたいと思っていたが昨年は断念、そして今年そんなニセコに訪れるチャンスが訪れた。はたして現地は今どんな街に変化しているのかリポートしたいと思う。
TEXT&PHOTO: HAL

やっぱりこの羊蹄山を拝むためにニセコへ行くといっても過言ではない

新千歳空港からニセコヒラフまではバスで移動した。昨年はガラガラだったとは聞いていたが、合間を縫っての旅行者もいて思いのほかバスは満席だった。もちろん外国人はおらず、若者や学生旅行者が多かったように思える。駐車場につくと、それなりに日帰り駐車場は埋まっていて「なんだ人いるじゃん…」というのが最初の印象。

車が断続的に駐車場へ入っていくが、宿の送迎やレンタカーが多い

だが、宿まで数分歩く間に「ああ、一変したんだな」と思えた。ヒラフ十字街には人は少なく、閉まっているお店も多い。「あそこはなんのお店だったっけ?」と、思い出せないところも多いが、サツドラ(北海道のドラックストア)が閉まっていたのはショックだった。前回来た時には、多くの外国人観光客で賑わっていて、日本のコスメを買い占めているアジア人や、コンドミニアム宿泊の欧米人がワインやチーズを買っていたのに、その賑わいはなく、ガランとしていたからだ。

ヒラフ十字街に歩いていた外国の方が消えた

その先にある、コンドミニアム群の場所もしかりだった。あんな狭い土地に何棟も立てたにもかかわらず、そこに人はいなく除雪しきれていない様子。
あんなに土地を買いあさり建てたにもかかわらずもったいない。「使わないなら安く売ってくれないかなぁ…」なんて、冗談交じりに言いあいながら歩いた。きっとこの景色も今だけなのかもしれない。来年にはまた外国人観光客も増え元通りになるのだろう。

このあたりは外国人向けのコンドミニアムが乱立しているがお客さんがいそうにはなかった

宿につくと、そこには変わらない笑顔があった。毎年お世話になっているペンションJAMは健在で、オーナーのお母さんは「ボロくてごめんねー」。などと言っていたが、それが逆に安心させてくれた。ここには変わらないニセコがあって、私達にはこの暖かさがいいのだ。お母さんの暖かさで成り立っているこの宿も、私達ツアーの人達以外は宿泊客がいなく、常連の日本人客が一人だけいるとのことだった。

以前は宿泊サイトなどから外国人が予約だけして部屋を押さえられていると聞いていたが、それもなくなり昔の通常営業といったところだ。ただ、もちろん宿泊者が減少していることには変わりない。来年ここがなくなってしまったら、私達はどこに泊まればいいのか…。

そんな母にお見送りされゲレンデに向かうと、平日の昼とはいえコロナ前とうってかわって人が少ない状況にびっくりした。ずっと降り続いていた雪が落ち着いてしまったせいもあるかもしれないが、リフト待ちはなくスムーズにゲレンデイン。

HANAZONOエリアへと向かったが、そこでは数人の外国人を見かけた。こっちのエリアはゲレンデ直結のパークハイアットニセコホテルがあることから、やはり富裕層がまだいるのかなと思える。HANAZONOにホテルが立ち並ぶ光景にはやっと慣れたが、それよりもびっくりしたのは、ゴンドラが出来上がっていたこと。噂でリフトもリニューアルされるとは聞いていたが、またしてもココは変わっていた。

降りた時に「あれ?」と、若干違和感を感じたくらいで、そこまで変化に気づかなかったが、リフト位置も若干変わっていて、花1リフトは日本初の6人乗りの本革張りシートヒーター付きリフトにリニューアルされている。また、新設されたゴンドラは10人乗りで中間駅もあり、初心者や観光客向けにつくられているようだ。HANAZONOゲレンデの東側に位置し、ゴンドラに沿ってコースも新設され、この先もまだゴンドラは先に伸びると噂されている。コロナの影響で、人は少なくとも工事はちゃんと行われ進化しているHANAZONOエリアはほんとにスゴイと思う。

新たに新設されたゴンドラ。それほど長い距離ではないが快適でそれなりに楽しめる
こちらはリニューアルされたリフト。もちろんどちらも乗車してみた

リニューアルされた花1リフトに乗ると、左側に見えるストロベリーフィールズも人は少ないように感じた。雪も降っていない午後だったからなんて思ったが、そんなこともなかったようだと思うのは次の日の話…。

モリーラン大好きな人達でのフリーランは楽しい。これぞニセコ

降った日の土曜日は朝早くから並ぶというのが通例だったニセコ。この日ももちろん開始前に少しは並んでいたが、運行開始後ものの5分で列は解消された。リフト券売り場にも数人が並んでいるだけで、すぐに混雑もなくなった。ツアー主催のスノーバム小畑氏も「25年前のニセコに戻ったみたい」としきりに言っていた。

この日はそれほど焦って行くほどのコンディションでもなく、いや焦らなくてもいいほど人がいないので、ゆったりリフトに乗り込む。最初に到着した組がドロップしていくが、我先にという感じではなく、思い思いに滑っている。

そこに外国人の顔ぶれは少ない。この光景はきっと今だけなのだろう。今だ外国人観光客の入国は日本だけは認めていない。それが解禁になれば、安全な国、希少なパウダースノーの国、日本にはきっとまた観光客が押し寄せるはずだ。

朝イチでもこの状態の土曜。きっと降っていなかったからに違いない。だってこの前週までずっといい雪が降り続いていたからだ

いつもガイドをお願いするニセコ在住の永田氏にも現状を聞いた。「今のこの状況はニセコバブルが弾けたのかと?」答えはNOだった。なぜなら、この海外資本の建設ラッシュは止まっていないからだと言う。世界中のパウダー好きの人達はこの地にやってくる。今はコロナだから来られないだけで、時が経てば待っていましたとばかりに大挙と押し寄せるはず。それはこのニセコという地が世界でも名の知れたパウダースノーの聖地であり、唯一無二だからだ。だから今、楽しんでおきたかった。

いつも私達を飽きさせない場所をチョイスし案内してくれる永田ガイド
北海道ニセコのゲレンデガイド “Niseko Pleasure Tours

私達を歓迎してくれたかのように、翌日の朝はリセットされたパウダースノーが待ち構えていてくれた。ニセコというビックマウンテンは無数のスポットがあり、いくらでもスプレーをあげ、歓喜の雄叫びをあげられる瞬間が訪れる。世界一のパウダーゲレンデだからこそ今、私達はこの状況を楽しみたい。唯一楽しむことができる日本人なのだから。

土曜日でも人の少ないのは変わらなかった。この日は風もそれほどではなかったこともあり、ヒラフピークゲートが開いていたが、我先にと登る人はおらず、私でもゆったり登れた。写真撮影で混むアンヌプリ小屋の前もそんなに人がいない。余裕の写真撮影

2005年から毎年同じ週にニセコに行っていたが、昨年はコロナ禍だったため断念。それによって連続ニセコ記録が途絶えたが、今年またあの羊蹄山を見ることができて本当に嬉しく思えた。

きっとこの先も街はいろいろな変化をするだろう。でも山と雪はきっと変わらないと思う。そんなニセコをこれからも記録していきたい。

HAL

協力:ニセコ東急グランヒラフ
ツアー協力:スノーバム